石像
どんな場所でも堅苦しさを
実感する場面は存在する。
世間はそういうもの。
新転地には石像しかいない。
母へ 言われて行って来た
母が言うにはここには
優しく、助け合いが普通の
人たちが住む場所と言っていた。
私は昔から旅行が好きで
父とともに旅をしていた記憶が
ずっと頭に残っているよ。
でもここは異質だった。
母の言うように私と同じ旅行に
来た人たちがおおぜいいたよ。
でも本来いた優しい人たち?は
一人もいなかった。
どの人も下を向いてスマホを
見ていたり仲良く話して
いるように見えて作り笑いを
し合っていたり…
お母さんが言っていた人たちは
本当にいたの?
確かに景色は素晴らしいけど
みんなまるで石像のようで
人ではなかった。
中身のない会話と曲がった背中
みんな無表情でおかしかった。
しかも今日、交通事故に遭った。
本来すぐに救急車を
呼ぶと思うでしょ?
でも彼ら…スマホを向けてたの。
みんな可哀想としか言わずに
おかしいでしょ。
みんな石像みたいだったのに
急に事故を見つけて集まって
助けるでもなくカメラで撮る
でもおかしいのはその人たち
だけだと思ったの
わたしもいつの間にか撮ってた
たしかに自覚はなかったの。
しかも結構住み慣れて
もう楽しみが無くなってきたな
せっかく旅行で来たのに…って
気持ち悪いでしょ?2年でさ
ゾッとしたよ面白いからって
うるさいって思っていたの。
なんでお母さん手紙毎日送って
ノウハウやら仕送りまで、
上の階の人から苦情来るからさ
ていうかなんでみんな石像かが
分かった。より
昔はさ、可愛かった娘から
手紙の最後に小さく
みんな死んでる
こんな変な手紙に
なんて返せばいいか分からない。
免許取って喜んでたあの写真、
まだ取っておいてある。
この手紙に赤い石ころが
何個か入っていた。
父と一緒に少し嗅いでみた。
ちょっと焦げ臭かった。
彼女この手紙を
いつ送ってきたんだろう。
もう今となっては
彼女は動かない石像なのに。
石像
思ったでしょ
なんだこの話…薄って
柔らかく生きましょ。
そしたら死にませんから