暗闇の輝き
己は寂寞を感じない。寂寞を感じる器官が欠損しているのだ。己は孤独を嘆かない。どうして嘆く必要があろう?己は孤独であることに何の後ろめたさも感じない。それが心地良いとさえ思える。寂寞を感じない己は、愛について哲学することはできないのだろうか?愛とは欠落を埋めようとする意志ではなくて、欠落ごと愛そうとする覚悟ではなかったか?愛がなくとも生きてしまえる己がそう説いたところで、何の説得力も信憑性もない。己は愛することも愛されることも欲さない、閉じた人間なのだ。己には心というものがないのかもしれない。あるいは、あるにはあるが、人のそれよりも感覚が酷く鈍麻しているのかもしれない。己は冷徹な人間だと見なされているかもしれない。愛に無頓着だという理由で、憐れまれているかもしれない。愛を欲さない人間などいるはずがない、お前はただ強がっているだけだ、そう蔑まれているかもしれない。だが仕方がないだろう、己だって好きでこうなったわけじゃないんだから。気づいたらこうなっていたんだから。愛がなくとも生きてしまえる人間になってしまっていたんだから。愛の本質は寂寞なんかじゃない、己はそう言いたい。愛することも愛されることもない己だが、愛について思考したい。愛と孤独が、愛と寂寞が不可分なものだとしても、真に愛することに、そのきっかけに孤独も寂寞もいらない、そう言いたい。己は愛を感じない。寂寞も感じないし、孤独さえ感じない。そんな己にできることは、己と同じ人間の存在を肯定することくらいだ。大丈夫。あなたは何もおかしくはない。星ではなくその裏の暗闇に見惚れるあなたはきっと愛について知っている。己は何も感じないことを嘆かない。
暗闇の輝き