忖度

 いつも忖度ばかりしていて自分が書きたいものが書けない。素直に書いてみたいが、できない。自分に素直になることができていなかったし、他人に対してはなおのこと難しかった。ずっとそういう生き方だったから疲れてしまっていた。ずっと自己が分かれている感じはある。無謬で不動の自我が、大衆を世間を社会を裁断する文章を読まされて疲れてしまった。もう生きていけないのかもしれない。人生が迷走していっている。軸がなくなってきた。やっぱりそろそろ限界がきたな。ずっと我慢ばかりしてきたので、自己が統一されていないのだと思う。疲れてしまった。懲らしめてやろう、戒めてやろうと思っている人に忖度ばかりしてしまう。あんたのサンドバッグじゃないんだよ。いつまでそうやって自己の殻の中に閉じこもっているつもりなんだろうね。何でも言ってもいいと思っているのかな。かなり削られてしまった。酷薄な人になりたくない。

 やっぱり今の世の中はおかしいと思う。これだけ豊かな生活をしているのだから、その分精神や思考にも影響はあるはずなのなのに、そのあたりのことを言語化しようとすると怒り出す。それでいて、唯物論はけしからんとか言っている。文学の衰退を嘆いたり、東洋思想を見直そうとか言ったり。ひどいものだと思う。私はおかしいのかもしれないけれど、あなたたちも十分おかしいよ。

忖度

忖度

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-11

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