隠しきれないかなしみ

きみはどうして　そんなに悲しいの？


きみはどうして　そう　つらそうなの？


どこからか、声が聞こえてきた。


ぼくはとっさに振り向いた。

振り向いた時、ぼくの目から涙が出ていた。

ほら、そうなんでしょ。
きみは悲しかったんだよ、心じゃ泣いていたんだよ。
ぼくには見えたよ、あなたのこころが泣いていること。

だって、ほら、きみは前に進めずにいる。

大したことないって言いながら、あのことばを何度も思い返していたじゃない。

その度にきみは、自分を責めていた。

責めているきみを、ぼくは見ていた。

とても、つらそうだったんだよ。

きみはあれから、前に進めなかった。

でもきみは、大したことないって、平気なふりをしていた。



そんなきみは、きみは…。
かなしみを隠しきれていなかったんだ。

それが、今の涙だ。

きみ自身が見つめる今のきみは、どんなだい？

ぼくから見えるきみは、とても…とても消えそうだ。

きみは、声を失いそうだ。


そんなきみをぼくは、かなしく見つめているんだ。


ぼくは、もうひとりのきみなんだ。

きみが光を感じるときぼくは影で、

きみが暗闇にいるとき、ぼくは光だ。

だから、ぼくはいつもきみといっしょにいたんだよ。


だから、きみのことを誰よりもよく知っている。


きみがわからなくても、ぼくは知っているんだよ。

きみの本当のこころを。