zoku勇者 ドラクエⅨ編 73

大天使イザヤール

「起きろォォーーっ!皆ーーっ!目を覚せェェーーっ!!」

「……この力……、な、何……?身体から活力が湧き上がって……」

「ジャミル……?」

「うう~、あれ、オイラ……?」

ジャミルがオーラを送り、倒れていた仲間達が復活……。イザヤールが
命と引き換えに与えてくれた奇跡の一度だけの力……。その力を無駄に
しない様……。何が何でも絶対に勝ち、戦いに終止符を打たなければ
ならない。今度こそ……。

「皆っ!……よ、良かった……」

「ジャミル、君のその翼は……」

「凄いわっ!」

「……て、てててて、天使ィィーーっ!?」

「だからっ!何回言ったら分かるんだってのっ!俺は元々
天使なんだっつーのっ!……イザヤールが……、俺の師匠が
力をくれた、……だからっ!!」

ジャミルは復活したヘタレを小突きながら倒れているイザヤールを
振り返る。仲間達も……。まだ微かに息はしていた。イザヤールは
倒れたまま、息絶え絶えの状態で顔を上げ、戻って来た仲間達を
見て口を開いた……。

「頼む、皆……、私の大事な弟子を……、どうか……」

「……イザヤールさん、喋っちゃダメっ!……あ、あっ……」

アイシャが慌ててイザヤールの手を取る。もう既に限界が来ている
様だった……。其処に間髪入れずガナサダイが現れる……。

「うわあーーっ!?く、来るよおーーっ!!」

「よくも……、何処までもこの皇帝を侮辱……、……あぎゃあ
ーーーっ!?」

「落ち着けダウドっ!……テメーはうるせーっ!暫く引っ込んでろっ!」

ジャミルはドラゴンキラーに力を込め、襲い可掛って来そうになる
ガナサダイを斬り倒す……。ガナサダイは勢いで遠くに吹っ飛んで
いった……。

「モンーーっ!」

「みんなーっ!やっぱアンタラ、スンゲーしぶといじゃんっ!呆れたっ!」

「モォーーンっ!」

「サンディ、モンっ!」

サンディとモンも駆け付ける。サンディはジャミルの中に入り、モンは
定位置のダウドの頭の上に付く……。

(ジャミ公っ!アンタ今度こそ本気で頑張んなさいよっ!)

「ウシャーー!!」

「よしっ、俺らはいつも一緒だっ!あの野郎を迎え撃つぞっ!!
報復開始ーーっ!!」

「「おおーーっ!!」」

「……こ、小僧……、良くもこの……、せ、世界ィィ~の、支配者と
なるううう~!皇帝ガナサダイ様をををーーっ!許すまじ、あ、あーー
許すまじィィーーっ!!」

分かっていた事だが、直ぐにガナサダイは戻って来た。しかももう、
ゲルニック並みに精神が壊れて来ている。ジャミルは、どうして
こんな奴を慕っていたのか、今考えるとギュメイの彼への忠誠心も
益々分からなくなった。だが、今はそんな事を考えている暇は無い
……。

「我に従え、忠誠を誓え、跪け、世界の支配者、ガナン帝国大皇帝
ガナサダイ様を崇めよ……!外道共目があーーーっ!!」

「……もう~っ!あっち行ってーーっ!!」

ガナサダイは激しい炎を4人に向け放出するが、アイシャも必死に
マヒャドで対抗……。だが、ガナサダイの炎が意図も簡単に氷を
破壊する……。砕け散った氷の固まりはそのまま4人へと跳ね返る……。

「いだだ、いだいよおおーー!!」

「ああっ、……ご、ごめんなさいっ!」

「アイシャ、大丈夫だよ、自分を信じて!もう少しだ、頑張ろう!」

「アル……、ええ!怖じ気づいてなんかいられるもんですか!」

アルベルトに励まされたアイシャ、勇気を貰い、今度はイオラの
詠唱を始める、だが……。

「くくく、思い知れ!見よ、これが我が闇の……帝国の翼……!!」

「……んなっ、あいつも……、まさか翼?黒い翼だとっ!!」

ガナサダイの背中から黒いボロボロの翼が生える……。ジャミルが
光の翼なら、ガナサダイは闇の翼だった……。ガナサダイはアイシャの
イオラを回避する様に、そのまま高く高く……、空中へと舞い上がる……。

「卑怯者っ!何ようーーっ!」

「モシャーーっ!!」

(聞いてない、聞いてないってーッ!)

「そんなあーっ!も、もしかして……、あいつも天使だったりしたり
すんのーーっ!?」

「……闇の天使……、なのか……?」

「いや、んな訳ねえ、……訳ねえけど……、やべえ気がする、
アイツを止めるっ!」

「……ジャミルっ!」

「モンーーっ!」

アイシャとモンが叫ぶ中、ジャミルも翼を広げると、空中にいる
ガナサダイの側へと猛スピードで飛び、接近する……。

「終わりだ、……我が闇の、……死の裁きを浴びよ、外道共!!
……フェフェ、フェーー!!」

やはりガナサダイは碌な思考では無かった。空中から下にいる
仲間達目掛け、即死攻撃魔法を放とうとしていた……。しかし、
其処にジャミルが突っ込んで来る……!

「……させるかああーーっ!!」

「……貴様から先に始末して欲しいか、……良かろう!」

「うああーーーっ!!」

ガナサダイも杖を構え、ジャミルへと即死魔法を放つ態勢でいた。
だが、結果は……。

「……うおりゃああーーーっ!!」

「そ、そんな……、バ、バカ……、な……、余は……こ、う、て、い……、
世界の支配者……、ぐぬをぉぉーーー!ゴォォォ……、このガナサダイ
がぁ……!魔帝国ガナンがぁ!敗れるなどあってはならぬぅ!!お……、
のれ……のれ……れ……!」

怒りに満ちたジャミルの一撃……。ドラゴンキラーがガナサダイの
身体を真っ二つに切り裂く……。斬られた身体と同時にガナサダイの
翼もボロボロになり、崩れていった。そして、ジャミルも……。
背中から翼が消滅して行く……。

「……お、わ……っ、……た……」

「「ジャミルーーっ!!」」

再び翼が消滅したジャミルは地上で絶叫する仲間の元へと
落下して行く……。あわや、地面に衝突しそうになる
ジャミルを危うく救ったのは……。

「……あれ?俺……」

「くうう~っ、重ィィ~~ッ!アンタも少し減量しなさいってのよッ!」

「……モンーーっ!」

気が付けば、身体がまた宙にふわふわ浮かんでいる……。それも
その筈、落下しそうになったジャミ公を助けたのは、飛び出した
サンディ、そして、モンだった……。

「や、やったっ!サンディとモンがやってくれたよおーーっ!」

「ああ、ジャミルは無事だっ!」

「凄いわ、2人ともっ!有り難うーーっ!」

……何が何だか分からないまま、ジャミルは無事、地上へと降り立つ。
訳の分からない異空間は無くなり、ガナサダイがいた元の部屋へと
戻って来ていた。そして、実感するのである。……帝国に……、遂に
ガナサダイに勝ったのだと……。

「皆……、俺……、俺達……、勝ったんだよな?……帝国に……」

「そうだよ、……僕達の勝利だよ……」

「どうしよう、ジャミル……、私、私……、ふぇ……」

「……うああああーーんっ!ジャミルうううーーっ!!」

「モンーーっ!!」

「ちょ、だから……、お前ら落ち着けェーーっ!うぎゃあーーっ!!」

サンディ、モン、仲間達のお陰で帝国に勝利し、無事に帰還した
ジャミルは今日は何時にも増して凄まじいダウドとモンの鼻水洗礼
攻撃を受ける事に……。

「ハア、全くもうっ!スゲー重かったしっ!アンタもデブ座布団の
コト言えないネっ!……デブジャミ公っ!」

「……だれがデブジャミ公だっ!シャーーっ!!」

「……シャーーっ!!」

ジャミ公はモンと揃ってカオス顔になる……。まるで兄弟の
様だった……。サンディは悪態を付くと又ジャミ公の中へ消える。
お約束のアカンベーをして。しかし、勝利を喜んでばかりは
いられなかった……。

「……イ、イザヤールっ!」

「……勝った……、のだ、な……、ジャ、ミ……」

ジャミルは倒れているイザヤールの側へ急いで駆け寄る。仲間達も……。

「イザヤール、もう、アンタが何考えてたとか、んな事どうでもいいよ、
終わった事だ、だから……、頭空っぽにしてさ、今は傷治せよ、んで、
一緒に天使界に戻ろう、皆がアンタを待ってるよ……」

「ジャミル、お前は……、本当に……、だが……、私はもう駄目だ、
それは自分で一番良く分かっている……、有り難う……」

「……アホっ!な、何言って……、あ、ああっ!」

「!!」

師匠に遠慮せずアホと言ってしまうジャミ公……。仲間達も見守る中、
彼の身体が光始めた。

「ダウド、……頼む!」

「う、うん……、オイラの力で何処まで出来るか分からないけど……」

「イザヤールさん……」

「……」

アイシャが涙目になり、アルベルトは静かに口を噤む中、ダウドの
イザヤールへの決死の集中魔法治療が始まる。だが……。

「……ジャミル、駄目だよ、もう……、魔法……、受け付けないよお~、
うう~……」

「……んなっ!おいっ、イザヤールっ、死ぬなよっ、しっかりしろよっ、
おいっ!」

イザヤールの昇天が近い事は、もうジャミルも分かっていた。
けれど、どうしても諦めたくなかった。彼の帰りをずっと……、
一途に待ち続ける……、ラフェットの為にも……。

「モォ~ン、イザヤール、ダメ……、行っちゃダメ、ダメモン……」

「……お前も本当に優しいな、やはりジャミルと似ているのだな……、
ジャミル……」

「な、何だよ……」

イザヤールはジャミルを見つめ、今、伝えなければならない事、
……自分の想い、最後の言葉を彼に伝え始めた。

「……ジャミル、私は……お前が羨ましかった……」

「だから喋んなって!……!?」

「何処までも、自分のままに自由に生きるお前が……、私は
守護天使として……、只管己の使命を全うする事しか考えて
いなかった……、だがお前は……、普段軽い様でいて、
やるべき事は必ずちゃんと熟してしまう……、そんなお前が
不思議で仕方が無かった……」

「……」

「辛い時には素直に誰かに辛いと言える……、そんな生き方も
してみたかった……」

真面目なイザヤールは決してどんな時も弱音は吐かず、
何をするにも常に一匹狼で強く生きてきた。それが
守護天使の使命、当たり前なのだと彼はいつも思っていた。
だが、天使界で英雄、最強の守護天使と皆に崇められていた
彼の内面はいつも孤独で独りだった。……肩の力を抜いて
生きる事を自分自身で決して許さなかった……。

「……そして、自分の思考で帝国に付いた後、風の噂で耳にした、
……天界から遣わされた天使の少年が仲間と共に女神の果実を
集めていると言う話を……、そして、それはお前だと確信した頃だ、
箱船でお前達と再会し、7つの全ての女神の果実を集めた偉業を
達成したお前を見て、……どうしようも無く……、嫉妬心が沸いた……、
天使界を裏切るなどと、愚かで浅はかな思考しか出来なかった私と
対照的に、……弟子のお前が……」

「イザヤール、アンタ……」

イザヤール、彼にはある目的が有り、天使界を……、全てを
敵に回す覚悟で帝国に付いた。そして、あの日、箱船で
ジャミル達と再会し……。

「アルベルト、あの時、アーレー山で嘘を付いて君を騙し、帝国へ
連れて行こうとしたのも……、自分の心の中に有った疚しい心だ、
お前達を引き裂いてやりたかった、い、今更……、謝ってもどうにも
ならない事は頭でも分かっている、だが、本当に……」

「イザヤールさん、もういいです……、だから……、お願いです、
どうか生きて下さい、それだけです、どうか……」

一時的に帝国に付いたとは言え、根が真面目な彼は天使界を裏切った事、
ジャミル達を傷つけた事の罪悪感に次第に蝕まれて行った。そして、
いっその事、本当に帝国に付いてしまえば心が楽になれると最悪の
方向へと向かって行ってしまったのが、……あの日、アーレー山で
アルベルトを拉致したあの時であった……。しかし、皆を裏切ってまで
彼が行わねばならなかった真の目的は忘れず、心に秘めたままで……。

「……ジャミル、お前は困っている者がいれば直ぐに手を
差し伸べ、共に痛みを分かち合い、一緒に悲しみ……、そして
いつしか友を得る……、……モンがお前を慕っている訳が
漸く分かった……」

「モン、……モォ~ン……」

イザヤールは徐々に弱々しくなっていく手つきでモンに手を
差し伸べる。そして……。

「……私もいつか……、もしも……、生まれ変わる事が許されるの
ならば……、お前達の様な友と巡り会いたい、……そして……」

「……いい加減にしろっ!何言ってんだっ、おっさんっ!……テメ、
生きる事を考えろっ!バカ野郎、畜生、畜生ーーーっ!!」

「ジャミル……、済まん……、不毛なのは……、どうやら私の方だった……」

「あう、あううう~!」

ジャミルが絶叫する中、ダウドは何とかもう一度と……、回復魔法を
掛けようとするが、やはりもう駄目だった……。イザヤールの身体は
どんどん光を増していく……。

「イザヤールさん、お願いだから……、行かないでっ!
行っちゃダメよっ!」

「そうだよッ!あんた守護天使でしょッ!これぐらいで参って
どーすんのよっ!元気になんなさいよっ!……じゃ、ないと……、
ダメだよ、またジャミ公が……いじけちゃうじゃん……」

アイシャも声を張り上げ、サンディも彼女なりの言葉で必死に
励ますが、やはりもうイザヤールの消滅の時は止める事が出来ず……、
別れの時間は近づいて来ていた……。

「アホっ!何がいじけるだっ!俺は其処にいるどっかのヘタレじゃ
ねえよっ!……くそっ……」

「……あう、あうううーー!ジャミル、うるさいよおおーー!!」

「ふふ、ふふ……、どうやらこれで……、さよならの様だ……、
有り難う……、後の事を頼む……、天使達を……、そして……、
あの方を……、我が師匠を……、救い、……出し……」

「あ、あの方……?お、おいっ、イザヤールっ!こらっ!消えるなーーっ!
おーいっ!……あ、あああーーっ!!」

「……」

等々イザヤールは消滅し、旅立つ……。彼が呟いた最後の言葉……。
それは全て聞く事が出来ず、今のジャミル達には謎のままに
なってしまう……。

「……イザヤール、アホ、ハゲ……、……畜生……、バカ……、
ウンコ……、何が羨ましいだ……、冗談じゃねえよ……、早く
戻って来いよ、オメーが戻って来るまで此処で暴言垂れてて
やるかんな……、だから……」

「ジャミ公、そんな暗いカオしないでヨ!アンタはよくやった
じゃん!ほら~、ついに悪いヤツらのボスを倒したんじゃん!
みんなきっとホメてくれるヨ!ネ?」

サンディはしゃがみ込んで唸っているジャミルの頭をナデナデ、
いい子いい子する。だがジャミルは膝に顔を埋めたまま動こうと
せず……。動けなくなったんである……。

「……るせーよ、この野郎、俺はガキじゃねえんだよ、……褒めて
なんか……欲しかねえやい……」

「ジャミ公……」

「モォ~ン……」

「……そうだ!まだ捕まってる天使がいるんでしょ?そいつら
助けてやんないとネ、きっとまだこの城の何処かに捕らわれて
るんじゃないの?さあ早く探しにいこーよ!」

「サンディ……、今はまだ止めよう、もう少しジャミルには休む
時間が必要だよ……」

「そうよ、又一度、魔法陣の有る部屋に戻りましょう、私、何にも
出来ないけど……、ジャミルの側に付いていてあげたいの……」

「……あう、あううう~!」

「……わ、分かったわよ、もう~……、しょ~がないんだから……」

サンディは渋々ジャミルの中へと消える。静かに呟くアルベルト、
側に付いていて支えてあげたいと言うアイシャ、……さっきから、
あうう~!しか、言えなくなってしまったヘタレ……。そして、
等の本人は俯いたまま、顔を上げられないままでいた……。

「戻ったら……、オムイの爺さん……、ラフェットにも一体
どう伝えりゃいいんだい、俺はこう言うのが一番嫌いなんだ、
バカ、アホ……」

あれから4人は又魔法陣の部屋へ戻って来ていた。何度此処に
お世話になっただろう。主で有る、ガナサダイがいなくなった
所為なのか、表面上、城の中はモンスターの気配が消えて
しまった様である……。

「……」

「ジャミル、どう?……少し落ち着いた……?」

「モォ~ン……」

「……は?……な、何だよ、俺は平気だっての……、だから何だよ!
お前らまでっ!ひ、人の顔ジロジロ見てよ!」

アイシャに間近で顔をじっと見られ、顔を赤くするジャミ公……。
モンを始め、アルベルト、ダウドも……。じ~っとジャミルの
顔を見つめていた……。困るジャミ公は……。

「サンディの言う通りさ、俺らにはまだしなきゃいけない事が有る、
この城に捕まってる筈の残りの天使達を探すんだ、さ、行こうや……」

「ええ、そうね!」

「もう一頑張りだ、行こう!」

「ヨシヨシ、それでこそジャミ公っ!さ、レッツゴーっ!」

立ち上がるアイシャとアルベルト。静かに?ジャミルの様子を
見守っていたサンディもくるっと一回転し、宙を舞うといつも通り
又ジャミルの中に入る。モンも……。

「みんな、元気出すモン!♪ぽ~こぽ~このちんぽこち~ん!」

「わ、ま、また……、真面に始まったし、元気いいねえーっ!
とほほ~……」

「モン、俺にも棒貸してくれや、……ダウドの頭叩いたら
元気になれるかな……」

「ジャミルも一緒に叩くモンーっ!」

「ジャミルーーっ!血迷わないでよおおーーっ!!」

「お、落ち着こうよ、ね?……」

「……ジャミル……」

ジャミルのプチ暴走に汗汗アルベルト……。アイシャは沈痛な面持ちで
ジャミルを見つめた。カデスへジャミルが捕らわれてからの過酷な戦い、
そして、イザヤールの死、辛い連続の日々だったが、諸悪の根源、ガナン
帝国は再び滅び、皇帝であるガナサダイも倒れた。これで……、本当に
全てが終わる。4人はそう思っていた……。

「ふう、捕まってる天使達見つけたら、これでホントにオイラ達、
帰れるんだよねえ~?」

「さあな、どうだろ?どっかに隠れてる隠れボスでもいなきゃな……」

「あう!」

ぼそっと呟くジャミルの言葉に心臓がチクチクするダウド。……後に、
ジャミルの呟きは現実になってしまう事をこの時点でまだ4人は……。

「モン~?ジャミル、あそこのお部屋が……」

「あれは……」

魔法陣の部屋から再び上の階へ。其処で異変を見つける。前に
ジャミルが見た扉が開いていた。最後の鍵を使っても開かなかった
扉。……その先へと、新たな扉が開いていた……。

「此処は……、やっぱり封印でも施されていたんだろうか、ガナサダイを
倒したから扉も開いたのかな……」

「さあな、俺には難しい事は分かんねえけど、新しい道が開けたのなら
行ってみるしかだな」

「そうだね……」

「バリアーが広がっているけど、私のトラマナで大丈夫よ、行きましょ!」

「うげ……」

床のバリアーを見て、ダウドがヘタレモードに入る。ねえ、本当に
此処通るの……?と、イヤンイヤンヘタレているとモンに頭上の
モンに久々にアゴで突かれる。

「……いだだだっ!だ、大丈夫だってばああーーっ!」

「アゴチンポッポポー!」

「はは、モンもすっかり元気に元に戻ったみたいで何よりだよ……」

「……良くないよおーーっ!」

そ、そうね……と、アルベルトとダウドのやり取りを見てアイシャも
苦笑い。……早くジャミルにも元気になって欲しい、アイシャは無理を
しているかも知れないジャミルの後ろ姿を見て、切実にそう願うのだった。

「よし、無事にバリアー地帯は抜けたと……」

「ヨシ!」

「ダウド、何だい?そのポーズ……」

「えっと……、現場猫の……」

「おもしろいモン~、モンもやるモン!」

「じゃあ、一緒にやる?……ヨシ!」

「モン!」

……と、アホを始めるダウドとモンを置いて、他のメンバーは先の
地下への階段を降りる。置いていかないでェェーーっ!っと、ヘタレは
慌てて後を追い掛けるのだった。

「モン!」

「お~い~、ヘタレ、オメ責任取れよ、モンがまたアホに
なっちまうだろうが!」

……アホなのは君もだろうとアルベルトは久々に突っ込みを入れた。

「モンヨシ!モンヨシ!」

「……んなこと言ったってェェ~……」

「モンちゃん、よっぽどあのポーズが気に入っちゃったのね……」

モン、新たな新境地を開く。……現場モンと貸す……。取りあえず、
それは置いとく。階段を降りた先に佇む神官の姿……。当然の如く、
ジャミルとサンディ、モン以外には見えない人物……。既に故人の
神官だからである。つまり、幽霊だった。

「あ、あの……、あんたは……」

(おじさん、何してんのカナ?)

「モン~?」

「!だ、だだだだ……、誰と話してんのさあーーっ!!」

「ん?其処にいるんだよ、多分……、神官の幽霊だと思う……、ども、
こんちは……」

ジャミルが他のメンバーには見えない空間を指の先でちょいちょい突く。
確かに其処にいるんである……。

「……うぎゃああーーっ!?」

「ダウド……、僕ら、今更幽霊なんか怖くない筈だろ?」

「そうよ、ゲルニックやガナサダイの方がよっぽど嫌だわ!」

「んな事言ったってぇぇ~……」

「ヨシモン!ヨシモン!」

「……あ、あのさ、俺達……」

「若者達よ、封印の解かれしこの先の牢獄へと進むのだな……、
この先には帝国の犯した罪……、そして多くの報われぬ魂が
眠る場所……、それでも先に進む覚悟があるか?待ち受ける
残酷な現実と真実全てをお前達の目で確かめる覚悟はおありか……?」

「!!」

神官の言葉にジャミルは衝撃を受ける。話を聞いているだけでも
やはり……。それでも、捕まっている天使達を助けなければならない。
ジャミルは静かに頷く。

「ありがとな、俺達、捕らえられている天使界の天使達を助けに
行くんだ、もし、この先にいるのなら……、行くしかねえ……」

「分かりました、勇敢な若者よ……、どうか神のご加護のあらん事を……」

神官はそれだけジャミルに伝えると消える。やはりこの先にあるらしい
地下牢は怪しい。相当やばい場所らしいが……。それでもやはり此処まで
来て引く訳にいかない。ジャミルは先程の神官から聞いた話をアルベルト
達にも伝えるのだった。

「そう……、それなら行くしかないね、封印まで施されていた
場所だもの、絶対に捕らえた天使を幽閉している筈だ……」

「アルの言う通りだわ、私達は前に進むだけよ、ね?」

「モォ~ン!」

「あわわわ、ひえひえ……」

(ま~たヘタレ、丸くなっちゃってるヨ、ジャミ公~、ど~すんの?
アレ……)

例の如く、ヘタレだけは往生際が悪く、丸くなってしまっていた。
だからもう、オメーは箱船に戻ってていい……、と、言うと逆ギレ
するので反対に何が何でも付いていきますーーっ!、状態になるので、
訳分からんヘタレである……。

「とにかく……、皆、この先も一緒に来てくれるんだな?ありがとな……」

「当たり前だろ!」

「うふふっ!」

「ふぇふぇ、えへへ~……」

「ヨシ!モン!」

ジャミル達は手のひらを重ね合い、頷き合う。この先、何が待ち受けて
いようとも、神官の言葉が本当なら……、待ち受けているかも知れない
辛い現実も、皆で何もかも一緒に受け入れて乗り越えよう……、皆一緒なら
大丈夫だと、……そう硬く誓った……。

「うんうん、いーカンジ、いーカンジ、アンタらだったらもう何が起きても
絶対大丈夫だヨッ♪」

「……う、うっ!何だ此処っ!」

階段を降りた先、其処は地下通路……。嫌な臭いが彼方此方に
充満していた。床に錯乱して転がっているのは、動物なのか、
モンスターなのかの骨なのか分からない。もしかしたら人骨の
可能性も……。肉の腐った様な悪臭に耐えながら、4人は地下
通路を黙々と歩いて行った。

「はあ~……」

「アイシャ、大丈夫かい?」

「うん、平気よ……」

アルベルトがアイシャを気遣うが、悪臭を我慢しているらしく余り
平気ではなさそうだった。

「くすん、……可愛い子、ハグギュウしたいの、癒やされたい……、
モンちゃんと……、チビちゃんとスラリン、もう、揃ってみんな
ハグギュウしたいの……」

「……ア、アイシャ……、え~と、癒やされたい気持ちは分かるけど……」

「モン~?アイシャ、モンで良かったら……、どうぞモン……」

「モンちゃん、ありがと、……ふにふに、ふにふに……、ぽよんぽよん、
たぷたぷ……、きゅうう~♡……」

「……汗」

(みんな揃ってバカば~っか!……マスコはサンディちゃんが
イチバン可愛いのヨっ!)

無理もないかも知れなかった。こんな状況で、現実逃避したくなるのも
当たり前だった。……取りあえず、アイシャも落ち着いたので、気持ちを
切り替えて、4人は地下通路を進んで行く。


「何かこの通り……、牢屋が並んでるねえ、嫌だなあ~……」

並んでいる地下牢らしき場所を通過する度、ダウドがぼやく。ジャミルは
気になり、中に小さなメダルでも有るツボがあるかもしんねえと、鍵を
開けてみるかと牢屋の鍵で鍵を開こうとする。

「……や、やめようよお!碌なモン出て来ないからっ!」

「んだよっ、何にせよ一通り中を確かめる必要があんだよ!よせってばっ!!」

「ちょ、ちょっと、二人ともっ!」

「……止めろよっ!!」

「……ウシャー!チーン!チーン!」

鍵を開けて欲しくナス、無理矢理ジャミ公から最後の鍵を引ったくろうと
するダウド……。二人は取っ組み合いになり大騒ぎに……。止めようとする
アイシャとアルベルトだったが。そして又、レフリーを引き受けるモン……。
だが、ジャミ公の方が流石動きが素早く、ダウドが勝てる筈も無く、
ひよいっと牢屋の鍵を開けてしまう。

「……あ、よくもやったなあーーっ!!」

「よしっ!」

鍵を開けてしまえばこっちの物。ジャミルはさっさと中に入るが、
其処にいた化け物とは……。

「ガルルン♡(あ~ら、いらっしゃ~い♡)」

牢屋の中にいたのは、厚化粧をし、ハゲ頭にリボンを付け、ついでに
ハート模様のブラも着用しているオニイの様なドブスボストロールだった。

「……何じゃわりゃあーーっ!!」

「……だから言ったんだよおおーーっ!!」

「カマホストクラブ、暗黒一丁目にいらっしゃ~い♡……って、
言ってるモン、……たっぷりと、お前達をブン殴ってブッ殺して
あげる♡……って、言ってるモォ~~ン!!」

「ホストクラブ?そうか、この牢屋がホストクラブなのか……」

「……感心しとる場合かあーーっ!この腹黒ーーっ!!」

オニイのボストロール、切れたジャミ公にボコボコにされ、ハゲ頭は
タンコブだらけと化す。そのまま何処かへ逃走して行った。

「……ひいひい、い、一応……、中を確認する、何かあったら
損するからな……」

4人は牢屋の中に入る。だが、中にあったのは……。

「うっふんモン、ビューティほー、綺麗モン?」

ボストロールが使っていたらしき、身嗜み一式セットだった。

ぴんぴんデコピン×1

「アイシャ、こいつの化粧、ちゃんと落としてやってくれ……、
……こらっ!そのブラジャーも外せっ!!モンっ!!」

「……う、うん、さ、モンちゃん、悪戯はダメよ、お、落とせるかしら……」

「モギャー!!」

「……じょ、状況が緊迫してると思ったら、途端にころっと……、
こうだからね……」

「だよねえ、真面目になるかと思ったら……、油断出来ないんだよお、
この話」

「あー、嫌なモンみたなあ~……、……?」

「……あ、ま、またっ!ジャミルはっ!!」

牢屋から出るが、今度はジャミルは隣の牢屋から気配を感じ、
近づいて行って見る。中にいたのは囚人らしき幽霊の男だった……。

「……こんちは……」

「そうか、君は俺の姿が見えるんだな、……」

牢屋の中に向かって、モン、サンディ以外の他のメンツには
見えない相手へと喋り出したジャミルの姿に又、ダウドは
悪寒を感じるのだった……。

「俺は元・帝国の兵士、……だが、ある時、突然此処にブチ込まれた、
皇帝陛下の命令に逆らった為、牢獄の囚人にされてしまったんだ、
俺だって帝国の為に戦い、命を散らす覚悟でいたさ、だが、俺には
得体の知れない化け物の力を取り込んで戦うなんて、耐えられ
なかったんだ……」

「……」

「ジャミル、牢屋の中には……、誰が……?」

アルベルトが訪ねると、ジャミルは顔を曇らせた。そして、中に
いるのは突然牢屋にぶち込まれ、恐らくは、処刑されたらしき、
元・帝国兵士の幽霊だと……。

「……酷い事するわね……」

「うっ、……ひいい~っ!」

「幽霊さん、ずっとこんな寂しい処でひとりぼっち、悲しそう
なんだモン……」

「ああ、主がいなくなった後でも、こうやって……、帝国の残した
爪痕が残っている、この先も……、本当に何があるか分からないね……」

「だよな、……隣の牢屋に、突然変異のボストロールがいたみたいに……」

「……」

一同一旦黙りこくる。確かに、帝国はこの地下牢獄で、過去に何か
非道で残酷な行為を行っていたのは間違いないのだった……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 73

zoku勇者 ドラクエⅨ編 73

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-06-15

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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