zoku勇者 ドラクエⅨ編 77
※此処から暫くの間、この話での最終装備入手経路の完全オリジナル
エピになります。クソキャラばっかり作る自分にしては珍しく、正統派の
オリキャラも登場します。
試練を超えろ!・1
「……みんなジャミルにばっか頼っちゃってスゲー勝手!
そーゆーのってチョームカつくんですケド!?ね、アンタ達も
そう思わネー!?」
「うん、確かに……、そうかも知れないけれど……」
「……でも、誰かに縋りたい心境は分かるわ……」
「だよおおーーっ!!」
「モンモン!」
「……サンディ、あのさ……」
ジャミル達は箱船に戻り、サンディに事を伝えるもサンディ激怒。
特に……。ジャミルが完全に人間になってしまう事に反発心が
強い様だった……。
「ジャミ公は今までずっと頑張ってきたんだからさぁ、後はもう
好きにしていいとアタシは思うのヨ!」
「……セレシア様のお言葉、俺にもしかと聞こえたぜ、……だけどさあ、
お前さん、天使を辞めて人間になっちまうなんて……、本当にそれで
いいのか?」
「……うん、大元の世界じゃ俺、別に普通の……、あいてっ!」
「コホン、ジャミルっ!……今は今だろっ!」
アルベルトに突かれ、慌ててジャミルは高速で頭をポリポリ……。
ついでに嫌がらせでスカシも落とした。
「けどな、どうもお前の表情を見てると俺にはとてもジャミ公に
其所までの決意があるとは思えねえんだな……」
「……んな、おっさん……」
「だよねえ、大体普段からえへえへ、彼処尖らせてチャラけてばっか
いるからねえ~……」
「……オウ、ヘタレ、今日は何発デコ突かれたいんだ?言ってみな、
サービスするぜ……」
「……要りませんーーっ!!ぎゃあーーーっ!!」
会心の一撃デコピン×クリティカルヒット999
「……全く、バカだなあ~、本当に、君達は……、けど、一体どんな
デコピンなんだ……、食らうのを想像しただけで冷や汗が出て来た……、
嫌、僕は絶対に食らわないけど……」
「……いだああ~~っ!デコから煙が出たあーーっ!!」
「……ちょっとジャミルっ!あれ、私にもやらないでよねっ!!」
新型のデコピン技であろうが、多分アイシャもされるのは避けられない
かも知れなかった。
「……けどな、どうしてもエルギオスを追って神の国へ行くって
いうんならお前の決意を此処で見せてみな!」
「アギロ……」
アギロはキッと、強い目でジャミル達の方を見る。今此処でジャミルに
女神の果実を食べて本当にエルギオスと戦う覚悟があるのか、決意を
見せろと伝えているんである……。
「そしたら俺もハラァ括って神の国でも何所へでもお前を送って
行ってやるさ!」
「!!」
「ちょっとテンチョー!な~にムセキニンな事言ってくれちゃって
んのさー!ホントにマジで完全に人間になったらアタシらの事も
見えなくなっちゃうんだよっ!」
「え……?だ、だってよ、サンディ、お前……」
「……」
ジャミル達4人は顔を見合わせた。この事が今回サンディに一番
聞きたかった事なのだが。サンディが激怒する理由。もし、ジャミルが
完全に人間になってしまった場合、サンディ達の姿が見えなくなって
しまうと。だが……。
「けど、天使界でも普通にアル達の姿が見える様にしてくれただろ?
それに、オメー今、普通に見せようと思えばこうやって人間達みんなの
前でも姿見せてるじゃんか……、……カラコタのシュウ達やナザム村の
ティルの時みたいに……」
「……そ、それはこれっ!あれはこれなのっ!……でも、もうすぐ
その力も終わっちゃうのっ!時間と限りがあるんだからっ!そしたら
アタシ、本当にもう皆の姿を二度と見れなくなっちゃうし、こうやって
楽しくお喋りも出来なくなるのっ!……だ、だから、早くエルギオス、
サッサと倒しちゃって……、全部終わりにして欲しかったワケ、アンタ達を
こうやってサポート出来るのもアタシにだって限度があんのヨ、……だけど
……、考えたらなんか急にさびしくなっちゃったワケ……、それなのに、
何よジャミ公、自分から天使やめるとか言い出してサ、……そんなに
アタシと早くさよならしたいワケ……?」
「……そんな、サンディ……、だって……、お別れなんて……、私、
考えた事なかった……」
「そうか、僕らを今まで支えてくれたサンディの力も……、無限では
ないと言う事なんだね……」
「モォ~ン……」
アイシャは涙目になり、アルベルトは俯く……。出会った時から
トラブルばかり、ワガママ言いたい放題、女王様だったサンディと
ケンカばかりしていたモンも……。この事実には大いにショックを
受けた。エルギオスを倒し、全てが終われば必ずサンディとも別れの
時が訪れるのだと……。
「……そんなのサビシーじゃん……」
「……」
サンディは横目でちらちら、さっきからずっと黙りこくっている
ジャミルの方を見る……。今、此処で本当に人間になってしまえば、
もしかしたら、もう……。けれど……。エルギオスの復讐の闇は
どんどん迫っている……。世界を救うのにはもう時間が無い事も
事実なのである……。
「ジャミルひとりがそこまで重荷になんかなるコトなんてないって!
ねえやめときなよー!」
「……サンディ、今はまだ大丈夫だ、俺を信じろ!」
「あ、あっ!?ちょっとッ、アンタっ!……ジャミ公っ!
食べちゃったしー!」
「「……ジャミルーーっ!!」」
「モ、……モォ~ンっ!?」
等々ジャミルは女神の果実に齧り付く。皆が心配する中、ジャミルの
状況は……。
「……どうだい?俺、何か変わったかな……?」
「別に普通だよ、僕らから見ても何とも……」
「うん、いつものジャミルよ……」
「だよねえ……」
「モン……」
「サンディ、どうだ?」
「……アタシにもまだ、普通に姿見えてる、どーゆーコト?ねえ、
テンチョー、アイツ、果実食べても結局天使をやめられなかった
……って、コト?」
サンディは不思議そうに首を傾げアギロに訪ねる。だが、アギロは
首を横に振った。
「嫌、俺には分かる、ジャミ公はもう完全に普通の人間だ、天使の力も
何も感じん、只、……俺達に姿が見えなくなるまではまだ相当時間が
掛るって事なんだろうな……」
「……な~んだあ、そっか、心配して損した……、って、何で
アタシがこんな心配しなきゃなんネーワケっ!?ジョーダンじゃ
ないわよっ!もう~っ!早くちゃっちゃとエルギオス倒しなさいよ
ネっ!大体最初から輪っかも翼もアンタ、失ったままだから分かり
ニクいのよっ!」
「……悪かったなあ、取りあえず謝りゃいいのかね、やれやれ……」
「……ギャースギャース!」
サンディはジャミ公に向かって暴言を垂れ捲る。本当は嬉しいく
せにと……、後ろで笑うアルベルト達。
「何っ!?何よッ!アンタたちっ!!」
「「なんでもなあ~いっ!!」」
「モォ~ンっ♪」
「よし、ジャミル、お前さんの覚悟もしかと見せて貰った、もう
何時でも神の国へ送って行ってやるぜ!」
「……それがさあ、アギロ……」
「?」
「な、何っ!ま~だ何かあるワケっ!?」
「……」
ジャミルはアギロ達に説明する。果実を食べた後、もう一度セレシアの
元に来る様に伝えられている事……。
「そうか、なら、善は急げだ、早く戻った方が良いな、な~に、
お前さんもまだ当分は大丈夫そうだしな、よし、行って来い、此処で
待っててやるからよ!」
「悪いなあ、おっさん、俺らもまだ具体的な説明はセレシアから
受けてねえからさ……」
「確か、エルギオスと戦う為の最後の力へと導いてくれるって
言ってたかしら……?」
「……何か嫌な予感しかしな~い……」
「ダウドっ!……とにかく、確かに今の僕らの力じゃエルギオスに
向かって行ってもあっさり返り討ちに遭ってしまうかも知れないからね……」
「だな……」
そう言いながらジャミルは又壊されてしまった自身の武器、
ドラゴンキラーを見つめる。計り知れない破壊の力を得た
狂気の堕天使に……、果たして自分達は勝つ事が出来るの
だろうかと……。
「ハア、女神サマもな~に考えてんだかッ!とにかくいこーよっ、
アタシも行くからサ!」
「……悪いなあ、ガングロ、オメーも……」
「オウ、行ってこい、……此処にこいつにいられても正直、ウロチョロ
うるさくてしょうがねえからよ……」
「何スかっ!?テンチョー、何かいいましたっ!?」
「……何でもねえちょ、早く行けってんだっ!ほれほれっ!」
「テンチョー、プ、……い、今、何でもねえちょって……、プププ……」
「……うるっせええーーっ!オメーラっ、……は、早くコイツを連れて
イケーーっ!!」
「へいへい、ほれ、行くぞっ!ガングロっ!!」
「アイよーん♡」
アギロは鼻から湯気を出し、激怒して奮起。ジャミル達を慌てて
箱船から追い出した……。サンディはいつも通り、発光体になり
ジャミルの中へと消える。
「ねえちょモン、ねえちょモン!」
「……モンっ、こらっ!」
「ちょちょちょモンーーっ!……アゴーーっ!!」
アルベルトは頭を抱える。またモンが余計な事を学習したと……。
たまには少しは真面な事も覚えて欲しいと……。しかし、飼い主が
こうなので多分それは無理だろうと。これまたいつも通り、
サンディはジャミルの中でゲラゲラ爆笑するのだった。
「……セレシア、戻って来たぜ、……ちゃんと女神の果実も食べた……」
……ジャミル……
ジャミル達は再び世界樹の前へ。セレシアの導きの声も又聞こえる
様になった。
ジャミル、皆さん、ありがとう……、さあ、ジャミル、先程
渡した球を……、世界樹の前へ掲げて下さい……
「……こうか?……うわ!!」
ジャミルは貰った球体を世界樹の前へと掲げる。すると、眩しい光が
皆を包み込んだ。
……ジャミル、皆さん、もう一度あなた方に問います、今から
あなた達を送る場所は……、一度入ったら試練を超えるまで
簡単には出られない場所です、ですが、エルギオスとの戦いの為、
聖なる力を得る場……、試練を乗り越える覚悟は出来ていますか……?
「……か、かかかか、ま、まだ覚悟わーーっ!……わーーっ!?」
「セレシア様、大丈夫です、僕達は何時でも大丈夫です……」
「ええ、私もです……」
「モンもモンーーっ!みんなといつも一緒モン!」
(ま、アタシは戦えないから……、此処からオーエンするだけよネ……)
「いいぜ、セレシア、頼む、俺達には力が必要だ、送ってくれっ!!」
「……むぐぐーーっ!!」
只一人、覚悟が出来ていないヘタレは何か言う前に、ジャミルとアルベルト、
左右から両者に問答無用で一辺に口を塞がれる……。この期に及んで
ヘタレるどうしようもないヘタレなのはいつも通りなのだが。
……では、皆さん……、あなた方なら必ず試練を乗り越え、再び
此処に戻って来る事を信じています、……どうか、栄光と勝利を……
球体は更に大きくなり、4人を何処かへと導き、運ぶ……。気が付くと、
全く天使界と別の場所、……其所は砂漠だった……。見渡す限りの砂、
砂、砂……。他には何も無い。
「……着いたのか……?此処が試練の場……?」
そして、こう言う時、必ず強気になり文句を言うのがこのお方である。
「……ンモーーっ!どうすんのさあーーっ!!試練て100パー強い
モンスターとかと戦うって事だろおーーっ!……ジャミル、武器
破損したまんまじゃん!一体全体どうやって戦うんだよおーーっ!」
「そうか、賊じゃ真面に魔法も使えねえしな……、困ったな……」
「……全然困ってる様に見えないーーっ!!」
「ダウド、此処は何とか皆で一緒にフォローして切り抜けよう、最終戦に
向けてこの先どんな事があるか分からない、この場はそう言う時の為……、
結束を固める時の為の試練の場なんじゃないかな……」
「けどっ!無事に切り抜けるまで戻って来れないってセレシア様
言ってたじゃないかーーっ!も、もしも……、皆は此処で全滅した
場合の時の事って考えてんのおーーっ!?」
「……」
「……試練で全滅、失敗してオイラ達も死んじゃったら世界も
終わりだよおーーっ!?」
ダウドの言葉に一同はっとする……。そして、ジャミルは……。
「……そうか、全然考えてなかった……、セレシアめ……、覚悟は
出来てるって、一応言っちまったしな……」
「♪ち~んぽこ、ちんぽこモ~ン♪」
「……アアーーっ!これだからーーっ!!」
(どーでもイイケド、ヘタレ、アンタ今日はヤケに強くでるわネ……)
モンは呑気にダウドの頭の上で太鼓を叩き、ダウドは絶叫する……。
更に、困った事態が……。
「ダウドもっ、落ち着いてっ!……ジャミルもっ、セレシア様を
悪く言うんじゃないっ!そう、……も、もう……、試練は既に始まって
いるんだ、そう……」
真面目なアルベルトは硬く目を閉じる……。が、少し冷や汗も
見受けられる。そんな彼を、さっきからずっと静かだったアイシャが
ちょいちょい突く……。
「ん?アイシャ、どうしたの……?」
「何だかおかしいの、私の武器……、ひのきの棒になっちゃってるの、
それに……、アルや皆の装備が……」
「え?あ、あーーっ!?……僕の武器もだ、ひのきの棒に……、
これは一体……」
「おい、お前らの装備、揃って布の服になってんじゃねえか……、
どうしたんだ?」
「……ジャミル、君もだよっ!」
「……あ、オイラもだあーーっ!……ひのきの棒に布の服だあーーっ!!」
突然起きた困った事態とは……。全員の装備品が突如、最低ランクの
ひのきの棒+初期の布の服装備になってしまっているんである……。
こんなワケの分からん場所に送られた上、いきなりのほぼ裸状態に
近い様な装備品チェンジ……。セレシアが送り込んだ世界、そして、
試練の行方は……。次回、更に非常事態が皆を襲う……。
「……でね、こんな時、オイラビンビン感じるの……、嫌な気配の予感……」
「……ダウドっ!止めろっ!」
ズシ、ズシン、ズシン……
「う、ううっ!?」
「……キターーっ!?」
異様な足音と、ダウドの悲鳴にジャミル達は恐る恐る後ろを
振り返る……。背後に迫って来ているのは巨人モンスター集団……。
トロル、ボストロール、ボストロールキング、サイクロプス、
動く石像、大魔神……。揃ってドスドス此方に歩いて来る……。
「……無茶過ぎんだろおおーーっ!!」
「……いやーーっ!!」
「シャアーーっ!!」
(……アタシ知らないわよっ、あ、アンタ達、ちゃんと倒してよネっ!)
「皆、落ち着いてっ!これが試練なんだよ!武器はこんなに
なっちゃったけど、取りあえず魔法と技で応戦しよう!……ダウドっ、
泡吹いてる場合じゃないよっ!」
「……あわわわわ~!」
「おい、アル、技も駄目だぞ……」
「え、えっ?」
アルベルトを見つめるジャミルのその顔は……、真っ青。瞬時に
アルベルトはジャミルが何を言いたいのか理解した……。
「……私も初期魔法のメラしか出せないのようーっ!どうしてーーっ!?」
「オイラもホイミだけですーーっ!!」
「お、俺なんか、旅芸人ん時に引き継いだ曲芸技の火吹き芸しか
ねえんだよーーっ!!」
……騒ぐジャミル、ダウド、アイシャの3人……。アルベルトも慌てて
自身のスキル技を確認してみるが、やはり戦士の時から引き継いだ
初期技、ドラゴン斬りしか出せず……。巨人達には余り通じない技で
ある。個々の技、魔法……、共に皆、余り役に立たない物がチョイス
され、初期段階に戻されてしまっていた……。
(もー、こうなったら戦っちゃえ!あたってドカーン!砕けろよネ♪)
「……何を軽く抜かすかーーっ!このガングローーっ!!」
「だ、駄目だ、皆!こう言う時は……」
「時は……?どうすんだ?」
「逃げようっ!!」
「「同意っ!!」」
アルベルトの言葉に3人も頷き、皆は一斉に駆け出し、逃走……。
幸い巨人集団は足が遅いので、何とか距離は離せたが……。要するに、
LV1の状態の処を、LV50付近のモンスターの群れの中に
無理矢理突っ込まれた様なモン。幾ら何でも流石にこうするしか
判断が出来なかった……。
「あそこ、洞穴よ!」
「……ありがてえっ!」
4人組は取りあえず見つけた洞穴の中へ身を隠す。しかし、此処でも
始まるヘタレのブチ切れいじけ大暴走……。
「モンちゃん、大丈夫?」
「モンモン♪」
「良かった……」
アイシャはほっとした様にモンを優しく撫でる。しかし、見ていた
ダウドは……。
「ま、全くもう、冗談じゃないよお!……オ、オイラ、今日こそ言わせて
貰いますけどね!」
「何だ?今日は、言ってみろ……」
「ま、また、さらっとジャミルは……、こんな命知らずなの
はっきり言って試練でも何でもないじゃないかあーーっ!只の
虐めだよおーーっ!!」
「ダウド、落ち着いて、とにかく座って……、ほら……」
立ち上がって吠えだしたダウドを慌てて座らせるアルベルト。
彼も少しは休みたい上、はっきり言って、こんな所で愚痴は
勘弁して欲しいと内心は思っていた……。
「じゃあどうすんだよ、オメー一人で帰るか?」
「……で、出来るならそうしたいけど、それも無理……」
「じゃあ、我慢するしかねえだろ、乗り越えられるまで……」
「……」
嫌になってしまったのか、ダウドはジャミルに返事を返さないまま、
膝を抱えて蹲る。……そのまま眠ってしまった。しっかり寝言を
言いながら……。
「オイラもう嫌だ、帰りたい……、○コ○チのチーズオムトッピング
カレー食べたい……」
「モォ~ン、ダウド、頑張ろうね、モン……」
アイシャに抱かれていたモンは、アイシャから離れると定位置の
ダウドの頭の上へ。そっとダウドに声を掛け、励ますのだった。
「嫌なのはみんな同じだ、アホ……、てか、最後に愚痴ったのは何だ……」
「でも、いつまでも此処に隠れている訳にも行かないし……」
「私だって正直分からないわ、こんな状態で……、どう戦えばいいの……?」
「……」
アイシャの言葉に黙ってしまうジャミルとアルベルト……。ダウドが
愚痴った通り、余りにも無茶すぎる試練だった……。
「ハア、そーだよネ、幾らなんでもこれはねーわ、ね、ヘタレの
言ったとおり、試練なんかムシムシ、もう帰っちゃえばいいじゃん、
アンタら、今のままでもじゅーぶんエルギオスのヤツ、シメられる
って♪」
久々にジャミルの中から姿を現すサンディ。だが、どうしてもこのまま
逃げるのはやはりジャミルとしてはプライドが有り、ヘタレと違い
納得が行く筈がなかった。
「……るさい、るさいっ!お黙りっ!糞試練だか何だか知らねーけど
絶対越えてやるってんだよっっ!!それにどうやってこっからリタイア
して帰るんだっ!」
「な、なにサっ!ゴキちゃんみたいに逃げ回ってたクセに良くゆーよっ!
あんなんでどうやってこの先、試練を超えるのッ!?」
「……サンディ、そう言う言い方はないだろう?僕らだって今は
ああするしか……出来ないから判断した事じゃないか!」
「……だ、だから言ってんじゃないのっ!逃げてるばっかじゃ
どーにもなんねーって!アタシはどうやってこんなんでクリア
するかそれを聞きたいんですケドっ!?」
「だから、それは……」
「……アルもサンディも止めて!今はケンカしてる場合じゃないでしょ!
私達、皆で力を併せるのよ、いつだってそうしてきたじゃない、落ち着か
なくちゃ!」
「もーイヤっ!こんな雰囲気っ、サイアクっ!!」
「……」
サンディは怒り、ジャミルの中へ姿を消す。またチームの雰囲気も
余り良くない方向に行っている……。セレシアの前でも必ず試練を
超えてみせると大見得切ったものの、やはり試練という物は想像
以上の過酷であった……。アイシャの言う事も最もなのだが、実際、
落ち着いてもどうにもならない事も皆分かっている。アイシャ自身も
……。そして、ジャミルは一人、更に困った事態に陥る……。
こんな時に猛烈に腹が減ってしまったんである……。……寝ている
ダウドが巨大な七面鳥、モンが巨大なシューマイに見えて来る
始末に……。そして、アルベルトが巨大なピザ、……アイシャが
巨大な豚まんに……。
「何?ジャミルっ、何か今……、私の方見て考えてたでしょっ!」
「何でもねえってのっ!……あだだだっ!」
……こんな時でもじゃれあっていられる余裕があるんだから……、
君達は幸せだね……と、アルベルトはジャミルとアイシャの方を
ジト目で見ていたのだった。
「とにかくだ、何時までも此処に隠れてても問題は解決
しねえって事……」
「そう、だね……」
ジャミルの言葉に頷くアルベルト。アイシャもコクンと頷く。
「さ、行くぞ、ダウド……」
「う~ん……」
ジャミルは眠っているダウドを揺り起こす。だが、寝起きの悪い
ダウドは無茶苦茶機嫌が悪かった。
「……何だよおっ!ジャミルのアホっ!ドーテイっ!!……何で値段
上げたの!吉○家!」
「何とでも言え、今は堪えてやる、けど、無事に此処から出たら、
オメー覚えとけよ……、だから、最後のは意味分かんねえよ……」
「もう忘れたよおっ!」
「さっきの巨人モンスター集団もどっか行っちゃったんじゃ
ないかな……、大分時間も経過してるしね……」
「そうだといいけど……、そうね、大丈夫よ!」
アルベルトは少しでも皆に希望を持たせる様に気遣い、アイシャも
同意。処が……。
「……」
「ジャミル、どうしたの……?」
ジャミルは洞窟の入り口で先に進まず何故か立ち往生している。声を
掛けたアルベルトに振り向くジャミルの顔面蒼白顔……。一瞬で
アルベルトも又、嫌な予感を覚えた……。
「おかしい、道が……無くなってる……」
「……ええっ!?」
ダウドやアイシャも急いで駆け寄り、アルベルトの後ろから状況を
確かめようとする。ついさっきまで砂漠だった箇所が無くなり、
何故か今度は濁流になっており、4人は崖っぷちに立たされて
いるんである……。
「……おかしい、絶対おかしいよおおーー!!」
「下、川さんだモン、……此処、飛び込むのモン?」
「やーめーてえええ!別の道を探そうよおーー!!」
「んな事言ったってだな、お、……お?」
「?」
「「……わああーーーーっ!?」」
問答無用で、ジャミル達がいた足場が消え、4人は濁流の中へ落下。
グビアナの地下水路の悪夢再来、そのまま濁流を4人は流されて
行った……。
「……じょ、ジョーダンじゃねえわヨっ!アタシを水没させる気かっ
つーのっ!ジャミ公、何とかしなさいよーーっ!!……み、みんなっ!」
サンディはジャミルの中から脱出すると、急いで空中へと避難。しかし、
サンディ一人の力では皆を助ける事が出来ず、どうにも出来ないまま、
只管4人は濁流の中を流されるだけだった……。
「……モ、モォ~ン……」
「モン、君もしっかりダウドの頭の上に掴まっているんだよ、絶対放しちゃ
駄目だっ!ううっ……」
「……こんなアトラクションやだよおーーっ!アルーっ!オ、オイラも
助けてええーっ!!」
「……ダウドっ!!」
「はあ、はあ、……が、がぼっ!」
「……アイシャっ!は、早くこっちに……、掴まれっ!」
「……ジャミルーーっ!!」
ジャミルは引き離されていくアイシャに手を伸ばそうとするが、
どうしても届かずアイシャはどんどん川を流されて行く……。
どんなに急いで泳いで行こうとしても、余りにも流れが速く
流石のジャミルでも追いつけそうになかった……。
「……オイラもうダメ~ん、アル、さようなら、ありがとう~……」
「キャーモンっ!?ア、アルベルトーーっ!!……助けてモンーーっ!!」
「モンっ!……ダウド、諦めちゃ駄目だっ!……しっかりしろっ!!
……う、うぷっ!」
疲れてしまったダウドは意識を失い、そのまま川に沈みそうに……。
ダウドの頭上のモンは必死でダウドを起こそうとするのだが……。
モンだけならサンディ同じく空を飛んでこの場から逃げる事も
可能だろうが、モンはそんな事せず、必死にダウドを助けようと
頑張っている。だが、このままではダウドもモンも揃って川に
沈んでしまう……。普段から体力の無いアルベルトも何時川に
飲まれてしまうか分からない状態に……。
「やーモンやーモン!……ダウドーーっ!!」
ぷ~、ぶりっ……
「……ご、ごぼ……、うわあーーっ!!何だよおおーーーっ!!」
危うく沈みそうになったダウドはモンの起死回生の一撃を食らい、
復活。目を覚す。しかし、流されている状況は変わらず、このまま
流され続ければ、何れは何所へ全員向かうかはお約束、一目瞭然だった。
「……アイシャーーっ!」
「……ジャミルーーっ!!」
一方のジャミ公はアイシャの手を掴む事が出来ないまま、アイシャは
どんどん先へ流されて行った……。やがて、彼女の姿が見えなくなる。
……滝壺へと落ちた様だった……。
「アイ、シャ……」
その姿を見て、がっくり来たのかジャミルも気を失い、川の中へ……。
もう何も考えられなかった。考えたくなかった……。
……ジャミル、ウォルロ村の守護天使よ……
「……誰だ?……もういい加減その呼び方で呼ぶの止めろよ……」
意識を失い、川へと沈んだ筈のジャミルは息苦しい水の中で
目を覚した。……目の前にうっすらと浮かぶ面影。見覚えの
有る……、頭。スキンヘッド……。
しっかりしろ、ウォルロ村の守護天使ジャミル、お前は私を
越えたのだぞ、こんな処で挫けている暇は無い筈だぞ、さあ、
目を覚せ……、立ち上がれ……
「だから止めてくれよ、俺、もう……、だって、どうすりゃいいんだい……」
……我が師匠を……、エルギオスをどうか……、頼む……
「……エル、ギ、オス……」
其所でジャミルは呟き、再び意識を失う。目の前のイザヤールの
面影も消えて行く……。
「……げほっ!!」
ジャミルは目を覚す。だが、気が付いたらちゃんと何故かベッドの上に
寝かされていた。うっすら辺りを見回すと見た事のない部屋の中だった。
自分は川の中で溺れた筈だが、誰かが助けてくれたのか……。
「あっ、気が付いた、良かった……」
「……アンタは……?」
目の前で自分を見つめる黒髪短髪ヘアの美少年。目を覚したジャミルの
姿を見て安心したのか、にこりと優しい笑みを見せた。
「……アンタが助けてくれたのか……?」
「うん、助けたって言うか、上流から流されて来たみたいで川縁に
倒れていて……、でも、まだ何とか息があったから直ぐに家に
運んだんだ、良かったよ……」
「そっか、ありがと……」
そう言い掛けてジャミルははっとする。此処にはジャミル以外の他の
メンバーの姿が誰も見えない……。皆、一緒に流されていた筈である。
アルベルト、ダウド、アイシャ、……自分の真上で吠えていた筈の
サンディ、そして、モン……。
「ま、また……、皆……、っ!」
どうしてこう、直ぐに皆と引き離されてしまう状況に陥ってしまうのか……、
ジャミルは歯を食い縛って悪い想像を振り払う。助けてくれた少年へ、
他に一緒に誰か流されて来なかったか訪ねようとした、その時……。
「……来る、又あいつらだ!」
「……え、ええっ!?ちょ、ちょっと待っ……」
ジャミルが仲間の事を訪ねようとした矢先、少年は家の中に立て掛けて
あった銅の剣を持ち、家を飛び出す。慌ててジャミルも後を追う……。
「ふぇふぇふぇ、ぐへへ……」
「……あ、ああっ!?」
現れたのは……、砂漠でジャミル達を襲撃に来た、巨人モンスター
集団だった。何故、こんな処までとジャミルは思うが、そんな暇は無い。
このままでは助けてくれた少年が危ない。だが……。
「危ねえっ!……逃げろっ!!」
「しつこい、何度来ても……、お前達には絶対渡さない……」
しかし、何故か少年は怯む事無く、怯える事も無く、ジャミルの言葉に
耳を貸す事も無く、目を見据えて目の前の怪物達を鋭い目で睨んでいた。
……銅の剣を構え……。一体何が起きようとしているのか……。
zoku勇者 ドラクエⅨ編 77