『レッスン』
張り詰めた糸が切れる時
貴方はアタシに陥落する
『レッスン』
恐れながら進んだわ
言い負かされれば命の終わり
言わばこれは生存競争
貴方に勝つ為に生きてきた
不毛とも言えるこの戦いを
長引かせてきたのは理性じゃなく
本能と本能のせめぎ合い
捨てきれない欲望の所為よ
指に指を重ね奏でる鍵盤の
音にすら追い詰められて
服を脱ぐより耳元の低い声が
アタシの官能を高める
背中に感じる貴方の心臓が
少しでも早く動けばいいと乞えば
一層甘美に響くトリスタンとイゾルデ
けれど貴方にトリスタンは似合わない
どんな媚薬を飲んだとしても
きっと涼しい顔で切り捨てる
そういう男だと知っているのよ
獣の顔を隠す術に長けているから
だからアタシは淑女の顔で
見下したように笑うの
何も感じていないかのような顔で
内腿を伝う蜜の香りに気付かれるまで
「スカートの中の秘密を知るのは落ちた貴方だけ」
『レッスン』