絶えざる恐怖

死を望みながら死を恐れる​──この矛盾に俺はずっと悩まされている。死という概念が頭に浮かんだ時のあの言いようもない恐怖​──あれは一体何に由来するのだろう?より具体的には、死に関する何に俺は恐怖しているのだろう?俺は思索する​──死の何がそれほど俺を萎縮させるのか思索する。まず一つが、自分という存在が完全に消滅することへの恐怖だ。世界に不滅のものなどありえない……こればかりは割り切るしか、諦めるしかない。自分という存在は有限であり、消滅の運命を担う存在なのだ、そう自分に言い聞かせるしかない。俺は……俺は自分の消滅を恐れていたのだろうか?どうも違う気がする。そして浮かび上がるもう一つが、自分という存在は完全に消滅することはないということへの恐怖だ。この俺という存在は死後もなお、粒子となって世界を彷徨い続ける……それも微弱な意識を保ちながら。この修羅から逃げ切ることなどできないのだという恐怖。そう、俺は自分という存在が不滅であろうがなかろうが、そのどちらの運命に対しても尋常ではない恐怖を抱いているのだ……俺は恐怖を飼い慣らそうとするが、そのただならぬ空気にいつも気圧される。俺はこの二重の恐怖を克服することができない……板挟みになり、無様に喘ぐことしかできない……なのに俺は死を望む。なぜ俺は死を望むのか?楽になりたいから?生にまつわる苦難苦痛を終わらせたいから?なるほど、どれも頷ける回答だ。だが、本当にそれは終わるのだろうか?こういう概念があるじゃないか、死後の生という概念が……。死んでもなお、新たな生が続くというのなら、この苦しみに終わりはないということになる。悲しいかな、この仮説を完全に否定することはできないのだ!畢竟、俺は恐怖から逃げ切ることはできないのだ。克服することなどできないのだ。俺は生きているうちも、死んでからも、その捉えどころのない茫漠たる恐怖に苛まれることになろう。

絶えざる恐怖

絶えざる恐怖

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-06-29

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