【第10話】無能と呼ばれ処刑された回復術士は蘇り、無敵の能力を手に入れました

ザルティア帝国の回復術士ルークは、帝国城内で無能と呼ばれ冷遇されていた。
他の回復術士と比べ、効率の悪い回復魔法、遅い回復効果は帝国城内の兵士らに腫物扱いされていたのだ。

そんな彼の生活にも突如終わりが訪れた―――。

横領という無実の罪を着せられ、死刑を言い渡されたのだ。
回復術士として劣等生だった彼はついに帝国城から排除される事となった。
あまりにも理不尽な回復術士ルークの末路―――。


だが、それが最期ではなかった。
秘められた能力を解放した回復術士ルーク・エルドレッドの冒険の始まりだ。

【 第10話  未知なる能力③】

「うわぁぁっ!」


ドボン!


冷たい衝撃が全身を貫いた。
水の中に落ちたらしい。


「ぶはっ!」


なんとか水面に顔を出したものの体が重い。
全身ずぶ濡れで視界も悪い。
どうやら下は地底湖になっていたらしく
そこに落ちたようだ。

俺は湖から這い上がり、辺りを見回した―――
その時だった。


ギャアアァアアァァ!


耳をつんざくような奇声が闇に響き渡る。


「な……!?」


反射的に振り向くと無数の光る瞳がこちらを見ていた。
手には棍棒のような武器を持つ小柄な人型生物たち。


「ゴブリン……!?」


しかも群れだ。

数十匹はいる。
ここはこいつらの住処だったのか。


俺は震える足で後ずさる。

アメリアはいない。

助けを呼ぶこともできない。


「くっ……!」


回復術士の俺に何ができる?
逃げようにも後ろは地底湖。
水中まで追われたら終わりだ。


(嫌だ・・・)


再び、死への恐怖が体を蝕んでいく。
せっかく、あの処刑から生き延びたのに――

その瞬間


「!?」


俺の右手が勝手に動いた。

岩壁に触れた途端、手のひらが淡く光り始める。
光に包まれた岩が歪み、まるで粘土のように形を変えていく。


「な……なんだ……?」


岩から一本の剣が生まれた。


「なんだこれ……こんな力……」


今までそんなもの使えたはずがない。
ただの回復術士だった俺に岩を加工する力なんて――


「グギャッ!」


先頭の一匹が飛びかかってきた!


「うおぉっ!」


思わず剣を振り下ろす。
訓練なんてしたことがないのに体が自然に動いた。


ズバッ!


肉を切り裂く生々しい感触。
ゴブリンの胴体が真っ二つに裂ける。


「……は?」


切ったのは俺?


「なんで……」


信じられない。
でも今は考えている暇はない!


「グギャアアッ!」


次々と襲いかかってくるゴブリンたち。
体が勝手に戦う。


「うおおっ!」


剣を振るうたびに鮮血が飛び散る。
岩の剣が次々とゴブリンを仕留めていく。


(俺の体が……どうして……)


知らないはずの剣の動きが体に染み付いている。


「はぁ……はぁ……」


俺は地底湖のほとりに立っていた。
足元にはゴブリンの死骸が散乱している。


「これは……俺がやったのか……?」


岩から生み出した剣を握りしめながら
呆然と立ち尽くす俺。

体の奥底から熱いものがまだまだ湧き上がっている―――。


【次回に続く】

【第10話】無能と呼ばれ処刑された回復術士は蘇り、無敵の能力を手に入れました

【第10話】無能と呼ばれ処刑された回復術士は蘇り、無敵の能力を手に入れました

回復術士の劣等生ルークは、ザルティア帝国に無実の罪を着せられ処刑されてしまった! だが、彼には隠されていた能力があった・・・。 彼自身も知らなかった無敵の能力・生命吸収。 蘇生した彼は、幼なじみであり騎士団員でもあるアメリアと帝国から脱出する。 そして、数々の仲間らとの出会い・・・ 無能扱いされ続けてきた彼の新たな冒険が幕を開ける。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-11

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