切実な綺麗事
真に死に近い人間は
綺麗事が止まらない人間だ
過度な楽観主義を抱えた人間は
死の前兆にある
もうじき来たる死への惧れを紛らわすために
不毛な綺麗事を繰り返す
不毛だが、当人は至って切実なのだ
真に死に近い人間は
誰もかもを愛そうとする
誰もかもを嫌おうとするというのは誤りだ
誰もかもに優しさを振りまいて
逆に誰もかもに嫌われようとする
みずから進んで孤立しようとする
当人の中では二つの思いが拮抗している
俺のことなど放っておいてくれという思いと
誰か俺のことを止めてくれという思い
難儀なことにどちらも真実の思いなのだ
それゆえに誰も彼を救えない
黙って見ていることしかできないのだ
破滅に漸近してゆく彼の姿を
切実な綺麗事