蒲公英の綿毛

光芒(こうぼう)は見えるか 見えない
算段はあるか ない
かつての激情は()
生気の失せた抜殻(ぬけがら)だけがここにある
おれはもはや故郷(ルーツ)をもたぬ流浪者(るろうしゃ)
おれのような根無し草は風に吹かれ
ゆくあてもないまま漂うのがお似合いだ
生に貪欲だったあの頃が懐かしい
かつて生きることは祈ることであり
信じることだった、今のおれには
もはや祈ることも信じることもできない
どこに根をおろせというのか?このおれを
受け入れてくれる場所などありはしない
もとよりおれはさすらいたがる性分なんだ
故郷がおれを突き放したのではなく
おれが故郷を突き放したのだ
未練など微塵もありはしない
ましてや執着など
おれは蒲公英(たんぽぽ)の綿毛のように
どこまでもどこまでも飛ばされてゆく
風よ()むな、と念じながら

蒲公英の綿毛

蒲公英の綿毛

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-17

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