天獄

あたしが天使だった頃、「どうしてあなたはここにいるのに苦しそうな顔をしているの?」と尋ねたことがある。そうしたらあなたは、苦虫を噛み潰した表情の上に貼り付けただけのような笑みを浮べながら「君にはそう見えるんだね。」と言っていた。あの時あなたが何を思っていたのか最後まで理解することはできなかったけれど、今なら少しわかる気がする。背中の羽根が落ちて人に成り下がったあたしに残ったのはかけがえのないあなたの魂だけで、それを抱えることができる幸福はあなたに二度と触れることができないということの板挟みに。

天獄

天獄

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-05-18

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