失語は領土を拡げ
なけなしの魂を雁字搦めにする
音のない発声を沈黙だと見なされる痛苦
いつからか俺の中には
孤独を呻吟する人格が棲んでいた
語るまい、とする自主規制に抗い
かりそめの世界の膜を突き破って
精神的自由を掴みたい、という欲動は
日ごとに募り、それに呼応するように
精神を巻く鎖にきつく締め上げられる
俺は呻きを洩らす、この理不尽な苦痛から
早く解放されたいと願う
声の限り叫ぼうとしても
無意味な呼気となって消滅してしまう
俺の救難信号を読み取る者は誰もなく
俺に見向きをする者とて誰もない
世界への憎悪は日ごとに募り
俺の存在の輪郭は薄れていく

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-06-01

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