創作SCP
SCP-8224-JP
オブジェクトクラス:Keter
特別収容プロトコル
SCP-8224-JPは物理的・精神的影響力の多層性から最も厳格な隔離施設に収容される。施設は██県██市郊外の専用地下収容区画に位置し、24時間監視カメラ(映像記録は不可)と複数の対認識災害センサーにより常時監視下に置く。職員はSCP-8224-JPとの接触前後に心理的健康診断を義務付けられ、精神疾患リスクが高い者の接触は禁止される。
対話は原則書面指示に限り、直接対面は禁止。例外は上級研究員の許可のもと限定的に可能とする。SCP-8224-JPが要求した「ココロのスキマ」に関する質問事項は必ず管理委員会が審査し、不適切と判断された内容での約定は厳禁とする。
脱走時にはプロトコルMOGURO-7に従い、多次元トラッキング技術および現実改変封じ込め装置を最大出力で稼働させ、速やかな再収容を最優先する。
説明
SCP-8224-JPは人間の男性に酷似するが、身体的特徴の一部に不可解な異常が確認される。特に大口を開けたかのように常時笑みを浮かべた表情、そして瞳孔が極端に縮小した瞳は対象の心理的圧迫感を増幅する。身長約170cm、常に黒いスーツ、蝶ネクタイ、帽子を着用し、その服装の縫い目や質感さえ通常の物理法則から逸脱した性質を見せる。
SCP-8224-JPの主な能力は「対象者の内面にある深層心理の空虚=“ココロのスキマ”」を正確に感知することである。対象者の秘密の欲望、未解決のトラウマ、抑圧された感情に具体的に言及し、それを満たす“サービス”を提供するが、その代償は非常に高く、時に対象者の存在そのものを蝕む。
「サービス」は物理的実体の具現化、或いは対象者の認知や現実の改変を伴い、通常の因果律を超越する異常現象として発現する。これにより対象者は一時的に満足感や救済を得るが、それはしばしば長期的な精霊的・社会的破滅の始まりとなる。
補遺
8224-JP-1:出生・発見経緯
出生記録はほぼ消失しているが、██県██市の旧戸籍からは19██年██月██日に「喪黒██」夫妻の子として記録されている。出生施設である産院は現在廃墟となっており、周辺では異常な現実改変指標(RFI)が測定され続けている。
生誕当時の助産師の証言(財団回顧録より抜粋)
「生まれた瞬間、普通の産声の代わりに『ワハハハ』という乾いた大人の笑いが聞こえ、子供としてはあり得ない言語能力で『ココロのスキマはございませんか?』と尋ねました。非常に不気味でしたが、一種の磁力のような吸引力がありました。」
幼少期には既に周囲の子供たちの心理的欲求を感知し、対象に物理的実体として「願望達成物」を瞬時に用意したことが確認されている。この異状に対し住民からは恐れと崇拝の入り混じった感情が生じたが、10歳を境に忽然と地域から消失。その際最後に見た者は「成人男性の姿で黒いスーツを着ていた」と証言している。
補遺
8224-JP-2:感動的事例記録
DクラスD-7719は複雑な家族関係と失職による深刻な精神的不調を抱えていた。SCP-8224-JPは彼の真摯な願い「家族に再会し謝罪したい」を識別し、一枚の黒い電話カードを手渡す。カードは一回限り有効で、相手の留守番電話に直接本人の声を録音可能とされた。
D-7719は電話をかけ、長年言えなかった謝罪と愛の言葉を録音。財団に届いたその後の家族からの手紙には、録音された声に深く心を動かされ、家族間での和解が始まった様子が記されていた。
この事例はSCP-8224-JPが単なる破滅の使者ではなく、対象者の真の心情に寄り添う面もあることを示す例外的ケースである。
補遺
8224-JP-3:最悪な結末の事例記録
DクラスD-8812は「職場での出世」と「安定した生活」を強く求めていた。SCP-8224-JPは専用の“願望手帳”を提供。使用条件は「私的目的以外での使用禁止」だったが、同僚を助けたいという情に流されて違反。
直後、D-8812の記録はすべて消失し、存在ごと財団データベースから抹消された。監視映像、入退室記録、関係者の記憶すらも異常な空白を生み、残されたのは燃やされた“願望手帳”の断片のみ。その焼却に関わった職員が原因不明の失踪を遂げるなど、SCP-8224-JPに関する異常性は極限に達している。
精神影響および認識災害メモ
SCP-8224-JPはその性質上、接触した財団職員にも精神的負荷と摂食障害、自責感、幻聴が発生しやすい。接触記録の管理は厳格に行われ、定期的に精神回復措置が推奨されている。
また、SCP-8224-JP周囲で発生する現実改変はしばしば認知の不整合を引き起こし、観測者の記憶に矛盾が現れることから、財団は専用の「認識補正班」による継続的対応を命じている。
Dr.████のコメント
>「もぐろふくぞうは、単なる怪異ではなく、人間の心の闇と欲望を映し出す鏡のような存在だ。彼は“救い”と“破滅”、両名の顔を持つ神話的存在であり、我々はその表裏一体の性質を常に警戒しつつ、真実の理解に努めている。」
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