『初夜』
天蓋のベッドで貴方を待つ
これから起こる悲劇も知らず
『初夜』
じっとしていればすぐ済むと
みんな口々に言うけれど
あの人を前にして大人しくなんて
アタシに出来ると本気で思う?
姿を見るだけて声を聞くだけで
ソワソワと浮つく気持ちを
抑えられないまま迎えた夜
薄い夜着が心許なく足に絡む
今夜はゆっくり寝なさいなんて
貴方の提案が憎くて仕方ない
アタシが何を犠牲にしたかも
本当は知ってた癖に澄ました顔して
そう、貴方は確かに知っていた
今夜を得る為に犯した罪の全てを
それでも黙すると決めたのなら
どうか最後まで貫き通してよ
その腕に縋りつきソプラノが響く
その背中に爪を立てビブラート
血が流れるのは仕方ないから
見捨てないで付き合って
朝日が射す頃には貴方の腕の中
淑女の仮面を被って笑えば
必要ないと皮肉気な笑み
その顔が見たかっただけよ
「共犯者として縛り付け合いたい」
『初夜』