zoku勇者 ドラクエⅨ編 80

試練を超えろ!3

そして、夜が明け、此方のメンバーも……。ヘタレ捜査隊、活動再開
していたが……。

「……こらーーっ!ヘタレーーっ!いい加減に隠れてねえで
出て来いっつーの!往生際が悪いんだよっ!!」

ジャミルはそう言いながらまた川縁に近づくと腹癒せに立ちションを
始めた。……呆れるアイシャと面白がるサンディ……。

「ダウド、本当に何所にいるのよ……、こんなに探し回ってるのに……」

「モン~……、昨日からずっと同じ草原さんと川ばっかりで、疲れちゃった
モン……、飽きちゃったモン……、つまんないんだモン、キャンディー屋
さんはないのモン?ドーナツ屋さん、ケーキ屋さん……」

と、モンはぼやくが、お前は空が飛べるし、疲れたら人の肩の上で
休憩して屁を放くヤツが何を言うかとジャミルは思った……。要するに
モンは腹がもう限界級に減って来ているんである。それは此処にいる
メンバー全員が同じだった。疲れも溜まって来ているしで。

「アイシャ、モン、諦めないで……、ダウドはきっと無事だ、もうすぐ
会えるよ……」

気落ちしているアイシャとモンを励ますアルベルトだったが、この得体の
知れない世界で……、只独り、どうしても姿を現さず会えないダウドの姿に
不安を感じ始めていた。

「ハア~、ヤダヤダっ!ね、アイツ、もしかして、別の場所にもう送られ
ちゃったんじゃネ!?」

「モンっ!?」

「ちょっとサンディっ!変な事言わないでよっ、私達、皆一生懸命ダウドを
探してるのよ!?」

「だってさあ~、こ~んな得体の知れない変な世界なんだよっ!最初の時
みたいにさあ、砂漠からいきなり川になったみたいにさ!アタシ達だって
また、他の場所に送られるカモよ!」

「それが分かんねえんだよな、あん時、カナトの処で襲って来た
モンスターは……、最初に砂漠で俺らを襲って来た巨人モンスター
集団だったぜ……?」

「ん~、モ~!知らねーッてのっ!……疲れたからアタシ休むっ!」

「はあ……」

サンディはふて腐れ、我侭モードになり、ジャミルの中へ消える。
許されんなら俺もどっか消えたいわとジャミル……。

「……あんこのお団子だモン!ガジガジ!……こっちはうんこの
お団子だモォ~ン……」

「モンちゃんっ!それは泥団子でしょっ!食べちゃダメよっ!お腹壊すで
しょっ!!……そっちは牛のフンよっ!」

「やれやれ……、カデスの時はあんなに我慢してくれてたのにな、ま、
無理もねえ……、皆と居ればついつい甘えて我侭も出るからな……、お?」

「……」

突如、ジャミルの前に覆い被さる何かの影……。ふと、正面を見ると、
それは……。

「ふしゅしゅ……」

「……フラワーロックだっ!」

「!!」

ジャミルの声に慌てて駆け付けるアルベルトとアイシャ……。確かに
其所にいたのは、アイシャの時と同じ、グラサンを掛け、鉢植えに
入った変な花……。

「ジャミル、これがそうなんだね!?」

「ああ、これで2体目だ、コイツが俺達のLVと力をみんな奪いやがって……」

「だ~よおおーー!」

「……」

その場にいた、全員の時が止まる……。誰のLVと力を奪ったフラワー
ロックかは、直ぐに理解出来たから……。しかし、困った事にその……、
力を奪われた張本人が行方不明……。

「最悪のタイミングじゃね?これ……」

「どうするの?捕まえておきましょうか……」

「無理だよ……」

「だよおだよお!だよおおおーーーー!!」

「……うるっせーなこの野郎!!」

「何だよおおーーー!!」

「ジャミル、落ち着いて!とにかく……」

アルベルトがジャミルを宥めるが、アルベルトも実際どうしていいか
分からず。困って冷汗を掻き、立ち尽くしていた。

「何っ!うるっさいのはアンタじゃんっ!って、何よコレっ!?」

「モン、これが変な花、フラワーロックなんだモン……」

「う、うっそーーっ!?マジっ!?」

ジャミ公のうるささに、サンディ、飛び出して来る。ヘタレダウドフラワー
ロックはだよおだよおと、奇声を上げながら踊っていた……。

「はあ~っ、ナルホドネ、けど、これってヘタレの能力奪ったんでしょ?
なら、余り心配する事ないんじゃネ?ふん、弱っちーよ、こんなのっ!
本人が今いなくたっていーじゃん!さっさとやっつけちゃいなさいよ!」

「サンディよう、だけどなあ……」

「……何だよお!よ、よくもオイラをバカにしたなーーっ!許さないよお!
オイラを馬鹿にすると……」

「と……?」

「……」

ジャミルを始め、全員がじ~っとフラワーロックの方を見つめる。
フラワーロックは滝汗を掻いて赤面する……。そして。

「何だよおおお!」

「逃げちゃったモン!」

フラワーロックは凄い勢いで逃走してしまったのであった……。

「ありゃ、やっぱ流石本人そっくりだなあ~……」

「ジャミル、そんな場合じゃないだろっ!」

「フラワーロックを追掛けましょ!」

「しゃ~ねえ、おいっ、待てっ!この野郎!」

取りあえず、逃走するフラワーロックを追掛けるトリオと、モンと
サンディ……。だが、逃げていたフラワーロックは途中で立ち止まると
ジャミル達を振り返る。

「~~~~!!」

「な、何だっ!?」

フラワーロックが葉っぱフリフリ踊り出す……。と、草原だらけで
あった筈の場所が……、一瞬にして薄暗い森へと変貌した……。

「何よ此処、今度は森っ!?」

「モォ~ンっ!!」

「何て事だ……、これじゃ、益々ダウドと……」

「ほ~ら言ったじゃんっ!何所送られるかワカンネーってサ!アタシ
知らないッ!」

サンディはまたジャミルの中へ……。ジャミル達が呆然としている間に、
フラワーロックは完全に逃走してしまった様である……。

「またややこしくなっちまったけど、とにかく立ち止まってちゃ駄目だ、
動こうや……」

「……モン?……モンっ!?」

「……あ、おいっ、モンっ!こら待てっ!」

何かの気配を感じたのか、モンが森の中を飛んで行ってしまう……。
こんな見知らぬ森の中でモンまで又迷子になられたらそれこそ
ややこしい事になる。トリオは急いでモンの後を追った……。
ジャミルはまた勝手な単独行動を取ったモンをデコピンする
つもりだった。だが、そんな気持ちはすぐ消える事に……。

「モンーっ!ジャミルっ、みんなーっ!」

「あれは……、ダウドっ!?」

トリオは慌ててモンの側へと駆け寄る。枯れ葉の上にはダウドらしき
人物が倒れていた。モンが気配を感じ、ダウドを見つけてくれたのだった。
確認するとオールバック頭、困った様な顔……。ダウド本人で間違いは無い。
外観にも傷や怪我は無い様であり、幸い、気を失っている状態のだけの様で
ある……。ジャミルはしゃがみ込むと、慌ててダウドの身体を揺すり、声を
掛けるのだが……。

「……ダウド、ダウド、おいっ!しっかりしろよ、大丈夫か!?」

「モォ~ン……」

「ダウド……」

「……」

「ヘタレ……、ね、ダイジョブ?」

ジャミルに寄り添い、静かにダウドを見守る、モン、アイシャ、アルベルト、
サンディ……。やがてダウドは意識を取り戻す……。

「……ジャミル?あれ?何で此処に……?」

「お、気が付いたか!」

「僕達もいるよ、もう何も心配要らないよ!」

「ダウド、良かったあー!あはっ!」

「モォ~ン♪ダウドー!」

「皆も……、モン……、うわ!?」

モンは余程嬉しかったのか、早速ダウドの頭の上に。又久しぶりになって
しまった太鼓を叩き始めた……。

「♪ぽ~こぽ~こちんぽこち~ん!」

「全くっ!ンとにどうしようもねーわねえ、デブ座布団も、ヘタレもさっ!
こ~んなにアタシらに心配掛けてサッ!ネ、アイシャ!」

「うふふ、そうね……、……?」

「……」

サンディの言葉に笑うアイシャ。しかし、直ぐに首を傾げる……。
やっと又無事に皆に会えたと言うに、等のダウド本人は下を
向いたまま項垂れており、ちっとも元気がないんである……。

「……何も心配要らないって何がさあ、オイラ、只でさえ普段から
戦闘力は高くなくて、回復しか出来ないのに、しかも今、LVは1
なんだよ……」

……また何かいじけてんなあと、思うジャミル。しかし、ダウドも
独りでいて、恐らく不安だった事が分かるので、ジャミルも今日は
出来るだけ穏便に、穏便にと接しようとするのだが。

「あのな、ダウド、その事でも話があるんだけどさ……」

「♪ちんぽこち~ん!ちちんち~ん!」

「……どうせオイラなんか、役に立たない精機さ……、それ以下だよお、
それしかないんだ……、だからどうしたのさ……」

「モ、モンっ!?ダウド、どうしたのモン……?モン……」

いつもなら困りつつもモンの下ネタ太鼓を我慢してやるダウドだが……、
今日はぼそっと愚痴を漏らす。モンはダウドの様子がおかしいのを
気にしつつ、太鼓を叩くのを止めるのだった……。モンはしょんぼり
しながらジャミルの処へ……。

「モン~……」

「モン、駄目だろ、オメーも空気読めっての!でな、ダウド、さっきの
話の続きだけどさ……」

「どうぞ……」

本当に、何だかほぼヤケクソ状態のダウド……。一体何があったのか、
ジャミルはダウドの話も聞いてやらねえとと思うのだが……。先に、変な
フラワーロックの事を説明しておく方が先だと思った。ジャミルから一通り
説明を受けたダウドは……。

「そ、オイラ達のLVを奪ったのも、その変な花が原因なんだ、で、
LVと力を取り戻すには、自分自身の相手と向かい合えと……」

「ああ、大変かもしんねーけど、アイシャだってちゃんと一人で
戦ってLVを取り戻したんだ、だから大丈夫だよ、きっとお前も……」

「……悪いけど、オイラ嫌だよ、どうでもいいや……」

「!!」

「……ダウド……」

やはり、逆ギレ、拒否するのはジャミルは分かっていた。だが、
何となく……、切れ方がいつもと違っておかしい様な気がした。
もうやる気がない、根本から魂が抜けている様な……。

「おいおい、しっかりしてくれよ、これも乗り越えなきゃいけねえ
事なんだよ、お前、このままだと自分のLVも力も、技、魔法も……、
乗っ取られたまんまなんだぞ!」

「だからどうでもいいんだよ、例えまぐれで力を取り戻した処で
どうなる訳でもないよ、どうせ……」

其所まで言い、ダウドは言葉を止める。脳裏に彼女の顔が浮かんで来る……。


「……殿方様……」


このままではいけないのは自分でも分かっていた。連れて行かれて
しまった志乃を探して助けたい、その気持ちは変わらない。しかし、
今の自分ではどうにも出来ない。自分一人で戦って試練とやらなのかを
越え、LVも力も取り戻す勇気も無かった……。
そして、今日は穏便に接しようと思っていたジャミ公、煮え切らない
ヘタレの態度にやっぱり切れた……。

「もういいよ、長年の付き合いだけどな、オメーがこれ程まで本当に
頑固だとは思わなかったよ、……いつもの事だけどな!」

「どう思ってくれてもいいよお~……、オイラ本当に今回はもう
嫌なんだよ、頼むからもうほおっておいて、大体、オイラは最初に
試練を受けるの反対してたんだから……」

「ジャミル、ダウド……、またケンカする!止めなさいったらっ!」

「モォ~ン、モォ~ン……」

……どうしようもなくなる雰囲気。アルベルトは硬く目を瞑り、
只黙っている……。其所へ、サンディも飛び出し、話は更に
ややこしくなる……。

「……何ッ!アンタま~たいじけてるワケ!?いい加減にしなさいよッ!
それでも男ッ!?マジでアレが付いてんのッ!?」

「うるさいなあ~、だから……」

「何よ……、アンタ、帝国でアタシ達のコト、助けてくれたじゃん……、
あん時のアンタ、無茶苦茶でツッコミ処満載だったけど、スゲーカッコ
良かったのに……、それなのに……、何サ……」

「だから……、あんなの紛れだよお、オイラは……」


???:オイラは……、ヘタレだよお~……


「……フラワーロックよっ!」

アイシャの叫びにダウド以外……、の、メンバーが身構える……。
ダウドは初めて目の前で自分のLVと力を奪ったと言う相手と
対面する事に……。自分の口癖を間抜けに呟く変な敵……。
こんなのに、こんなのに……、と、思うと、まるで生き恥を
晒されている様な感覚に陥り、益々嫌になった……。

「怖いよお~!おしっこ漏れちゃうよお~!きゃー助けてえ~、
ジャミルうう~!」

「……違う、オイラは、オイラは……、……そんなんじゃないーーっ!!」

ダウドは怒り、ひのきの棒を持ちフラワーロックに突っ掛かって行く。
しかし、フラワーロックは軽々とダウドの攻撃を避ける……。攻撃を
避けられたダウドは地面に転がり、顔ごと突っ伏した……。

「……ダウドっ!大丈夫かっ!?」

「駄目だよ、やっぱり……、オイラもうこれ以上は戦えない……」

「ッ!……しゃ~ねえ、ダウド、此処で休んでろ、アイツは俺らがやる……」

「……ジャミル……」

「ええ、私も魔法を取り戻したし、大丈夫よ!」

「うん、僕の今の力でどれだけ出来るか分からないけれど……」

「……ガ、ガ~ンバッ!」

「モンも頑張るモン!」

「……何で、どうして、いつも皆は……」

倒れたまま、ダウドは只管呻いていた……。本当に自分はこのままで
いいのか……。……そして、心の中の片隅に眠る自分の勇気がそっと囁く。
……戦わなければ、と……。

「そうだよ、オイラ最悪のヘタレだもん、……結局はさあ、ジャミルが
いないとさあ~、な~んにも出来ないんだよお、昔から……、ケケ、ケケッ
ケケ……、ケケケーーーッ!!」

「ああっ、コイツっ!又っ!!」

「変形モードよ!皆、気をつけてっ!!」

「ウケケケケーーーッ!!そう、オイラは、……ヘタ、レ……」

「うるせーこの野郎っ!……くっ、ダウド……」

「ダウド、ダウド、しっかりしてモン……」

「……」

ジャミルは悔しげに、モンに呼び掛けられ、地面に倒れたままのダウド
本人の方を見る……。フラワーロックはアイシャの時と同じ様に本来の
姿である殺人華へと姿を豹変する……。先程の姿とは大きさも容姿も
打って変わり、体中からツタを滴らせる不気味なその姿に、初めてこの
モーションを見るアルベルトとサンディも唖然……。

「……ヤダア、キショイって!……てか、ま~た周りが森じゃ
無くなってるし!これって炎地帯?うっかりしたらヤケドしちゃう
じゃん、ホンっと、落ち着かないんだから……」

「私の時と同じよ、大丈夫、取りあえず何とか殺人華を倒せれば周囲も
元に戻る筈だわ……、でも……」

アイシャは硬く目を瞑る。本来ならばこれはダウド自身が
乗り越えるべき試練。しかし、本人が戦う気力を失っている今、
どうにも出来なかった……。

「此処は僕らで力を併せよう、ダウドのLVと力を取り戻さなくては……」

「ああ……」

ジャミル達は頷き合う。そうしている間にも、倒れているダウドの
心の中に響いているもう一人の自分の声がどんどん大きくなる……。


……ねえ、オイラ……、本当にこれでいいの……?このままでさあ……


「いいんだ、これで……、みんなに……、任せるよお……」

「ケケケケーーーッ!!」

「……キャっ!?アッ、アアーーっ!?」

「ジャミ公っ!アイシャがっ!!」

「クケケケーーッ!!」

「……んっ!んんーーっ!!」

殺人華はこの中では一番最初にLVと力を取り戻し、魔法も真面に
使えるアイシャを狙い、拘束したのである。アイシャは魔法を
唱えられない様、ツタで口を塞がれ、身体も徹底的に雁字搦めに
縛り付けられ動けない様拘束され、ジャミルの時と同様、上へと
吊し上げられる……。

「……アイシャっ!今助けるからなっ!直ぐに行く、待ってろよっ!!」

「モンーーっ!!」

「行こう、皆っ!!」

アイシャの危機に、ジャミル、アルベルト、モン、サンディまでもが
飛び出す。だが、相変わらず倒れたままのダウドは……。

「だから、何で……、皆そんなにやる気があるの……、何でさ、
勝てないってさあ、分かってるのにさあ、アホだよ、……勝てない……?」

「寄るなよおーーっ!怖いよおーーっ!」

「……キャーモンっ!」

「デブ座布団っ!う~っ!このっ!イヤラシースケベ変態バナッ!
あっ!?……いやああーーっ!?」

「モンっ!サンディっ!よくもっ!……こうなったらっ!ジャミル、
同時に行くよ!」

「ああ!やってやるさ!ふざけやがって!!」

アイシャを助けようと、モンとサンディは必死で殺人華に掛って
行くが、やはりツタであっさりぶっ飛ばされ、地面に叩き付けられる……。
怒りのジャミルとアルベルト……。武器はひのきの棒のまま、そのまま
立ち向かおうとするが、やはり……。

「「うわああーーーーっ!!」」

「ほら、駄目じゃん……」

やはりひのきの棒では無理であり、ジャミルとアルベルトもモン達と
同じく、地面に叩き付けられる。……そして、動けなくなった皆を前に、
殺人華は更なる行動に……。

「ケケ、ケケケ、何だ、オイラだってやれば出来るんじゃん、
……ケケ、ケケ……」

「……ん~……、ん、ん~……、ん……、……んっ!」

殺人華は動けないアイシャから……、精のエナジーを吸い取っている……。
ダウドの能力を吸収した殺人華は遂に変態行動に出……、自分を元気に
しようとしていた……。

「あ、……ァアアーーッ!オイラ何か感じちゃうよお~っ!ア、
イクーーッ!」

「違う、オイラはそんな変態じゃない……、ふざけるなあーーーっ!!」

「え?ええ?え……?」

倒れていたヘタレ……、怒りに任せ、遂に立ち上がる……。速攻で
殺人華まで猛ダッシュ。殺人華本体の周りをグルグル回り始める……。
何が起きているのか分からず、殺人華はオロオロし始めるが、
取りあえず走り回るダウドを捕まえようとツタを伸ばす。結果……。

「ど、どうだっ!?」

「あれええ~?何だよお!オイラ、ツタが体中に絡まっちゃって
これじゃ動けないじゃないかあーーっ!間抜けだなあ!」

そう、ダウドは逃げ足が速いのを利用し、殺人華の周囲をぐるぐる
回っている間に、ツタを伸ばしてくる殺人華を逆に自分のツタで
グルグルに絡ませ……、自らを拘束させて動けなくしてしまった
んである……。ちなみに、グルグル回るダウドを見ている内、目を
回して酔った挙句、拘束しているアイシャを解放、下に落として
しまう……。

「……そう、オイラは間抜け、ヘタレだよ……、でも……、絶対に
お前とは違うんだあーーっ!!一緒にするなあーーっ!!」

「……あ、あああ、ぎゃああーーーっ!!うそだよおおーーーっ!?」

……そして、ヘタレ怒りの会心の一撃!……殺人華の身体は
真っ二つに……。殺人華はがっくりし、しおれ、項垂れ……、
そして消滅した……。

「ハア、ハア、……出来た、ひのきの棒なのに……、でも……あっ!」

「……」

ダウドは急いで倒れているアイシャに駆け寄る。そして、身体の中から
何かを感じた。また、自分の中に溢れて来た新しい力に……。

「これは……、ベホマ……?」

「ん、ん……、ダウド……?」

「……!アイシャ……、あ、ああ、良かっ、良かった……」

「ダウドも……、力を取り戻せたのね……」

「うん、そうみたい……」

ダウドは目頭を擦る。そして、鼻水も垂らした。自分の手の中には
ひのきの棒でなく、ハルベルトが戻り……。ダウドは次に、デコピンを
されるのを覚悟、倒れているジャミル達の救済に向かう……。ジャミル達は
意識を取り戻した。……して、目の前で土下座してしゃがみ込んでいる
ダウドの姿を見る……。

「そうか、オメーも自分の手でLVと力を取り戻したか……」

「はい……」

「ホント、アンタっていつまで立ってもマジで呆れたバカっ!
大馬鹿よっ!」

「……ウシャ、ぷんぷんシャーモン!」

「はあ……」

「う、ううう~……」

皆にどうにか謝っているものの、ダウドは福助の様に地面に手を
付いて正座したまま顔を上げられず。もう、このままこの体勢で
後ろに下がってしまいたい程……。
アルベルトは呆れ、サンディも悪態を付き、今日はモンまでもが
お怒りの様で……。けれど、アイシャだけは微笑んで……。

「でも、ダウドは私と皆をやっぱり助けてくれたもん!信じてたよ、
有り難うっ!」

「うう、アイシャ……、うう、オイラ、オイラ……」

「だな……、だからやれば出来るって何回も言ってんのによ、
……これからもオメーのそのいじけ癖は治らねえの分かってる
から……、ったく……」

「……ほっといてよお、……」

「全く、毎回毎回……、しょうがないなあ……、僕らがどれだけいつも
心配してると……」

「……ごめん、皆、本当に……」

「ありがとよ……、ダウド……」

「ジャミル……、えへ、えへへ……」

ジャミルは笑ってダウドの頭に軽く手を置く。直後……。顔が
嫌らしくなった……。

「……けどな、やっぱやる事はやらせて貰う、今日は全員で総攻撃だ、
行くぞ……」

「え?えええ?ちょ、ちょっと待っ……、えええ?」

ダウドのデコに迫る……、何故か光るメンバー全員の指……。ダウドに
新たな又危機が迫る。……空気を弾く音が……。ぴんぴん、ぴんぴん……。

「「せー……、のっ!!」

「……あぎゃあああーーーーッ!!」

ぴんぴんデコピン×ミナデインピン特大SP……

……2体目の殺人華が消滅した後、辺りの風景はすっかり元の
殺風景な森へと戻る。

「ハア、ホントーに元に戻ったね、すっご~……」

「森さん、広くて凄いんだモン……」

「けど、得体の知れない場所にいるのは変わりねえからな、よし、
これでメンバーも全員揃った、後は俺とアルのそれぞれの相手を
倒すだけだ、この森にも用はねえだろ、さっさと抜けちまおう……」

「……ま、待って、ジャミル、お願い……」

「な、何だ、ダウド、まだ何かあるんか?」

「皆にも……、迷惑掛けちゃうかも知れないけど、オイラの話を聞いて……」

ダウドは縋り付く様にジャミルへと必死で頭を下げ、頼み込んでいる。
さっきまでいじけてふて腐れストを起こして倒れていた時とは又様子が
違う。ジャミルはちらっと仲間達の顔を伺うと、アルベルトもアイシャも
頷いている。

「話、聞いてあげたら?ジャミ公……」

「モンー!」

「ああ、ダウド、言ってみろ?何かあったのか……?」

「……ううう、うわあーーん!ジャミルううう~!」

「……うわ!」

やられると思ったが、堪えるジャミ公……。ダウドは鼻水を
べちょべちょに垂らし、ジャミルに飛びついて来た……。この森で
自分を助けてくれた幽霊の志乃の事を皆に話す。何故か普通に姿が
見える幽霊さんなのだと。生前から不幸な境遇で有った彼女は命を
落とした後も、志乃同じく、死んだ後、志乃を追掛け回していた幽霊
クソ男の怨念に取り付かれていると……。して、今回のヘタレのいじけの
主な原因も判明。志乃を助けられず、あっさり気絶してしまった事が原因で
あった。

「……そうだったのか、お前……」

「……志乃さんは恐らく逃げ回っている途中でこの森に辿り着いたんだと
思う、それで、オイラを助けてくれている最中に……、その嫌な幽霊に
見つかっちゃったんだ、全部オイラの所為だよお~……、だから、オイラ……、
どうしても志乃さんを今度こそ助けたい、クソ男から縁を切らせて、
ちゃんとした処に送ってあげたいんだ……」

「……亡くなってからも、そんな……、酷すぎるわよ……、許せないわ……」

「モン~……」

「大丈夫だよ、ダウド、今度は僕らも手伝える事が有る筈だ、必ず
志乃さんを救ってあげよう……」

「アルう~……」

「ま、元々ジャミ公は迷える魂を本来イク場所に導くのが仕事だったん
だかんネ、しょ~がないっしょ……」

「ああ、……けどな、オメー……、んな大事な話をだな……、ただ
いじけて黙ってたら俺らもわかんねーってのっ!」

「……あだあっ!?」

そして、ヘタレ君、もう一発、おまけのデコピンをジャミ公に食らう。

「……何だよおーーっ!ジャミルのアホーーっ!!」

「やれやれ、どうにか今回も元気になったみたいだね……、いつもの
事だけど……」

「ホント、ダウドもジャミルもしょうがないんだから!ふふっ!」

「ダウドが元気になったからまたちんぽこするモ~ン!」

「……い、いいよお!こらーーっ!モンーーっ!!」

「……も~、マジでバカば~っかっ!」

(オイラ、結局ジャミルや皆に頼る事になっちゃったけど……、でも、
いいんだよね……、辛い時、困った時には助けて貰える事、凄く
幸せな事なんだよね……、オイラ、すぐ意地を張っちゃって、側に
すぐ助けてくれる友達がいる、こんな大切な事も遂忘れちゃうんだ……、
バカだよね……)

しかし、ジャミ公もすぐ意地張るおバカ、そうなる事が多いので……、
やっぱりこの二人は違う様で、根本的に何処か似ているのかも
知れなかった。

「えへ、えへへ、えへ……」

「んでさあ、その、志乃ってヒト、何所に連れて行かれたか
ワカンないの?」

「……それが分からないからオイラも困ってるんじゃないかあ……」

「ジャミ公、アンタ元天使なんだからさあ~、こうピピッと……、
幽霊のデンパとか感じたりしないワケ?」

「……無茶苦茶言うなっての、俺は何処かの妖怪小僧じゃねえ……」

そう、サンディに言い掛け、ジャミルは言葉を止める。無茶苦茶
言うなと言っている側から……、何か人の気配を感じたのだった。
もう、既にこの世の人間では無い……、誰かの……。


……カナシ、イ……、タス、ケテ……


「ジャミル、どうしたのモン……?」

「何かの気配がするんだ、俺らの後を付けて来てる……」

「え、ええっ?それって、まさか……」


「……殿方、様……」


「!?」

「……志乃さんっ!!」

叫ぶダウド。……4人の前に姿を現したのは……、山豚クソ男に
連れ去られた筈の志乃……。だが、ダウドと出会った頃に髪に
着けていた髪留めは無くなっており、ヘアスタイルは髪を下ろした
長髪になっていたが、髪はボロボロに乱れていた……。

「志乃さんっ!無事だったんだねえ~!」

ダウドは一目散で志乃に駆け寄る。それを見たサンディは呆れた……。

「いつもなら、ゆーれーこわいよおお!……なのにさ、あんな
べっぴんさんだとこうも違うワケ?ホンッと、男ってヤツは……」

「そうねえ……」

「おいおい、何で俺の方も見てんだよっ、ジャジャ馬っ!」

「僕の方にも……、何で視線が来てるの……」

「別に……?いいのよ、男のサガって言うのよね、それよりも、
私達にも普通に本当に志乃さんの姿が見えるわ、不思議……」

「キレイなお姉さんなんだモン♪ダウド、会えて良かったモン」

アイシャも取りあえず、ダウドと志乃の再会の行方を静かに見守る。
だが……。

「……殿方様……」

「志乃さん、だからさあ、オイラの事はダウドって呼んでよお、ね……?」

「もう、これ以上……、だから、私、殿方様にお別れを……、ううっ……」

「……志乃さんっ!?」

「ァアア……、アアーーーッ!!……イヤァァーーッ!!」

突如志乃に異変が起きる……。両手で顔を覆い、苦しみ出す……。
そして、志乃が覆った顔から、何かがポタポタと……。

「これは……、まさか……、皮膚……?」

志乃の顔から落ちているのは、まるでロウの様な、溶けた皮膚……。
涙……。やがて、志乃は顔を覆っていた両手を静かに放した……。
見えたのは……、先程の美しい顔とはまるで違う、焼けただれ、
原型を留めていない、まるで骸の様な悲しき志乃の顔であった……。

「醜いでしょう?気味が悪いでしょう……?でも、これが私なんです、
死んだ時のそのまま、ありのままの醜い姿の私、……お志乃です……」

「……」

変わり果てた志乃の姿に、見守っていたジャミル達も息を飲む。
だが、決して志乃の容姿を警戒している訳では無い。それは
ダウドも同じだった。一体何故、死の直前、彼女に起きた悲劇とは……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 80

zoku勇者 ドラクエⅨ編 80

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-07-06

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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