miss u
私はどうしてこの子と居るのだろうと思いながら飛行機に乗っている。来てくれた彼女に罪はなくて、一人だったら行こうとすら思わなかったことを考えれば感謝しかないのだけれど、それでも空港を歩きながら男と初めて行った旅行のことを思いだして既に帰りたくなっていた。そこから時間もあまり経っていなかったから記憶も鮮明に残っていて、あの時一緒に通ったなだとかこんな話をしていただとか、その思い出がこんな気を紛らわせるためのくだらない外出に上から色を付けられている。自分自身の突飛な行動に首を絞められることへ苛立ちを感じつつ私からあの男との思い出を少しでも奪わないでと少しでも関係のないことを考えようとしていたら隣の席の人に肩を叩かれて、ハッと我に返り急いでイヤホンを外して「どうかしましたか?」と急なことに上手く声が出せずに絞り出すよう尋ねる。「泣いてらっしゃったから、大丈夫かしらと思って」そう言われて初めて泣いていたことに気付く。朝も早いしメイクは着いてからすればいいと思ってすっぴんで来たのは正解だったなと思うのと同時にこんな些細なことで感傷的になって涙を流してしまうような私の弱さに嫌気が差しながら「大丈夫です、少し寝不足で。余計なご心配おかけしてすみません。」と謝った。「そうだったの、それならよかったわ。」と笑みを浮かべるご婦人を見ながらきっと彼女は奥に座る旦那さんと思われる人と笑顔の絶えない幸福な旅路を過ごすんだろうし私にこんな歳の素敵な歳の取り方はできるのだろうか?と出来うる限りの笑みを浮かべ返した後再びイヤホンをはめる。このイヤホンも買った当初決して安くはない金を払って遮れる雑音なんてこの程度か、と思いながら使っていたけれど飛行機で付けた時に初めてその有り難みを感じている。あれもこれも私は男に広げてもらった文化の中で生きていて、それが嫌で無理やり人を連れ出したというのに、私の幸せがそういうところにあるんだと再確認させられただけだった。着いた先への興味も関心も既に失せていて予めざっくりと決めておいてよかった、着いてから考えるほど勢いに任せていたらきっと途中で投げ出して帰ってしまっていたかもしれないし。自分のために取ってしまった休みとその分働いていたら男との時間に充てることができた金への後悔で
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