『記憶に殺される』
優しいだけの思い出が
アタシの致命傷
『記憶に殺される』
たかが写真一枚に抉られた胸は
あの日のまま少女の顔をしてる
誰より優しく抱かれたから
どんな人より強くアタシを縛る
幾つ愛に似たものを繰り返しても
優しさの形が違えばすぐに気づく
アタシはずっとあの日の腕の中
微睡む午後の窓辺で見つめ合う
白いレースのカーテン越しに
いつか失うものとして存在する貴方
儚い輪郭に触れたくて手を伸ばすけど
触れたら消えてしまいそうで怖かった
いつもそこで夢から覚める
触れられなかった指が空を彷徨い
まだ貴方を求めていると痛感するの
どんなに苦しくても捨てらない写真と同じく
簡単に捨てられるものなら
きっとここまで愛せなかった
だけど失った今となっては
そのことが余計にアタシを苦しめる
髪の感触も瞳の色も唇の温度さえ
はっきりと思い出せてしまう
アタシの我儘に困ったように笑う
あの瞬間が愛おしかった
最後は仕方ないって言ってくれるから
永遠に続くと信じてしまった
時間制限があるなんて思いもしなかった
こんな風に独りで貴方を想うなんて
時が経てば経つほどに恋しくて
だけど戻れない事実に打ちのめされて
いつか殺されるならそんな
柔らかで苦しいくらい優しい記憶
「忘れるくらいなら殺されたい」
『記憶に殺される』