zoku勇者 ドラクエⅨ編 69

決戦・帝国 2

「……開けろおおーっ!畜生ーーっ!こんにゃろーーっ!!」

4人は気が付いた時、得体の知れない謎の小部屋に幽閉されて
しまっていた。一体何処の階なのか、場所も全く特定出来ず……。
呪文をぶつけようが、剣でぶっ叩こうが、何をやっても扉が全く
開かないのである……。今回は4人纏めて拉致られていたが、
モンだけが別の場所へと連れて行かれてしまったらしく……。
怒りと悲しみの中、どうにも出来ず、皆の心配と焦りは
募るばかり……。

「最後の鍵でも開かないなんて……、酷いよおお~……」

「……どうしよう、どうしたらいいのよ、それに此処、真っ暗で
凄く空気が息苦しいわ、まるで力が吸い取られていくみたい、
モンちゃん……」

「……何考えてんだーーっ!あのフクロウ爺ーーっ!!うああーーっ!!」

「ジャミルっ、よせっ!これ以上やったら……、君の手がおかしく
なってしまうよ!」

「アルっ、放せっ!……放せよーーっ!……畜生……」

アルベルトは無茶をし、錯乱し出したジャミルを急いで止めるが、
既にジャミルの拳には血が滲み、真っ赤になっていた。

「あーあーもう、こんなに無茶して~、ダメじゃないかあ~……、
うう、オイラもどうしていいか分かんない、こんな処で……」

ダウドはジャミルの拳にベホイミを掛けてやりながら、どうしようも
無く襲って来る不安な気持ちに鼻水と涙を溢す……。

「ねえ、サンディ、君だけでもどうにか……、此処から出られ
ないかい……?」

アルベルトの呼び掛けにジャミルの中からサンディが飛び出す。
……が、この部屋の現状にしかめっ面をした……。

「ムリムリムリっ!だってこん中、な~んか変な結界張って
あるっぽいし!どうりでいや~な感じしたワケっ!……ケド、
アンタらマジでど~すんのよっ!!」

……相変わらず容赦せず、キツイ言葉を4人にぶつけるサンディ。
だが、彼女なりにしっかりしろと、ジャミル達に渇を入れて
いるんである……。

「俺だって……、どうすりゃいいか分かんねーんだよっ!……どうすりゃ
いいんだよ……、悪ィ、俺……、混乱して同じ言葉ばっかで……」

「ジャミ公……、うう~、バ、バカ……、って、何か気配するよっ!
誰か来るっぽい!?」

「!!」

サンディの言葉に身構える4人……。近づいて来ているのはゲルニックか、
それとも別の何者なのか……。

「……誰だか知らねえけど、敵ならとっとと倒しちまうぜ!早く
此処から脱出するんだっ!!」


???:お前達、下がっていろ、今、結界を破って此処から出してやる……


「……え、だ、誰だ?……い、今、なんつっ……、ああっ!?」

「……きゃあーーっ!?」

外で謎の声が聞こえ、突然爆音がし、凄まじい音に4人は目を瞑る……。
気が付くといつの間にか4人は幽閉されていた部屋から城内の廊下に
いつの間にか戻っていた……。

「……な、何がどうなって……、此処は2階だ、確か錬金術のレシピが
あった書斎近くの場所だよ……」

「ふええ~、助かったのかなあ~、オイラ達……」

「……ホント、ど~なってんのよ、あ、あれっ!ジャミ公っ!」

「……お前はっ!!」

「……」

訳が分からないまま、漸く幽閉部屋から出る事が出来たジャミル達だが、
目の前には不審な虎の様な外観の大男……、左手に日本刀の様な長剣を
持ち、無言で此方を見ていた……。

「んだよっ、やるってのかよっ!邪魔すんなら相手になるぜっ!!」

「待ってジャミル、もしかして……、あなたが私達を助けてくれたの……?」

「……え、ええーーっ!?」

「まさか……」

アイシャの男への問い掛けにダウドもアルベルトも騒然……。だが、
虎の様な大男は何も言わず、踵を返すとそのまま無言で立ち去ろうと
するのだった。

「……おいいっ!待てって言ってんだろっ!何とか言えーーっ!!」

「……小僧、お前達との勝負は後だ、早く自分達の目的を果たせ、
先にする事があるのだろう、我は待っているぞ、いつまでもな……」

「へ?あ、ああ……、って……」

虎男はそのまま何処かへと消えた……。だが4人はまたまた訳が
分からず……。恐らく、彼も此処、ガナン帝国の武人なのには
間違いが無い様だが……、敵である筈の自分達を一体何故助けて
くれたのかと……。

「……ジャミル、今はそれ処じゃない、早くモンを助けに行こう!」

「モンもオイラ達と同じ、何処かに捕まってる筈だよお!」

「行きましょ、急がないと……、何だか悪い予感がするの……」

「分かってる、待ってろよ、……モン、今行くからな!」

(はあ~、デブ座布団捜索隊かあ~、ちゃんと見つけられんのかしら、
只でさえ、迷子になりまくってるってのにサ……)

サンディも再びジャミルの中へ……。一方、ジャミル達と引き離され、
別の場所へとモンも幽閉されていた。其処には……。

「……ここ、どこモン……?」

「ホホホ、お目覚めですか?可愛いモーモンさん!」

「……モンっ!?」

モンが目を覚すと、其処は牢屋の様な薄暗い部屋……。其処に待っていた、
ゲルニック、そして……。

「よう、モン……」

「モンっ、ジャミル……、み、んな……」

ゲルニックと一緒にいたのは、いつもの4人。ジャミル、アルベルト、
ダウド、そして、アイシャ……。だが……。

「みんなも捕まったモン?でも、無事でよかったモン……」

「ああ、無事だったさ、……でもな、オメーの所為で俺ら大変な目に
遭ったんだよっ!!」

「……モ、モン~っ!?」

だが、ジャミルの様子がおかしい……。いつもの悪戯っぽく笑う時に
見せる笑みでは無く、冷たい目で笑いながらモンを睨んでいるのである。
ジャミルだけでなく、一緒にいる仲間達も……。

「モンちゃん、私達、もう、うんざりなの、あなたと今まで一緒にいて、
一体どれだけ迷惑掛けられたのか分からないのよ!モンスターなんか
大っ嫌いよ!!」

「うそ、アイシャ……、モン……、モン、嫌いモン……?」

「そうだよお、冗談じゃ無いよお、オイラ、モンの所為でいつも嫌な
思いをしたんだよ、もう我慢出来ないんだっ!今まで散々我慢して
きたけど、もう言わせて貰うよ!ふざけるなあーーっ!!」

「モン、……ダウド……」

「大体お前は邪魔なんだよ、……そもそも、モンスターと人間が仲良くなる
事態無茶なんだ……、共存する事は不可能さ、元々僕らは相容れない者同士
なんだからね……」

「アル、ベル、ト……」

モンはその場に崩れ落ちる。大好きな皆が……。自分に敵意を
向けている……。そして、ゲルニックは更に悪どい行動へと……。

「ホホホ、どうですか?こいつらは我が帝国に屈したのです、もう我々には
勝てないと嘆きましてね、……優しい私が手を差し伸べこいつらを部下に
して差し上げたのです、ホ~ホホホっ!」

「!?……う、うそっ、そんなの嘘モンっ!シャーーっ!!」

「……おや、信じられませんか?……ならば……、皆さん、この雑魚
モンスターを徹底的に痛み付けておやりなさい!」

「モン……、モォォ~ン……、ジャミル……」

「悪ィなあ、モン、死んでくれ……、そうすれば俺らもオメーからもう
解放されて楽になれるんだよ……」

悪魔と化した4人は冷たい表情のまま、にやりと笑うと武器を構える。
……そして、モンにじわりじわりと向かって来るのだった……。だが、
これはゲルニックがジャミル達とモンを引き離そうとし、目論んだ
卑怯気わり無い罠である。モンの目の前にいる4人も当然偽物で
あったのだが……。

「よーし、ダウド、行くぞー!しっかり撃てよーっ!」

「了解っ!えへへ~、あー気持ちがいいなあっ!」

「もうっ、私にもちゃんと回してよねっ!早く遊びたいのよっ!」

「全く、君達は……、でも、これは確かに運動になっていいね、
ふふふ……」

「……」

ニセジャミル達は……、モンに殴る蹴るの暴行をしこたま咥えた後、
今度は武器をバットに、ズタボロのモンをボール代わりにしようと
していた……。

「如何ですか?もう人間共の恐ろしさが分かったでしょう、……人間共
などといると碌な目に遭わない事に……、ホ~ホホホっ!」

「モン、……分かってるモン……」

「ホ?そうでしょう、ホ~ホホホっ!」

「こんなの……、ジャミル達じゃないモン……」

「……何を言うのですかっ!奴らは正真正銘、これまでずっとあなたと
一緒に旅をして来た愚かなバカ共ですよっ!漸く人間としての残忍さ、
本性を現したのですっ!!」

「……ジャミルは……、怒るとすぐデコピンするし、モンにゲンコツも
するモン、でも、それは……、モンが悪戯した時だけ……、ジャミルは
絶対に自分から……、虐める様な意地悪はしないモン……」

呼吸の荒い中、モンはポツリと呟く……。あの日、ジャミルが自分を
助けてくれた日、モンはジャミルと出会えて本当に嬉しかった。今まで
本当に幸せだった。その思い出をいつまでも大切にしたかった。……心に
留めておきたかった……。思い出の中にいつも映る大好きな皆の姿のまま……。

「……こ、この期に及んでまだそんな強がりを言いますか、そうですか、
皆さん、もうこのクソモンスターをそろそろ始末なさい、ホホ、そんなに
言うのなら、大好きな皆さんの腕の中で息絶えるが良いわ、……ホ~ホホホ
っ!!……ホ~~っ!?」

……突如、部屋の扉がぶち壊され、何者かが乱入して来る。その人物とは、
又も……。

「……待たれよ、ゲルニック将軍……」

「……ギュメイっ!き、貴様っ!!」

部屋に乱入して来たのは、又もギュメイであった。ギュメイは
左手に手にした日本刀で偽物の4人組を躊躇せずバッサリ
切り裂くのだった……。斬られた4人組の死骸が本体の
デスプリーストとなり、死に際にその姿を現した……。
ギュメイは床に倒れている傷だらけのモンを救出、軽々肩に担いだ。

「小さき者よ、……お前の本当の仲間が待っている、皆心配している……」

「……おじちゃん、誰モン……?」

「主を信じようとする、お前のその心は立派であった、何も言うまい……、
少し……眠るが良い……」

「モン……、あったかい……モン」

「……お待ちなさいっ!ギュメイさんっ!このままあなたを行かせは
しませんよっ!早くそのゴミを置いて行きなさい!何故……、私の
邪魔をするのですっ!あなたの行った行為は帝国と皇帝陛下に対する
裏切り行為と見なします!」

「……我の陛下と帝国に対する忠誠心、誓いはこれまでと変わらん、
侵入者の排除も無論忘れてはおらぬ、……我が許せんのは、ゲルニック
将軍、アンタの方だ……」

「……な、何ですと!?」

ギュメイはモンを担いだまま淡々と話す。だが、顔は背けた
ままである。

「卑劣な手を使ってまで、陛下に媚びを売ろうとし、手柄を立てようと
するその卑怯な思考と精神が気に要らぬのだ、何故己自身の力で
正々堂々と勝負しない……、お前の犯した失態こそ、武人しての
魂が掛けている……、情けない……」

其処でギュメイはやっとゲルニックの方を少し見る。だがその目は
失望感で溢れていた。

「……う、うるさいうるさい!我らは帝国の軍人である!どんな卑劣な
手を使おうが勝つ事が優先に決まっておろうが!卑怯もクソもあるか!
……プライドも何もありませんね!さあ、早くそのモンスターを
こっちに……、ひゃ、ひゃああっ!!?」

「……」

ギュメイは無言でゲルニックを睨み、左手に持っていた日本刀を
ゲルニックに向け、振り下ろし、バッサリ空気を斬った……。

「……我は自身の手で帝国を……、陛下をお守りする、例え誰で
あろうとな……」

ギュメイはそのまま部屋を出て行く。……残されたゲルニックは床に
尻餅をつき、動けないままの状態で暫く尻込みしていた……。

「……おのれ、ギュメイめ……、格好付けおってからに……、いいでしょう、
アナタがその気なら此方にも考えがあります、……この私に逆らった事を
悔やむが良い、もう皇帝など関係ありません、天使の力を得、何れはこの
私こそが帝国を支配する、……皇帝以上の存在、いえ、私が全世界の神に
なるのですからーーっ!……ホ~ホホホっ!!」

「……モン、ジャミル、みんな……」

「夢を見ているのか……」

モンを連れ、薄暗い城内の廊下を歩きながらギュメイは考える。城に
潜入した、本来なら敵である筈の者達の仲間のモンスターを助けて
しまった事、……ゲルニックの行った非道が許せなかったとは言え……、
やはりゲルニックの言う通り、今回は陛下に背き、失態を犯して
しまったかも知れない事実は間違いないと。だから、武人として
どんな罰も罪も受け、背負うつもりでいた。

「お前の仲間とやらも何れこの手で始末しなければなかろう、そうすれば
お前は主達を失い居場所を失うだろう、……だが、安心しろ、我はお前が
気に要った、全てが片付いたその時……、お前を引き取ろう、我の部下と
なり、共に皇帝陛下、このガナン帝国を守る軍人となれ……」

「モン、……ふにゃ……」

「……」

「ギュメイは何かの気配を感じたのか、立ち止まると担いでいた
モンを降ろす。

「……どうやら、お前との散歩は此処で終わりの様だ、間もなく
お前の連れが此処を通るだろう……、早く合流しろ……」

モンが置かれた場所。其処は城の新たな道へと通じる場所、
外壁への扉の前だった。ギュメイはモンを置いた後、その扉から
外へと静かに姿を消した……。

「……っ!……モンっ!おいっ、返事してくれっ!!」

「……モン……?」

「モンちゃんっ!しっかりしてっ!……死なないでっ!」

「……誰かがモンを呼んでるモン……?」

「……えうう~、い、一体どうして、こんな酷い事するんだよお~……」

「モン、モン、……分かるかい?僕らの声、聞こえるかい……?」

「こらーっ!……デブ座布団ーーっ!し、しっかりしろーーっ!!」

「……デブ座布団……、モンはデブ座布団じゃないモンーーっ!
シャアーーっ!!」

「モン……、お前……」

「……ジャミル、……みんな……」

最後に聞こえた不愉快な声でモンは目を覚した。気が付くと、
其処にいたのは、目の前で自分を心配してくれている、本当の
仲間達がいた。ジャミル、アイシャ、ダウド、アルベルト、そして、
サンディ……。

「……あーんっ!モンちゃんーーっ!無事で本当に良かったーーっ!!」

「モン……、夢じゃないんだモン……、モンの大好きなみんなだモン……」

大泣きのアイシャにぎゅっと抱き締められ、モンもぽろっと涙を溢した……。

「さあ、モン、一体何があったんだ?話してくれよ……」

「モン……、あのね……」

モンは俯いてしまう。……事実をジャミル達に伝えるのも辛そう
だった。今、目の前にいる、大好きな皆の姿にモンスターが化け、
そして、痛めつけられたなど……。偽物だったとは言え、モンに
とって思い出すだけで切なく、そして悲しかった。

「ジャミル、止めて、モンちゃん、いいのよ、もう少し落ち着いてから
ちゃんと話してくれれば……、ね?」

「モン、アイシャ……」

「ふう~、やっとベホイミ全治完了……、はあ、でも、無事で良かった
よお、モン……、ほら、オイラの頭においでよ……、今日は好きなだけ
叩いていいからさ、特別だよお、えへへ……」

「……ダウド……、モォ~ン……」

「わ、わわっ!モ、モンっ!?」

「モンちゃんっ!?」

モンはいつも通り、ダウドの頭の上に飛び乗る。だが今は太鼓では無く、
泣きながら錯乱し、ダウドの頭をべしべし叩き始めた。

「い、痛いってばっ、モンっ!」

「……モン、寂しかったモン、……これ、本物のダウドの頭モン、キャーモン!
モンモンモォ~ン!」

「ありゃ、デブ座布団、何か様子おかしくネ?やばいんじゃないの……?」

「モン……、本当に一体何があったんだろう、それにしてもあの
酷い傷は……、只事じゃ無いよ、誰があんな酷い事を……、帝国軍の
兵士だろうか、許せない……」

「……」

アルベルトも心配そうにモンを見つめる。早く先に進まなくては
いけないのは山々だが、ジャミルはもう少しモンを落ち着けて
から動いた方がいいと思ったのだった。

「さあ、モンちゃん、イチゴのキャンディーよ、召し上がれ、
お腹空いたでしょ?」

アイシャは予備に一つだけ残っていたイチゴのキャンディーを
モンに食べさせる。モンは嬉しそうにキャンディーに齧り付いた。

「モォ~ンッ!いただきまーす!もぐもぐ、……か~っ、やっぱ
ウメーモン!」

「……おいおい、酒飲んでんじゃねーっつーに……」

「やっぱり癖の悪い処、飼い主に似ちゃうんだねえ~……」

「そうだなあ……、って、何を抜かすかこのヘタレーーっ!!」

「……あだだだっ!何だよおーーっ!酒乱アホジャミルーーっ!!」

「けど、段々元気になってきたみたいで良かったよ……、全く、
モンはよ……、心配ばっか掛けやがって……、……」

「……ごめんなさい、モン……」

……だからそれはアンタも同じだろうと思うアルベルト。

「アイシャ、大分前に町で新しいキャンディー見たモン、練乳ミルク
納豆味モン、今度食べたいモン♪良い子にしてたら買ってくれるモン?」

「え?えええ?……もう、モンちゃんたら、ふふふっ!」

「♪モォ~ン!」

「……オエッ、やだやだ、趣味ワルっ!やっぱデブ座布団は
デブ座布団よネ、心配するだけ無駄だってーのよっ、時間のムダっ!
じゃ、アタシまた戻るね、ば~い♪」

サンディは又ジャミルの中へと消える。相変わらず素直じゃ無く、
口も悪いが、モンが行方不明の間、彼女も一生懸命モンの事を
心配してくれて彼方此方飛び回り必死で捜索の手伝いをしてくれた……。

「モン、俺らもお前と引き離された後、変な部屋に暫く幽閉
されてたんだ……」

「モォ~ン……」

モンはあの時、本物のジャミル達も別の場所に捕まっていた事を知り、
びっくりするが、やっぱりモンを虐めたのは完全に偽物、完全にそう
割り切って安心し、嫌な事はもう忘れてしまおうと思った……。

「あっ、そうだ、いきなり部屋が爆破されてね、オイラ達、
出られたんだ、助けてくれたのは何だか虎みたいな顔の、
剣持った大男だったんだけど……」

「……モン、虎さん?剣持った……?……モォーーンっ!」

「モ、モンっ!どうしたんだよ、マジでっ!びっくりするだろっ!」

「あのね、モンを助けてくれたのも……、きっとジャミル達を
助けてくれた、同じ虎のおじちゃんだと思うモン……。

「「……ええーーっ!?」」

4人はびっくりして声を揃える……。モンにとって、辛くて悲しい
出来事だったが、やっぱりちゃんと皆には聞いて貰おうと思い、
モンは全て打ち明ける決意をした……。その後、モンから話を
聞いた4人も……、やはり相当のショックを受けていた……。

「うそ、私達の偽物が……、モンちゃんを傷つけたの……?
何て事するのよ、……酷すぎるわ……」

「人間なんか信じるからこんな目に遭うんだって、ゲルニックが……、
でも、モン、みんなの事、信じてたモン、大好きだから……、痛くても
頑張れたんだモン……」

「……あのクソ爺、俺らとモンを引き離すつもりで……、ずっとモンを
狙ってたのか、人間への不審さを植え付ける為かよ、汚え事しやがる!
モン、ごめんな、早く気づいてやれなくて……」

ジャミルは謝りながらモンの頭を軽く撫でる。モンは嬉しそうに笑うと、
ううん……、と首を振る。

「モン、またジャミル達と会えて嬉しいモン、だから平気モン♪」

「モンちゃん、頑張ったね、偉かったね……、ありがとう、私達の事、
信じてくれて……」

「モン……、モォォ~ン……」

アイシャは再びモンを強く抱き締めた。その様子を見ていたアルベルトは
怒りで拳に力を込めた……。

「……本当に許せない、ゲルニックの奴……、何処まで汚い真似をっ!」

(……流石にコレはアタシもドーカン、もう……、酷すぎるよ……、
ジャミ公っ!も~っ、モタモタしないで早くあのミミズクじーさん
倒しちゃいなよっ!じゃ、ないと、又何してくるかわかんないよッ!)

「わあ~、アルベルトもサンディも落ち着きなよお~!あのさ、オイラ達と
モンを助けてくれた虎の剣士……?みたいな人……、オイラ思うんだけど、
もしかしたら帝国の中でも結構常識人な部類に入る人なんじゃないのかな~
……、って……」

「そうね、何だか悪い人に見えなかったもの、ね、ちゃんと話をしたら、
和解出来るんじゃないかしら……、希望を持ちたいわね……」

「虎のおじちゃん、格好良かったんだモン、また……、会えると
いいモン……」

「……虎の剣士、一体何モンなんだよ……、敵じゃねえのか……?
けど……」

……ダウドとアイシャ、元々争いを好まない二人なので、本当なら戦いを
避けたいと願う気持ちはジャミルにも分かるが、だが本当の常識人なら、
帝国が行っている非道を知った上で黙って見過ごすのかと。ジャミル達を
救ってくれたとは言え、此処は帝国領なのだから……。だが、精神的にも
ショックを受け、疲労しているであろうモンの前で、一旦これ以上は
この話題を伏せておきたかったのである……。

「……そうだ、皆、見て!彼処……、モンが倒れていた場所、
すぐ近くに扉があるよ、彼処から何処かに出られるかも知れない……」

「……ひえ~っ!?」

「……じゃ、ないでしょっ、ダウドったらっ!」

「モン~?」

「何?……ほ、本当だ!よしっ、急ぐぞ、モン、大丈夫か?」

「モン、モンはもう平気モン!」

モンはそう言うと、再び定位置のダウドの頭の上に乗る。ダウドは
やれやれと思ったが、この調子ならもまた徐々にモンの状態も
安定するかも知れないと少し安心した。……処が……。


「……ほ~っ、ほっ、ほっ、ほっ……」


「!こ、この声はっ!?」

「……爺、ゲルニックだな……、来たな……」

「……ひええーーーっ!?って、そんな場合じゃないっ!うう~、
モン、しっかりオイラの頭の上に乗ってるんだよ、離れちゃダメ
だからねっ!」

「……モ、モン……」

突如又響いて来た、癪に障る様な笑い声にアルベルトもジャミルも
身構え、ダウドは頭上の上のモンを励ます。……途端に、辺りが急に
真っ暗になった……。

「やっ!?何よこれっ!み、みんな大丈夫っ!?」

アイシャが慌ててメラを唱え明かりを灯し、全員の安否を確認。だが、
暗闇にうっすらと浮かび上がる不気味な絵画の数々……。それだけで
ダウドはもうしっこを漏らしそうに……。

「……いーやああーーっ!?何だよお!?ぎゃああーーっ!!」

ダウドがうっかり目にしてしまったのは、古来の有る有名画家の
グロ絵、プリンシペ・ピオの丘での虐殺だった……。

「アホっ!落ち着けってんだよっ!こんなの只の絵だろうがっ!
……只の……」

「……デロ、リン♡……デロ、デロ……」

「……ぎゃあああーーーっ!!」

「……バカっ!結局は君まで騒いでるじゃないかっ!それにしても、
この絵……、殆どが処刑の絵やら、死をイメージする様な、そんなの
ばっかりじゃないか、僕らを挑発しているのか?」

「嫌だわ、気味が悪いわね……、でも、脅しになんか負けないわよ!」

……だが、さっきのレーコ像は、明らかに嫌がらせと当てつけだと
おもうジャミ公……。

「……ほほほ、如何でしたかな?……私が趣味で集めた素晴らしき
絵画の数々は……」

「「……ゲルニックっ!!」」

再び周囲がぱっと明るくなり、絵画達も消え、等々ゲルニック
張本人が姿を現した……。

「随分と悪趣味なこって、悪ィけど俺は芸術には疎いんでさ、何とも
思わねえな!」

……だが、さっきレーコ像で大騒ぎしていたのは誰だとアルベルトは
心で突っ込んでみた……。

「ふん、先程の絵画達は全て……、これからのあなた達の行く末を
暗示する物ですよ、この絵を見なさい……、我が子を喰らうサトゥル
ヌスの絵です、親が我が子を殺し、喰らっています、つまり……、
この親とはあなた方の事、……そして子はそのモンスターだったと
言う訳です……、ほ、ほほほっ!」

「モ、モン……」

「……モンちゃんっ!おいで!」

「てめえ……、いい加減にしろっ!!よくもっ!!好き放題
言いやがってっ!!許さねえ……」

アイシャは再び怯え始めるモンを抱き寄せ、ぎゅっと抱き締める。
アルベルトもダウドも怒り心頭でアイシャとモンを庇い、
ゲルニックを睨んだ……。

「これ以上モンに酷い事したら……、オイラ許さない!!」

「……僕らはお前の卑劣な罠になんか絶対負けたりしないっ!!」

「だが、ある男によって妨害され、この絵の通りにはなりません
でしたがね!フン、憎々しい!ですが、あなた達は本当にもう
此処で終わり、これ以上は先には進む事が不可能です……、
これを見なさい……」

ゲルニックは手のひらを上に向ける。そして輝く球体を取り出し、
4人へと見せるのだった。

「……これが何だか分かりますか?」

「何がって……、……ま、まさかっ!?」

「……頭の悪いあなたでも理解は出来る様ですね、そう、天使達から
奪い取った力の一部、私にも少しお裾分けして頂こうかと思いまして……、
ちょこっと拝借し、頂いた次第です……」

「……やめろっ!この悪趣味クソ爺っ!!」

「止めろと言われてももう遅いのです……、ホホホ、私はこの力で
最強になる……、もはや皇帝など関係ない、私は私の理想の帝国を
創り上げる……、モンスターも人間も、天使も皆、私の下部、奴隷と
なり、手足となれよ、……その為にっ!!……ほ、ほおおーーーーっ!!」

「……ゲルニックーーっ!!よせーーっ!!」

「……あああ!も、もう駄目だよおお~……」

ジャミル達が止める事も出来ないまま、ゲルニックは球体を
浮かび上がらせ、自らの身体へと埋め込んだ。光の球体は更に
膨張し、ゲルニックの身体を包み込むのだった。

「……素晴らしい……、これが天使の力ですか……、この力ならば……、
世界を支配する事など容易い、……グ、オオオ?な、何だこれは……?
ァ、ァァ、……ァァァアーーーっ!?どうしたと言うのですかあーーっ!?
身体が焼けるウウウーー!?ア、アアアアーーーッ!?」

「ゲルニック……、身体に合わねえヤクを取り込んだ様なモンか、
バカ野郎……!」

「耐えられなかったんだ、奴では力の重さ、重圧に……、でも、
このままでは……」

「もう感情をコントロール出来なくなってるわ、あの人、何とかしなくちゃ
大変な事になっちゃうわ……」

「モン、モン~……」

モンを抱き締めながらアイシャも不安になる……。ゲルニックの身体は
もはや原型を留めておらず、どんどん醜い醜態の巨大な化け物と化し、
崩壊していった……。醜く巨大化していくゲルニックは城を揺らし始める……。

「……ヲヲヲ……、スベ、テ……、ハカ、イ、ィィィィイーーーッ!!
テイ、コク、ワレノモ、ノ……、ホ、ホホホ……、ヲホ~ホホホッ!!」

「……きゃっ!?」

「……やべえっ、城がっ!?」

「……わあーーっ!あいつが振動起こしてこの城揺らしてんだ
よおおーーっ!!」

「は、早く倒してしまわないとっ、僕らまで生き埋めだっ!
……でも……」

(……ちょっとッ!ヤ、ヤダーーッ!もう見てらんねーーッ!
顔溶けてるしーーっ!!キモいーーっ!!ジャミ公、は、
はははは、早く倒してェーーっ!!)

ジャミルの中にいるサンディでさえ、怯え出す、崩壊ゲルニック……。
その凄まじい荒んだ姿に4人は只、立ち尽くすばかりだった……。

「……冗談じゃねえっ、潰される前にやっちまうぞっ!皆、行けるか!?」

「僕は大丈夫だよ!覚悟は出来てる!」

「私もよっ!」

「オイラも~、もう、やるしかない、けど、この後も……、
まだまだ敵が控えてると思うと……、うう~、モン、さあ
今度は又こっちにおいでっ!」

「モォ~ン!ウシャーー!!」

アイシャに抱擁されていたモン、戦い始まり、再びダウドの頭の上に
お引っ越し。だが、モンもすっかりいつものモンに戻っており、
ジャミル達と共に戦う覚悟を決めていた。カオス顔になりながら……。


「……此処で倒れる様なら、お前達はその程度だったと言う事だ、
試練を超えよ、人間共……、見せて貰おうか、本当に我と戦える力が
有るなら……」

zoku勇者 ドラクエⅨ編 69

zoku勇者 ドラクエⅨ編 69

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-05-31

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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