zoku勇者 ドラクエⅨ編 94

最後の戦いへ……

「アイシャ、頼むっ!此処は俺が何とかっ、うああーーっ!!」

「小僧……、良かろう!」

ギュメイは又しぶとく立ち上がって来たジャミルの相手をしようと
体勢を立て直した。ジャミルも、又出血覚悟で伝説の剣を振り回し、
ギュメイに立ち向かう。

「ジャミル、……お願い!サンディ、モンちゃんの事、頼むわ!」

「う、うん……、大丈夫だよ!」

モンをサンディに預け、アイシャも気絶しているダウドの元へと走る。
だが、もしもジャミルが完全に力尽きてギュメイに気づかれれば一環の
終わり……。恐怖であった……。

「ダウド……、蘇って!どうか……!!」

「小娘……、そう言う事か、させんぞ……」

倒れているダウドの元へ漸く辿り着き、アイシャが世界樹の葉を
飲ませようとするが、ダウドは口を開いてくれず。その間にも、
ギュメイは事態に気づいてしまい、アイシャの方に怒りの目を
向けた。

「ギュメイっ!オメーの相手は俺だっ!……うううーーっ!?」

「馬鹿者め……」

だが、再びジャミルが胸を押さえ込み、吐血した。流石にそろそろ
回復魔法を掛けないと限界に近かった。痛みに堪えきれず、ジャミルも
又倒れた……。

「駄目だ、こんちくしょう……」

「ダウド、お願い、世界樹の葉を……、きゃ、きゃっ!?」

「邪魔をするなと言っている……」

アイシャの前に等々ギュメイが迫る。だが、アイシャも負けて
おらず、今度こそと自身もギュメイと戦う体勢を取った。

「ギュメイっ!来なさいっ!わ、私だって戦えるのよっ!女の子
だからって舐めたら痛い目に遭うわよっ!!」

「フン、何を強がりを……、もう一度転ばせてやろう……」

「うううーーっ!今度こそ当たってーーっ!!」

ギュメイが長剣を構え、突っ込んで来た。だが、今度はアイシャの
必死のメラゾーマの方が早く、放った炎がギュメイの体を瞬く間に
包み込んだ。

「や、やったわ……!」

「小娘、なかなかやるな……、だがこれぐらいでは我はまだ
倒れぬ……」

ギュメイに命懸けで魔法を放出し、漸くダメージを与えたが、
やはり一度ぐらいのメラゾーマではびくともしないで平然と
している。やっぱり、私一人じゃ駄目なの……?と、アイシャは
泣きたくなった……。

「あっ、世界樹の葉……」

アイシャは世界樹の葉をうっかり下に落としてしまう。だが、落とした
先はダウドの顔の上……。ダウドの顔の上に世界樹の葉から零れた雫が……。

「あうう~、オイラ……」

「ダウドっ!い、意識がっ!!きゃっ!?」

「させぬ、今度こそ始末してくれよう!」

ギュメイはアイシャを突き飛ばし、気絶から回復したダウドを
もう一度始末しようと近寄って行く。だが、ギュメイにも剣の
妨害が入った……。

「……こっちの小僧か……」

「……ジャミルっ!!」

「悪ィな、おっさん、もうこれ以上アンタの好き勝手させねえよ!
調子に乗んな!アイシャ、良く頑張ってくれたな、サンキュー!」

「うんっっ!!」

アイシャは喜び、急いでジャミルに駆け寄る。ジャミルもアイシャを
後ろに手に守ると彼女に向かって微笑みかける。ギュメイがアイシャの
相手をしている隙に、何とか体を動かして、必死で力の盾を使いHPを
全回復させたのである。

「オイラ達ももう大丈夫!」

「ジャミル、アイシャ、心配掛けて済まない!」

「おお、お前らも復活したか!流石しぶといな!ダウドもサンキュー!!」

「……しぶといって何っ!それはジャミルじゃないかあ!でも、えへへ!」

此方も、どうにか復活出来たダウドが素早くザオリクを使い
アルベルトを蘇生。こうして、無事に全員生還する事が出来た。
見守っていたサンディも急いでモンを連れて来る。と、漸く
此処で全員が再び揃った。

「……ダウド~、モン~……、モギャ、モギャーー!!
心配したんだモン……、モギャ、モギャ、モギャ、
モォーーンっ!!」

「あたた、モン、わ、分かったから……、あだだだだっ!いだい、
いだいよっ!な、泣いてまで心配してくれるのは嬉しいけど、
……モンはーーっ!!」

「……この髪型嫌モンーーっ!乗り心地悪いモンーーっ!早く元に
戻してモンーーっ!!」

「泣き処そこなのおーーっ!!」

「「汗」」

久しぶりにダウドの頭の上に乗れたモンは早く髪型をオールバックに
戻せと大騒ぎ。見守っていた皆さんも滝汗……。

「ま、スーパーデブ座団はスーパーデブ座布団……、だよネ……」

「ウシャーー!」

「……つー事だ、ギュメイのおっさん、俺ら、完全復活しちまったワケ、
今までやってくれた分、ストレスも溜まりまくりだかんな、お返し
させて貰うぜ!」

「良かろう……」

ギュメイは再び集結したアホ4人組を見て、大きく息を吐いた。
本当に何所までも悪運の強い奴等だと……。だが、心なしか
ギュメイの顔には笑みが浮かんでいた。

「……お前達が一人だろうと、何人だろうと、我には関係無いからな……、
では、遠慮無く行かせて貰うぞ!」

「望む処だっ!……皆、下がっててくれ、後は俺がやるっ!」

「ジャミル、でも、君も病み上がりなんだ、無茶したら!」

「大丈夫さ、俺、今度こそ、おっさんとちゃんと勝負したいんだ、
ケリを付けたい、自分自身の力でさっ!行くぞおおーーっ!
ギュメイっ!!」

「生意気な……!」

ジャミルは伝説の剣を構え、ギュメイへと走る。ギュメイも同時に、
ジャミルへと……。ギュメイが最後の魔神斬りを使う前に、ギュメイの
体は宙を舞い、ギュメイは倒れた。地面に倒れる寸前、ギュメイは微笑みを
浮かべた。本当に強くなったな、小僧と。

「……小僧、見事だ、我の負けだ……、認めよう、確かに……、
本気を出せば真面に以前よりも強くなっているな……」

「……」

「「やったああーーっ!!」」

後ろではしゃぎ合う仲間達。ジャミルが強敵に打ち勝った事の
嬉しさで、エルギオスの事をすっかり忘れている皆さんなので
ありました……。だが……。

「……ダウド、頼むよ、おっさんにベホマを……」

「……え、ええーーっ!?」

「……小僧、貴様、何のつもりだ……?敗北者の我を哀れんで
いるのか……?」

「ちょ、ま、また、アンタはっ!?」

「モン~……」

「ジャミル……」

「……」

ジャミルの言動に又も皆はハラハラ……。ギュメイも再びジャミルの
方を強く睨んだ……。

「だって、いいじゃんか、俺、アンタに勝ったんだし、敗北者は
勝利者の言う事大人しく聞けよ、折角復活したんだしさ、やっぱり
アンタの力、貸して欲しいんだ、このまま埋もれるんじゃ勿体
ねえだろ?な、折角だし、これからはアンタの力、別の処でも
活かしてみないか?変なプライド捨ててさ」

「……断る、我が信じる物全て、今も忠誠を誓うのは、あの方……、
ガナサダイ皇帝のみ……」

しかし、やはりジャミルが差し伸べた手を、ギュメイは頑なに
拒否しようとするのだった……。

???:ホーホホホ!ホホホホ!


「な、何だ?何かまた、何処かで聞いたやかましい声が……」

「オイラ、とっても何だか嫌な予感がするんですケドっ!
ああーーっ!オイラのヘタレ危険探知機がっ!異様な電波を
発しているっ!!」

「……モンのおけつもムズムズするんだモン!」

「その探知機、何だか久しぶりだわ……、それ使わなくても
ダウドはいつも何か電波感じてるんじゃないの……、モンちゃんは
お風呂入ってる時、お尻をちゃんと洗わないからよ、もう……」

「モンプ♡」

「……ヘタレ、ちょっとッ!誰の真似よッ!?でも……」

ダウドは頭を抱え、サンディも不安そうにジャミル達の方を見た。
ジャミルも、出来れば連続鬼畜バトルは勘弁してくんねえかなと、
そう思っていたのだが……。ギュメイも、首を傾げ、声のした
方向の空中を見上げた。

「来るな……、まだ奴は倒していなかったのか?お前達……」

「ええ?来るって、誰がです……?……あっ!!」

「ホホホ!ホホホホ!そうです、私ですよっ!どうもごきげんよう!
糞共の皆さんっ!!」

「「……ゲルニックっ!!」」

「……」

4人は声を揃える。変な球体の様なカプセルの乗り物に搭乗し、
倒した筈のゲルニックが姿を現したからである。このジジイは、
もはやしつこい糞ギャグキャラと化してしまっていた……。

「私は絶対にお前達をブッ殺すまでは死ねんのですよ!糞ガキ共、
今度こそ全員始末してくれよう!このゴレオンの魂を吸収した
最終兵器でっ!……ホホホホ!」

「……な、何だとっ!?」

……倒したと思っていたゲルニックは又しつこく勝手に蘇った。
おまけに変な乗り物に乗り、ゴレオンの魂を吸収し、機械へ
注入したと言う……。

「そして、そして、そしてっ!ギュメイっ!!私はずーっと前から
アンタが気に要らなかった、皇帝に好かれようとして、如何にもな
誠実ぶりしやがってからにっ!カーッ!嫌だ嫌だっ!反吐が出ますっ!」

「……我にはそんな浅はかな心は無い、いつも何時でもこの我が身を
預け、陛下をいかなる事があろうと、陛下の為、陛下をお守りする為、
己の技に磨きを掛けて来た、それだけだ……」

「何でもいいですっ!とにかくあたしゃアンタが大嫌いですので!
其所の不愉快なガキ共共々始末してあげましょう!食らえーーっ!!」

「……う、うわ……!!」

ゲルニックは乗っていた機械からミサイルの様な物体を数発、
ジャミル達に向け撃ちまくった。これにはジャミル達も防ぐ事が
出来ず、パニックに陥る……。

「させん……!」

だが、ギュメイが咄嗟に体を張ってバリアーを張り、ミサイルを
掻き消す。

「ギュメイ……、あんた……」

「勘違いするな、別にお前達を助けた訳ではない、只、我もあの男は
好かぬ、それだけの事……」

ギュメイは無言になり、非常識なゲルニックを睨む。ゲルニックは
もう数発、直ぐに又ミサイルを発射しようと準備していた。

「今度は外しませんよっ!……あら、何故だ、ナぜっ!?この私の
言う事を聞かないのですかっ!こ、このバカ機械がっ!!フウ~~っ!!」

「……おい、お前達……」

ゲルニックが次のミサイルを発射する間、まだ相当掛ると見て、
ギュメイがジャミル達に話し掛けた。戸惑う4人は……。

「あの男は我が地獄へ連れて行こう、うるさくて叶わんからな……」

「連れて行くって、何所へ……、まさか……」

「モンっ!?おじちゃんっ!?」

「……」

ギュメイはジャミルとモンの言葉に静かに正面を向いた。アルベルトも
アイシャもダウドも、ギュメイが何を考えているのか、直ぐに察知……。

「幸い先程のお前達との戦いで使わなかった魔神斬りがまだ
残っている、だが、先程も言った様にこれはお前達を助ける
為ではない、我が独自に行う事だ、第一、あの方がもう存在
しないこの世界に無理矢理復活させられて生きていても意味は
無い故……、未練など無い……、お前達にも敗北したこの身……」

「だめえーーっ!そんなの駄目モンーーっ!!」

「……ギュメイさん……」

モンは激怒。アイシャも言葉を溢した……。

「……だけどっ、おっさんっ!!」

「黙れ小僧、これは我の最後の使命、手出しは無用、黙って
見ていろ……、お前達にはまだ、この世界を救うと言う使命が
あるのだろう?」

「でも……」

「ジャミル……」

アルベルトは戸惑うジャミルの肩へ黙って手を置いた。彼は誇り高き
元・帝国のエリート軍人。戦いの中で散る事が尤もの名誉。誰にも彼の
意思を止める事は出来ないのだと……。

「くそっ!よ、漸く準備が整いました、来なさい、今度こそ纏めて
灰と塵にして差し上げますので、ホホーーっ!!」

「畜生、ゲルニックの奴っ!!」

「では、参る……、ジャミル、お主との勝負、忘れぬぞ、お前の様な者と
戦えた事を我は心から誇りに思う……」

ギュメイはジャミル達4人の一人一人の顔をじっと見つめる。
モンは堪えきれず、また泣きそうになった……。

「小さき者よ、お前はまだまだ強くなれる、折角授かったその力、
大切に使うのだぞ、そんな顔をするな、強くなれ、モン……」

「!!おじちゃん……、うん、やっと名前呼んでくれた、……モン、
もっともっと、これからも……、沢山頑張るモン、いつかおじちゃん
みたいにモンも強くなるモン……」

「良い顔だ……、その言葉、忘れるな……」

「ギュメイ、アンタマジで強かったよ……、ありがとな……」

「恐い思いもしたけど、オイラもあなたの事、忘れないよ……」

「ギュメイ将軍、僕もいつか貴殿の様な誇りを持った騎士に
きっとなります……、必ず……!」

「ギュメイさん、有難う……」

「……うむ、だが、出来るなら、今度生まれ変わる時は、我も
ゆっくりとした人生とやらも送ってみたい物だ……、では……!
ゲルニック、今行くぞっ!!」

「遂にあなたも狂いましたか!ギュメイっ!ホーホホホ!
ホーホホホホっ!!」

「我は帝国三将、ギュメイ!ゲルニック!貴様を共に地獄へ
連れて行こう!覚悟せよ!……うおおおーーーっ!!」

最後にほんの少しだけ、ギュメイはジャミル達に笑顔を見せた。
それが、4人が見たギュメイの本当の最後の姿であった。長剣を
構え、ゲルニックが乗った機体へと自ら突っ込んで行くギュメイ……。

「……う、ううっ!皆、伏せろっ!!」

大爆発がフロア中を遅う。皆が気が付いた時には、その場には、
ゲルニックが乗っていた機械の残骸……。だが、肝心のゲルニック、
そして、ギュメイの姿はもう何所にも見当たらなかった……。

「ハア~、これでや~っと、3将軍戦は全員終わったって
コト……?あれ?スーパーデブ座布団……?」

「……モォ~ン……」

「モ、モンちゃん……、ジャミル……?」

モンの側へと駆け寄ろうとしたアイシャをジャミルが静かに
止めるのだった。

「暫く、一人にしておいてやろうや……」

「ええ……、そうね……」

モンが見つめていたのは、ギュメイが残していった彼の
愛用の長剣だった。これだけは消えずに残っており、
悲しみの中、モンは暫くそれをずっと見つめていたのだった……。

モンはあれから数分。ギュメイの残した形見の長剣をずっと
眺めていた。ジャミルも皆も心配するが、何時までも此処に
いる訳にはいかない。ジャミルはモンに声を掛けた。

「モン、大丈夫か?そろそろいいか……?」

「うん、分かってるモン、何時までもメソメソしていられないモン、
ジャミル達と一緒に最後まで頑張る、又、おじちゃんとさよならに
なっちゃったけど、おじちゃんはモン達の心の中に何時までも
いるモン……」

「よし、……モン、ありがとな……」

「モン~!」

ジャミルがモンの頭を撫でると、モンも嬉しそうにすり寄る。
見守っていたアルベルト達もモンが元気を出してくれて
取りあえず一安心であった。

「アルベルト、これ、おじちゃんの剣モン、アルベルトが
使った方がいいモン!」

「ぼ、僕がかい?でも……」

「オイラじゃ重くて駄目だし、アイシャも持てないと思うし、
ジャミルは専属のを持ってるし、と、なると、アルしか
いないよお!」

「そうよ、ギュメイさんの思い、引き継ぎましょ!」

「そう言うこった、いい体力作りになるって!」

からかい半分で笑っているジャミルにアルベルトは半目。でも、
この僕が今からこの剣の重みを引き受けなくては……、と、
ギュメイの形見の長剣を手にする……。だが、やはり
アルベルトには重すぎた……。

「使ってる内にどうにか慣れる……うわ!?」

「アルっ!?」

剣の重さでひっくり返るアルベルトを慌ててアイシャが
助け起こした。こりゃやっぱ、まずは根本的に体鍛える
コトから始めないとネっ!と、サンディ。

「それよりも……、此処はギュメイが死守してた場所だ、つー事は……」

「この先は……、いよいよ、なのかしら……」

「ひ、ひいい~……」

「けど、此処からも、扉の場所まで足場がないけど……、あ、
ああ、階段が……」

ジャミル達は目の前に聳える扉を見つめる。きっと、此処を
潜ったら今はこの宮殿を治めている主がいる筈……。流石の
ダウドももう、後ろに下がろうとはしなかった。扉がある場所へ
続く光の階段が現れ、足場を作ってくれた。階段を渡り扉を潜ると、
其所は……。

「此処……、最初に俺らが此処に来た時に……、見た光景だ……」

扉を潜った先は、以前に神の国で見た光景、既に内部が
破壊されており、倒れた玉座の有るボロボロの玉座の間の
姿だった……。

「ハア、アタシももう、アンタの中に隠れやしないケドさ、
何かあったらスーパーデブ座布団を遠慮無く盾にするから!
ザ・豚トンの盾!」

「……ウシャーー!?」

「もう~、サンディったら……」

緊迫している中でも、サンディとモンのやり取りはジャミル達を
苦笑させ、そして和ませてくれる。ラスボス戦前に余りふざけるのも
困り物だが、突如、ジャミ公が催した……、と、その場は一時大騒ぎに
なった。伝説の鎧を纏っていても本当に遠慮しない、容赦しないお方で
ある。

「全くもうっ、君はっ、ホントにっ!」

「……い、いいだろ、これが自然なんだよっ!さ、この扉の先だ、
多分な……、行くぞ!」

ジャミルの言葉に仲間達が息を飲む。そして、最後の戦いへの扉は
開かれた……。

「此処も……、あの時と同じだ……、確か……、女神の果実を
7つ捧げた場所……」

「ククク、ククク……、等々此処まで来たか、流石だな……、
ククク……」

「誰だっ!?……って、言わなくても分かってるさ……」

突如聞こえて来る不気味な笑い声。ジャミル達はその笑い声の
する方向に真っ直ぐ歩いて行く。躊躇いも無く。確かに、其所に
彼は居た。……人間、天使、全てに絶望し、自らも天使を捨て、
堕天使となりし青年……。

「いたっ、エルキモすだよっ……!」

「エルギオス……」

「……罪、存在そのものが……罪なのだ……」

「オメー、出会い頭にそれしか言えねえのかよ、誰だって過ちは
犯すんだよ、問題は……」

「ククク、ククク……」

エルギオスはジャミルの言葉を妨げ、気味の悪い笑いを続けた。
先程まで、下を向いて笑っていた彼だが、漸く正面を向き、
ジャミル達の居る方を見、淡々と喋り続ける。それはまるで、
独り言の様でもあったが……。

「人間だけではない、神の創りしこの世界はありとあらゆる罪に
塗れている……、全ての罪に裁きを下さんとするならば もはや
世界を滅ぼす他は無い……、翼無き天使よ、お前に問おう、我が
目的を阻む為……、此処まで来たのか?」

「たりめーだっ!オメーの暴走を止める為、俺達は苦労して此処まで
来たんだっ!絶対にアンタの好き勝手にはさせねえっ!!」

「皆は絶対負けないんだモン!」

「私達がお相手よ!」

「この世界は僕達が必ず守ってみせる!」

「……そ、そうだよお!お前の野望もこれまでだあっ!!」

「よし、これで最後っ!いっちゃえー!」

ジャミルは伝説の剣を強く握り締め、矛先をエルギオスに向ける。
アルベルトも……、ギュメイの残した形見の長剣を握る利き腕の
左手に力を込めた……。アイシャとダウドもファイティング
ポーズを取り、サンディも激励。そして、エルギオスの前でも
微動だにしないモンは平気で臭いおならをした。

「愚かな事だ……、だが天使の理に縛られている以上 お前は
我が敵にはなりえん、身の程を知るが良い!」

「甘く見んなよっ!」

「クク、……こ、これは……、グッ!?……貴様……」

ジャミルはエルギオスにダッシュで突っ込んで行くと、挨拶代わりに
肩目掛け、剣を思い切り振り下ろす。……ジャミルには絶対自分には
手が出せまい、そう思って最初は油断していたエルギオスだが、自分の
肩から流れる血を見て表情を変えた……。

「……小僧、どう言う事だ?何故……、天使であるお前が……、
この私と戦う事が出来る……?まさか……」

「そ、俺、天使を辞めたのさ、まだ、完全に人間になっちゃ
いないけどさ、とにかくお前と戦う為に俺は……、天使を捨てた……」

「成程、……そうか、そう言う事か……」

エルギオスは何故、ジャミルが自分に傷を付ける事が出来たのか、
漸く理解した様だった。

「……貴様……、天使の力を捨てて人間に成り果てたな!
……クックックック、落ちぶれた哀れな奴よ、愉快、実に
愉快だ……」

「何が何でもお前の野望を止めてみせるさ!絶対にな!」

「そうか……、愉快、ああ愉快だァァ!……ク、ククク……」

「……キ、キモっ、やっぱコイツ、正真正銘のエルキモすだよ……、
ジャミル……」

「……」

エルギオスはそう笑ってはいるが、全然楽しそうに見えない。
エルギオスの憎悪と、怒りは更に勢いを増すのであったが……。

「……ククク、ククク……、ああ愉快だ、愉快愉快……、
愉快だな……」

エルギオスは体を左右に震わせ、ジャミルに切られた肩から
血を垂らし、不適で不気味な笑いを浮かべたまま愉快愉快の
言葉を異様に繰り返す。時折、流れ出る血を指ですくって
血をペロリと舐める仕草をしたり、……本当にキモいので
とっとと仕置きをしておこうとジャミルは思うのだったが……。

「……何かアイツ、ラリも入ってキてるっぽい?もう、キモさも
何も通り越してネ?」

「分かんねえなあ、とにかく……、皆、行くぞ!今度こそこれで
終わりに……」

「実に愉快、人間への憎悪によって堕天使となった私の前に
立ちはだかる輩が自ら天使を捨て人間となった者だとはな、
……ならば私も天使の姿を捨て完全なる破壊の化身と化そうでは
ないか……、人に堕ちたる者よ、私の後を追って来るが良い!」

「……うわ!?」

終わりにする……、の、言葉をジャミルが言い終えない内、
エルギオスに異変が起き、強行行動に走ったのである……。
エルギオスは凄い勢いで、ジャミル達の側をダッシュで
飛んで奇声を上げながら通り抜けて行く……。

「ククク、はははははは!」

「モォーン!エルギオスが逃げちゃうモン!」

「……嫌、あれは単に俺らを挑発してんだよ、ふざけやがって!
いそいで後を追うぞ!」

ジャミルに続き、仲間達もエルギオスを追い、走り出す……。と、
同時に又、凄まじい揺れが突如、フロアと皆を襲うのだった……。

「ァー!?やだよおー!もー勘弁してええーー!!」

「ダウドっ、立ち止まるなっ!は、早く……、エルギオスを……っ!
……うわーーっ!?」

「……いやああーーっ!?」

「……床がっ、崩れるっ!?」

「……落ちます、落ちますううーーっ!!ヘタレ、落ちますううーーっ!!
ギャーー!!」

エルギオスの後を追い、先に進もうとした4人をフロアに起きた
地震が妨害する……。フロアの床は崩れ落ち、ジャミル達は下に
開いた巨大な暗いホール穴の中へと、下から吹き荒れる強い風と
共に吸い込まれ、落下して行った……。

「皆っ!あ、あれ!?……アタシらもかいーっ!?」

「……モォーンっ!掃除機さんに吸い込まれるってこんな感じ
なのモンーーっ!?」

「……何言ってンのっ!アンタわあーーっ!!」

続いて、サンディ、モンまでが……、全員、巨大なホールの中へと……。
吸い込まれ、着いた先は周囲に崩壊した柱の欠片が浮き、錯乱している
異様な亜空間の様な場所……。

「ワア、スッゲーネ、これも幸薄いキモす君、アイツの趣味?」

「……お前ら、大丈夫か?」

「うん、僕は平気だよ」

「私もよ!」

「……オイラ一人平気じゃないって言ったら殴られるから、一応
平気って事にしておく、とほほ……、ちょ、モンっ!一応平気だって
言ってるのにィ!頭囓らないでっ!!」

「ガジガジモォーンっ!!」

「さてと、……あれは……」

ジャミルは立ち上がり、正面を見上げる。薄暗い階段の向こう側に
何かが見えた。意を決し、仲間と共に階段を上がる。其所で目にした
物は……。

「バルボロスだ……」

「ひえっ!?……ね、眠ってる!?お、起きないで下さいーーっ!!」

「えと、閉じ込められてるの?違うわよね……」

「突いてみる?」

「ちょちょモンっ!」

「……サンディもモンも余計な事しないでえーっ!!」

恐い物知らずで球体を突こうとするサンディとモンを必死で止める
ダウド……。多分、余計な事しなくても嫌でも戦う事になるんだろう
なと、アルベルトは思う。丸い球体の中で眠る巨大なドラゴン……。
バルボロス。グレイナルを死に追いやった因縁の相手。あれから姿は
見えなかったが、どうやらこいつもエルギオスの配下となっている
様だった。


……さあ、目覚めよ、我が家臣バルボロスよ……!!


「……グギャァァァーーーっ!!」

「バ、バルボロスが!……皆、構えろ!来るぞっ!!」

球体の中でバルボロスが目を覚し、激しく暴れ出した。遂に
球体が割れ、バルボロスがその姿を現す。……これまでは
グレイナルがバルボロスを命懸けで止めてくれた。だが、その
グレイナルも今はもういない。今度はジャミル達が自らバルボロスと
向かい会い、戦う時が来た……。

「そうかい、コイツで俺らに思う存分致命ダメージを与えとく
作戦か、そう簡単にはいかねえってのっ!」

ジャミルは伝説の剣を構える。ダウドはまずフバーバでブレス対策を
サポート、アイシャもバイキルトを打撃担当のジャミルとアルベルトに
掛けてくれる。

「アル、同時に行こうぜ!」

「ああ!」

「ま、まだまだ回復用のMPは残ってるからね!」

「無茶しないでね……」

ジャミルとアルベルトは心配してくれているダウドとアイシャに
頷いて、呼吸を合わせると空中に浮かんでいるバルボロス目掛け、
飛び上がり、突っ込んで行く。無論、バルボロスも大人しく黙っては
いない。二人目掛け、ブレスを吐いて突撃して来た!

「大丈夫だ、ダウドが掛けてくれたフバーバがある、アル、何とか
このまま行けるか!?」

「耐えられるさ!」

「よしっ!」

二人のWハヤブサ切り、初っぱなからバルボロスに大ダメージを与える。
隙を逃さずバルボロスをどんどん押しまくるジャミルとアルベルト……。

「凄いモン、バルボロスが何だか困ってる様に見えるモン!」

「もしかしたら……、これ、本当に直ぐにバルボロスに勝っちゃう
んじゃ……?うわあ……」

「そうよっ、もうあの二人なら心配ないわよっ、ダウド、このまま
私達はサポート魔法が途切れない様に魔法で引き続き援護しましょ!」

「う、うん……」

「アハハ!マジ、このチョーシならエルキモすだって楽勝じゃん!」

見守っているアイシャ達は、ジャミル達の快進撃に心躍らせている。
きっと勝てる、必ず勝てると……。その場にいる誰しもがそう勝利を
願っていた。

……愚かだ、ククク、だからお前達は本当に愚かだと言うのだ……


「ゴギャァァーーっ!!」

「っしゃ!バルボロスの奴、倒れたぞっ!」

「ジャミル、もう少しだよっ!」

ジャミルの会心の一撃、等々バルボロスを追い詰める。これで、
グレイナルの敵を取れる、エルギオスをちゃんと倒したら、
グレイナルの爺さんに報告が出来る!ジャミルはこれまでの
長い戦いに思いをはせ、最後の一撃をバルボロスに向け、
振り下ろそうとする……。

「……あばよ、バルボロスっ!!」

「お前達、其所までだ……、これを見るがいい、哀れなバカ共の末路だ……」

「な、何っ!?」

「ジャミルっ、あれをっ!!」

バルボロスへ、漸く止めの一撃を刺せそうになったジャミルの
手が止まる……。アルベルトの声に振り向くと、其所には姿を
消したエルギオス、エルギオスの両手には頭を掴まれボロボロの
ダウド、傷だらけのアイシャ、モン、サンディの姿が……。

「……皆っ!エルギオスっ、テメエっ!!」

「うう~、ちょい、油断しすぎてたよ……、まさか、いなくなってた
エルキもすがいきなり現れて……、で、でも……、アタシ達のコトは
ダイジョウブ、だから……」

「下等生物、黙れ……」

「……いやああーーっ!?」

エルギオスは唯一意識が有るサンディの体を強く握り潰すと
乱暴に投げ捨てる。そして、錯乱しているジャミル達の方を向き、
又あの嫌らしい笑いを浮かべるのだった……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 94

zoku勇者 ドラクエⅨ編 94

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-24

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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