『レッスン』

張り詰めた糸が切れる時
貴方はアタシに陥落する


『レッスン』


恐れながら進んだわ
言い負かされれば命の終わり
言わばこれは生存競争
貴方に勝つ為に生きてきた

不毛とも言えるこの戦いを
長引かせてきたのは理性じゃなく
本能と本能のせめぎ合い
捨てきれない欲望の所為よ

指に指を重ね奏でる鍵盤の
音にすら追い詰められて
服を脱ぐより耳元の低い声が
アタシの官能を高める

背中に感じる貴方の心臓が
少しでも早く動けばいいと乞えば
一層甘美に響くトリスタンとイゾルデ
けれど貴方にトリスタンは似合わない

どんな媚薬を飲んだとしても
きっと涼しい顔で切り捨てる
そういう男だと知っているのよ
獣の顔を隠す術に長けているから

だからアタシは淑女の顔で
見下したように笑うの
何も感じていないかのような顔で
内腿を伝う蜜の香りに気付かれるまで



「スカートの中の秘密を知るのは落ちた貴方だけ」

『レッスン』

『レッスン』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-05-21

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