zoku勇者 ドラクエⅨ編 88
カナト……act5
そして、本編のジャミル側。やはり流石のど根性ジャミルでも
ドラゴン数体に一人では厳しいのは当たり前だった。それでも、
何とかカナトが閉じ込められている水晶を壊そうと水晶に
近づくのだが、ドラゴン達に妨害される……。
「ホホホーーっ!」
「……うわあーーっ!!」
「ジャミルーーっ!」
水流のブレスを食らい押し流され地上に衝突したジャミルに
モンが慌てて駆け寄る。まだ、辛うじて気力はある様だが、
ジャミルの方も何時まで体力が持つかだった。
「モン、モン~……」
「モン、大丈夫だっつーの、少し水飲まされちまったけどよ、
……ま、また来るぞっ!」
「モンっ!?」
……今度は違う方向から炎のブレスが飛んで来る。ジャミルは
咄嗟に起き上がると、モンを抱えて慌ててジャンプして避けるが、
別の方向からは雷のブレスが……。
「く、ううう……、この野郎……」
「モンーーっ!もう止めるモンーーっ!シャーー!!」
モンをブレスから庇いながら再び地面へと叩き付けられる
ジャミル……。何も出来ないモンはドラゴン達へ精一杯
威嚇する……。
「ホホホ、貴様、その小僧にずっとくっついている様だが、
情けないのう、これでは主人の邪魔ばかりする只の蛭では
ないか?」
「モ、モン……?」
モンはジャミルの方を見る……。先程、モンを庇った所為でジャミルは
余分なダメージを食らった事には間違いは無かった……。
「ククク、モンスターの風上にも置けぬ雑魚か……」
「ホホホ、ホホホホ!」
ドラゴン達はモンを罵り、罵声を浴びせ始める……。途端にモンの
脳裏にカデスでの悲惨な出来事が次々と頭を駆け巡るのだった……。
「何も出来んクズモンスターが!ホホホ、ホホホホーーっ!!」
「モン、モンの所為モン……、モンがジャミルに付いて
来ちゃったから……、モン、いつもジャミルの邪魔してるモン、
モン、本当に何も出来ない、ごめんなさい……、モン……?」
「バカ、んなの関係ねえんだよ、前にも言ったろ、お前はお前らしく、
モンらしくでいいんだってさ……」
「ジャミル……、モン~……、モン、ジャミルと……、皆にこれからも
ずっとくっついて来ていいモン?」
「あたりめーだって言ってんだろっ!」
ジャミルは倒れたまま、モンの頭をぐじゃぐじゃ撫でると同時に
気力を振り絞り再び立ち上がり、モンを又肩の上に乗せた。
「ジャミル……、モン、嬉しいモン……」
「行くぞ、ちゃんと掴まってろよ、俺、もうマジでブチ切れたわ……」
「モンっ!!」
ジャミルは銅の剣を構え、モンと共に再びドラゴンの群れへ……。
この糞ドラゴン達は野蛮原始人の恐ろしさを知らないのである。
大切な仲間を傷つけられたらどれだけ恐ろしい目に遭うのかを……。
「ホホホ!濁流で溺れて業火で焼かれてしまえーーっ!!」
「悪夢の雷の裁きを受けよ!!」
「うるせーんだよっ!黙れこのっ!」
ジャミ公、常識を越えたブチ切れ非常識チート行動に出る……。
銅の剣をバットの様に構え、空中へと高くジャンプし、まず
飛んで来た水流を銅の剣で打ち返し、ドラゴンにはね返して
思い切りぶつける……。ブレスを吐こうとした他のドラゴン達も
巻き添えを食らい、逆に水に押し潰され何処かへかっ飛んで行く……。
「……ジャミル、凄いモン、モンももう大人になる事、
逃げないモン、少しずつ、少しずつ……、モンのまま
大人の階段登るモン……、大好きな皆はいつもモンを
助けてくれたモン、モンも皆を助けるお手伝いがしたい、
皆を助ける力……、どうかもう一度下さいモン……」
「モン……?お前、まさか……」
カデスの時と同じ……、モンの身体が七色に光り出す……。
モンはモンのままでいい、モンらしく……、そう言って
くれたジャミルの言葉に、モンは少しずつ、大人になる事を
本当に受け入れた、その時……、拒んでいた力も解き放たれ、
モンの姿が再びマポレーナへと進化した!
「モォ~ンっ!マポレーナ・モンだモンっ!皆に幸せをお届けする
モンっ!ジャミル、回復するモンっ!」
モンは精霊の歌でジャミルを癒やす。傷付いたジャミルの身体が
見る見る癒やされて行く。
「おおっ、傷がっ!モンっ!偉いぞっ!良くやったなっ!」
「えへへモォ~ン!ジャミル、急いでカナトを助けるモン!」
「よっしゃ!」
糞ドラゴン達が戻って来ない内にとジャミル達は水晶に
閉じ込められているカナトの救出作業に取り掛かる。
まずは銅の剣で水晶を割ってみようとするが、びくともしない。
ジャミルはカナト本人へと呼び掛けて見るのだが……。
「アイツ自身が……、目を覚す気にもなってくれねえと……、
カナト、カナトっ!オイコラ、起きろーーっ!腹黒ドラゴンーー!!
アホーーっ!!」
……遂にカナトまでアホ呼ばわりされたし……。
「カナト、目を覚さないモン……?」
「畜生、俺は絶対にオメーを助けるっ!その為に此処に飲み込まれ
たんだあーーっ!!」
「……それっ!戦いの歌モォ~ンっ!!」
モンが戦いの歌でジャミルをサポート、攻撃力が上がったジャミル、
遂に水晶を破壊、ぶち壊す事に成功。中からカナトを救出。ジャミルは
落下しそうになるカナトを急いで受け止めた。
「思い切り力込めてお歌歌ったらおならも出たモン♡」
「……カナト、大丈夫か?おい、返事してくれよ……」
「モン、この姿になってるけど、モンはモンだモン、モォ~ン……」
「……ジャミル?それに……、モンかい……?」
「カナト……」
「カナトが目を覚したモォーンっ!」
ジャミルとモンの呼び掛けに漸くうっすらとカナトが目を覚す。
二人も大喜びであった。
「二人とも、どうして此処に……?」
「どうしてって、お前を助けに来たのに決まってるじゃんか、さ、
早く急いで此処から逃げるぞ!」
「そうか、僕、まだ生きてたんだね……、不思議だね……」
「……当たり前だろっ!さあ、早く……」
しかし、ジャミルを見上げるカナトの目は虚ろだった。ジャミルの方を
見てはいるのだが、心有らずと言った表情であった……。
「もう、いいよ、僕の事はいいから、もうほおっておいて……」
「……な、何……!?」
「モンっ!?」
「余計なお世話ばっかり焼いて……、うるさいのさ……、第一、
どうやって此処から出るの……」
「それは……、取りあえず何とか考えようや……、って、
うるさいって何だよっ!」
「うるさいからうるさいって言ったまでだよ……、お節介……」
やっとカナトの元へと辿り着き、後は彼を連れて脱出……の、
筈が……。カナトはジャミル達の事を突如拒否し始めるのだった……。
「……何言ってんだっつーの!最初に余計な世話焼いたのは
オメーの方だろうが!」
今度はジャミ公とカナト、ケンカになりそうだった……。どうして
こうも、ジャミ公はケンカの種の原因になってしまいそうになるのか、
流石に今回はモンも相手がダウドでは無いのでレフリーをする
状態ではなかった……。
「うるさいよっ!全部、全部、キミ達の所為だ、僕をこんなに
臆病にさせて、こんな余計な感情が溢れて来たのも、全て……、
キミ達が悪いんだ……、誰かと一緒に過ごす事がこんなに
楽しいなんて……」
「カナト……?」
「死にたくないなんて……、消えたくないなんて……、思う事も
なかったんだ……」
「カナト、どうしたんだよ、何でもいいから言ってみな、不満が
あるなら聞くぜ……」
「うるさいっ!不満だらけなんだよっ!僕はガーディアンとして神に
創られ、この世界で本世界の危機に立ち向かえる伝説の装備を託せる
主を待つ事だけ、それが己の使命……、それだけの為にずっと一人で
生きてきたんだ、この世界で……、寂しいなんて思った事、一度も
なかった、それなのに……、何なんだろう、この気持ちは……」
「カナト……」
「モォ~ン……」
これまでガーディアンとして強く、気丈に振る舞っていたカナトは
遂に自身の本音を露わにする事となった……。
「全部、全部……、キミ達の所為だよ、キミ達が僕と仲良くして
くれるから……、誰かと一緒に過ごせる事の大切さ、幸せの味を
覚えてしまった、僕の作った野菜を美味しいって食べて貰える事、
凄く嬉しかった……、他愛の無いお喋り、だから……、このまま、
ずっと、ずっと……、ジャミル達と一緒に居たいと思う様になって
しまった、ガーディアンとして使命を終える事、……全てが終わった
時に訪れる物、……死……、今は怖いんだよ、凄く……」
「……まあ、そう思うのが当たり前さ、誰だって死ぬのは怖いさ……、
だけどよ、最初から諦めてても駄目だぜ……、っしょと……、ほれ、
オメーも座れや」
「ジャミル……」
ジャミルはカナトを落ち着けようと、隣に座らせる。モンも一緒に
ちょこんと並んだ。しかし、このお方達は自分達はモンスターに
吸収されていると言う事を忘れているのかも知れなかった……。
「♪モォ~ン」
「ま、どう言っていいのか俺にも分かんねえけど……、ダメだなんて
思ったらダメだ、希望を持てよ、絶対生きるんだって……さ、そう
思わなくちゃな、大丈夫だ、カナトは絶対に消えねえ、俺が消させねえ、
保証する!」
「……」
カナトは急に熱く喋り出したアホのジャミルに呆れる……。一体その
根拠と自身は何所から来るんだと……。ずっと見ていて、行動、態度を
アルベルトにしょっちゅう注意されているのも段々頷けて来た……。
「ジャミル、有り難う、キミの気持ちは充分分かっているよ、僕を
励まそうとしてくれているんだろう?凄く嬉しいよ、でも……、
分かっているんだろ?僕を取り込んだ女魔法使い……、嫌、もう
モンスターって言っていいのかな……、僕と一心同体なんだ、
奴を倒せば僕も消滅する、キミに伝説の装備を渡せば、その時、
僕は……」
「……あーーっ!うっせーうっせー!お黙りっ!俺が何とか
なるって言ったら何とかなるんだっつーのっ!オメー、
ガーディアンの割には気が小せえなあ!もっと大きく
構えてろよ!……どっかのヘタレか、お前!……若作り爺さん!」
「……な、なっ!?何がヘタレだよっ!冗談じゃないよっ!
こうなったら僕は何が何でもキミに伝説の装備を渡す!
ガーディアンとしての使命を果たすっ!丁度良い、今此処で
キミとの勝負を再開しよう、ゴールドドラゴンに戻れなくても
いいっ!……しかも、最後の台詞は何……?」
「の、望む処だっ!」
「……モ、モォ~ン……、カナトも段々壊れて来たんだモン……、
お話を読んでくれてるみんな、最初の頃と今のカナト、
読み比べちゃいや~ん、ダメモン、でも……」
だから……、完全に此処がどこだか忘れてしまっているで
あろうお二人さんにモンは困り出すが、それでも、ジャミ公のペースに
釣られてムキになり、カナトが元気を取り戻して来ている事を感じ、
ケンカを止めようとはしなかった。だが……。
「……ジャミル、カナト、ドラゴン軍団が又来るモンっ!」
「何っ!?畜生、も、もう戻って来やがったのかっ!」
……当たり前だろうが……。
「……ん?ん、ん……?」
「ホホホホ!よくもやってくれたな……」
「ブチ殺してやろう、覚悟するが良い……」
「その小僧共々地獄へ行け……」
「ホホホ、ホホホホ……、絶対に生きては此処から帰さん……」
「くっ……、地獄へ行くのはテメエらの方だっつーのっ!」
ジャミル達は戻って来た怒り奮闘のドラゴン達に取り囲まれる……。
カナトには何度も何度も助けて貰った。だから……、ジャミルも
全力でカナトを守ると、改めてそう誓った……。
「カナト、さっきの続きだけどさ……」
「何……?」
「こいつらはお前とは違う、ハッタリの偽モンだ、お前の力なんか
盗んだって全然活かせてねえ、だから……、こいつらを倒しても
お前は消えない、……絶対に!だから、一緒に何が何でも此処を
出ような!」
「……ジャミル、そうだね……、有り難う……」
カナトは静かに目を瞑る。気弱な自分を励ましてくれ、そして
何所までも優しく強い彼の気持ちに本当に心から感謝した。例え
ジャミルが自分との勝負に勝てなくても……、伝説の装備を渡しても
いい、今なら渡せる……、そう思った……。何としてもジャミルを
此処から逃がさなければ、ジャミル達の世界を救って欲しい、
その為に……。
「創造神グランゼニスよ、我は見つけました、……伝説の装備を
手渡せる勇者を……、……ガーディアンカナト、今、此処に彼の
勇気・強さを認め、聖なる力を与えます……」
「……カナト、おま、何言って……」
「モォ~ンっ!?ジャミルっ!カナトの身体が光ってるモンっ!!」
「……カナトっ!おいっ、オメー何やったんだよっ、おいいっ!
……う、うっ!?……苦しい、熱い、胸がいてえ……、何なんだよ……、
カナ……ト……」
「ジャミル、ジャミル、しっかりしてモン……、どうしよう、
モンの回復の歌も効かないんだモン、これじゃあモン、折角
マポレーナになったのに……、またお役に立てないモン……」
「……モン、大丈夫だよ、ジャミルは直ぐに楽になるよ、決して
キミの歌が届かない訳じゃないんだ……」
「モン……、カナト……?」
「今、ジャミルには伝説の聖なる力を継承して貰っている、
だから……、暫くの間、苦しいかもしれないけれど、大丈……」
カナトの身体が光り出し、応対する様にジャミルの身体も
光り出す……。だが、ジャミルは胸に痛烈な苦しさを感じ、
倒れ込んでしまう……。同様に、カナトも……。ジャミルとモン、
そしてカナトはその場から消える……。
「まさか、あの竜小僧め、そう言う事か……!」
「……させんぞっ!!」
「……急いで我らの力を全集結させよ!邪魔はさせん!糞小僧に
伝説の装備を継承させてなる物かっ!!」
「……奴が完全に聖なる力と一体になる、その前に……、
ククク……」
……そして、元の場で、ジャミル達の無事を信じ、帰還を待つ
仲間達……。だが、此方も食い止めるだけで精一杯、反撃する
事は諦めていた、それでも……。
「ホホホ、ホーホホホ!」
「みんな、しっかりしてよ、もうすぐジャミ公……、きっと
戻ってくるって、だから……」
「サンディ、分かってる、だから僕らも……負けられないんだ……」
サンディはアルベルトの言葉に胸を詰まらせそうになる……。
余りにもそれは痛々しい姿であった。特に体力の無い
アルベルトは既にドラゴンキラーを杖代わりにしないと
それはもう立つのもやっとな程……。
「……ま、MP……、オイラの方、終わっちゃったよお……、ごめん……」
「ダウドが悪いんじゃないわよ、……仕方が無いの、元々
私達だけじゃ……、倒すのは無理なんだから……」
アイシャも既にMPは尽き掛け、もう絶体絶命である……。
「……あ、ああっ!ジャミ公っ!捻くれボーヤっ!それに……」
「!?」
サンディの言葉に、息も絶え絶えの皆が一瞬振り返る……。其所には、
カナト、マポレーナへと進化したモン、そして……。
「……はわわ~、な、何がどうなってるのっ!カナト、ちゃんと
説明してよお!」
「この方法でしか……、今の僕にはジャミルをアイツの中から
連れ出せる方法が無かったんだ……」
ダウドを始め、皆は身体がボロボロなのを忘れ、気絶している
ジャミルの側へ駆け寄る。ジャミル自身も、錆びてボロボロの酷い
奇妙な鎧と兜を何故か身に纏い、同じく右手には錆び付いた
古い剣を握り締めていた……。
「それに、モンちゃんも、その姿は……」
「モン~、皆にちゃんとお話したいけど、余り時間ないモンっ!
それ~~っ!!」
「あ、ああっ……!?」
「身体が……、癒やされて行く……?温かい光が……」
「凄いわ、モンちゃん!」
「うっそ、あのデブ座布団が……、マジ……?一体吸い込まれてる間に
何があったワケ?」
モンは精霊の歌で、まずは傷付いている仲間達の回復を……。
だが、これでモンのMPは今回のバトルで使える分は完全に
無くなってしまった……。
「モン、やっぱり使えるMPが少ないんだモン……、マポレーナに
なったのに、これで本当に皆のお役に立てるのモン……?」
「「マポレーナっ!?」」
アルベルト達が揃って驚きの声を上げると同時に、偽ゴールド
ドラゴンが再び皆へと攻撃の手を再開しそうだった。だが、
それを食い止めた者が……。
「……カナト君!?」
「……っ……」
「小僧め、我が力を吸い取ってやったと言うに、まだ余分な余力が
残っていたか……、お、おおおおっ!?」
「うるさい、お前は暫く凍っていろ、僕が皆と話をしている間……、
ジャミル、彼が教えてくれた、決して諦めない事、……だから……、
僕も消える前に最後の力が出せた……」
「お、おのれっ!小癪なっ!?」
偽ゴールドドラゴンはカナトのヒャダルコにより、一時的に身体が
凍り付いた……。だが、同時にカナトも倒れそうになるが、それを
アルベルトが慌てて支えた……。
「カナト、大丈夫かい?……君、身体が光っているじゃないか、
凄く苦しそうだし、一体どうして……」
「最後って……」
「カナト君、どう言う事なの……?」
「あ、余り時間が無い、皆には説明する必要があるから……、
ジャミルの事も……、急がないと……、アイツが又復活
してしまう……」
カナトは氷付けの偽ゴールドドラゴン、そして、気絶している
ジャミルの方とを交互に見る。そして……、皆に全てを話した……。
「……遂にジャミルが伝説の装備の力を継承したのね……、でも、
カナト君……、それじゃあ、あなたは……、そんな……」
アイシャの身体が悲しみでガクガク震え始めた。アイシャだけでなく、
話を聞いていたダウドも、アルベルトも……、ショックで声を出せず……。
「そんなのって、ないよお~……、早すぎるよ、アイツを倒せた
場合も……、酷いよ……」
「……カナト、君は……、自分の使命の為だけに数百年も、
一人で……」
「ま、仕方ないよネ、これも世界を救う為だもん、で、ジャミ公は
いつ目を覚すのよ……」
「……サンディっ!もういい加減にしてっ!!」
「何っ!アタシだってこれでもかなりショックなワケっ!じゃ、
ないと……、弱気なサンディちゃんは見せたくないのヨ……、
うううーーっ!!」
「……」
サンディは錯乱し、神殿内を徘徊し飛んで行き、何処かへ隠れてしまう。強気な
彼女の事、どうしても弱気な部分は見せたくない、見られたくないからだった……。
「有り難う、アイシャ、皆……、大丈夫、もうすぐジャミルは
目を覚すよ、彼が今纏っている錆び付いた鎧に輝きが戻る時……、
その時が伝説の力を完全に継承したジャミルが復活する時さ……、
そうすれば後は何も心配は要らない、キミ達の世界に帰れるよ……、
僕も……、いよいよ皆とさよならの時が近づいて来たみたいだ……」
「!こ、この鎧が……、そうだったんだ……」
「でも……、そうしたら、カナトは……、英雄の復活と同時に……、
本当に……、そ、そんなの……」
アルベルトもダウドも言葉を呟き、そして押し黙る……。友達といる
幸せ、……そして、死へ怖いと言う感情が芽生え、待ち受けている自分の
結末に一度は怯えたカナトだが、ジャミルの気持ちに感謝し、改めて
覚悟を決めたのである……。
「皆、有り難う、ジャミルの事を宜しく、出会えて嬉しかった、今まで
仲良くしてくれて本当に有り難う、……無事に帰ったらちゃんとキミ達の
世界を救うんだよ、負けたら許さないよ……」
「……う、うっ……」
「も、もうすぐ、もうすぐ……、だよ……」
「ジャミル!……カナト君っ!駄目、駄目よこんなの……、
消えちゃ駄目よ……」
アイシャの涙声が一掃酷くなった……。錆びた鎧を纏ったまま
苦しそうに声を出したジャミル、そして、カナト……。両者の
身体の輝きがより強くなり、光を増している……。
「……モォ~ン……、カナト、モンもやっぱり嫌モン!カナトが
消えたら悲しいモン!ジャミルも言ってたモン、カナトは絶対に
消えないって、カナトは大丈夫なんだモン!!生きたいって
気持ちを強く持ってモン!」
「……モン、本当に有り難う、でもね、これは避けられない事なんだよ、
ガーディアンとして生まれた定めなんだ、……ねえ、モン、お願いが
あるんだ、僕がいなくなった後、もし良かったら、キミも野菜を作って、
育ててくれると嬉しいな……、モンの野菜、きっと美味しく育つよ……」
「モォォ~ン、嫌、やっぱり……、モンは嫌モン……、ジャミルも
悲しむモン……」
「ホホホ、ならば……、お前達のその迷い、断ち切ってやろうでは
ないか……、舐めた真似をしおって、今此処で我がお前達を全滅させて
やれば何も案ずる事はなかろうが……、但し、小僧、貴様はもう一度
我が一部の力とし、取り込んでくれよう、貴様が消滅すれば我も消えて
しまうからな……」
「……し、しまっ……!もう魔法が……!!」
「モォーーンっ!!」
ヒャダルコの効果が途切れ、氷に閉じ込められていた偽ゴールド
ドラゴンが復活……。凄い勢いで氷の破片を怒りに任せ、皆に
飛ばして来るが、カナトが気力を振り絞り、もう一度魔法を詠唱、
メラミ連打で飛んで来る氷の破片を掻き消した……。
「あ、ああ……」
「……カナト君!しっかりしてっ!!」
「ま、まだ……、ジャミルが……、これじゃ僕もまだ消えられない……」
「何言ってんのよっ!バカっ!」
「サンディっ!!」
応援団長サンディ、やはりカナトや皆を心配している。毒舌ではあるが、
渇を入れる為、又皆の前に姿を現す……。
「アンタは絶対消えないのよ、何故ってそれはね、……コイツらと
係わっちゃった所為っ!お気の毒サマ、もう、アンタも常識を越えた
変人の呪いに犯されてるわッ!だからっ!覚悟するのっ!……信じなさい、
スーパーデブ座布団の言う通り、アンタは消えないって!」
「サンディ、キミまで……、僕を励ましてくれるの……、でも……」
「立派なアホのヒジョーシキ集団の仲間入りしてるって、もう手遅れっ♪」
サンディはカナトの頭の上に手を当て、笑顔で頭をポンポンする。
しかし、これは本当に励ましているのだろうか。
「それなら、もうサンディも僕らと同じ、その……、部類に
入ってるんじゃ無いの……?」
「……ア、アタシは違うのーーッ!!違うったら違うのーーッ!!」
「拒否しても駄目だよお~……」
「そうよ、サンディだって立派な変なチームの一員よっ!」
「……スーパーデブ座布団って何モンーーっ!?シャーー!!」
「……あ、あのう……、我を無視しないで貰えませんか……?」
先程のお通夜な緊迫感は何所へ……。ジャミ公が離脱していても、
又この場は大騒動に……。偽ゴールドドラゴンも呆れて動きが
止まってしまい、滝汗を掻く……。だが、そんな皆の姿を
見つめている内、カナトの心に又何か違う気持ちが溢れて来た……。
「お前達、茶番は此処まで……、ホホホホ!」
「……っ!ああーーっ!!」
「「カナトっ!!」」
「モォーーンっ!!」
「竜小僧、良く聞くが良い、我の中でお前達が戦った相手、今、
再び我と力が一つに、一体となった……、仕上げはお前だ、その力、
再び我の元へ戻れよ!」
カナトは宙へとふわり浮かび上げられ、再び偽物の方に吸収されようと
していた……。今度カナトが取り込まれてしまえば、一環の終わり……。
そうはさせないと、仲間達も立ち上がるが……。
「けど、オイラ達、もうMPが……」
「それでもやらなくちゃいけないんだよ!技や魔法に頼れなくても!
ジャミルが目を覚すまで!」
「カナト君、今助けるからね!」
「……アイシャ、……み、んな……、ごめん……」
「モンも戦うんだモン!」
「行けーっ!スーパーデブ座布団っ!!」
「……やかましいわ!お前達はこいつらと遊んでおるが良い……!」
「ま、まただっ!アイシャ、ダウド、気を付けて!」
偽ゴールドドラゴンは再び数体の殺人華を召喚。モンにHPは回復して
貰ったとは言え、皆は既にこのバトルでMPを失っている。それでも
己の力と武器の打撃力だけで戦わなければならない。何としても。
ジャミルが復活するまでは……。
「何度召喚したって負けないんだからっ!」
「……あの、アイシャ、あんまり無理しない方が……あわわわっ!!」
「……きゃあーーっ!!」
「……う、うううっ!!」
だが、初っぱなから殺人華達、容赦せずアルベルト達3人をツタで
拘束……。更に今回は身体拘束だけで無く、最悪な事に、首にも
ツタを巻かれ、ヘタをすれば首を絞められる勢いになってしまい、
徹底的に動きを封鎖しようとしていた……。
「わわわ、又状況やばくなって来てるし……、アッ!スーパー
デブ座布団っ!!」
「みんなーーっ!しっかりするモンーーっ!!……モギャーー!!」
「……モンちゃんっ!!」
「つまらない糞も捕獲してやったわ、ブンブン飛び回りおって、邪魔だ……」
皆を助けようとしたモンも殺人華に捕獲され動けなくなって
しまう……。捕らえられている中、モンは深く落ち込みだした……。
「モン、やっぱり……、モンはマポレーナになってもお役に
立てないんだモン、ごめんなさい……、MPが少ないから……、
モン、おならするだけだモン、これじゃ……」
「何言ってるのよっ、モンちゃんはっ!ちゃんと頑張ってるじゃ
ないのっ!悲しい事、言わないで、お願いよ……、これからも、
皆ずっとずっと一緒なんだからね……」
「……アイシャ……」
「そうだよ、モン……、モンはモンらしくさ、僕達、明るいモンが
皆大好きなんだから……」
「うん、モンの笑顔は皆を明るくしてくれんだから、けど、ホント、
パートナーそっくりで……人を困らせる処もそっくり、……あうう
ーーっ!!」
「余分なお喋りはこれまで……、殺してやろうかと思ったが貴様らも
我の一部に役に立って貰おうか、良かったの、お前達は我の中で力と
なり永遠に生き存えるのだからな、ホホ……、どうだ、嬉しいですと
言え!」
偽ゴールドドラゴンは3人の首の方を絞めているツタの方に更に
力を込める。3人とモンは呼吸が出来なくなりもがき苦しむ……。
「苦しい……、ジャミル……、助けて……」
「ジャミル?ああ、そうか、あのバカ小僧か、まずは伝説の
装備を纏っているあやつの始末からだな、すっかり忘れて
おったわ、ホホ……、奴が目を覚し覚醒する前に何としてでも
殺してしまわねば!」
「!!」
偽ゴールドドラゴンはアイシャがうっかり呟いた言葉に反応し、
拘束していたモンと3人を乱暴に地面に叩き付ける。どうにか
拘束からは解放されたが、もう皆はゴールドドラゴンの暴挙を
とても阻止出来る状態では無い。……カナトも……。
「駄目だ、ジャミルに手を出すな……」
「ホホ、そんな状態で何が出来る!ガーディアンであった貴様も
もはや糞化、其所で大人しく見ているが良い、我の勝利、新しき
世界とガーディアン誕生の瞬間をな……!」
「ンモーーっ!もー、残ってんのアタシしかいないじゃん!こうなったらっ!」
「……」
「い、イヤーー!!ごめんなさ……アアアーーッ!!」
……一体何をしようとしたのか、サンディは偽ゴールドドラゴンに
立ち向かって見ようとしたが、近くで顔見ただけで敗北。その場に
倒れて気絶した……。
「此処にもまだ糞がおったか、やれやれ……、真っ黒に焦げていて余り
美味く無さそうだが、こやつも頂くとするか……」
偽ゴールドドラゴンは失神し目を回しているサンディの身体を
爪でぐっと掴んだ。
「ううう、諦めないモン、モンーーっ!!モンは皆が……大好き
モンーーっ!!」また、一緒に冒険したり、美味しい物食べたり、
ちんぽこするんだモン、精霊の歌SPモンーーっ!!」
「……何!?」
怒りのモン、何と、モン自身のゲージ技発動!モンの精霊の歌
SP、気絶している仲間達を優しく包み込みMPも半分回復。
そして、モンの祈りは……。
「己……、先に貴様の方を始末して置くべきだったか……、
小賢しい……、邪魔ばかりしおって……、いいだろう、我が
下部共の餌食となれ!」
偽ゴールドドラゴン、遂にモンにも本気で牙を向き、殺人華達を
今度はモンに差し向ける。だが、次の瞬間、鋭い剣の閃光が走り、
殺人華達をボロボロに切り刻む……。
「おのれ、何事だっ!……き、貴様……」
「モン、お前の歌、俺にも届いたよ、ちゃんとな、ありがとな……、
目を覚させてくれて……」
「モ、モンっ!?……モン~……」
モンに声を掛けた人物。その人物の顔を見た途端、モンの顔が涙と
鼻水と喜び、……そしてカオスになり、ぐじゃぐじゃに……。
「遅くなってごめんな、モン!」
「モ、モォ~ン!……バカバカ!バカモォ~ンっ!!」
モンは短い手でジャミルの胸を何度もパコパコ叩きながらついでに
おなら放出……。手が痛くなるだろ!と、ジャミルは慌ててモンを
自分の肩の上に乗せた。
「ありがとな、皆を守ってくれて、オメー、マジでスゲエよ、
流石、俺の相棒!」
「モォ~ン……」
「貴様、その姿は……、そうか、伝説の装備の破壊は間に合わなかった、
そう言う事か……、だがまだまだだ、完全に力は復活しておらぬ、
見て分かるわ……」
「……」
遂に伝説の装備もジャミルの元へと正式に復活し、受け継がれた。
錆びていたとは思えない程の青い色の輝きを放ち、胸に鳥の紋章が
刻まれた鎧。被っている兜も同じく、鳥の紋章が刻まれている。
そして、硬く右手に握り締めた伝説の剣……。ジャミルは無言で
偽ゴールドドラゴンの方を見る。モンにもう一度回復はして貰ったが、
倒れたまま動かない仲間達、そして、捕らえられているカナト……。
もはやジャミルは皆を苦しめた偽糞ドラゴンに怒りしか沸いて
来なかった……。
「……俺の大事なダチをよくも……、絶対許さねえ……」
zoku勇者 ドラクエⅨ編 88