zoku勇者 ドラクエⅨ編 76

セレシアの導き

一方、天使界ではイザヤールの死の事も広まり、天使達は皆、ショックで
悲しみに暮れていた……。特に……。ジャミルは今とてもラフェットに
会える心境ではなかった……。

「けど、逃げてたら駄目だよな、ちゃんと向き合わねえと……」

「ジャミル……、悲しいのは皆同じよ、少しでもラフェットさんが元気に
なれる様に……、私達も願ってる……」

「君が元気な顔を見せてあげればきっと、ラフェットさんも安心するんじゃ
ないかな……」

「えへへ、行こうよお~」

「うん、ラフェットのところ、いこーモン♪」

「……皆……、そうだな……」

ラフェットの元へと向かう前に、イザヤールの死を悼んだ沢山の
天使達が彼の為に祈りを捧げてくれ、ジャミルを励ましてくれた。

「やれやれ、こう言う雰囲気、アタシ、苦手なのよネ、ジャミ公、
悪いけどアタシ、テンチョーの処に行ってくるネ!」

「……」

サンディはジャミルの中から飛び出すと、箱船へと戻って行った。
無理もなかった。普段から明るいミラーボールの様な彼女にこんな
お通夜の様な雰囲気は……。

「まさかあの……、エルギオスが生きていただなんて……、未だに
信じられん、しかも捕まっていた間に人間や神を怨む様になって
いたなんてな……」

「……お前の師イザヤールは最期まで立派な天使だった、そうだよな、
ジャミル……」

「元気出してね、ジャミル……、イザヤールもあなたの成長をきっと
喜んでくれてるわ、姿が見えなくなってもきっと何処かで見守って
いてくれるわよ、ね?」

「ありがとう、皆……、俺達も最後の最後まで渋とく食い下がる
つもりさ、エルギオスの野郎の暴走は何が何でも絶対に止めて
みせる……」

そして、向かったラフェットの部屋。だが、彼女は部屋にはおらず、
部屋の前でラフェットの弟子が泣き崩れていた……。

「ジャミル……、イザヤール様のこと……、……うぇーん!ひっく
ひっく……、ごめんねごめんね……、ジャミルの方が何倍も悲しいよね、
なのに……、ぐすっ、ごめんなさい……、ラフェット様も元気をなくし
ちゃって……、ぼく、どうしたらいいんだろう……」

ジャミルはしゃがみ込んでラフェットの弟子の頭をぐじぐじ撫でる。
そして、こう呟く。

「そうだな、でも、いつまでも泣いてちゃ駄目だぜ、お前がこれから
ラフェットを守るんだからな、俺も偉そうな事言える立場じゃねえし、
まだまだだけど……、一緒に頑張ろうぜ、強くなろうや……」

「う、うん、そうだね……、やっぱりジャミルは凄いね……、ぼくも
いつか、イザヤール様やジャミルみたいな守護天使になるんだ、そして
ラフェット様を守るよ……」

「頑張れよ!……」

「ありがとう、ジャミル!」

ラフェットの弟子はジャミルに元気を貰い、何処かへと走って行く。
だが、励ました本人の心境は……、複雑であった……。

「……ああは言ったけどよ、俺、実際今まで何してたんだよ……」

「ジャミル……?」

アイシャは何となく、ジャミルの様子がおかしい事に気づく。まるで自分を
責めている様であった……。

「何言ってるんだよ、僕達、皆で力を併せてちゃんと女神の果実も
7個集めただろ……」

「何か、いや~な予感がするなあ……」

アルベルトもフォローしているが、ダウドは横目でジャミルの方を
ちらちら……。今のジャミルの態度はまるで……、どこぞの誰かさんを
振り返っている様だった……。

「俺、イザヤールの本音も知らねえで、ブチ切れて責めるばっかでよ、
アイツがどれだけどんな気持ちで孤独と戦ってたのか……、全然
分かってやれなかった、バカだよな……、んでもって、結局は
イザヤールも救えなかったしで、堕天使としてエルギオスも復活
させちまった……」

「そう、バカだよ……、そう言う思考がっ!……君らしくないよっ!」

アルベルトは仁王立ちでスリッパを持ち、ジャミルに迫る……。
ダウドは、こんなトコでお願い、やめて、やめてくださああ~い!
……と、身を縮めた。しかしジャミルは、叩くんなら好きなだけ
叩けよとばかりに遠い目でアルベルトの方を見た……。

「もうっ、止めなさいよっ!アルもジャミルもっ!お願いジャミル、
落ち着いて!冷静になって、……ねえ……」

「……」

しかし、ジャミルは黙ったまま。……アイシャは泣きたくなる。
いつも元気なジャミルもどうしていいか分からない状態になれば、
途端に立ち止まってしまう。それは彼が優し過ぎる故……。けれど、
此処で怯んではいけないと……、アイシャはゴシゴシ乱暴に
瞼を拳で擦ると気合いを入れた。その途端……。

「……シャーモン!!」

「いてっ!!」

「モンちゃん!?」

「あ、わわわ~!」

慌てるダウド。モンはダウドの頭から離れると、ジャミルの頭部の方へ
飛んで行き、ジャミルの頭に思い切り囓り付いた……。

「シャーモンシャーモン!ジャミルのバカっ!」

「いてーなっ、んだよオメーはっ!コラっ!止めろっ!
……アタタタタっ!!」

「どうしてジャミル、ダウドみたいになってるモン!……ダウドの
マネしちゃダメなんだモン!……シャーーっ!!」

「……あ、あのねえ~……」

「モンちゃん、止めなさいっ!」

「モ、モン、落ち着くんだっ!」

アルベルトもアイシャも、ジャミルの頭からモンを引っ剥が
そうと大騒ぎになった。一体何の騒ぎだと、天使達も心配して
皆集まって来る……。

「み、皆さん、お騒がせして、大変申し訳ありません!」

「……モンちゃん、お願いだから止めてっ!!」

「モン、モン、……元気なジャミルが大好きなんだモン、いじけてる
ジャミルなんか嫌いモン、だから、だから……」

「モン……、お前……」


「「ブババババっ!!」」


モン、いつもダウドに引っ掛けているよりも強力な特大の屁を
ジャミルの頭の上に一発噛ます。それはモンの悲しみが詰まった
ジャミルへの仕置き屁でもあった……。だが、余りにも臭くて、
モロ臭いを嗅がされたジャミルはコロッと気絶。大人しく
なった……。

「キャーーっ!?ジャミルーーっ!!」

「……皆さん!ほ、本当に……、申し訳ありませんっ!!」

「うげっ……、ぐ、ぐざい……よお~……」

「……ひっく、モォ~ン、モォ~~ン……」

アルベルトは慌てて集まって来た天使達に謝罪しまくる……。
だが、誰一人として、嫌な顔はせず、少しジャミルを休ませて
あげたらどうかなと言ってくれた。……皆は天使達の心遣いに
感謝し、もう少しジャミルを休ませ、落ち着かせてあげようと
言う事になったのだった。

……あれから……。ジャミル達は天使界内に有る休憩所を借りて
休ませて貰っている。だが、目を覚したジャミルは相当機嫌が
悪かった。モンに噛み付かれ、……特大の屁を放かれ……。モンも
決して悪気があってした事ではないのだが……。何となく
しょんぼりしていた。

「モン~……、ごめんなさい、モン……」

「モンちゃん……、ジャミル、もういい加減で許してあげてよ、
モンちゃんだってジャミルの事、とっても心配してるのよ……」

「大丈夫さ、分かってるから、……俺、モンに怒ってんじゃねえよ、
自分自身にだ、だから……、モン、気にすんな……」

「モン~?ジャミル……」

ジャミルはそう言うと、立ち上がり、モンの頭を指で軽く突いた。
そして。

「……少し、一人で散歩して来る、新しく戻って来た天使達の様子も
気になるしな、取りあえず、ラフェットの処には俺一人で行く……」

「……ジャミルっ!待っ……」

「アイシャ……」

ジャミルを追掛けようとしたアイシャをアルベルトが止めた。
アイシャの顔を見て、黙って首を振り、少し、一人にさせて
おいてあげよう……、の合図を目で送った。

「たく、チビと言い……、モンと言い、あの尻癖の悪さは一体
誰に似たんだ……」

ジャミルはブツブツ呟きながら休憩所を出て行く。だが、これだけは
どうしても、その場にいる全員が絶対に言っておかなければならない、
……アンタだ、アンタ!!……と。

「はあ~、全くも~、モン、ジャミルの言う通りだよお、超本人が
そう言ってるんだから、余り気にしなくていいからね、一旦いじけると
す~ぐああなるんだから、昔から困……」

「プッ……」

「あ?ああ……?アル、何で其所で人の顔見て笑うワケ……?えっ……?」

「……きゃはははっ!」

「……アイシャまでっ!……何だよおおーーっ!!」

声を揃えて笑い出した二人にダウド困惑……。だが、少しは徐々に
また明るい雰囲気が戻りつつあった。後は……、ジャミルがまた天気に
なってくれる様に願うばかりだった。

「モンモン、やっぱりジャミルとダウドって何処か似てるんだもん、
仲良しのお友達モン、勿論、みんなとも、モンとも♡モ~ン!」

「ふふっ、そうよね~!」

「……えええーーっ!?」

……そして、一旦皆と離れ、天使界の中を一人で歩いてみるジャミル。
こうして一人で歩き回っていると、最初の頃に戻った様な気分になった。
……久しぶりの天使界を回っている最中に、すれ違う天使達から
イザヤールの事について色々話を聞けたりした。ウォルロ村での
守護天使としての役目を終え、ジャミルに譲った後、イザヤールは
どこの町の守護天使にも属さなかったと……。

「本当の裏切り者はイザヤールじゃない、……エルギオスだったんだ!」

「エルギオスの奴、よくも……、絶対許さない……」

「いつかまた、落ち着いたらイザヤールの色々な思い出話が出来ると
いいな、な……」

そう励ましてくれる天使も。……そう言われて最初に速攻で思い出した
のは、イザヤールの頭に油性マジックで落書きをし、仕置きを貰った事、
だった。……ジャミ公は冷や汗を掻いた。

「……バカだよなあ~、俺も……、……あ……」

「ジャミル……、本当に無事で良かった、戻って来てくれたのね……」

「ラフェット……」

聞こえて来た声に正面を向くと、此方へとゆっくり歩いて来る
女性の天使……。その姿を見てジャミルは戸惑う。どうしても
今はその人物に会わせる顔がなかった。自分の所為でイザヤールは
命を落とした様な物なのだから……。

「……よしてくれよ、全然良くねえよ、俺の所為で……」

悲観するジャミルではあったが、ラフェットは構わずジャミルに近寄る。
そして、静かにジャミルの手を取り、そっと握り締める。

「少し、時間はあるかしら、あなたとお話がしたいの、ね……?」

「……」

それ以上、ジャミルは何も言えなくなり、押し黙る。そのままラ
フェットの後に付いていく。ラフェットがジャミルを連れて行った
場所。世界樹へ向かう道中の崖っぷち寄りの通路だった。

「……何かもう、此処からでも地上も何も見えなくなってるな……」

「ええ、もう地上でも既に世界に異変が起きているらしいわ、
昼間でも殆ど空が真っ暗なんですって、これもエルギオスの
仕業なのかしら……」

「……」

ジャミルは下界を見上げながら思う。リッカ、ニード、……地上で
出会った懐かしい友達は今、どうしているのだろうかと考える……。

「……暗い雲が邪魔してるけど、でも、あの向こうにはきっと今も
綺麗な星空が見える筈よ、ねえ……、ジャミル、知ってる?夜空の
星は皆元々天使だったんだって、役目を終えた天使の魂は空へと
昇り……、星になるんだって……、イザヤールも、きっと……」

「……ラフェット、俺……」

「……ジャミル、お願い、今はそれ以上何も言わないで……」

ラフェットはジャミルの方を見ず、そのまま言葉を続けるが、
その声はイザヤールを思っているのか、涙声だった。

「アイツ、どうしようもない意地っ張りだから……、最後まで
自分の任務を一人で全部背負って全うしようとしたの、誰かに
助けて欲しいって言えないままで、バカよ、本当に……、それこそ
あの頭を一発ブン殴ってやりたかったわ……」

「……」

「ねえ、ジャミル、アイツ……、イザヤールの事、どうか忘れないで
いてあげてね、今はそれだけ、それだけでいいの……」

ラフェットは声を詰まらせ、再び下界の方を見つめた。イザヤールが
たった一人で立ち向かい、守ろうとした世界……。その世界が今、
彼の師である、エルギオスにより、暗黒世界に包まれようとしている。
イザヤールが命懸けで助けようとしたエルギオス。その男が間違った
方向に進もうとしているならば、正しい道へと引き戻さねばならない
。もう、いつまでも塞ぎ込んでいられない……。再びジャミルに戦う力が
沸いて来た……。

「ラフェット、色々サンキューな、俺、もう行くよ……」

「ジャミル、……まさか……」

ジャミルはラフェットの方を向いて静かに頷いて笑みを見せた。

「……オムイの爺さんは気落ちしちまってるけど、俺達、
これから神の国へ乗り込むつもりさ、……エルギオスの
野郎を止めなくちゃ……」

「ジャミル、……ありがとう……、私、何も出来ないけれど、
此処で祈っているわ、あなた達に宿った希望と言う名の炎を
絶やさない様に、どうか……、ずっと祈ってる……」

「ああ、またな、ラフェット……」

ジャミルはラフェットに別れを告げ、……再び、待っていてくれる
仲間の元へと。強く、強く歩き出した。……つもりが、前しか
見ていなかった為、落ちていた木の実で滑ってすっ転がって倒れた。

「……いっ、……てえええ~……」

ジャミルは皆の元へ戻る前に根っこの部屋へ。最初に助けた天使達は
すっかり元気になっており、新しく救助された天使達も、身体を癒やし、
落ち着きを取り戻している様だった。

「……そうか、やはり君達は神の国へ……」

「正直、話し合いで大人しく止められる様な相手じゃない、説得なんか
無理だってのは分かってる、戦うのは避けられないさ、覚悟はしてる……、
けど、今、俺らがやらなくちゃ……」

「……ジャミル、本当にあなた達は……、どうしてこんな事になって
しまったのかしら……、何も出来ないけれど、祈っているわ、天使界、
人間界にどうか平穏が戻る様、そして、願わくば迷えるエルギオスの
魂も救われます様に……」

女性の天使の一人がジャミルに向かって胸の前で手を組み、静かに
祈りを込め、平穏無事を願ってくれた……。

「……有り難う……」

「……我々天使から奪った力で魔帝国ガナンや闇竜バルボロスを
復活させたのがまさかあのエルギオスだったとはな、それにしても
何故エルギオスは其処まで人間や神を憎む様になってしまったの
だろうか……」

「イザヤールもイザヤールだよ、憎まれる様な真似までして、
芝居を打って……、どうして一言何も言ってくれないんだよ、
我らは皆同じ天使、仲間じゃないか……」

「それは……、……とにかく、俺達もう行かなくちゃ、色々
有り難うな……」

「気をつけて、どうか女神のご加護があらん事を……」

「……セレシア様、どうか勇気有る若者達に祝福を……」

エルギオスが豹変してしまった理由を知ってしまったジャミルの
心境は複雑であった。けれど、もう立ち止まっても迷っても
いられない。人間も天使も皆が安心して暮らせる平和な世界を
取り戻す事……。それが、ジャミル達に課せられた最後の使命
なのだから。

「けれど、お前、額の処どうしたんだ?……大分腫れ上がってるぞ……」

「……ねえ、あなたも、もう少し此処で癒やして行ったらどうかしら?」

「!!こ、これは……、あはは、あ~ははは!大丈夫さ!じゃ、
じゃあ、また……」

ジャミルは心配してくれる天使達に手を振りながら急いで根っこの
部屋を後にする。……言えない、言えませんよ、まさかさっき、
ドジ踏んですっ転んで出来たコブだなんて、言えない、言えないわ……、
だけど、涙が出ちゃう、男の子だモン……」

「……出ねーってのっ!!」

「♪あはは、ジャミルだーっ!またほえてるーっ!ジャミルは
あいかわらずおもしろいなーっ!こんどまたあそんでねー!」

「……るさいっ!おだまりっ!」

「あ~、すごいおでこだあーーっ!」

通りすがりの天使のガキンチョに笑われ、ジャミ公は急いで退場。
仲間が待ってくれている休憩所へと急ごうとした。……すると……。


……ジャミル……、急いで下さい、どうか……、私の、元へ……


「……この声、まさか……」

聞こえて来た声にジャミルは後ろを振り返る。声の気配を世界樹の方から
感じたからである。

「セレシア……」

ジャミルは休憩所まで戻ると仲間達に事を報告……。するのだったが……。

「そう、セレシア様が……、ジャミルを呼んでいるんだね……」

「間違いない、声は世界樹の方から聞こえたんだ……、皆も一緒に
来てくれよ……」

「ええ、勿論一緒に行くわよ、でも、その前に……」

「うん……」

「?」

……ジャミル以外のメンバーは唇を震わせ、顔を見合わせる……。
そして、等々我慢出来なかったのか、デコが突き出ている状態の
ジャミルを見て思いっきり吹いた……。


「「……あ~ははははっ!!」」


「んだよっ!人のツラ見て笑いやがってからにっ!んなバカ笑いする
こたぁねえだろっ!」

「ご、ごめん、だっていきなり……、僕、一体突然何が部屋に
乱入して来たのかと……」

「……よお~し、テメーら全員デコ出せっ!デコピンしてやるっ!!」

「ジャミル、オデコが出てるお魚さんみたいなんだモン♪」

「……え~と、確か、コブダイだったかな……?」

「さっすが、アル、色々知ってるねえ~!」

「……じゃねえんだよっ!このデブ座布団腹黒ヘタレっ!!」

「……無理矢理繋げるんじゃないっ!全くっ、……ダウド……」

「ん~、はいはい……」

アルベルトに言われ、ダウドは仕方無しにジャミルに回復魔法を。
お陰でどうやら腫れたジャミルのデコも少しは引けて来た様子。

「ふん、一応礼は言っとく……、悪ィな……」

「もうっ!普段からデコピンばっかりしてるから自分にお釣りが
返って来たのよ!本当にもう、一体何したの?」

「……るさいっ!……言えるか、滑ってすっ転がって、……デコ
打ったなんてよ……」

「思いっきし言ってるじゃん……」

「シャ~……」

「るせーるせーるせーっ!……このヘタレ座布団っ!!」

「……だから無理矢理まとめないでよおーーっ!!」

ジャミ公はジト目で自分を見ているダウドとモンに暴言返し。
こんな時はやっぱりコレの出番かなあと、アルベルトは
スリッパをち~らちら。ジャミ公を大人しくさせた……。

「……ふんだっ!覚えてろっ、腹黒っ!!」

「もう忘れたよ、全く、あんな状態でセレシア様の処に言ったら
それこそセレシア様がびっくりしちゃうかも知れないじゃないか……」

「でも、呼んだんだから……、も、もう、見てる訳じゃないの?」

「ダウド、もうそっとしておいてあげましょう……」

「……つついちゃダメモン!」

「……もうええわっ!き、気をつけねえと、とにかく世界樹の処だっ、
行くぞっ!……アーーッ!!」

「「……ジャミルーーっ!!」」

「……」

言ってる側から又、ジャミ公、ドジを踏む。何も考えず今度は突っ走り
過ぎて、ドアに正面衝突……。再びデコを打った……。けど、僕ら、
本当にこの先、乗り切れるのかなあと、暴走・おっちょこちょい、
ドジ連発のジャミ公にアルベルトは心配になって来る……。でも……、
まあ、いつもの事かなと。……軽く含み笑いをしておいた……。

モンを連れ、再び世界樹の前へと訪れる4人。……耳を澄ますと微かに
聞こえて来る、セレシアの声が……。


……悲しみが……空を覆っています……、堕天使エルギオスの
悲しみと怒りが今、雅に世界を染めようとしています……


「……セレシア……、地上の空が真っ暗になって異変が起きてるって
聞いたけど、もしかして、それは……」


……この上堕天使エルギオスに罪を重ねさせてはいけません……、
あの者の心は決して汚れきってはいない……、まだ、彼の心を
救える時間は残されている筈……


「……」


……ジャミル……、あなたがこれまでの旅で出会いを育み、
助けて来た人間達を覚えていますか?


セレシアの問いにジャミルは静かに世界樹を見上げる。そして、思い出す。
これまでの事。地上で初めて出会った友、……女神の果実を通じて出会い、
時には対立し、友情を育んで行った沢山の懐かしい友たち、数々の出会い、
別れの日々の事を……。

「ああ、みんな覚えてるよ、……カデスで出会ったボン、ナザム村の
ティル、エルシオン学院のモザイオ、カルバドのナムジン、グビアナの
ユリシス女王、サンマロウのマキナ、マウリヤ……、カラコタのシュウ、
エルナ、ペケ、ビタリ山のラボオ爺さん、ツォの村のオリガ、ダーマの
大神官、……ベクセリアのルーフィン先生、エリザさん……、セント
シュタインのフィオーネ姫、黒騎士レオコーン、そして、……ウォルロ
村のニード、リッカ……」

ジャミルは懐かしい思い出に目を瞑る。そして、時同じく、
その思いは遠い場所にいるリッカ……、彼女の元へと……。

「……ジャミル、あなたは今、何処を旅しているのかな……、
会いたいな……、いつか、又、きっと会えるよね……、
……どうか、あの人と同じ名前の守護天使ジャミル様、
……どうか、ジャミルと皆をお守り下さい……、いつか
きっと、この暗い黒い雲と空を乗り越えて……、きっと、
……笑顔で皆に会える日を信じています、……どうか……」

……リッカは目を閉じ、両手を胸の前で組み、暗い空に向かって
静かに祈りを捧げる。そして、その祈りは一筋の光となり空へと
昇っていく……。

「……うわああっ!?な、何っ、何だよおーーっ!?」

「今、下が何か光ったモンーーっ!?」

「……本当だ、この光は地上の方からだ……、これは一体……」

「ま、まさか、又エルギオスなのかしら……?」

「セレシア……」

ジャミルはパニックになる仲間達と対照的に意外と今回は
落ち着いていた。そして、再び目を開くと世界樹を見上げた……。


その光はあなたに出会い、悲しき運命から逃れる事が出来た
沢山の人間達の感謝と奇跡の祈りの力……


「不思議ね、地上から溢れてくる光が……、どんどん大きくなってるわ、
……きゃっ!?」

「眩しいんだモンーーっ!?」

リッカがいるセントシュタインだけではなく、……地上から天使界へと
光が送られて来る。これまでジャミル達が救って来た友がいる、全ての
大陸からの光が天使界を満たし、温かく包み込んでいく……。

「ホント、どーなってんのさあ、これ……」


彼らはあなたに心から感謝を捧げています……、清き心をもつ
人間達が……、あなたが助けた人間達が……、今度はあなたの……、
ジャミルの力となる……


「うわ!……こ、これは……?」

「ジャミル、それはもしかして……、新しく生まれた女神の
果実じゃないかな……」

「本当ね……」

「ど、どーして?」

「モンモン?」

地上から送られた光は女神の果実となり、ジャミルの手の
平の上に落ちる……。仲間達も不思議そうな顔で、再び現れた
女神の果実を見つめた……。

「セレシア、どう言う事なんだ?説明してくれよ……」


その果実はあなたが助けた人間達の感謝の心が結実してたった今
生まれた物です……


「……」

「やっぱり助けたみんなからの今までありがとうのお礼なんだモン!」

「そうよ、ジャミル!」

「だけど……、これをどうしろって……」


ジャミル、その果実を食べれば恐らくあなたは人間になって
しまうでしょう……


「!」

「……セレシア様、それは……一体どう言う事なのでしょうか……」

「つまりだよお、も、もう……、ジャミルに天使をリストラ
させろって事……?」

「モォ~ン?」


けれど……、人間ならば天使の理に縛られる事なく堕天使エルギオスと
戦えるでしょう……


「そうか、俺が完全に人間になればもう、上級天使だのなんだの関係なく、
奴とバトルも思う存分出来るって訳か、成程……」

「でも、ジャミル……、それでいいの……?本当に人間になっちゃえば、
もう……」

「……」

アイシャは心配そうにジャミルの方を見る。人間になればもしかしたら
もう天使界にも完全に二度と来れなくなるかも知れない。……けれど……。


辛い選択を強いている事は分かっています……、ですがもうこの方法しか
ないのです……、それから……、この球をあなたに……


「こ、こっちは何だい……?」


その球は、これからエルギオスと戦うあなた達へ最後の力を授ける為、
希望へと導く光の球……、果実を食べ、全てを受け入れる覚悟が出来た
その時、もう一度私の元へと来て下さい……


「……覚悟、か……」

果実を見つめ戸惑うジャミル……。そんなジャミルを珍しくフォロー
したのはダウドだった……。

「……ジャミル、だ、だってさあ、心配する事ないんじゃないの?
だって、サンディがオイラ達を此処でも問題なく活動出来る様に
してくれたんだしさあ、それに全てが終わったらオムイ様も地上と
天使界との交流を始めたいって言ってたじゃん、だからそんなに
心配しなくても大丈夫な気がするよお~……」

「そーモン!」

「ジャミル、そうだよ、一旦箱船の方に戻ってまずはサンディに
相談してみよう……」

「……アル、分かった……、まずはそれからだな、……セレシア、
余り時間がねえのは分かってるけど、俺も考える時間が欲しい、
もうちょっと待っててくんないかな?」


分かりました……、それでは、待っています、……ジャミル……


「……」

セレシアの気配と声が世界樹から聞こえなくなる。まずはサンディに
相談してみる事が先決だと、4人はアギロの待つ箱船へ向かうのだった。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 76

zoku勇者 ドラクエⅨ編 76

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-06-28

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work