この街でやがて壊れる
鬱屈した自我をかかえて
贋物みたいな視界を焼きつける
この街で俺はやがて壊れる
それを知っているのは俺を措いてほかにはいない
何を失ってきたのか
それももう忘れてしまった
忘れてしまったということは
たいしたものじゃなかったなかったんだろう
(ほんとうにそうか
なにか間違っていはしないか)
誰かの面影が脳裏にちらつく
俺はそれを邪険にしながらも
頭の片隅で思いだそうとする
俺にとって誰かを思いだすことは
己の咎を抉りだすことと切っても切り離せない
過ちを犯した手で
ふたたび誰かを愛おしむことなど莫迦げている
俺のような罪びとにも
真摯に対峙してくれたあの人
あの人はもういない
あの人のいない世界を生きるという難題がのしかかる
生きるとは壊れることだ
俺はまだ致命的には壊れていなかった
誰を愛おしむこともできなくなってしまった俺は
この街でやがて壊れる
この街でやがて壊れる