くもの巣
きみは蜘蛛だった。そしてぼくは、蜘蛛の巣に引っかかった蝶。
ぼくは、蜘蛛の巣の世界が、美しく見えた。
蜘蛛というきみが、美しく見えた。
きみは、蜘蛛の巣の中で、だれかを引っかけようと待ち構えていた。
他にも、捕まえられた獲物がいたこと。
ぼくは知らなかった。
ぼくは、獲物が他にいると知ってもなお、
きみのそばにいようとした。
あるとき、ぼくは蜘蛛の巣が巡らされた
この世界の果てを覗き込んでしまった。
ぼくは、蜘蛛がいない隙に
蜘蛛の巣を破り、外界へでた。
これからもきみは、蜘蛛の巣の中から、
獲物を取り込もうとするだろう。
花の香りを漂わせて。
くもの巣