『上演は続く』

世界で一番の幸福は
世界で一番の不幸と背中合わせ


『上演は続く』


目隠しして後ろを向いて
それでも見えてしまうの
君は今舌を出して笑ってる
いつも通りアタシを嘲て

癖になるくらい繰り返した
アタシたちのは病的よ
主張を曲げる気のない二人
だけど一時も離れたくない二人

始まりは唯のじゃれ合いだったのに
何の間違いか回路が繋がり
快楽漬けの海に揃って浮かぶ
だって抜け出すのは大変よ

背を向けあって手を繋ぐような
ギリギリの関係を弄んで
小指の約束なんて全部嘘だから
あやふやな感触を確かめたいの

誰も知らない共通項を
誰にも知られず共有する
共犯者で親友で恋人だなんて
全部安っぽい装飾でしかない

本当はそのどれでもなく
お互いがお互いに罪を犯す
特別で凡庸なナンセンス劇
守るのは二人であるということだけ

最初から共犯なんて
成り立ってはいないのに
恰もそうであるかのような
演出通りの台詞、目配せ、そして暗転



「終幕までのほんの戯れ」

『上演は続く』

『上演は続く』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-05-21

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