『貝がらの鞄。』

手放して良いものは鞄の中身。1

繰り返しの合図。

ずっとその場に居続ける時間。

誰かの車に乗ること。

箱庭のなかで踊ること。

強制された男性らしさ、女性らしさ。

他者のありがとうをすなおにうけとれないひとびと。

夢。

対向車の行先。

怯えた先生。

消費期限が過ぎた感情の古さ。

2.

錯覚を楽しまないであざわらうこと。


底つき体験と、ある浮遊。


本物を知ろうとしないのに、偽物を嫌えば本物になれると夢を見ているひと。


他者の人間関係を混乱させる楽しみしかない、かなしさ。


どこかへ行きたいけれど、どこにも行けないまち。


不確かな未来の、保証という名の鈍い鎖。


小川を気持ちよさそうに流れる八重桜の花びら。


手放せない微熱を開け放した扉の向こう、景色が手招く。

『貝がらの鞄。』

『貝がらの鞄。』

手のひらからとびたつ。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-08-06

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  1. 手放して良いものは鞄の中身。1
  2. 2.