zoku勇者 ドラクエⅨ編 79

試練を超えろ!・3

「♪モォ~ンモン、モォ~ン♪」

「そう、ジャミルはその……、カナト君の処でお世話になって
いたのね……」

「ああ、それにしても……、最初の時の糞の様なドタバタが少し
落ち着いて来たかな、一体何だったんだ、あの巨人集団モンスター
はよ……、あれ以来、ああ言うモンスターには遭遇しねえな……」

ジャミルとアイシャはアイシャが目を覚したと言う川縁の場所へ。
色々話をしながら身体を休めていた。モンはパシャパシャ、水悪さ
しながら川で遊んでおり、楽しそうである。

「カナト、いい奴なんだよ、とにかくさ、ちゃんとヘタレも腹黒も
無事に見つけられたら……、カナトの処に一度戻ろう、俺ももう
ちょっとアイツと色々話がしたいんだ……」

「うん、私もカナト君に会ってみたい!小さいのに強いんでしょ?
どんな子なのかなあ!」

「……と」

アイシャはにこにことジャミルに笑顔を向ける。……ジャミルは赤面し、
顔から湯気が出そうになる……。下半身も、いつも通り……、元気だった……。

「あ?オメー、いつの間にか装備品が元に戻ってんな、力を取り戻した
からか?」

「え?あー、本当だわ、武器が氷の刃に戻ってる、防具品も……、
でも、私の場合、魔法力が主体だから、あんまり攻撃力とか
関係ないんだけどね……」

「だな……、けど、オメーが又高レベルの魔法使える様になって
くれたから戦力も戻って頼もしいよ……」

「えへへっ、任せてっ!私、頑張るからっ!復帰後のレッスンよっ、
ええーーいっ!!」

「……おおーいっ!?」

「モォーーンっ!?」

久しぶりの魔法で嬉しいのか、アイシャ、イオラを試しにその場で
放出……。モンもびっくりして川から戻って来た……。しかも、
張り切り過ぎちゃったと彼女はテヘペロ。天然暴走娘に、これでは
モンスターとやっている事が変わりないとジャミルは改めてガクブル
するのだった……。

「さ、行こっ!アルもダウドも二人ともきっと別の岸辺に流されてる筈よ!」

「あ、ああ……」

……アイシャもこうして無事、アルベルトは一度、元の世界で凶悪姉貴に
滝壺に落とされて生還してるから、大丈夫だとは思うが……。心配なのは
ヘタレの方である……。

「ドザエモンになってねえ事を願うだけだよ、ヘタレ……」

「……演技でもない事言わないのっ!」

「またホンワカパッパモン!」

「……だからそれ、違うって……」

そして、ジャミルはもう一つ心配な事があった。この世界でジャミル達の
能力を吸い取ったのは得体の知れないフラワーロック兄弟だと言う事が
分かった。その内の一匹の妹?をアイシャは一人で倒し、こうして自分の
力を取り戻した。と、言う事は……。残りの3人、ジャミル、アルベルト、
ダウドの力とLVを奪った奴等が何処かに潜んでいると言う事……。
アイシャは自らの力で勝利し、自分の力を取り戻した。ならば、自分達も
そうしなければならないのだろうと……。

「……だから、心配なんだよ、ヘタレ……」

今は考えても仕方が無い、一刻も早く張本人達を見つける事……、
である。

「けど、想像するとやっぱり何か恐ろしいな、アルの能力のフラワー
ロック……、大体想像着く……」


……うふふ、うふふ、うふ、うふふ~……♡


「……うわあ……」

「もうっ、考えたら駄目っ!とにかく前に進まなくちゃ!」

「モンっ!」

又立ち止まりそうになったがアイシャとモンに背中を押され、
ジャミルは歩き出す……。けど、腹黒フラワーロックには
なるべく遭遇したくないなと……。

「でも、アルベルトとダウドに会う前に……、変なお花さんに会ったら
どーするの?モン?」

「そう言えば、サンディは……、こっちもまだ会えてないみたいだけど……」

「……それも問題だあーーっ!!ガングロも忘れてたああーーっ!!」

モンに突っ込まれ、ジャミ公絶叫……。エルギオスとの決戦の為の力を
得る為、此処に送り込まれたとは言え……、何から何までもう突っ込み処
満載で、色々とわちゃわちゃ問題が出て来る……。

???:ンモーーっ!しつこいっつーのっ!いーかげんにしてよネっ!!

「お?お?お……?」

……言ってる側から、ジャミル達の前を何かが急いで飛んで横切って行く。
何か、何処かで見た事ある様な……。

「♪グギャギャーーっ!!」

更にその後を追い掛け回している、ゴリラ系のモンスター、キラーエイプ……。
追われているのは明らかに……。

「……サンディっ!!」

「大変っ!!」

「ア、 アッ!?ちょ、ちょっとッ!アンタ、何すんのサーーッ!!ヤダーーッ!!」

「グギギ~……あ、あひ、あひ……」

サンディ……らしき、妖精……、嫌、ほぼサンディで確定だと思うが、は、
キラーエイプに両手で抱き抱えられ、捕獲されてしまう……。よく見ると、
下半身がシコシコ、奮起しているので、多分……。

「……春なのかな……、ありゃ、エイプじゃなくてレイプか……」

「もうっ!そんな事言ってる場合じゃないでしょっ!……もう夏よっ!」

「嫌、そりゃ分かってんだよ、……気分的には春が抜けねえのかなと
思ってよ……」

「……いーやああーーッ!!バカーーっ!!ヘンタイーーっ!!
アッチいけーーっ!!」

サンディは拳でキラーレイプ……、エイプの頭をぽかぽか殴ってはいるが、
全然効いていない。寧ろ嬉しそうだった。

「モン……、また大人の階段のぼっちゃいそう……、モン♡」

「と、とにかくっ、助けなくちゃな、待ってろっ!」

「ギャー!ギャーーっ!ギャーー!!」

サンディは大混乱中で……、ジャミル達がすぐ側にいる事に
気づいていない。急いでサンディを助けにジャミルが動こうと
するが、それをアイシャが止める。

「待って、ジャミルは今、LV1よ、幾らキラーエイプでも危険よ、
此処は私が行くから大丈夫!」

「ハア!?ちょ、ちょっとお待ちっ!……お前じゃ駄目だっ!!」

「何でっ!このままじゃサンディが危ないのよ!」

「……だからだな、それは……、あ~う~……、考えてる暇はねえっ!」

それも大問題……。発情中のゴリラモンスターの相手をアイシャになど
任せられる筈がなかった。幾ら彼女が力を取り戻したとは言え、それは
ジャミ公にとって断固反対だった。

「だから何でよっ!今の私の方がジャミルより強いんだからっ!」

「……そ、それとこれとは話が別だっ!てか、オメーうるせーんだよっ!」

「モ、モン~……」

又揉め出し、ケンカを始めてしまうバカップルにモンはオロオロ……。
こうしている間にも、サンディの危機はどんどん迫っていた……。

「……も~ダメぇ~、あ~、アタシの人生、短い人生だったわ……、
思えば、あのダメ天使、ジャミ公と会ってから……、アタシの運は
全て尽きたんだわ……、そもそもこうなったのも、全部あのロクデナシ
おっさんテンチョーの所為……」

「……んだとおお~!?俺だって頼んで着いて来て貰った訳じゃ
ねえぞっ!このっ!!」

「だからっ、ジャミルっ、駄目だったらっ!も、もう~~っ!」

アイシャは魔法をキラーレイプへストレートにお見舞いし、サンディを
救出しようと……。だが……。


???:サンディ、ちょっと目を瞑ってて!……行くよっ!!


「へ?……あ、ああっ!!」

「あれはっ!!」

「う~、もう、イヤ……、また変なのが来たみたい…、やっぱアタシって
運無くなってる?」

「「アルっ!!」」

「モォ~ンっ!」

ジャミルとアイシャ、そしてモンが声を揃える。サンディの危機に
駆け付けたのは……。

「……例え力を失っていても、僕には僕の戦い方がある!行くぞっ!
秘技……、スリッパ乱舞っ!!乱れ打ちっ!!」


……パンッ!パンッ!……パンッッ!……パァァーーンッ!!


「お、おおおお~……」

「アル……」

「何だか、いつもより気合いが入ってる様な気がするモン……」

「グ、グギギギ、……ギギギーーィッ!!」

アルベルトに制裁を食らったキラーエイプの頭は半分へこんで
しまっていた……。キラーエイプは等々サンディを放りだし、頭を
抑えながら逃走。大分遠く離れた処で汚いケツを向け、アルベルトに
尻ペンをすると、股間をぷらぷら、ぴょんぴょんすっ飛んで行った。

「ウギギギーー!」

「……全く、ジャミルみたいな品の無い下品なヤツだっ!はあ、
何所の世界でも、……どいつもこいつもっ!」

「……おいっ!アルっ!テメーこの野郎!!」

「アルっ!」

「モン~!」

「……あ、皆!無事だったんだね、会えて良かった!」

アルベルトはジャミル達に気づくと、スリッパを仕舞い、急いで
走って来る。だが、変態キラーエイプと同類にされたジャミ公は
ブンむくれた。

「オメーさっき、ドサクサに紛れて何か言ったろう!」

「え?何の事だい?」

「ジャミルったらっ!そんな場合じゃないわっ!それよりも、
サンディを!」

アイシャは急いでショックで放心状態のサンディの介抱に掛るが……、
状態を確認すると本人は顔が真っ赤で……、皆に助けられたにも
係わらず、まだ意識が朦朧としていた……。

「大丈夫かコイツ、まさか、もう……」

「!!だ、大丈夫よう!……そうなる前に寸止めでアルが阻止して
くれたんだから……」

「ウ~ン……、ジャミ公めええ~、化けて出てやるうう~……」

「……だから何でそーなるんだっつーのっ!」

「仕方が無いよ、もう暫くサンディを此処で休ませて……、僕も二人に
色々と話を聞きたいんだ……」

「それは俺もそうさ、しゃ~ねえ……」

ジャミル達はサンディが意識を取り戻すまでもう少しこの場で
休んで行く事に。アルベルトにも、川で流されてからバラバラに
なった後の足取りを説明する。カナトの事、得体の知れない変な
フラワーロックの事……。

「そう、そのモンスター花が……、僕らの力を奪ったと……、それで、
アイシャはもう力を取り戻したんだね……」

「ええ、私、頑張って出来るだけ皆の力になるから!」

「……うん、でも、僕も頑張らなくちゃ、奪われたLVと能力を
取り戻すんだ、僕自身の手で……」

アルベルトも自分の手で戦って力を取り戻すと、決意を固めた様。
となると、あと一人が……。ジャミルは考えただけで切れたヘタレに
どれだけ抗議と文句をブーブー言われるか又頭痛がしてきた……。
いじけて切れた時のヘタレには本当に手に負えないのだから……。

「後はダウドだけだね、サンディが目を覚したらダウドを探しに行こう……」

「ウ~ンっ、……あれ?」

「サンディ、目を覚したモン!」

「良かった!」

「サンディ、僕らだよ、分かるかい?」

「よう、ガングロ……」

「ありゃ、皆……、ひっさしぶりじゃんっ!ねーねー、アタシ、皆が
川で流されてから見失っちゃって、ずっと探してたんだよッ!……はあ、
気が付いたらいつの間にか疲れて寝ちゃってたみたいネ……」

「……」

サンディも皆と再会出来て嬉しい様だが、先程の事は……。

「んでさあ、アタシ、すっゲー不愉快な夢見ちゃったんですケド!
何かさあ、夢ん中で、鼻クソほじってて発情してる変なゴリラに
襲われてセップンされそうになったの!で、後ろでジャミ公が
戦おうとしてくれてたんだけど、ジャミ公、ゴリラにぶっ飛ば
されていじけてわめいてさあ!腹立ったワケ!も~ダメっ!
……って、処で、白馬に乗った金髪の王子様が現れてアタシを
助けてくれたのっ!」

「……あ、はは、そう……」

「サンディったら、もう~……」

「の、野郎……!それは夢じゃねえっ!第一っ!!俺とダウドが
混ざってんじゃねえかよっ!……あううーーっ!!」

アルベルトは慌ててジャミルの片足を踏む。今は余り話をややこしく
したくなかった。

「ジャミルとダウドが合体しちゃったモン……」

「いいからっ!ジャミルっ!とにかく、サンディ、君も無事で
良かった、後はダウドを探すだけなんだ、まあ、話は他にも色々
あるんだけど、取りあえず動こう……」

「ハア~、やっぱりヘタレかァ~、しょーがないなあ、んじゃま、
ジャミ公、又宜しくっ!」

「……おおーーいっ!!」

皆と再会し落ち着いたサンディはちゃっかりと、いつも通りジャミルの
中に姿を消す。彼女も決して悪気は無いのだがどうにも……。暫くのち、
ジャミ公が機嫌が悪かったのは言うまでも無い……。こうして、仲間も又
揃いつつ、残るはダウドだけである……。そして、行方不明の張本人は……。

「……ここ、どこ?オイラ確か、川を流されてた筈なのに……、
気がついたら森の中?何で?……モンもいつの間にか……いない……」

どうやら……、ダウドも得体の知れない森の中に……、一人飛ばされて
いた様だった……。歩き出さなくてはいけないと思いつつ、どうせ今、
動いても強いモンスターに襲われると、考えると、……動くのがもう
面倒臭くなっていた……。

「何だよお、どうしてみんなして、オイラを又一人にするんだ、
……ジャミルのアホう……、どうせモンスターに襲われるくらい
なら、このまま此処で枯れ葉に埋もれて静かに死……、それも
嫌だなあ……」

そして、いじけモードも発動しそうになっていた……。

「ん?此処、何か異様に盛り上がって……、葉っぱの中に何か
埋もれて……、!!」

葉っぱの中に埋もれていたのは……、恐らく遭難者だろう……、の、
一体こうなってから何年立っているか分からない、既に錆びている
白骨死体……。

「……ぎゃああーーーっ!!……や、やっぱり枯れ葉に埋もれて
死ぬのはイーーヤーーーああっ!!」

ダウドはその場から、古典的ギャグ漫画の様に渦巻き走りで逃走……。
否応なしにやはり動かねばならないのだった……。

「たく、ダウドの野郎っ!いつもいつも皆に心配掛けて世話焼かせ
やがって、冗談じゃねーっつーの!」

「モンもそろそろダウドの頭叩きたいんだモ~ン、ちんちん
ぽこぽこしたいモン、つまんないんだモン……」

「……モンちゃんたらっ!めって言ってるでしょっ!」

「……」

それぞれにぼやく、ジャミルとモン……。だが、アルベルトは
ジャミルの方に只管笑いを堪えていた。

(それはお互い様、ジャミル、ダウドだけじゃなくて、自分の事も
含めて言ってるんじゃないか、……プッ……)

「アル、何だ?何か言いたい事があるなら言ってみろ……」

「……何でもないよ……」

「大丈夫よ、ダウドもきっとすぐ見つかるわ、ね?」

「うん……」

「だと、いいな……」

「モォ~ン……」

アイシャにそれぞれ返事を返す皆さん。そして、森の中をキャーキャー
逃走し、更に迷ってしまった噂の張本人、ダウドは……。

「困ったよお、……行けども行けども同じ景色……」

……ぐうう~……

「お腹、すいたなあ~……、もう限界~……」

あの隠れていた洞穴で、カレー屋だの、牛丼屋だの、愚痴っていた
時点でダウドは相当腹が減って苛々していた。腹が減っていたのは
ジャミ公も同じだが。しかし、あの後、カナトの処でしっかりご飯を
ご馳走になっていたので……。この事実を聞けば、ヘタレは又ずるい
よお!と心底怒り狂うだろう……。


……うおおお~ん……


「ひっ!?な、何この遠吠えっ!狼っ!?いや、モンスターだって
いるんだし、別に狼が出たっておかしくないか……」


ぴた、ぴた、……ぴた……


「……」

ダウドは後ろに嫌な気配を感じ、一瞬足を止める。誰かが後を
付けて来ている……。だが、後ろを振り返れず……。

「気の所為、気の所為……」

ダウドはまた歩き出す。しかし……。


ぴた、ぴた、ぴた……


「……」

「あの、もしもし……?」

「……あわわわーーっ!!」

後ろから聞こえて来た声に……、等々ダウドは少ししっこを漏らす。
そしてそのまま、更に、ダッシュ、ダッシュ、……猛ダッシュ……。
森の景色はどんどん薄暗くなる……。

「……うぎゃあーーーっ!!」

前を見ず、走った所為で、正面にあった大木にそのまま衝突……。
気を失った……。

「もしもし……?」

「……」

「あの、大丈夫でしょうか……?」

「……?」

聞こえて来た声に、ダウドはうっすらと目を開ける……。目の前に
居たのは、黒髪を簪で結った着物美人……。だが、まるで顔に
生気がない……。

「あ、あっ!?オイラ、確か……、森で……、!?」

「気が付かれて良かったです……」

どうやら、ダウドは気絶し、何処かの家に連れ込まれ、布団に
寝かされていた。そして、目の前には微笑む着物美人……。
苛々しており、感のいいダウドはこの美人さんが何者か直ぐに
理解した……。

「分かったよお、アンタ、この森に住んでる幽霊さんでしょ!大体
パターンが分かるんだよお!どうせオイラを捕まえて食う気なんだ
ーーっ!親切なフリしたってオイラには分かるっ!いい加減にしろっ!
オ、オイラだって少しは戦えるんだぞ!」

「あのう~……」

こう言う時、ヘタレはブチ切れモード一直線。流石に幽霊なら取って
食わないと思うが。先程漏らしたのを置いといて、ひのきの棒を取り出す。
だが、それを見た幽霊の黒髪美人さんは悲しそうな顔をした……。

「……何だよお、そんな顔したって騙されるもんか!」

「いえ、確かに私は幽霊ではございますが……」

「ほ、ほらっ、やっぱりっ!」

「……ですが、信じて下さいませ、決してあなたを襲うだなんて……、
そんな気持ちはございませんわ、寧ろ、この森に入って迷ってしまった
現世のあなたを助けるお手伝いが出来ないかと……」

「え……?ホ、ホントに……?」

「はい、どうか、信じて……」

ダウドは困った事になったと思った。目の前の幽霊さんは泣いている。
どうやら、本当にダウドを助けたくて、してくれた事らしい……。まだ
油断は出来ないが、ダウドは取りあえず、ひのきの棒を仕舞った……。

「ごめんなさい、オイラももう訳分かんなくて苛々してた……」

「信じて頂けるのですか、有り難うございます……」

「……」

切れたのは自分なのに、幽霊さんは涙を溢しながらダウドに何度も
頭を下げる。……意外と気が短い自分に気が付き、ダウドは頭かきかき、
罪悪感で一杯になる……。

「……短気は移るんだよお、ぼそ……」

「とにかく、今日はお体をお休めになった方が宜しいかと……、
相当お疲れでご無理をなされている様に見受けられます……」

「でも、オイラ……、早く此処を出て、みんなと合流しないと……」

「それでしたら、私にお任せ下さい、明日、森の出口までご一緒
致しましょう……」

「え?ええ、本当に?……いいの?」

「はい、ですから、今はお体をお休め下さい、大丈夫ですよ……」

「ありが、と……、むにゃ……」

ダウドは安心したのか、そのまま眠ってしまう。その様子を
見た幽霊さんは静かに微笑むと、ダウドの布団を掛け直してやり、
姿を一旦消した……。

「ぐう~、あれ~?オイラ、何でジャミルみたいな……、むにゃ、
天使でもないのに……、今回はどうして幽霊さんの姿が……、
むにゃむにゃ、見えるのお~?……ふにゃ……」

そして、再びジャミル側……。此方は夜になってしまったにも
係わらず、必死で皆でダウドを探して歩き回っていた……。

「おーい、ダウドーっ!いたら返事しろーっ!このアホーーっ!!」

「ダウドーっ!何所にいるモンーっ!」

「こらーっ!わっざわざ、こうしてアタシも探してあげてんのよーっ!
隠れてないで出てきなさいってのよーっ!」

「……もうこれ以上今日は無理よ、辺りも真っ暗だし……」

「そうだね、アイシャの言う通りだ、もうさっきの川縁から離れて
大分立ったし……、今日はこの辺で休もう……」

「だな……」

ジャミル達はその場で腰を下ろす。ヘタレ探索も本日は打ち切り。
夜の休憩へと入る。だが、食べる物も何も無し。只管空腹に耐えて
眠るしかなかった……。

「……カナト、飯、お代わり……」

「むにゃむにゃ、トマト……、おいしいんだモン……」

空腹の眠りの中、カナトの絶妙のご飯の味を覚えてしまったジャミルと
モンは夢の中で只管涎を垂らす……。飢えと空腹に耐える事、これも
試練なのだろうか……。

翌朝……

「むにゃ……」

「もし、殿方様、朝ですよ、起きて下さいまし……」

「う~ん、あれえ?オイラ確か……、そうだ、……うわっ!?」

「お目覚めでございますね、お早うございます……」

目の前で微笑む着物美人さん……。彼女は謎の幽霊。ダウドは
思い出す。皆と又離れ離れになり、引き離され、変な森の中に
送られ……。ヤケクソになり、路頭に迷っていた自分を救って
くれた……。

「何でオイラ、今回は幽霊さんの姿が見えるんだろう、いつもは
見えないんだけどなあ~、こんな事前代未聞だよ……」

「ふふ、どうしてでしょうね……、私にも分かりませんけど、
けれど、私の姿が見える方に出会えて私も嬉しいです……」

着物幽霊美人さんはダウドに向かって優しい笑みを浮かべる。
それを見たダウドは思わず赤面した……。

「さあ、お支度が出来ましたら森の出口までお送り致しますので、
殿方様……」

「あの、その……、嬉しいんだけど、殿方様って言い方、何か困る、
オイラは別に殿様でも何でもないし、全然偉くないんだ、只のヘタレ
だよお……」

「そうですか、では、何とお呼びすれば宜しいでしょうか……、
お名前はヘタレ様……、ですか……?」

「い、いや……、ダウド、オイラはダウドです、改めて宜しく、え~と、
お姉さんは……?」

「ダウド様……ですね、分かりました、私はお志乃、志乃と呼んで頂ければ……」

「分かったよお、志乃さんだね……」

「はい……」

着物幽霊美人さん、志乃はダウドの顔を見て微笑む。彼女は森の
出口まで送って行ってくれると言う……。だが、無事に森を抜ければ
志乃ともすぐお別れ。ダウドは段々切なくなって来ていた……。

「……あのね、志乃さん……」

「はい……?」

「此処を抜けて、皆にも会えたら志乃さんの事、オイラ皆にも紹介
したいんだあ、オイラにだって志乃さんの姿が見えるんだもん、他の
皆にもきっと見える筈だよお!あ、一人、どうしても最初から幽霊が
見える特異体質の変な友人もいるんですよ、だから……」

「それは……」

志乃はダウドの返答に口を開き掛けるが、だが……。突如、部屋の襖が
がらりと開き、何者かが中に現れたのである……。

「……うおおお~い、志乃、志乃はいるガアアーーっ!?」

「……ゲッ!?」

「あ、あっ……?」

中に入って来たのは……、髪ボサボサで、長髪、頭部にフケとノミが
飛び、シラミが集っている……、汚い服と身なりの顔中髭もじゃの太った
山男の様な風貌……。カラコタでシュウや子供達を苦しめていた豚男の
親戚かとダウドは思った……。しかし、此処は異世界、多分、何の血筋も
関係も無い別人だろうが……。とにかく何所の世界でもクソはいるんで
ある……。容姿を見るだけでもうクソ確定だった……。

「旦那様……」

「うそっ、この人……、志乃さんの、志乃さんの……、嘘でしょ?
嘘って言ってよお!」

「んだあ?オメーはよお、……現世人でねえか、何故オラ達の姿が
見える?まあいい、そうか、森に迷い込んだか、ふん、まあ2重に
ええわ、オラ、話があるんわ、……志乃、オメーだあああっ!!」

「……志乃さんっ!!」

「……ああっ!?」

やはり、山豚男はクソだった……。拳で女性である筈の志乃の顔を
思い切り殴ったので
ある……。

「……何するんだよおっ!志乃さん、大丈夫……?」

「ダウドさん、も、もう……、私達に構わないで下さいまし、早く
お逃げになって……、あなたを森の出口までお送りする事が出来なく
なって……、申し訳ありません……」

「そんな、志乃さん、だって、だって……」

「仕方が無いのです、又あの人に見つかってしまった以上、
どうする事も……、返ってダウドさんにもご迷惑をお掛け
する事になってしまう、もう、死んでも旦那様の呪縛からは
例え何処に居ても逃れる事は出来ないのですね……」

「え、ええっ!?」

「……」

志乃は悲しそうな顔でダウドを見ていたが、やがて目を伏せる。
どうやら……、志乃と目の前の山豚クソ大男……。複雑な因縁が
ある様だった……。

「そう言う事だ、これはオラと志乃の問題だ、死んだモン同士の事だ、
まーだ生きてる現世のオメーには関係ねえ、とっとと何処かへ消えろ!」

「そんなっ!?」

山豚クソ大男も既に故人で幽霊の様である……。志乃の言葉から
推測するに、志乃は死んでからもこの男に追い回され、そして、
逃げ回っている処を見つかってしまった様だった……。しかし、
死んでいるとは言え、山豚クソ大男からは異臭が……。ダウドが
呆然としている間にも山豚クソ男は更に……。

「どうだっ?痛いか!?痛かろうが!死んでも痛みは感じるんだからな!
オラの怨念に取り付かれてる限りよ!ガハハ!どうだ、苦しいか、また
オラから逃げやがったバツだっ!こうしてくれるわ!オラっ!オラっ!!」

「……志乃さんっ!!やめてよおおーー!!」

「このっ、このっ、このメス豚っ!役に立たねえ妾女めっ!クソっ!!
クソっ!!借金だらけでカネに困った禄でもねえ親にオラん処
売り飛ばされたんだろうがっ!!」

山豚クソ男は必死で耐えている志乃を今度は足で蹴り、更に暴行を
加える……。ダウドは少しだけ理解する。志乃の生前での悲惨な過去、
この男との因縁を……。そして、ダウドの悪い癖が出る……。志乃に
暴行を加える山豚クソ大男の姿を見、ヘタレモード突入。恐怖で足が
すくんで動けなくなってしまった……。更に考える。こんな時、
ジャミルなら、ジャミルなら……、と。ジャミルがいてくれたら……。

「……オメーさえいなけりゃオラも死ぬこたーなかったんだっ!
この野郎ーーっ!!」

「ぐっ……、やめろおおーーっ!!」

だが、等々ダウドも黙っていられず、切れる……。幽霊ならばと思い、
逆に回復魔法でダメージを与えられるかと思い、ホイミをぶつけてみた。
LVも1の状態で、ダウドも今はそれしか思考が働かず……。そして、
勘違いに漸く気づく……。

「あ……、アイツはゾンビじゃないーーっ!幽霊だったんだあーーっ!!」

「だから何じゃオメーわあーーーっ!!」

「……うぎゃああーーーっ!!……がくっ……」

山クソ豚大男……、遂に豹変し、自身の姿を巨大なボストロールキングへと
姿を変える……。死んでから長い間、現世を彷徨い……、モンスターと化して
しまっていた……。

「……ダウドさんっ!しっかりなさいましっ!……ああっ!?」

「志乃、オメーはいいんだよ、早くオラん処戻るんだ、……これ以上
オラに逆らえば……、そうだな、コイツがどうなるか……」

ボストロールキングは志乃の腕を乱暴に掴むと、気絶してひっくり
返ったダウドを片足で踏み潰そうとする。それを必死で阻止しようと
する志乃……。ボストロールキングは、してやったりで笑みを浮かべた。

「お約束致します、もう、二度と……、旦那様のお側を離れません、
だから……、この人は何も関係ありません、どうか……」

「ふん、最初からそうすりゃええ、手間掛けさせんじゃねえっ!
このアマっ!」

ボストロールキングは山豚クソ男に戻り、志乃は再び殴られる……。
それでも静かに耐えていた。涙を堪えて。

「……有り難うございました、……ダウドさん、どうか……、お元気で……」

山豚クソ男と志乃は姿を消す。ダウドが志乃に一晩世話になっていた
家は無くなり……、ヘタレて気絶、志乃を守る事が出来なかったダウドは
又独りぼっちになり、森の中に独り取り残されていた……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 79

zoku勇者 ドラクエⅨ編 79

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-07-05

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work