zoku勇者 ドラクエⅨ編 63

死闘・ゴレオン

処が……。今日は異様に囚人広場の方がざわざわ忙しく騒がしいので
ある。しかも、ジャミル達よりも先に仕事に向かっている筈の囚人達が
誰一人持ち場についておらず、ある場所に皆慌てて向かっていた……。
その場所とは……。

「アギロ、何かあったんかな……」

「分からねえがとにかく行ってみよう……」

ジャミル達も現場へと歩き出す。其処へ一人の囚人の青年が
凄い勢いで走って来た……。

「……はあはあ、あ、アギロの親分ーーっ!た、大変だあーーっ!!」

「どうしたっ、何かあったのかっ!?」

「た、助けてくれ、……このままじゃ、仲間が又殺されちまう、疲れて
本当に少し仕事の手を休めてしまっただけなんだ、それなのに憲兵に
ギロチン台の方へ無理矢理連れて行かれちまったんだようーーっ!!」

「!!」

「……分かった、落ち着け!ジャミル、ボン、俺達もとにかく行ってみよう!」

「ああ!」

「う、うん……」

「……済まねえ、うう、……親分~……」

アギロは泣き崩れる青年を落ち着かせた。その後、ジャミル達と一緒に
騒ぎが起きている現場へと向かうのだが……。

「……アギロ、彼処だっ!」

「ああっ!?畜生、又何て事をっ!!」

見ると、憲兵に縄で縛られ処刑台へと引っ張られていく男性の姿が……。
皆、見ているだけで何も出来ないのである……。助ける様な素振りを
少しでも見せれば、同罪で一緒に処刑されてしまうのだから……。

「……ほらさっさとしろ!来るんだっ!!」

「……い、嫌だ!オレはまだ死にたくねぇよ!まだまだ生きて
やりたい事が沢山あるんだあっ!!」

「うるさいっ!黙れっ!!帝国に逆らおうなどとする貴様に生きる
権利などないっ!」

「ううっ……」

「……手間を掛けさせやがって!もはや処刑台を使うまでもない、
仕事をサボるなど不届きな奴めが!……このまま剣の錆にしてくれる!」

「……ううっ、だ……、誰か助けて……」

遂に憲兵が青年に剣の矛先を向ける……。ジャミルはもう
我慢出来なくなり、飛び出して行ってしまう寸前になる。
しかし、ジャミルよりも先に飛び出した者が……。アギロの
拳が憲兵にヒットし憲兵は宙を舞い地面に倒れた。

「……アギロっ!!」

「アギロさん……」

「き、貴様……、血迷ったのかっ!アギローーっ!!」

「……ハア、ハア、み、みんな……、駄目だ、俺はもう我慢出来ん……」

アギロは憲兵を殴った自分の拳を見つめながら大きく息を吐き言葉を溢す。
その声は怒りで震えていた。

「……みんな聞いてくれっ!!俺達は今まで散々奴らに虐げられて来た、
……本当はもう少し皆と脱出の計画を話し合うつもりでいた、……だが
もう限界だ!今こそ立ち上がる時!……俺達の本当の自由を勝ち取る為に
戦うべき時が来たんだ!」

「モォ~ンっ!」

「モン、こっち来いっ!」

「わあ、モン君!」

「モォ~ン♪」

アギロのリュックの中に隠れていたモンが飛び出しジャミルの
肩の上に乗る。モンは改めてボンにちょこんと頭を下げた。

「けど、一体どうやって脱出するんだ?看守共を倒しても牢獄から
出られなくてはどうする事も……」

「そうじゃよ……」

「その点は安心してくれていい、其処にいるジャミルは奴らの結界を
通り抜けちまう事が出来るのさ!」

「な、何だと……!?」

「まさか……」

……先程アギロに殴られた憲兵と囚人達が一斉にジャミルの方を見る。
……同時にジャミルのシャツの中に潜めている紋章が輝き出す……。

「……そう言う事か!あ、あのクソガキめっ!……そうはさせるか!」

「ジャミル君、凄いよ!やっぱり君は皆の希望の光だったんだね……」

「ボン、でも……、アギロ、俺はどうすりゃいいんだい?俺に出来る事って……」

「今からジャミルには見張り塔にある結界の発生装置を止めて来て貰う、
俺達はそれまでの間、帝国兵共を抑えてりゃいいんだ、それなら楽勝って
もんだろ?」

「……そ それが本当なら確かに何とかなるかもな……」

「おーし、騙されてやろうじゃねえか、帝国兵共をたたんでやるぜ!」

「!む、無茶だ!帝国兵相手に時間稼ぎすんのか!?その間に皆
やられちまうよ!」

「……裏切り者のアギロと手下のクソ共を引っ捕らえろーーっ!
もう全員殺しても構わんーーっ!」

先程の憲兵が援軍を呼び、囚人広場はあっと言う間に物々しい
雰囲気に包まれる。だが、アギロはジャミルの肩を強く掴み、
大切な言葉と、希望を託すのだった。

「俺達はお前さんを信じてるぜ、だからお前も俺達を信じろ、
昨日も言ったろ、頭数じゃこっちの方が上だってよ、心配すんな、
乗り切ってみせるさ!」

「でも、やっぱり……、あっ!?」

「……お、俺達を舐めるんじゃねえっ!」

「そうじゃ、死に損ないのこのクソ爺、あの世の旅立ちの前に奴らに
一泡吹かせてやるわ!」

等々、囚人者vs帝国兵の反乱分子バトルが始まってしまう……。
囚人者達は凄い勢いで兵達に立ち向かい、武器を奪う。帝国兵達は
囚人を舐めていた為、予想外の反撃に戸惑っている様子だった……。

「ええーいっ、何をしているんだーっ!援軍共ーーっ!もっと
さっさと来んかーーっ!!」

「うるせーこの野郎!オラっ、黙りやがれーーっ!」

「……ぐわあーーっ!?」

「ボウズ!力になるか分からんが、素手で行くよりはマシだっ!
持って行きな!」

囚人のおっさんが兵から奪い取ったサーベルをジャミルへと放り投げる。
ジャミルはサーベルを受け取るが、それでもまだ皆を残していくのが
不安な心境だった。もし、自分が途中で力尽きたら……、全てが終わりに
なってしまう……。

「ジャミル、お前だってやるべき事があるんだろ?何時までも
こんな所にいちゃいけねえ筈だ、あんたを待っている友人達が
いるんだろ!」

「……アギロ、俺……」

アギロの言葉にジャミルは脳裏に仲間達の顔を思い浮かべた。
アルベルト、ダウド、アイシャ、そして、サンディ。今頃きっと
皆心配している……。皆に再び会う為に、此処から生きて生還
しなくてはならない、何としても……。

「ジャミル君、行って!僕に言ってくれたよね、生きて此処を
出られたら君の友達を紹介してくれるって、僕、楽しみに
してるんだよ、だから……、僕も頑張るよっ!」

「……ボン……、ああ!」

ボンの言葉に遂にジャミルは決意する。弱虫だったあのボンまでもが
必死で帝国兵に立ち向かおうとしている。ジャミルはサーベルを強く
握りしめる。だが……。

「……撃てーーっ!あの厄介な小僧を狙えーーっ!集中攻撃しろーーっ!!」

「……あぶなあーーいっ!!」

隠れていた援軍がジャミル目掛け一斉に銃を乱射する。次の瞬間
ジャミルは誰かに体当たりされる。身体を強く弾き飛ばされ地面に
転がるのだった……。

「いっつ!……あ、あああ……」

「……モンーーっ!?」

次の瞬間、ジャミルとモンが見た光景は兵士達に銃の放火を浴び、
蜂の巣にされ、無残に倒れていくボンの姿であった……。

「……ウウゥ……、ウシャァァーーーっ!!」

「モンっ!危ねえよっ!!」

モンが本気で切れている……。その表情はモンが本来の
モンスターである事を思い出させる感情を露わにした
怒りのままの本能、その物だった……。

「……うわっ!?何だっ!ま、まさかモンスターまでっ、
……何故だっ!?」

「……ウギャああーーっ!!キシャァァーーっ!!」

「……も、もう、儂らも我慢出来ん……、絶対に勘弁ならんぞ……」

「……うおおーーっ!帝国めぇぇーーっ!!」

「この命に代えてもお前らを倒すぞーーっ!!」

囚人達はモンが援軍へ仕返しの奇襲攻撃している隙に自分たちも
怒りの突撃、ボンの敵を討とうと奮戦し、援軍を戸惑わせ
追い詰めて行った……。

「……ジャミル、今だ、本当に行くんだ!行ってくれ早くっ!
チャンスは今しかねえぞ!」

「アギロ、無茶言わないでくれっ!ボン……、しっかりしろ、
頼むから……」

「……ジャミル君、僕は大丈夫……、お願い、どうか、帝国を止めて……、
皆を助けて……、僕、待ってるから……、ぜったい、に……、君の、
友達に……、会い……たい、やく、そく……、したんだ、もの……」

ボンの息遣いがどんどん荒くなって行き、声も小さくなって来る。それでも、
ボンは最後までジャミルを心配させない様、小さく微笑んで見せた。その姿に
遂にジャミルも決意を固めた。

「……アギロ、俺、行ってくる、ボンの事、頼む……!」

「任せとけっ、ジャミル……、本当にこんな事になっちまって済まねえ、
頼んだぜ!あの見張り塔に有ると言う結界の発生装置を止める事、
これが出来るのはお前さんだけなんだ、……俺達の未来託したぜ!」

「ジャミル君……、お願い……します……」

ジャミルは瀕死の中、ジャミルの背中を押そうとエールを送って
くれているボンの方を見ると再び静かに頷いた。

「ああ、モンっ!……来てくれっ!」

「シャアーーっ!」

ジャミルはモンに合図するとジャミルの側まで飛んで行き、再び
肩の上に乗る。囚人広場の辺りはもう既に敵、味方とも血みどろの
屍の山になっていた。その中をモンと共にジャミルは振り返らず
見張り塔まで一直線に突っ走って行くのだった……。

「……ハア、ハア、アギロさん……、い、行ったんだね、彼……」

「ああ……、大丈夫だ、ボン、もう何も心配すんな、ゆっくり眠れ……、
済まなかった……」

「いいえ、……アギロさん、ジャミル君が、帰ってきたら……、
伝えて、く……ださ、い……、……あ、あ、り……が、と、う……、
……」

「……」

アギロは徐々に冷たくなっていくボンの身体にそっと触れると
両手を胸の前で組ませてやる。……肩を震わせながら拳に強く
怒りを込め、自らも帝国兵へと突撃して行った……。

「……侵入者だあーーっ!殺せーーっ!排除しろーーっ!!」

「うるっせーーっ!……俺は今滅茶苦茶機嫌が悪いんだああーーっ!!」

「シャアーーっ!!」

結界を潜り抜け、監視塔内部に侵入したジャミルとモンは怒りに任せ、
暴れ回る。武器はサーベル、装備品は無しと言う状態だが、それでも
やはり切れたジャミ公は帝国兵達を追い詰め、斬り捲った。外とは違い、
此方は既に人間では無く、完全に亡霊のモンスター兵、キラーアーマーで
ある。モンと共に力を併せ、監視塔内部の何処かに有る結界発生装置の
破壊目指し突き進んで行った……。

「モンっ!」

「……あった、あれかっ!」

「……その装置に触るな……!」

2階の一室にて、遂に見つけた結界発生装置。その装置を護衛する
様に又キラーアーマー達が現れる。ジャミルもサーベルを握りしめ、
一呼吸すると邪魔をするキラーアーマーに突っ込んで行った……。

「ハア……、や、やった、もう少し……」

「……モン?モンっ!」

「……!!」

「……何だ?おめえが今、暴れ回ってるってクソガキか?……新人の
小僧じゃねえか!」

後少しで結界発生装置を破壊出来る……、だが、やはりそう簡単に上手くは
いかなかった。薄汚い声に後ろを振り向くと、出現したのは、あの男……。
此処に連れて来られた初日にジャミルをボコボコにした、牢獄の支配者で
あり監視塔を取り仕切る、ガナン帝国三将軍がひとり、ゴレオン将軍……。

「ほう、そんな薄汚い格好と武器で良くも此処まで来れた物だ、
褒めてやろうか……?」

「うるっせええっ!あん時の事、忘れた訳じゃねえぞ!それに……、
此処の皆の恨み、ボンの敵……、今此処で取ってやるっ!ブタ野郎、
覚悟しろっ!!」

「モン、モン~……」

「モン、大丈夫だ、待ってろ……、こんなの直ぐにぶっ飛ばしてやるさ!
もうエンリョもする事もねえさ!」

ジャミルはモンを後ろ手に庇いながらサーベルの矛先をゴレオンに
向ける。……何がなんでも、コイツを倒して絶対に結界発生装置を
止めなければと……。

「……小僧、オレ様を舐めて貰っては困るぞっ!」

「っ……あ、ああっ!?」

「モンーーっ!!」

ゴレオンは持っていた鉄球を振り回すと、軽々ジャミルのサーベルを
叩き割ってしまうのだった。やはりコイツの力と破壊力は半端では
無かった……。

「畜生……」

「どうした?もう打つ手無しか?言っておくが、その装置を破壊
しない限り、貴様は此処では魔法も禄に使う事も出来んのだぞ、
どうだ?大人しく降参するか?最も、もう降参した処でテメエは
どうにもならんがな!」

「誰がっ!……俺は絶対に逃げねえ、負けたりしねえぞ!」

「そうか、ならこれはどうだ?見覚えがあるか?」

ゴレオンはジャミルにある物を見せつける。……それは更に
ジャミルを窮地へと追い込むのである。

「お、俺の……、てめ、この野郎!……返せーーっ!」

それはジャミルから没収したドラゴンキラー。あれがあればどうにか
真面に戦えるかも知れない。しかし、ドラゴンキラーは今、ゴレオンの
手の中に……。ジャミルは必死でドラゴンキラーを取り返そうと
ゴレオンに食って掛かって行こうとしたが……。

「……う、あああーーーっ!?」

「モンーーっ!!」

モンの見ている前で、ジャミルはゴレオンにバッサリ身体を斬られ、
身体から流血が飛び散りその場に倒れるのだった。

「ほう、中々良いシロモンだな、どうだ小僧?自分の使ってた武器で
斬られる味は?さぞかし美味ぇんだろうな、オレも是非斬られて
血の味を味わってみてえモンだ、へへ……」

「……モン、モン~……」

「大丈夫だ、モン、……糞、畜生……、う、うっ、……ゴホッ!」

「!?モンーっ!モ……、モ……、シャ、シャア~……」

「ぐはは!血の花火だな、う~む、これは愉快愉快!」

モンが必死にジャミルを見守る中、ジャミルは等々口からも
血を吐き出す。……その後ろで楽しそうで豪快なゴレオンの
笑い声が響き渡るのだった……。

「処で……、先程からずっと気になっていたが、貴様、モンスターじゃ
ねえか、何故こんな人間に味方する様な真似をしているんだ?」

「モン、モン……」

ゴレオンがモンに近づいて来る。モンは恐怖で怯えた……。傷だらけの
ジャミルの姿が銃弾の嵐に倒れたボンの姿と重なったからである……。

「モン……!シャアーーっ!!」

それでもモンは怒りでゴレオンを威嚇する。絶対にジャミルを
守りたかった。……絶対に。

「フン、おもしれえ奴だな、それでコイツを守っているつもりなのかい?
泣かせるねえ、ま、いいさ、……帝国、そしてこのオレ様に刃向かう奴はよ、
……例え便所の糞でも許さねえ!」

「モギャーーっ!!」

「邪魔だっ、テメエは向こう行ってろ!後でゆっくりブッ殺してやるからよ!」

「モ、モン……、畜生っ!」

ゴレオンはモンの身体を掴むと思い切り壁際へと放り投げ、叩き付けた。
モンの悲鳴を聞いたジャミルは何とか起き上がろうとするのだが……。

「何だ、おめえさんも渋といな、まーだそんな気力があんのか?」

「うるっせーっ!俺を舐めて後悔すんのはオメーだっ!……うあーーっ!!」

ジャミルは怒りを込め、渾身の拳をゴレオンにぶつけようとするのだが……、
やはり駄目だった……。ジャミルは逆にゴレオンに強烈な腹パンチを
叩き込まれたのだった。

「……ぐ、がはっ……」

「誰が後悔なんかするかよ!糞ガキめ!……もう今度こそ
テメエは終わりだ!」

ジャミルは再び血を吐いて倒れる。その瞬間、ジャミルのシャツから
紋章が落ちる。……グレイナルがジャミルへと渡した紋章……。
ゴレオンはジャミルを足で乱暴に蹴るとそれを拾い上げた。

「フン、こんな物隠してやがったとはな、どうりで……、だが、貴様も
可哀想な奴だ、こんな物持ってるが為に英雄さんに捲し立てられて
このザマだ!ま、恨むんならおめえに酷ぇ仕事を押しつけた帝国の
裏切り者のアギロを恨むんだな!がーっはっはっは!……お?」

「……モン、……モンーーっ!!」

「……」

モンはフラつきながらもよろよろ、再びジャミルの側へと
飛んで来る。必死でジャミルに呼び掛けようとするが、
ズタボロのジャミルは完全に動かず。返事をしない。
モンは、せめてこんな時……、一言でも言葉が出ればと……。

「モ……、モン……、モシャ、モ、モ……」

「おい、チビ、邪魔だって言ってんだよ、お楽しみタイムなんだからよ、
どけっ!」

「……シャ……、フシャーーっ!!」

それでもモンは涙目でジャミルに近づいて来るゴレオンを必死で
威嚇する。ゴレオンはそんな二人を又も笑い飛ばすのだった。

「そうかい、モンスターと糞人間の友情ごっこか!面白すぎて、
……不愉快でオレは反吐が出そうだ!な~に今まで下らねえこと、
散々人間共に吹き込まれて来たんだ?いいか、お前の時間は全部
無駄だったんだよ、大人しくオレ達帝国と一緒に人間殺しを
楽しんだ方が遙かに楽しいぜ!……オレらモンスターはな、
人間共を抹殺する為に生まれて来たんだよ!!それが全てだっ!!」

「モン……」

モンは錯乱する。これまで一緒にジャミル達と過ごして来た日々。
楽しかった冒険。怖かった事も沢山あった。ゴレオンはそれを全て
否定しようとしていた。お前はモンスターとして間違った生き方を
して来たのだと……。

「はーい、モンちゃん、キャンディーよ!でも、食べ過ぎちゃ
駄目なんだからね!」

アイシャ……

「……モンは僕達の大切な仲間だっ!!」

アルベルト……

「も~、ま~た人の頭で太鼓叩くんだからあーっ!全くっ!
……えへへ……」

ダウド……

「アンタはデブ座布団っ!そーったらそーなのっ!威厳ナシッ、
分かったッ!?」

サンディ……

「モンっ!早うデコ出せっ!!」

ジャ、ミ……ル……

「……」

モンは再びジャミルの方を見る。倒れたままで動かないジャミルの方を。
モンの目から涙が一滴零れた。


「へえ、お前、中々見どころあんなあ!」
 
「♪モ~ン!」


あの時、ジャミルに助けて貰った日。運命の出会い。……大切な日……。

(モンは、モンは……、まだ……、ジャミルにちゃんと有り難うって
言ってない、助けて貰った恩返し、何にも出来てない……、嫌モン……、
モンは、モンは……)

「や、いや、や……、モ……、ジャ、ミ……」

「お?」

「……ジャミ……ル……、かえろ、う……、モン、また、みん、
な……に……、あ、あい、た、い……、だから……、……モン
ーーーっ!!」

「うおっ!?……こ、これは……」

モンの身体が七色に光り出す。その光が倒れているジャミルを
優しく包み込んだ。

「モン、ジャミル……」

「……モン……?、お前……、モン……、なのか……?」

光の中でジャミルはうっすらと目を開けた。だが、いつもと姿が
違っている。まるで天使の様な、そして、何だか又一回り大きく
なった様な……、優しく包み込んで癒やしてくれる様な……。

「ジャミル、モン、もう一度皆に会いたい、ジャミルと一緒に
お喋りしたい、そう……、強く願ったんだモン……」

「まさか、モン、……ま、又、お前……、喋って……」

「ジャミル、負けないで、……お願いっ!……モォーーンっ!!」

モンの輝きが一層増すと、同時にジャミルを包んでいる光も強くなる。
これにはゴレオンも焦り始め、慌てて再び襲撃を開始しようと
するのだが……。

「何が何だか分かんねえけど面倒だっ!この際二人纏めて
止めを刺してやるっ!……う、うおおおーーっ!?な、
何だこりゃ!近づけねえぞーーっ!!」

光の余りの眩しさにゴレオンは目が潰れそうな程だった。
光に包まれたままのジャミルも何が何だか分からず、意識が
まだ朦朧としていた。

「何じゃ、ジャミ公、情けないぞ……」

「この声……、まさか……」

又響いてきた別の声にジャミルは漸く意識をはっとさせる。
これは幻なのか、それとも……。声の主はジャミルの前に
静かに姿を現す。

「グレイナルのおっさん、どうして……」

「しっかりせえ!わしはお前を信じて認めたからこそ全てを託したんじゃぞ!
……チビでさえおんしを助けようと必死で頑張っておるんじゃぞ!此処で負けて
どうするんじゃ!!」

……良く分からなかった。どうして死んだ筈のグレイナルがいるのか。
引き合わせてくれたのは、これもモンの力なのか、でも、一体どうして
モンにそんな力が……。そもそも出会った時から色んな意味でモンは
謎が多すぎた。でも、一つだけ言える事は……。

「そうさ、モンは大事な……、大切な仲間さ、今も、これからも、
ずっと、ずっと……」

漸く意識の戻ったジャミルはモンと向き合う。モンは照れくさそうに、
ジャミルに向かって微笑んだ。

「モン、俺を復活させてくれたのも、傷を治してくれたのも……、
モンの力なのかい?」

「うん、何だか不思議な力が沸いてこの姿になれたモン……」

「ほう、おんしのその姿、皆に幸せをもたらすと言われておる、
マポレーナになったんじゃの……」

「……モン……、お前……」

「ジャミル、モン、これからもいっぱいいっぱい皆とお喋りしたい、
沢山沢山、みんなに幸せを届けたい、それがモンの役目だって
分かったんだモン、だから……」

「ああ、絶対に……、生きて此処から帰ろうな……」

「モン……」

「……俺、負けねえよ、……絶対に……!」

「……モォォーーンっ!」

モンはジャミルの胸の中へと飛びつく。ジャミルもまた、
飛びついて来たモンを頑なに強く抱きしめ、支えるのだった……。

「ジャミル、もう一度立ち上がれ、わしもお主に最後の力を貸してやろう……」

「グレイナル……」

「お主はまだまだやらなければならない事があるじゃろう、此処で
終わりでは無い、その先へ進み、仲間と共に力を併せ、……帝国、
そして……、帝国を陰で操っておる真の黒幕を倒すのだ……」

ジャミルはグレイナルの顔を見つめる。そして静かに頷いた。

「もう一度問う、お前に覚悟はあるか?わしももう余り此処に
留まっておられる時間がない、ちゃんと返事をせえ……、もう
後には戻れんぞ……」

「ああ!約束したんだ、大事なダチと……、モンともさ、絶対諦めねえよ、
何があっても……」

「ジャミル……、モン……」

「良い返事だ、おんし、あの時よりも遙かにいい顔をしておる、
……やはり少しぐらい刺激がないと駄目じゃのう、おんしは……、
どうじゃ、たまには友人達と離れるのもいい経験になったじゃろ、
……側にいればどうしても甘えてしまうからの……」

「!!う、うるせーよ、おっさんっ!それよりも、早く力を
貸してくれっ!あのブタがこっち来ちまうってのっ!!お、お、
俺はっ!……甘えてなんかねーってのっ!!」

ジャミルは慌ててグレイナルに弁明。しかしその顔は真っ赤であった。

「♪ジャミル、タコさんみたいモン、ププーモン!」

「……モンっ、オメーもうっせーよっ!たく、喋れる様に
なった途端コレだっ!」

「えへへ、モン♪」

「うう~、よ、漸く目が慣れて来た、……ふざけんじゃねーぞ、糞が……、
今度こそブッ殺してやる!」

再びゴレオンがジャミル達に向かってのっそり動いて来る……。
その怒りは正に最高潮であった……。

「さあ、ジャミル、わしに向かって手を翳せ、急げ!」

「こ、こうかい?」

「よし、……いいかジャミル、先程も伝えた通り、わしがお前に
力を貸してやれるのはこれで本当で最後だ、だが、忘れるな、例え
遠く離れてもわしの心はいつもおんしと共にあると言う事をの……」

「グレイナル……、ア、アアーーっ!?」

「モンっ!ジャミルーーっ!!また変なブタが来るモンーーっ!!」

「あの糞ガキィーっ!何を企んでるか知らんがそうはさせんっ!!」

ゴレオンは今にもジャミル達に突っ込んで来る寸前であった。だが、
再び強い光がそれを足止めし、遮ったのである。ジャミルの身体の
中に強い光が入ると同時に、再び姿が変わり出す……。

「……な、何ィィっ!?」

「竜装備モンっ!」

「……モン、グレイナル、俺……」

ジャミルの中に入った光……、それはグレイナルと一つになる事を
意味していた。再び竜の力と、竜装備を得る事が出来たのだった……。

「ヘッ、あれが竜の力とやらか?へえ、奇跡の力を取り戻したってか、
だがな、オメエみてえなヒヨッコに帝国三将のこのゴレオン様が負ける
訳にいくかよッ!」

(……さあ、いざゆかん、共に戦いへ!行くぞ、ジャミルよ!)

「……ああ、まずは俺の武器を取り返すっ!」

「死ねえぇぇーーッ!……ウッ……!ウォォーーーッ!?……げ、
げはっ……」

ジャミルは凄いスピードでゴレオンに近づくと、先程の仕返しの
意味も込め、腹に強烈なパンチを叩き込む。もはや完全に形勢逆転
だった。……ゴレオンは呻きながら腹を抑えその場に蹲り、掴んでいた
ドラゴンキラーを床に落とした……。

「よしっ、俺のっ!……モン、ドラゴンキラーだ!取り返したぞ!」

「やったモ~ン!」

「ゲハッ、ゴホッ!……こ、この……、糞ガキ野郎めが……!」

「ゴレオン、もう大人しくしろよ、オメーに勝ち目はねえんだよ、
この悪魔のカデスももう終わりみたいだぜ、ほら、広場の方、
静かになってるだろ……」

「やかましいわーーっ!ええいっ、こうなったらっ!……一気に
潰してやる……!」

ゴレオンは力を溜め、テンションゲージを一気に上げる。速攻で
ジャミルに痛恨の一撃の制裁でケリを付けようとしている。だが、
ジャミルも怯んでいられない。絶対に負ける訳にはいかないの
だから……。ジャミルは小さく祈り、ドラゴンキラーを構えた。

「……今、我に示せ、光の力っ!!」

「……ゴガアアアーーーッ!!」

すれ違う剣の刃……。結果は一目瞭然だった。ドラゴンキラーが
ゴレオンの金棒を破壊し、ゴレオンも又身体を斬られ……、その場に
凄まじい音を立てて倒れた……。

「ジャミル、やったねモン!」

「……モン……」

「……畜生……、オレの負けかよ……、何処までもふざけやがって……、
帝国の将軍ともあろう者が虫ケラごときに倒されるとは……、これは
夢か?悪夢か?……い いや違う!オレは以前にもこうして戦いに
敗れ這い蹲っていた!?……そうだ、遙か昔、オレはグレイナルに挑み
奴の炎に焼かれて死んだ筈だ……」

「ゴレオン、お前……」

「モン……」

ジャミルもモンも衝撃の事実を知る。ゴレオンはかつてグレイナルに
戦いを挑み、一度命を落としていると……。もしかしたら前世は普通の
人間であった可能性も高い。そして、何者かによってモンスターとして
復活させられたのだと……。

「ではオレは死者なのか?……そんなバカな……、オレは……帝国は……?
……グフッ……」

ゴレオンは血を吐くと息絶える。そしてゴレオンの身体も消滅
し始めるのだった……。

「グレイナル、あんたこいつの事、知ってたんだろ?答えてくれよ……」

「……いや、わしも年じゃ、全く覚えておらんわ、遠い昔の事じゃ……」

年寄り扱いされると今まではブチ切れていたが、グレイナルは急に
痴呆老人の様になってしまっていた。たく、癖の悪い爺さんだなあと……、
そう思った途端……。

「あっ……」

「ジャミル、竜の装備が……消えちゃうモン……」

「……これでわしのお役目も完全に終わる時が来た様じゃ、おんしに
預けた力、返して貰うぞ、ジャミル、これからは誰かに頼るのではない、
お主だけの最強の力を求めよ、そして帝国を倒せ、必ず……」

「分かってるよ、おっさん、じゃあな……」

「さらばだ、ジャミル、モン……」

「……グレイナル、バイバイモン……」

ジャミルの身体から完全に竜装備が消え、元のすっぴん状態に戻り、
手にはゴレオンから取り返したドラゴンキラーだけが残ったのだった……。

「よしっ、……もうこれで邪魔者はいない筈!後は結界発生装置の
破壊だけだっ!」

「……ジャミル、……待って、モン……」

「ん?どうした……、って……」

「モ~ン……」

ドラゴンキラーで結界発生装置を急いで破壊しようとしたジャミルは
手を止める。……モンの姿が……、もうマポレーナの姿ではなく、
いつものモンの姿に戻ってしまっていたのだった。

「ジャミル、ごめんなさいモン、モン、元に戻っちゃったモン……」

「モン、お前……」

「……これじゃみんなのお役に立てないモン……、モン、また足手まといに
なっちゃった、本当にごめんなさい……、モン……」

「バカだなあ、足手纏いなんかじゃねえよ!」

「ジャミル……?」

ジャミルはしゃがむとモンと同じ目線の高さになる。そして今日は
デコピンでなく、軽くモンのデコをちょんと突いた。

「俺ら今まで、何回お前に助けられたか分かんねえよ、ありがとな、
そりゃ、悪さばっかりやって困る時もあるけどさ、モンはモンらしくで
いいんだよ、これからもさ、それに、またお前と一緒にこうやって喋れる
様になった事が何より嬉しいんだよ、へへ……」

「……ジャミル、モン、本当は……、大人になるのが怖かったんだモン、
もう少しだけ、子供のままで、皆と一緒にいたい、そう思ったら元に
戻っちゃったモン……」

「ああ、モンのままでいていいんだ、我が儘でどうしようもねえけど、
大切な俺らのダチのモンのままでさ……、早く戻ってあいつらにも
知らせてやりたいな、喜ぶぞー、またお前が喋れる様になった事をさ!」

「うん、ジャミル、……大好きモン……、ありがとね、モン……」

「……」

……ジャミルはモンが落ち着くまで暫くの間モンを抱擁してやるのだった……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 63

zoku勇者 ドラクエⅨ編 63

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-05-10

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work