zoku勇者 ドラクエⅨ編 93

将軍、再び

……近づいて来ている、奴等は確実に……、だが、流石に此処までは
来れないのではないか……?

何故なら……、ククク、ギュメイ将軍、そなたには新たな命を
授けたのだ、帝国3将最強とうたわれたギュメイ将軍の力、是非、
お手並み拝見と行かせて貰おうか……、思う存分楽しませて貰おう……


「はああ~、一体今、何階まで来たんだろうねえ、オイラ達……」

「知らねえ……」

「10階の直前ぐらいだと思うけど……」

「そうっ!流石アル!ちゃんとチェックしてるなんて流石っ!
もー日本一っ!!」

「い、嫌、そんな事、別にどうでもいいよ……、どうしたの、一体……」

「……」

ダウドがヘタレて来ている時が分かるのがもう一つ。訳の分からない
事で異様にテンションが上がって来ている時である。表面上では
明るく振る舞っていても、ジャミルはヘタレと昔からの長馴染みの
付き合いの為、無理をしていると様子が直ぐに分かる……。

(ダウド、頼むな、頑張ってくれよ……、後もう少しなんだからさ……)

「ね、みんな、頑張ろうね!そうねえ、無事に戻ったら、
私もリッカの宿屋で厨房をお借りして美味しいお料理
作らさせて貰うからね!……って、何で3人共凍ってるのっ!」

「はああ~、相変わらずヤレヤレだわ、けど、戻ったら、もうアタシは……、
皆とは、多分……、何か、胸痛い、チクチクする……、ホントにホントに
もう、サヨナラってコト?……ヤダ、ヤダよ、そんなの……、もっともっと
皆といたいよ……」

「モン~?」

モンはサンディが悲しそうな顔をしているのを見て、首を傾げる。
サンディは誰にもまだ打ち明けていないが、彼女も段々と、自分の
体に異変と違和感を感じていた。時々、ジャミルや皆の姿がうっすら、
かすんで見え始めていたのだった……。それは、ジャミルも天使から、
完全に人間に近づいて来た証拠である……。

「サンディ、どうしたのモン?もしかしてお腹でも壊したモン?ウシャシャ!」

「な、何よッ!……こ、こっち、見ないでよッ!スーパー
デブ座布団のバカッ!デリカシーのネー乙女心のワカンネー
モーモンッ!」

「フンだ、モンはオトメゴコロなんかより、トコロテンの方が
いーんだモンッ!シャッ!」

「もうっ、またモンちゃんとサンディケンカしてるの!?駄目よ、
仲良くしなくちゃ!」

「……!?あ、あの……、アイシャ、アンタ、其所にいるよネ……?
ネ……?」

「えっ?私はいるけど、どうして……?」

「……は?あ、あ……、アハハ!ヤダ、アタシってば!ね、アイシャ、
ちゃんとジャミ公に言っといてね、早くエルキモすなんかとっとと
倒しちゃいなさいよッ、……てサ!」

「?う、うん、でも、ジャミルも私達も頑張ってるから、
心配しないで……、とにかく、ケンカは駄目だからねっ!
……もう~っ!いつまで凍ってるのっ!!イオラ掛けて
あげるわよっ!!」

アイシャはぷうっと膨れながら凍り漬けの男衆の処まで戻って行く……。
サンディはさっき、又一瞬、声だけが聞こえ、アイシャの姿がふと
見えなくなった。これまでいつも明るく毒舌、我侭、みんなとの旅の間、
やりたい放題通して来たやんちゃなサンディに初めて大きな悲しみの
感情が押し寄せていた……。

「……泣かないよ、アタシ……、皆に心配掛けたくないもん……、
絶対にこんなツラ、ナサケネーツラ見られたくないッ!特に
あの原始人にはっ!」

サンディはゴシゴシ目を擦り、彼女も又、揉めている皆さんの
処へと。そして、一行は再びエルギオスのいる階目指し、
薄気味悪い通路を歩き出す……。

「……」

「何?ジャミ公、アタシの顔に何か付いてる?」

「いや……、何か最近、ホントに俺の中に隠れなくなったなあって……、
別にいいんだけどよ……」

「フン!間抜けなアンタの顔、とことん最後まで観察してあげよーと
思ってサ、おほほほ!ほれ、見る?ジャミ公の寝顔観察集!」

「……フン、オメーもいい加減にその顔の黒い汚れ、落としたら
どうだ……?」

「失礼しちゃうっ!このサンディちゃんのメイクに向かってっ!
ジャミ公のバーカアーホッ!ドーテイッ!!」

「……ハア!?良く聞こえなかったな、聞こえなーい!?」

ジャミルの後ろを付いて歩くアルベルト達は、ジャミルと変な
ガングロ妖精のやり取りを呆然と見つめながら苦笑……。

「今度はケンカの相手がモンちゃんからジャミルに
移っちゃったわね……」

「プンプンモン!シャーー!!」

「呑気でいいよねえ~……」

「まあ、サンディはああでないと、ね……」

ジャミル達も何れはサンディの姿もアギロの姿も見えなくなり、
別れが来る事は承知している。だが、既にサンディには異変が
来ている事には気づいてやれなかった。彼女は皆に異変を
悟られない様、健気にいつも通りに一生懸命悪態を付き、
誤魔化していたのだから……。

「ま、また出たっ!モンスターっ!!ナイトキングだよお!!」

「出るんが当たり前だっつーのっ!よしっ、此処も一気に駆け抜け……」

「どいたどいたーーっ!土井○か子ーーッ!おりゃりゃりゃりゃーーっ!!」

ジャミル達は目が点に……なっている場合ではなかった。バトル中は
殆ど終わるまで待っているか、遊んでいるか、隠れているかだったが、
サンディは何とハンマーを持って突っ込んで来た。あ、危ないからっ!と、
アルベルトが注意するのだが……。

「いいのっ!たまにはアタシも戦うっ!ストレス発散するっツーのっ!」

「……じゃ、ねえんだよっ!サンディっ、どいてろっ!」

「危ないわっ!」

後ろからナイトキングがサンディに向かって魔法を放出。ジャミルは
慌ててサンディを抱え、ジャンプして避ける。サンディはジャミルを
ぽかぽか叩いて抗議……。ちなみにサンディを襲ったナイトキングは
逆にアイシャの魔法を食らって伸びていた。

「……な、何すんのヨッ!降ろしなさいよっ、バカバカばあ~か!!」

「いててて!んだよっ、何かオメー、今回おかしいぞっ!
どうしたんだよっ!!」

「だって、だって……、もーすぐ、みんな、と……、……っく、ふんだっ、
どうせアタシはお邪魔ですよーっ、フンっ、大人しくしてますっ!」

「……あたっ!?」

サンディは漸く無茶をするのを止め、ハンマーをほっぽり投げる。
投げたハンマー、ダウドの頭に直撃。どうにも様子がおかしくなった
サンディに、アルベルトもアイシャも、心配しながら様子を見ているが……。
モンも、やっぱり黒い芋虫、おかしいモンと……。

(少しでも、皆と一緒にいたいのよ、思い出……、作っておきたいよ、
後、僅かなんだから……、……アタシ、アンタ達と出会った時からサ、
まさかこんな気持ちになるなんて、思ってなかったの……、もう、二度と
会えなくなるなんて、サビしーよ……)

サンディはかつてのサンマロウでアイシャとマウリヤの一件で、彼女との
永遠の別れにアイシャがずっと泣いていたのを今になって思い出していた……。

「つーことでっ!アタシは最後までアンタ達を見守らせて
貰いマスからネ!手ェなんか抜いたら絶対ショーチしない
わよっ!何が何でも勝ちなさいよネっ!」

「へえ……、けど、手なんか抜いた事ねえってのっ!」

やれやれと思うジャミ公。サンディはドヤ顔。彼女が真面に表に
こんなに長く出ていると、かなりうるさい事が覗えた。いや、
普段からうるさいのは分かっているが……。とにかく、又調子に
乗って来たので取りあえず良かったかなと。

「ジャミル、そろそろ次のフロアだよ……」

「わーってる、もう何が来ても驚かねえよ、後には戻れねえからな……」

「戻れますよおーっ!ホッ!ホッ!ホッ!……凄い!記録更新!」

「ねーねー、あれ、ヘタレウォークって命名しよーよ!アイシャ、
いいダイエットになるんじゃネ?」

(わ、私もやってみようかしら……)

「……は~っ……、ダウド、こっちゃ来い、頭出せ……」

又、後ろ歩きをし出したダウドにゲンコツをお見舞いすると、
一行は次のフロアへの階段を上がるのだった。吹きだまりの
ある場所から、其所へ思い切って飛び込むと、その先のフロアに
威風堂々待っていた人物。やはり……。

「来たな……」

「おじちゃん……、モン……」

「やっぱり、アンタだったか……」

ヒョウの様な容姿。左手に手にした日本刀の様な長剣……。彼は
背後に有る、巨大な心臓の様なオブジェに腕組みをし、
寄り掛っていた。帝国での死闘の中、ジャミル達に一度は
敗れたギュメイ将軍である……。

「久しいな、ジャミル、随分と勇ましくなったな、だが、
格好だけ付けても何にもならん、肝心の腕の方は少しは
上がったのか……?」

……その台詞は逆だろうと思うジャミ公。何せ、一度はジャミル達に
破れた身なのだから。だが、ギュメイは相変わらずの落ち着きっぷり、
漢らしさであった……。

「……おじちゃん、おじちゃんもエルギオスに復活させて
貰ったのモン?」

「……そうだ、だが我が自ら望んだ事では無い、奴が再びこの私に
魂を与えた……、我が主君は今もガナサダイ皇帝陛下のみ、二君に
仕えるつもりは無い……」

「……だ、だったらっ!」

「……」

ギュメイは左手に手にした長剣に力を込める。……難しいけど、
もしかしたら、説得する価値はあるかも知れねえとジャミルは
口を開こうとするが、その役目を買って出たのはアルベルト。

「それならば、もう僕らと戦う必要もない筈です、でしたら、どうか
僕らに力を貸して欲しい、あなたのその偉大な武人としての力を……、
世界を救う力をどうか僕らに……」

「……ギュメイさん……、エルギオスを一緒に止めて欲しいの……、
このままじゃ……」

「おじちゃん……」

「アタシはムダだと思うケド~?」

アイシャもモンも真剣な表情でギュメイを見つめる。彼が味方に
付いてくれれば本当にどれだけ心強いか……、だが求めた答えは、
当然……。

「……断ろう、甘ったれた事を言うな、故に我が喜びは強敵との命を
掛けた戦いのみ、さあ、ジャミルよ、今一度、お前の力と我が権力と、
何れが上かもう一度競い合おうぞ!」

「やっぱ駄目かよ……」

ギュメイはジャミル達に長剣の矛先を向ける。一度死んでいる身、彼は
もはやこの世界の命運など、どうなろうとどうでも良かった。生前から
常に強敵と戦う事に命を掛けていたギュメイは、再びこの世に生を
受けた運命を、ジャミル達との戦いに心躍らせ、熱い血を滾らせていた。

「おじちゃんのバカっ!……頑固モン!」

「……頑固モンはアンタじゃネ?」

「シャーーっ!!」

「ほう、随分とチビ助も勇ましくなった物だ、我は嬉しいぞ!さあ、
ジャミル、掛って来るが良い!生まれ変わった我の力、思い知れっ!」

「……あんま思い知りたくもねえけどよ、アンタがケンカ売って
くるんなら、俺らも負けねえよ!絶対にさ!」

「ふ、良い面構えになったな、……だが、言葉だけでは困るぞっ!」

「ぐっ!?……ん、んなろっ!!は、早いっ!!」

ギュメイは明らかに以前よりも、攻撃力もスピードも増している……。
伝説の装備を纏い、普段から動きが機敏の筈のジャミルもその
圧倒的な力に押されっぱなしだった……。

「なんか、オイラ達、あんまり相手にされてないねえ、ふう、よかった、
このまどうか、無視してくださ……アルーーっ!!頭に棘針の付いた
スリッパ近づけないでぇーーっ!!」

「はあ、ダウド、アホモン~……」

「スーパーデブ座布団も言う様になったネっ!!」

「モンに言われたくないよおーーっ!!」

「ジャミル、大丈夫よ、サポートは任せてねっ!バイキル……、
あ、きゃああっ!?」

「……そんな物は無用!己の力だけで戦えっ!」

ギュメイはジャミルにバイキルトを掛けようとしたアイシャの
処へと突っ込み、切り上げて転倒させ魔法を妨害。アイシャは
起き上がれなくなってしまう……。

「ふにゅう~、ま、またやられちゃった……、邪魔してくるの、
忘れてた……、でも、酷い……」

「大丈夫かい!?……ジャミル、此処は任せて、引き続き将軍を!
油断しないで!」

「……ああ、アル、アイシャを頼むな!」

「ごめんなさい、ジャミル……」

アイシャはアルベルトに支えられ、ジャミルに謝る。ジャミルは
気にすんなとアイシャに笑って見せた。だが、その間にも、ギュメイは
今度は回復魔法が使えるダウドに的を絞ろうとしていた……。

「あ、あの、あのですね、その……、そ、そんな恐い顔しないで、
……うああーーっ!?」

「悪いが、お前達を全員始末せねばならぬ、前回の屈辱もある故……、いざ、
尋常に勝負……!」

「やばっ!ヘタレ、狙われてるよッ!……ジャミ公っ!?」

「モンーっ!?」

ギュメイがダウド目掛け魔神斬りを繰り出そうとした、その瞬間、
ジャミルがダッシュで駆け付け咄嗟に間に割って入り、ギュメイの
剣を止めようとする。

「ジャミルうーーっ!」

「……や、止めろっ、ギュメイ……」

「ほう、我の攻撃を正面から止めるか、成程、確かに言うだけの
事はあり、少しは成長したか……」

何とか食い止めているが、やはり、ギュメイとの圧倒的な力の差に
ジャミルは戸惑うばかりであった……。

「お、俺の方が……、押されてる、このまんまじゃ……、!!」

「……」

「……ジャミル……、う、嘘……、だよ……」

「その甘さ、変わらぬな……」

ダウドの見ている前で、突如、ジャミルの体が空中に舞い、
ジャミルはばったりと地面に倒れた。ダウドを庇った所為で、
ギュメイの魔神斬りを代わりに食らったのである……。以前の
戦いでも魔神斬りには散々な目に遭っている物の、破壊力は更に
勢いを増し、斬られて倒れる中、ジャミルは……、冗談じゃねえぞと……。

「……ギュメイ、よ、よくもっ!来いっ、オイラが相手だっ!
……ジャミル、ごめんよ、いつもいつも……、足手纏いのオイラの
所為で、ごめんよ……、本当に……」

「バカ、何言ってんだ、んなの……、慣れっこだって言ってんだよ、
俺とお前、元の世界にいた頃から何年の付き合いがあると思ってんだ……、
う、うう……、ゲ、ゲホ……、これじゃ動けねえ……」

「ほう……、流石だな、我の一撃を食らってまだHPが
残っているとは……」

「……黙れっ、ギュメイっ!お、お前が帝国唯一の常識人だって、
そんなの関係ない!ジャミルに手を出し、傷つけたお前は……
オイラが倒す……!!」

ジャミルを傷つけられたダウドは怒り、……ブチ切れ、ハルベルトの
矛先を負けずにギュメイへと突き付けた……。そして、縛っていた
後ろ髪を解き、オールバックヘアも解除する。それはダウドが逃げずに
戦う事、覚悟を決めた決意の証。ギュメイを睨付けるその目は、いつもの
ダウドの目では無い。大切な親友を傷つけられた悲しみ、怒りがその
瞳の中に溢れていた……。

「お前も大分良い面顔になって来たな、戦いを覚悟した侍の目か……」

「……うるさいって言ってるんだっ!!」

(このままジャミルを回復しようとすれば、又確実に妨害してくる
筈だ……、勝てるか分からないけど、此処は、オイラが、オイラが
何とかしないと……、食い止めなくちゃ!)

「あ~あ、ヘタレってば、ホントにジャミ公があそこまでならないと、
本気出さないんだから……、って、スーパーデブ座布団っ!?アンタも
何してんのよッ!コラッ!!」

「シャーー!サンディ、放すモンーーっ!モンも、モンもジャミルと
ダウドを助けに行くモンーーっ!!」

「ケドっ!もうアイツはアタシら全員敵と見てんのヨッ!?
アンタが回復しになんか行ったらそれこそやられちゃうでしょっ!
ダメぇぇーーっ!!」

「ダウドは……、イザヤールにモンがやられた時も、泣いて怒って
くれたんだモン、例えやられたってモンも行くんだモンーーっ!
だって、それが、それが……、モンが、モンが……、マポレーナに
なった意味だから……」

「アンタ、何言ってんのッ!アンタにまでもしもの事があったら
アタシが怒られるんだからッ!ダメーーっ!!」

サンディは今にも飛び出して行ってしまいそうなモンを、必死に
尻尾を引っ張り止めさせようとする、其所に……。

「サンディ、モン、遅くなって済まない、後は僕が行く!君達は
アイシャを頼む、今、ちょっとショックで気を失ってしまっている、
ジャミルとダウドは僕が……!」

「そっか、あんなの見ちゃったら……、だよネ、で、でも、
アルベルト……、アンタまでっ!ダメだよっ、だって、
ジャミ公まであんなになっちゃったんだよっ!?幾らなんでも、
アイツマジ強すぎだよ……」

サンディはアルベルト一人ではギュメイに勝てない事を分かって
いるので、モン、アルベルト、両者共必死に止めようとするが、
アルベルトは黙って首を振った。

「それでも、僕が行かなくては!仲間を見捨てる事なんて出来ない、
アイシャの事、どうか頼んだよ!」

「……アルベルトーーっ!も、もう、どいつもコイツも……、あ、
あれ……?ま、また……、アタシ……」

そして、サンディの身に再び襲い掛る異変……。走って行った
アルベルトの姿がサンディの視界から消えてしまったのだった……。

「待って、待ってよっ、神サマっ、まだアタシ、ジャミルや皆の戦い、
見届けてないよ!お願いだから……、もう少し皆といさせてーーッ!!
ふざけんなしーーっ!!」

「サンディ、ホントにどうしたのモン!?」

「スーパーデブ座布団……」

モンの言葉に我に返るサンディ。気が付くと、又皆の姿が見える様に
なっていたが、彼女は恐怖でその場に座り込むのだった……。

「もう、本当に時間がないんだ、アタシ、最後までホントに皆と一緒に
いられるのかな……」

サンディはしぶしぶ、アイシャの処までモンと一緒に戻り、彼女を
見守る役目を引き受けるが……。不安はどんどん増していく。ギュメイと
死闘を繰り広げているジャミル達の事、そして、自身に迫っている
タイムリミットの事……。

「どうだ?もう限界ではないのか……?」

「……そんな事ない、……ないーーっ!!」

ダウドはマヒャド斬りを連発され、早くも追い詰められていた。
だが、其所にアルベルトが駆け付け、ダウドの助けに入る。

「アルっ!!」

「遅くなってごめん!二人で一気に攻めよう!!」

「うん、こいつは確かMPがあんまり無い筈!な、何とか……」

「甘いな……」

「……グッ……、が、がはっ……」

「……アルーーっ!!」

ギュメイの長剣の一突きで……。ジャミルに続き、アルベルトが倒れた。
ダウドの叫びを聞き、まだかろうじて意識の有るジャミルは何とか
起き上がろうとするのだが、どうしても無理だった……。

「我のMPが無くなれば勝てると思ったのだろう?……技など
使わなくてもお前達などいつでも充分倒せる……」

魔神斬りには及ばないものの、ギュメイは通常攻撃だけでも
本人が言う通り、平気で恐ろしい威力である……。あっと
言う間に男衆3人は追い詰められ、ギュメイに真面に掛って
行けないまま、絶対絶命に陥っていた……。

「では、口封じだ、余計な魔法を使わぬ様、眠って貰う、小僧……!」

「あ、あっ……、やっぱりオイラじゃダメだ……、ごめんよ、ジャミル……、
役に……立てな……」

ギュメイの刃の前に、等々ダウドも倒れる……。動けないまま、
ジャミルも又大事なダチを傷つけられた事に対し、ギュメイへ
怒りが沸いて来た……。絶対に絶対に負けて溜まるかと……。

「も、もう……、ホントにダメだよ、あれじゃ……」

「モンは諦めないモン!皆、今行くモンーーっ!!」

「……ちょ、スーパーデブ座布団ーーっ!!」

サンディはモンを止める事が出来ず、等々モンはギュメイの元へと
飛び出して行ってしまう……。

「おじちゃん……、ギュメイ!止めるモンーーっ!!」

ギュメイの前に立ちはだかるモン。大好きな皆を傷つけられ、
モンも本当に怒っている……。

「小さき者よ、何の真似だ?引っ込んでいろ、……こやつらを
回復する事は我が許さん……、邪魔をするならお前もこうなるぞ……」

「モ、モン……」

モンは一度、帝国でギュメイに命を助けられている。だから本当は
悲しかった。こんな事になるなんて……。だが、ギュメイもモンを
助けているからと言って全く、態度も姿勢も変わらずだった。

「モン、バカ野郎……、な、何で来たんだよ……!ハア、ハア……」

「ジャミル!モンっ!」

「……お前は本当にどうかしているのではないか、大人しく倒れている
この二人を見習え……」

「うるさいっ!俺はしぶてえ時はしぶてえんだっ!ガッツと
バイタリティを舐めんなっ!」

「成程……」

漸くジャミルが胸を押さえ、フラフラと立ち上がる。だが、
纏っている鎧からは血が滴り、ギュメイが再び攻撃態勢に
移れば直ぐにやられてしまう状況である。どうしてもコイツに
負けたくない、その気持ちと根性がジャミルを気力だけで
奮い立たせた……。そして、どうにか無事でいられたのは
伝説の装備品の脅威の守備力のお陰でもある。

「小さき者よ、愚かな事はするな……」

「モンっ!?」

「……?」

「前にも言ったであろう、我はお前を気に要っている、お前を
我の部下にしたいと言う気持ちは変わらぬ、折角お主も武人として
更に成長したのだ、命を無駄にする様な行いは決してするな……」

「モン、お前……、ギュメイ、命を無駄にするなって……、
どう言う……」

ギュメイはモンがこれから何をしようとしているのか、理解
している様だった。モンは慌ててギュメイに反発する……。

「……うるさい、うるさいモン!モンのマポレーナとしての
力はその為に、大好きな皆を助ける為、幸せにする為の力だ
モン!……うううーーっ!!……だから、……の、なんか……、
恐くない……モン……」

「モ、モン……、お前、どうしたんだよ……」

ジャミルが心配する中、モンの体からオーラが出始める。いつもの
回復、戦いの歌とは違う何かをモンは行おうとしている。だが、即座に
ギュメイに妨害される……。

「……モギャーーっ!?」

「モンーーっ!!ギュメイっ!!……テメエーーっ!!」

ギュメイはモンのうなじの部分を手の平で叩くと同時にモンは
気絶し、地面に墜落。ジャミルはフラつく足で急いでモンに
駆け寄り必死でモンに呼び掛けた……。

「モンっ、モンっ、大丈夫かっ!返事しろっ!おいっ、モンっ!!」

「……ぷう~う……」

「あう……」

モンは返事の代わりに尻からおならをした。どうやら、命に別状は
無い様である。

「チョロチョロされ目障りだ、戦いの最中にうるさくて叶わん、
暫くの間、大人しく眠っている筈だ」

「そうかよ、取りあえずは無事で良かったけどよ、けど、よくも
モンにまで……、やってくれたな……」

「……誰であろうと、神聖な戦いの邪魔をする者は容赦せん……」

「……そうかよ……、この脳筋野郎……」

再びギュメイとジャミルが睨み合う。だが、ジャミルはこの時は
分からなかった。ギュメイが何故モンを本当に気絶させたのかを……。

「だが、お前、その体で大丈夫なのか?本当に真面に戦えるのか……?」

「……忘れてたーーっ!!い、いててててっ!!」

「……」

ギュメイは体の痛みを忘れて?いたらしきジャミ公を見て呆れたんだか
暫くの間黙って見ていた……。だが、どの道、この突貫小僧にもう勝てる
道はないだろうと、再び長剣を構えた。どんな状態になっていても全力で
小生意気なジャミルを潰す気だった。

「……これで終わりだ、覚悟っ!!」

「……まだ終わらねえよっ!!」

ジャミルも伝説の剣を構え、ギュメイへとはやぶさ切りで斬り掛かる。
僅かではあるが、ほんの少し、ギュメイへとダメージを与える事が
出来た。だが、ギュメイはまだまだ、全然平気な状態である。恐らく、
まだナイフで斬り付けられた程度の痛みしか感じていないのだろうか。

「貴様……」

「ヘッ、あっさり早く片付けちゃったらつまんねえだろ?」

「そうか……、強がりか、では再びの相当の痛み、覚悟して貰おう……」

「っ!」

ジャミルは歯を食いしばる。2度目の魔神斬りが今、繰り出されようと
している。だが、これがヒットしてしまえば、今度こそ確実にジャミルは
立ち上がる事が出来ない……。何とかしねえとと思ったのだが、考えている
暇は無し、ギュメイがジャミルに斬り掛かって来る。だが、少しの奇跡は
起きた。

「……外したか……」

「っしゃ!チャンスっ!……あ、あああっ!?」

だが、ジャミルの体は傷だらけ。決して思う様に真面に動けない状態。
ダウドが倒れてしまっている以上どうにもならない……。何せ、
ギュメイが鬼畜過ぎて力の盾を使う暇も無かった……。しかし、
ギュメイが魔神斬りを仕えるMPも残り1回となった。

「……では、此方は残させて貰おう、行くぞ!」

「ちょ、ちょいお待ちっ!うあああっ!!」

ギュメイはフェシングの構えで長剣をジャミルへと向ける。そして
容赦せず、体を再び長剣で突きまくった。ジャミルの体から又新たに
出血が始まる。よろけながらジャミルは、マジでコイツ、魔神斬りが
使えなくても、本当に余裕だ、……鬼だと思いながら再び意識が
朦朧として来た……。

(……ごめん、皆……、俺もう……、今度こそ駄目かも知れねえ……)

「ジャミ公ーーっ!諦めんじゃないわよーーッ!」

「……サ、サンディ……?それに……」

「ジャミル、遅くなってごめんね!」

ジャミルの目に、飛んで来るサンディ、気絶から回復したらしい
アイシャが走って来るのが見えた。だが、二人が来てくれても今の
自分は彼女達を守る事が出来ない、自分の事だけで手一杯だと……。
だが……。

「ええーいっ!頑固ヒョウっ!アンタはこれでも食らってろってのッ!」

「……これは?胡椒……?こざかしい……、くしゅっ……」

サンディがギュメイへとぶっかけた物。胡椒である……。ギュメイは
平静を保っていたもの、クシャミが止まらなくなって来ていた。
クールなギュメイはクシャミをする時も、流石何所までも落ち着いた
クシャミであった……。

「小賢しい真似を……!くっ、くしゅ……、しゅ……、……」

「ッシャ!アイシャ、今のウチだよっ!」

「ええっ!ジャミル、大丈夫!?ごめんね、ごめんね、こんなに
なっちゃうまで、私……、何も出来なくて……本当にごめんね……、
モンちゃんまでこんな事になってしまって……、酷い……」

「アイシャ、だから……、いいっての、へへ、来てくれてサンキュー……、
モンは気絶してるだけさ、大丈夫だよ……」

「うん……、私、今から世界樹の葉をダウドに飲ませてくるね、
ギュメイが動けない内に……、もう少しの辛抱だからね!」

「アイシャ……、けど……」

アイシャは頷いて世界樹の葉をジャミルに見せる。それは以前に
ドミール火山で入手した超貴重品。今まで絶対に使わないでネチネチ
取っておいた物。本当は、もう少し温存しておきたかったのが、この際
仕方が無かった。ギュメイが少しでも動けない内にそれを使って何とか
先に回復役のダウドを復活させる作戦だった……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 93

zoku勇者 ドラクエⅨ編 93

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-24

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work