zoku勇者 ドラクエⅨ編 58

魔獣の洞窟へ

4人はラテーナが道を開いてくれた奇跡に感謝し、魔獣の洞窟へと入る。
暫くの間、引き離されていたので、久々に4人揃っての冒険となった。
処が内部へ進もうとすると、ヘタレが又久々に愚痴愚痴言い出した。
この光景も全く変らずいつも通りだった。

「……ねえ、もしもだよ、洞窟の中に……、またあのハゲ……、
イザヤールが待ち構えていたらどうするの……?」

「そん時はそん時さ、戦うしかねえだろ……」

「!ま、またっ、戦って勝てなかったから力不足でオイラ達ボコボコに
されたんじゃないかあ!!」

「一応、武器も新調したんだ、ハゲ頭ぐらいは何とか殴れるだろ、
……とにかく今は、此処を抜けて英雄のグレイナルさんとやらが
住んでるドミールに行くしかない、力を貸して貰うんだ……」

「ああーーっ!……もうーーっ!!」

ダウドは地団駄を踏んだ。頭でもそれは分かっている。だが、
ダウドが心配している事は、彼の地に辿り着く前に今、もしも
イザヤールに妨害されたらどうするのかと言う問題である。

「ダウド、先へ進むしかないよ、此処で立ち止まっていても
どうにもならないよ……」

「……分かってますよおーーっ!ふんだっ!」

ダウドは心配するアルベルトを蟹股歩きで追い抜いてドスドス
先に歩き出した。……大夫、誰かさんに似てきてしまった様である。

「ダウドも不安なのよね、分かるわ、……私だってもうあんな
恐い思いは嫌、もしかしたら、もう皆と二度と会えなくなって
しまうかも知れなかったなんて……」

「モォ~ン……」

モンは心配そうにアイシャを見つめる。アイシャはそんなモンを
見て、モンを不安にさせない様、笑顔を取り戻すと安心させる様に
側へと引き寄せるのだった。

「ごめんね、えへへ、頑張らなくちゃ、ね、アル!皆一緒に!!」

「うん!」

(全くモォ~、悲観してたって状況は変んないんだかんネッ!ささ、
動く動く!ジャミ公、もう行っちゃったよッ!)

「あ、ああ……」

「もう~、ジャミルったら!」

サンディに突かれ、慌てて2人もジャミル達の後を追った。
ジャミルは穴が3つ並んでいる手前で立ち止まっていた。
アルベルト達が追いつくのを待っていたらしい。

「この穴のどれか一つ……、試しに入ってみるか、何処かに
続いてそうだ、なあ、お前らどれがいい?選んでいいぜ?」

「そ、そう言われても……」

「分からないわよ……」

「……いーやーだああーーー!!地獄一丁目の入り口だあーーっ!!
人食いイザヤールが穴の底で牙剥いて待ち構えてるよおーーっ!!」

ダウドはよっぽどイザヤールがトラウマになってしまったのか……、
彼の中ではもはやモンスターのイメージになってしまっていた……。

「……そうかそうか、じゃあ、真ん中だな、入ってみるベ、よっ!」

「……いやだああーーって言ってるんだよおーーっ!!」

ジャミルは嫌がるダウドの頭を小脇に抱えると、無理矢理真ん中の
穴にダイブ。アイシャとアルベルトも頷いて後に続き、モンも
モンモン言いながら飛び込んだ。

……穴に降りて進んだ先は、自然洞窟の様な場だった上の階の
イメージとは違い、B2階付近は遺跡フロアの様な場所。
この辺りになると、モンスターもそろそろ上級ランク系と
ゾロゾロ出くわす。動く石像、ギガントヒルズ、アゴが外れた
様な、やたらアゴの長いモンスター、ブラッドアーゴン……。

「へえ、アゴみてえなモンスターだからアーゴンなのかね……、
なあ、アル」

「ぼ、僕に言われても……」

「アゴゴゴゴゴ……」

「……モンちゃんたら、真似しちゃ駄目よ!アゴが外れちゃうわよ!」

「アゴォ~……」

アイシャはカオス顔で真似をしようとしたモンを慌てて止めるが、
実はブラッドアーゴンは可愛いモーモンの可愛くない進化形の
モンスターだと言う事は、このメンバーの中では誰も知識知らず。

「ピキピキ」

「うおおーー!はぐれメタルーーっ!」

「うわあ……」

ジャミルは喜んでいるが、他のメンバーは半目になる。確かに、
経験値稼ぐのには堪らん相手ではあるが、こうなるとギャンブル
ジャミ公は止まらないので……。ちなみに、このはぐれメタルは
即逃走。

「よしっ、お前らっ!少し修行だっ!妥当イザヤールの為にもっ!!
メタル狩りだっ!!」

確かに、ジャミルの言う事にも一理ある。この先の戦いに備え少しでも
LVを上げて強くなっておかなければならないのも事実。仲間達は渋々
承諾し、暫くの間、付き合う事にした。

「ふう、了解……」

「分かったわ!」

「嫌でヤンス」

ぴんぴんデコピン×ヘタレ仕置き

「……君達、本当に変ってなくて何よりだよ……」

「当たり前よ、真面目なジャミルとダウドなんか恐いわよ!」

(……マジ、世界最後の日より恐いって!)

「♪ウシャシャのモンモン!」

「……ドサクサに紛れて何か言いやがったな、このガングローーっ!!」

「……何だよおおー!!」

と、まあ、アホはさておき、アイシャも武器を毒針へと持替え、
準備を始めるのだった。

「頼むぜ、アイシャ!此処はオメーの必殺一撃の破壊力に
掛かってんだからよ!」

「……何か嫌な言い方ねえ~……、でも頑張るわ!」

4人ははぐれメタル様を迎え撃つべく、早速ダンジョンを徘徊。
だが、此処は動く石像があっちゃこっちゃ運動会をしている危険な
フロアでもあった。邪魔な大仏は邪魔なので、とにかく搔い潜り、
はぐれメタルを探す、探す、……探すーーーっ!!

「いたよお!」

「よっしゃ、獲物っ!ああっ!!」

だが、やはり甘くない。はぐれメタルは付き添いモンスター、蛇神官
スネークロードさんと一緒に出て来た……。

「ちっ……、おい、お前ら、何があってもはぐれメタルだけを
狙えよ、集中しろ……」

「何とかやってみるよ、難しいけどね、皆、頑張ろう!」

「……ジャミルのアホーーっ!!」

「行くわよー!」

「モンブー、モンブー!」

「「突撃ーーーっ!!」」

4人はモンに応援されながらはぐれメタル目掛け突っ込んで行った。
……サンディは飽きてもう寝ていた。

「「あああーーーーっ!!」」

が、スネークロードのバギマを揃って食らい、妨害される羽目になる……。

「……怯むなーーつ!集中集中ーーっ!!」

「「……ァーーーーーー!!」」

だが、はぐれメタルは逃走。4人はバギマだけを無駄に食らう羽目に
なったのだった。……その後、幾ら探し回ってもはぐれメタルは出現せず。
代わりに動く石像に沢山追い掛けられた挙句、……沢山殴られたのである。

「……ちーきーしょおおお!覚えてろおおーー!!」

「でも、はぐれメタルじゃなくても、多少はレベルが上がったから……、
良かったんじゃないのかな、……ははは、……あーははは!」

「アル、何だかわざとらしいわ……、でも、もーいや、何処かで
水浴びしたいわあ~……」

「……ジャミルの超特大アホバカーーーっ!!」

「モン~……」

4人はバギマ連打に巻き込まれ、激しく逆立ってしまった
ヘアスタイル、真っ黒黒の顔のまんま、一旦メタル狩りを諦め、
洞窟の奥へと進むのだった。

4人組は魔獣の洞窟、最下層まで辿り着いた。吊り橋の先に見える小屋。
其処に何かが待ち受けているに違いないと。……悪寒を感じ、ヘタレが
ギャーギャ騒ぎ出したからである……。

「アゴモォ~ン」

「モンちゃん、まだやってるわ……」

「何か気に入ったみたいだねえ、あはは……」

「……さ、最近下ネタ太鼓やらなくなったと思ったら……、アタタタ!
これだよお!モン、痛い、痛いってば!分かったからっ!!」

「……アゴ、アゴォ!」

「新しい遊びか、モン、良かったな!」

「♪モン!」

「……良くないですーーっ!!」

モンはダウドの頭の上に飛び乗ると、アゴを乗せてびょーんと
思い切り伸ばしたり、縮めたり、頭部を突く。ダウドがヘタレ
そうになると仕置きしてくれ、渇を入れてくれるらしい。

(ま、デブ座布団もアホさは変ってないって事よネ、んじゃ、
アタシは寝てるから、頑張って!)

「分かってるっての!一々報告しなくてもええわ!さあ、先へ進むか!」

「行こう!」

「ええ!」

「えうう~……」

「アゴチンポッポー!」

「……モンちゃん、もうそれはいいのっ!って、こらーーっ!!」

アイツ、言葉喋れなくなってても、余計な言葉だけは本能的に
出るんかいと、ジャミルは苦笑するのだった。……離れ離れに
なっている間、皆、本当に変っていなくて何よりである。

「……邪魔するよ~、って、誰も住んでるワケねえよな……、!?」

長い吊り橋を渡りきり、ジャミルが一番最初に小屋の中に突入。
中はまるで儀式を行なう広場の様である。だが、異様な静けさに
何かを感じ、ふと正面を見ると、奥に台座の前に置かれた巨大な
石像が……。ジャミルは石像に近づき、そっと手を触れてみる。

「……腹が出てる……、ボテバラの怪物だ……」

ジャミ公がそう毒舌を呟いた途端、何処からともなく重々しい
声が聞こえてきた……。


我は光りの道を守る者、汝、竜の門を開く事を望むならば我の
勇気を此処に示せ……


「あ、あっ!?」

ガガガガ……、ガガガガ……、……ドンっ!!

石像にヒビが入り、壊れ始めたのである。石像は天井へとジャンプ。
再び地上へと落ち、ジャミルの前に現れた時には巨大な怪物となり。
行く手に立ちはだかったのである。

「我は守護神、大怪像ガドンゴ、人間よ、試練を超えよ……」

「成程、何だか分かんねえけど、此処の門番て事か、お前を倒さないと
ドミールには進めないってか……」

「ジャミルーーっ!!」

「おお、やっと来てくれたか!皆、力を貸してくれ、どうやらコイツが
此処の門番らしい、ドミールには行くにはこのデカブツを倒さねえと……!!」

漸く、遅れて仲間達も駆付けてくれ、ジャミルも一安心。改めて武器を
構えると、目の前の石像を見据え、戦闘態勢に入る。

「大丈夫、さあ、頑張っていこう!」

「負けないわよっ!」

「……えう~、頑張らないと……、ま、またアゴで突かれちゃうからね……」

「モンモン!」

「いっくぞおーーっ!!」

ジャミルの号令で皆一斉に石像へと突っ込んで行く。こんな大バトルも
本当に久しぶりだった。それでも、ジャミルはちっとも苦痛に感じなかった。
何故なら……、仲間が、友が側にいてくれる。一緒に戦ってくれる喜びを
心から感じる事が出来た。決して1人ではないんだと……。

「わあーーーっ!……し、しびれるよおお~……」

「……ダウドっ!んのやろーーっ!」

ダウド、焼け付く息で麻痺させられる……。回復担当が最初から
こうなってしまっては大変な状況に……。知っててやったのか、
ガドンゴがにやりとほくそ笑んだ様な気がした。

「……アイシャ、満月草を直ぐにダウドに!」

「ええ!さ、ダウド、しっかりして!……きゃあーーっ!!」

しかし、そうはさせまいと、ガドンゴは今度はアイシャの方へと回り、
行動を妨害。アイシャはガドンゴの地響きにより倒れてしまい、少しの間、
立てなくなってしまうのだった。

「「やああーーーっ!!」」

ジャミルとアルベルト、同時に突っ込み、ガドンゴに斬り掛かる。
奴はまるで待ってました!の様に、ハートブレイクで2人に
投げキスを飛ばす……。ジャミルとアルベルトはひっくり返り、
此方も別の意味の衝撃で動けなくなってしまう……。

「……おええええ~……」

倒れて動けない2人の前にガドンゴが仁王立ちするのだった……。

「ジャミル、アル……、う、うう~……、わ、私、行かなくちゃ、
でも……」

「あーもうっ!情けねーったらありゃしねーわヨっ!ホラ、モン、
手伝いなさいよっ!まずはヘタレを回復させんのよッ!……あ、
あれ?アタシ……」

「モン……」

モンはじーっとサンディを見つめている。サンディは初めて、モンを
名前で呼んでくれた。出会った時から相性最悪、事ある事にモンに嫌味を
噛まし、意地悪だったサンディ。ケンカばかりだった2人が……。モンは
心が温かくなり、嬉しかったのである。

「……な、何よっ!ホラホラっ、ボケッとしないっ!急ぐのよ、
デブ座布団っ!!」

「モォ~ン!」

「ふふ、サンディったら、……素直じゃないんだから……」

一方、倒れたまんま、動けないジャミルとアルベルトはガドンゴに
猛打撃攻撃を食らっており、ゲシゲシに叩きのめされていた……。

「だ、駄目だ、このままじゃ……、俺ら情けなさ過ぎるぞ、
ダウドの事言えねえ……」

「何とかして……、ああーーっ!?」

「……アルーーっ!!ち、畜生っ!!絶対許さねえぞ……」

ジャミルは目の前のガドンゴをきっと睨む……。だが、身体が動かず、
どうにもならない故、隣でガドンゴに身体を只管蹴り続けられる
アルベルトの悲鳴を聞いていなければならなかった……。

「ご、ごめんよおーーっ!2人ともお待たせーーっ!!」

「よくもやったわねっ!ええーいっ!お返しよーーっ!!」

「……ダウド、アイシャっ!!」

漸く痺れから復活したダウド、そして、アイシャ……。アイシャの
メラミが炸裂する。もんどり打って戸惑っているガドンゴ。その間にと、
ダウドはジャミアルコンビをベホイムの連発で回復。傷が治った
時には漸く2人もキスショック攻撃から復活していた。

「ダウド、ありがとな!助かったよ、アル、立てるか?」

「うん、何とか……、さ、僕らもアイシャに続こう!反撃開始だ!
……うふふ~……」

「……だからオメー、恐えーってんだよっ!!」

そして、今度はガドンゴと1人で対峙しているアイシャ……。

「小娘、よくもやりおったな、許さんぞ……」

「何よっ!アンタがジャミル達を虐めたからよっ!酷い事
するんだからっ!!」

「……甘いな、小娘、これは戦いなのだ、戦に酷いも何もない、
……甘ったれるな!そんな弱者はこの先に進む資格などあらぬ!!」

「……ああーーっ!きゃ、きゃあーーっ!!」

「モンーーっ!!」

「ちょ、アイシャっ、しっかりしなさいようーーっ!!」

モンとサンディが見守る中、アイシャはガドンゴに痛恨で
大ダメージを食らう……。もう一発が来るかと思われたその時、
間一髪でジャミルが現れアイシャを素早く抱き抱え、救出……。

「ふう、間に合ったあ~、悪ィな、アイシャ、遅くなっちまって……」

「アイシャ、大丈夫かい!?」

「……ジャミル、アルっ!私は大丈夫!……良かった、2人とも
怪我がちゃんと治ったのね!」

「コラ、無理すんでない!まーたデコピンやられてえのかっ!?」

「な、何よう~、無理なんかしてないもん!ふぇ……」

「ったく、ダウド、頼むっ!」

「うん、それっ、ベホイムっ!」

ダウドはアイシャも回復魔法で傷を完治。これで漸く全員復活。
4人は改めてもう一度、立ちはだかるガドンゴを睨むのだった……。
何としてもこいつを倒してこの試練を超えるのだと……。

「よし、俺が代表でアイツに特攻で突っ込む、お前らはサポートを頼む!」

「……分かった、大丈夫だよ!僕達、いつでも側にいるからね……」

「魔法のフォローは任せてね!まだまだMPもバッチリよ!」

「モンシャ、モンシャ!」

「うん、万が一、棺桶に入っちゃっても、拾った世界樹の葉が
一枚あるから……、貴重な葉だけどジャミルの為に使ってあげる、
だから安心してね、例え無茶してブッ倒れても大丈夫だよお……、
チーン、なんまんだぶ、悲しみは怒りの力に変るから、ぐすっ、
さようならが温かい……」

「ダ、ダウド……、君、こんな時に何言ってるんだよ……」

フォローしてるつもりなんだろうが、ヘタレは真顔でジャミルに対し、
時々さらっととんでもない事を抜かす。……今は殴っている間も
惜しいので堪えて我慢しておく……。だが、ダウドもダウドで
これにはちゃんと考えがあった。こんな時にわざとジャミルを
構って怒らせ攻撃力を上げる作戦。無論、後でブン殴られるのを
承知で。in諸刃の剣バイキルト効果。彼は本当に親友思いの優しい?
ヘタレである……。

「……くそーーっ!バカヘタレめーーっ!テメーこの野郎!食らえやあーーっ!!」

「……愚かな……、これで終わりだ……、お前達はこの先には進めん……」

サポートとして見守る仲間達。アルベルトは武器を弓に持替え、
ガドンゴへとマジックアローを放出。アイシャも呪文の詠唱に
掛かる。ジャミルはドラゴンキラーを構えるとガドンゴ目掛け
思い切り振り下ろす。その瞬間、アイシャもメラミをガドンゴでは
なく、ジャミルのドラゴンキラーの方へと放った。

「ジャミル、メラミの力よ!受け取って!」

「サンキューっ!よーしっ!頼む、これ以上バトルを
引き延ばしたくねえ、……出てくれーーっ!俺の糞力よーーっ!!」

「……な、何……!?そ、そんな馬鹿な……、おおおーーーっ!?」

メラミを纏ったジャミルの攻撃、会心の一撃を繰り出し、ガドンゴは
一瞬炎に巻かれる。そして粉々に砕け散るのだった……。

「モォーーンっ!」

「あはっ、やったじゃんっ!スゲースゲー!」

モンも喜びサンディも思わず飛び出す。だが、疲れが一気に襲い、
4人はその場にヘナヘナ座り込んでしまうのだった。

「……はあはあ、こ、今回も無事終わった……、も、もう、許してくれ……、
いつもの事だけどさ……」

「何言ってんのっ!だらしないなあ!もうあんまし時間もないんだ
かんネっ!」

サンディはジャミルの前まで飛ぶと腰に手を当て仁王立ち。
確かに彼女も皆のピンチを救ってくれはしたが、それに
しても流石ブラック企業の上司である……。


……その勇気しかと見た、光の道を汝に示す、……空の英雄
グレイナルの元へと旅立て……


砕け散った石像は静かに消えてゆく。4人の勇気を見届け、
門番としての役目を終えたガドンゴは消滅したのだった。

「ガドンゴ……」

「何だか切ないけど、でも、これで漸くドミールへ行けるのね……、
ガドンゴさん、有り難う……、あなたの言葉、ずっと心に
刻んでおくわ……」

「僕達、まだまだ頑張らないと……」

アルベルトもガドンゴが消えた場所へ静かに頭を下げるのだった……。

「はい、ジャミル……」

「あん?」

「どうぞ、幾らでも……、気の済むまで……、でも、優しくしてよお……」

ダウドはジャミルに向かって静かに頭を出す。先程の暴言の事で
どうせ殴られると思い、今日は自分から頭を差し出す。だが、
ジャミルは……。

「ばーか、分かってんだよっ!ったく、けど、ありがとよ、ダウド……」

ジャミルは明後日の方を向き、ダウドの頭をポンポンする。
確かにブチ切れてはいたが、ダウドのやる事はちゃんと
理解していた。嫌、理解しない時もあるが……。

「ジャミル……、うん、えへへ~!」

「んで、これでドミールに行ける訳になったけど、この先、こっから
どうやって行くんだ……?」

「待って、ジャミル、台座の上に弓矢が……」

「本当、さっきまでなかったのに、不思議ね……」

4人は台座に近づく。確かに台座の上には光り輝く弓矢が
収められていた。更に台座を調べると、台座にはプレートがあり、
文字がこう刻まれている。


光の道を矢と変え此処に収める。竜の門にてこの矢を放て、
さすれば道は開かれん……。


「成程っ!竜の門でコイツを打てばいいんだなっ!……け、けど、
竜の門て、場所何処にあるんだよ……」

「ンモーっ!ドジッ!情報シューシューは怠るなって、基本だよッ!」

「……ガングロっ、るせーっ!……畜生、それとなく、その門事態の
話はちょっこし村で聞いた覚えがあるんだけどなあ~……」

「モォ~ン?モン?」

「いや、モン、君の事じゃないから……」

「……モンブー!」

「どうするの?一旦ルーラでナザムまで又戻りましょうか……」

「……ま、また、あのおっさんによくもまた戻って来たなって
怒られるよおーーっ!!」

「けれど、場所が分からないんじゃしょうがないじゃないか、はあ、
僕らも油断したな……」

「……大丈夫よ……」

「え……?あっ、ラ、ラテーナっ!!」

「!?」

洞窟内に突如又、ラテーナが出現する。だが、その姿は当然の如く、
アルベルト達には見えておらず、声も聞こえない。見えているのは
ジャミルとサンディ、モンだけ。

「ちょっとアンタッ!いきなり突然消えるのやめなさいよネッ!
気分悪いじゃん!セッカチ過ぎるってバッ!!」

「いいの、あの人を求めて彼方此方徘徊する、……これが私の
永遠の宿命だもの……」

「ハア!?」

サンディが突くがラテーナは相変わらずマイペースであった。

「……ま、また例の……幽霊さんかなあ~?」

「そうみたいだね……」

「ジャミル、何をお話ししてるのかしら……」

「……ラテーナ、俺だってアンタが洞窟の封印を解いてくれた事、
ちゃんと礼を言いたかったんだぜ、なのに、急に消えないでくれよ……、
ハリが悪ィじゃんか……」

「モンモン……」

モンも心配そうにラテーナを見つめる。直には触れられないが、
ラテーナはそっとモンの頭に手を乗せ撫でる仕草をした。

「だからいいのよ、あなたは私の探し物をちゃんと見つけてくれた、
それだけで嬉しかったの、あなたの気持ちも十分受け止めているから……、
気にしないで、でも、私で力になれる事があるならこれからも力に
なりたいの……」

「ラテーナ……」

ラテーナはジャミルに向け、静かに優しい笑みを浮かべるのだった。

「さあ、行って、竜の門の場所を探しているんでしょ?ナザムの
西の方角よ、では、私はこれで……、あなた達のこれからの道筋にも
光りが溢れる様に願っているわ、どうか挫けないで……」

「……ラテーナっ!!……あ、ま、また……」

ジャミルは急いでラテーナに礼を言おうとしたが、また逃走され
肩を落とす。しかし、呻いている場合にあらず。ジャミルは急いで
台座の上の光の弓矢を取る。

「よし、これで……、皆、急いで竜の門に行こう!ナザムの西の方角だ!」

「場所、分かったのね!」

「ああ、ラテーナが教えてくれた、急ごう!」

……4人は急いで竜の門へ……。竜の絵が描かれたレリーフの前に辿り着く。
その先はまるで底の見えない谷になっており、行き止まりである。と、
同時にジャミルが懐に仕舞っている光の矢が輝きだした……。

「これは……」

戸惑うジャミル。すると、又何処からか重々しい声が聞えて来る……。


……光りを掲げ空を射貫け……、摩れば光は汝を導く……


「そうか、この光の弓矢を空に向かって……、けど、俺に出来るかな……、
なあ、アル、お前最近戦闘の影響で弓使いも始めたんだろ?ならさ……」

「何言ってるんだよっ!此処は君がやらなくちゃっ!……大丈夫、
自分を信じて……、さあ」

アルベルトは最近使い始めた自身の弓をジャミルに手渡す。
……困るジャミル。

「そうよっ、ジャミルなら絶対大丈夫!」

「うん、オイラ達も信じてるよお~……」

「なーに今更言ってんのッ、いつもの不貞不貞しいアンタはどうしたのッ!?
ホラホラ、早くやるやるッ!」

「モォーン!」

「……お前ら……、っ、ああーーっ!もうーっ!失敗したって
責任取らねえぞおーーっ!!」

「「いっけええーーっ!ジャミルーーーっ!!」」

……ジャミルは弓に光の弓矢をつかえ構えると空に向け、思い切り
光の弓矢を放つ。空に向け放たれた弓矢は光になり地上へと降り注ぎ、
閉ざされていた谷の向こうの対岸へと通じる光の橋が架かる。この先が
間違いなくドミールなのである。……空に光が溢れたその瞬間を
ジャミル達、そして、ナザム村の住人達が……。


「……な、何だあれはっ!……まさか……」

「村長さんっ!……今、竜の門の方ですごい光がっ!!」

「……お、おお、雅に伝説が……本当に蘇ったのじゃ……」

「奇跡が起きた……」


「……ううう~……」

「ジャミルっ、大丈夫っ!?」

また座り込んでしまったジャミルに慌てて仲間達が駆け寄る。
本日、ジャミルは2回目の大役を無事成し遂げたのである……。

「ど、どうにか……、成功して良かったよ、マジで駄目だったら俺、
この話もう降りようかと思ったぐらいだ……、スゲープレッシャー
だったんだぜ……」

「また君はっ!オーバー過ぎるだろ!……見て、ちゃんと橋が
架かってるよ、お疲れ様……、本当に頑張ったね……」

「ご苦労様でした、だよお~……」

「うふふ、ちゃーんと、綺麗な光の橋よ!」

「……ああ……」

「モォ~ン!」

「うんうん、アタシはちゃーんとやれば出来るコだと思ってたよ、
アンタは!」

仲間達に祝福されジャミルは改めて正面を見つめる。此処まで皆で
紡いで来、諦めず作り上げた道のり。暗い底なしの谷に架けられた
光の橋は雅にその友情の証、希望の象徴であった……。

???:おおーいっ!!

「へ?……ティルっ!それに皆っ!!」

「ジャミルさーん!みんなー!あははー!」

ティルや村長を始めとし、ナザム村の住人達が一斉に押し掛けて
来たのである……。

「……幾ら何でも来るの早すぎだろーがっ!!」

「ジャミル、突っ込みはいいから……、えーと、皆さん、どうして
此処に……?」

「やはりお前達だったのか……、……村から光が見えたので何事かと
皆で此処に来てみたのだが、まさか、本当に……」

「わー!すごいやすごいや!これ、本当にジャミルさん達が光の橋を
作ったんだね!」

「ん、ま、まあ……、そう言う事になるんかな……」

ジャミルは頭をポリポリ、仲間達の方を見た。アルベルト達も
後ろの方で笑っている。

「……ドミールへの道を探し者表れし時、像の見守りし地に封じられた
光で、竜の門を開くべし……、やはり只の伝説ではなかったと言う事
なのか……」

「うん、やっぱりジャミルさん達は黒い竜を追い掛けるつもり
なんだよっ!」

「……ジャミル殿、あなたがあの時、黒い竜に襲われて生き残られたと
言う事もやはり本当だったのですな……」

「マル爺さん……」

「……皆さん、今まで本当に申し訳ありませんでしたっ!!」

「!?」

ナザム村の大人達は、急に土下座をし出し、4人に謝罪を
し始めたのである。特にあの傲慢村長を筆頭に……。ジャミル達は
戸惑ってしまった……。

「おっさん、どうしたんだい?急に……、気持ち悪ィな……」

「……我々は過去の災いに怯え、あなたを信じようともせず、余所者を
近づけまいとしていたのです……、これまでの無礼をどうかお許し下さい、

あなた方に謝罪したい……」

「別にもういいよ、分かってくれたのならさ、な?」

ジャミルは仲間達に向かってウインクすると、皆も笑顔を見せた。

「村長、有り難うな、俺らを信じてくれて……、へへ、嬉しいよ……」

「ジャミル殿……、お、おお……、何とお優しい……」

ジャミルは笑顔で村長に手を差し出し握手を求める。……村長は
涙ながらにその手を握り返した。

「ジャミルさん達、頑張ってね!ボクも村の皆もずーっとずーっと
応援してるよ!」

「ティル……、ああ!」

「ドミールは火山地帯です、この先、どんな危険が待ち受けておるか
分かりません、どうかお気を付けて……、ドミールで英雄グレイナルに
会う事が出来れば新たな道が開ける筈です……、わしらもティル同様、
あなた達の旅のご武運を祈っております……」

「みんな、頑張るんだよーーっ!」

「負けるなーーっ!!」

「落ち着いたらまた遊びに来いよーっ!」

「ナザムの皆、本当に有り難うな!俺ら、絶対頑張るよ!」

「……みんな、これで本当にさよならなんだね、でも黒いドラゴン
やっつけたらまた絶対に遊びに来てね!待ってるよ!ボクも頑張る
からね!」

「約束だな、ティル!」

「また絶対会いましょうね!」

「うん、いつか一回り大きくなった君に会えるのを楽しみにしてるよ!」

「色々有り難う、楽しかったよお~!」

(そうネ、……次に会う時にはもうちょっと逞しいイケメンの子に
なってたりして!?)

「モンモン!」

ジャミル達は皆でティルの手を握る。最後にモンがティルに飛び付いて
スリスリ。……お別れの挨拶をするのだった。

「……さようならーー!!またいつかーー!!」

「お元気でーー!!」

「「……皆、ありがとうーーっ!!」」

4人は皆に見送られながら、遂にドミールへと旅立つ……。辛く
悲しい事も沢山あったが、ナザムの村の人達とも絆を結び、最後は
温かく見送って貰えたのだった……。

「……な~んかいつの間にかジャミルがあの黒いドラゴン倒すコトに
なっちゃったりしてるんですケド?ま、どのみち、黒いドラゴン
追い掛けて果実の手がかりを探さなきゃだしネ、しょ~がナイか……、
はい、アンタ達、次からもキアイいれんのヨッ!!」

zoku勇者 ドラクエⅨ編 58

zoku勇者 ドラクエⅨ編 58

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

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更新日
登録日
2025-04-26

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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