『初夜』

天蓋のベッドで貴方を待つ
これから起こる悲劇も知らず


『初夜』


じっとしていればすぐ済むと
みんな口々に言うけれど
あの人を前にして大人しくなんて
アタシに出来ると本気で思う?

姿を見るだけて声を聞くだけで
ソワソワと浮つく気持ちを
抑えられないまま迎えた夜
薄い夜着が心許なく足に絡む

今夜はゆっくり寝なさいなんて
貴方の提案が憎くて仕方ない
アタシが何を犠牲にしたかも
本当は知ってた癖に澄ました顔して

そう、貴方は確かに知っていた
今夜を得る為に犯した罪の全てを
それでも黙すると決めたのなら
どうか最後まで貫き通してよ

その腕に縋りつきソプラノが響く
その背中に爪を立てビブラート
血が流れるのは仕方ないから
見捨てないで付き合って

朝日が射す頃には貴方の腕の中
淑女の仮面を被って笑えば
必要ないと皮肉気な笑み
その顔が見たかっただけよ



「共犯者として縛り付け合いたい」

『初夜』

『初夜』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-05-28

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