ハイリ ハイリホ(31)(32)
―十六 パパ・二―十六 僕
―十六 パパ
竜介の喜びの声が聞こえる。
俺も、確かにうれしい。
竜介、もうすぐだ、待っていてくれ。無事、地上に不時着した暁には、パパの命がけの冒険談を聞かしてあげよう。
しかしながら、待っていてくれと言ったものの、特別に、俺が何をした訳でもない。ただ、勝手に、背が伸びて、命が後わずかでなくなるところで、再び、俺の意思に関係なく、背が縮んだだけだ。まあ、それはそれでありがたい。小学校の校舎とも同級生になった。近所のけやきの老木とも。そして、俺が大きく穴を開けた屋根とも。一階の天井とも。そして、こともあろうに、我が子の竜介とも。
二―十六 僕
いつかは、僕がパパを追い越すときが来るだろう。それは、身長や体重などの目に見える肉体的な変化だけでなく、社会人として、地位や名声、収入、社会との関わり方、人格、性格など、様々な面においてだ。
ただ、それがたったひとつのことにおいてなのか、すべての面においてなのか、わからない。パパと僕は親子だけど、同じ道を歩んでいるわけじゃない。僕はパパのコピーじゃないし、パパだって、おじいちゃん、ひいおじいちゃん、そのまた先祖のコピーじゃない。追い越す、追い越されたなんて、比較すること自体がナンセンスだ。親子で共に歩む。同じ時間を共有する。パパ、一緒に歩こうよ。
「パパ、パパ、今度は、どうしたの。せっかく、いつものパパに戻ったかと思ったのに、今は、僕と同じ背の高さだよ」
ハイリ ハイリホ(31)(32)