ファンタジー系5
おはようございます。新作第一話のお届けです。シリーズ第五弾は西部劇テイスト!ニューヒロイン、ジョー登場!お楽しみに。
第一話
「ファンタジー系5」
(第一話)
堀川士朗
登場人物
ジョー・ヴァンニー
北の国の女傭兵。二挺拳銃使い。
この物語の主人公。
アパム・ベラジオ。
東国諸侯連合出身の傭兵。
45歳。
傭兵派遣会社エンダーに所属している。
右手に組み込まれたガトリングガンを使用する。
給料が良いからアリエ戦役に参加した。
妖精ホヰップ。
エーテルで出来た体内で弾丸を吸収・分解する。無敵。
主人公ジョーの闘いをサポートする。
意志を持った浮遊物体。
それがホヰップ族。
エドゥ。
タリホー連邦出身。
大口径の銃を使う。
ジョーとはとある因縁がある。
半田猟兵。
日本からやって来た古老のスナイパー。
三八式歩兵銃を愛用する。
純粋に戦闘を楽しむ95歳。
リテン分隊長。
無能な隊長。
すぐ死ぬ。
ブキター・ドルバッキ。
ガンズあきんど。タム屋アリエ支店をフランチャイズ経営している武器商人。
高値だが、良質な武器を売る。
金にうるさい。
ヤスディング・ドルバッキ。
アリエの荒野、グエナ台地にあるダイナー『ヤスディング』の亭主。
ブキターの弟。
二階はタム屋アリエ支店。
安くて美味い飯を客に提供する。
客のオーダーに応え何でも作る。
「……あるんですけど」が口癖。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
見上げた先は無辺の月。
空にはふたつの青い月が早くも現れている。
青く燃える、ふたつの月が。
北の国の王暦245年。
アリエ共和国を舞台として、北の国と南方暗黒連合の闘いがあった。
アリエ戦役である。
発端は北の国がアリエ共和国に技術者とともに供与したソーラー発電所が、アリエ共和国のテロ組織ボッケハラによって占拠され、技術者十七名が殺害される事件が起きた事による。
ボッケハラはそのままソーラー発電所を占拠。
政治母体ともゆかりのあるアリエ共和国政府はボッケハラを擁護し、北の国はアリエ共和国と幾度もの賠償請求協議の末に決裂し、散発的な交戦状態となる。
やがてアリエを応援する形で周辺諸国からなる南方暗黒連合が参戦。
事態は泥沼と化した。
戦況は膠着し、消耗戦となっていた。
北の国正規兵だけでなく私兵も志願兵となった。
ここに、とある部隊に配属された五人と一匹の戦士がいた。
アリエ国境地域。
軍用列車に乗って戦地へと運ばれる北の国の戦士たち。
多くの者にとっては、地獄への片道列車となるだろう。
列車の一室。
五人いる全員がみな同じ分隊の一員だ。
この軍用列車は一分隊ごとにひとつの車輌が割り当てられているようだ。
この隊のリーダー、まだ若い軍歴も浅いリテン分隊長は席にふんぞり返って脂っぽい髪をチャラチャラと櫛でいじっている。
ただのチビデブハゲのグランドスラムの男だ。
2メートルを越すひときわ身体のでかい男が小柄で痩せた老人に話しかける。
男は豊かな髭をたくわえている。
老人も白くて長い顎髭がある。
老人の名前は半田猟兵。
95歳。
遠く日本からアリエ戦役に志願した老兵である。
半田の傍らにはよく手入れの行き届いた三八式歩兵銃が大事そうに置かれている。
「ようじいさん。またまたあんたと一緒の戦場か」
「アパムか」
「久しぶりだな。リノラス会戦以来かな」
「そうかそうか。アパム、ずいぶんとゴツいの着とるのう」
アパムと呼ばれた男、東国諸侯連合の傭兵アパム・ベラジオはジャンパーの内側にタンジムン鋼のボディアーマーを着用していた。
「これは俺が十年前に闘った相手が着ていたものだ。オネータン・ジョンという、界隈では有名な殺し屋でな。エンリケ星人の無茶苦茶強い奴だった」
なお、オネータン・ジョンを前にしてアパム・ベラジオがビビり散らかして敵前逃亡した事は誰にも秘密で、ベラジオはその秘密を墓場まで持っていくつもりである。
(ファンタジー系2を参照)。
列車が目的地、アリエ西側の台地グエナに到着した。
ここは既に北の国の占領地帯である。
わらわらと兵たちが荷物とともに降りていく。
この駅を起点として各分隊は三々五々各々の戦場へと散開していく。
分隊を取り仕切るリテン分隊長が怒鳴っている。
「役立たずは放っておくぞ!良いな!行くぜ!野郎ども!」
リテン分隊長は何か踏んだ。
次の瞬間、リテンの身体が吹っ飛んだ。
ミンチになるリテン。
「地雷だ!」
「敵襲か?」
「いや、ものすごーく低い確率であそこにだけ埋設されていた対人地雷を踏んだようじゃ。しかも味方が埋めたものを。分隊長はたまたま踏んだんじゃろう、非常に分かりやすく埋設されたそれを」
「ふ~ん。よく今まで生きてこれたわね。無能かしら」
「どうする?分隊長いきなりミンチになって死んじまったぜ。代わりはどうする?じいさんやるかい?」
「いや、わしは良いよ。どうだろう、お嬢さんにやらせてみては。その方が華やかじゃろ」
お嬢さんと呼ばれた女性はジョー・ヴァンニー。
25歳。
腰に二挺拳銃を下げている。
背も高く美しい女性だ。
長い髪を後ろで束ねている。
彼女は従魔の妖精ホヰップを連れている。
ホヰップの体つきは子犬か子熊のような丸っこいコロコロとした感じ。色はアイボリーカラー。体長は四十センチほどで小さい。
背中に四枚の薄い緑色の羽根があり、ふわふわと浮きながら移動する。かわいい。
「半田さん私ですか?……分かったわ。今から分隊長は私。先ずこれから食糧弾薬を調達に行きましょう。官品で支給された弾薬だけでは、あまりにも量が少ない。これではいざ戦った時に、まるで戦闘にならない」
「確かにな。妙案だ。鋭いねジョー分隊長」
半田猟兵が感心して言った。
半田の傍らの、長身の不気味な男エドゥが好色そうにジョーの身体を眺めてニヤリと笑った。
続く
ファンタジー系5
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