eyesight of the mirror.

河と少年と老人が出てきます。
ちょっとファンタジー。

魔法使い見習いの少年は、魔法学校帰りに『河の鏡』をいつも見に行っていた。


ある日、少年はそこでぼんやりと座り込み、河を眺めている老人を見かけた。

「おじいさん、そこ、僕の指定席だよ」
少年はからかうように言った。

「おやおや、そうだったかい。 ‥すまないねぇ」
そう言いながらも老人はどいてくれる様子を見せなかったので、少年はその老人の隣に座った。

「僕は『アンサー』って言うんだ。おじいさんは?」

「名前ねぇ、なら私は『キュウ』と呼んでおくれ」

「キュウ、『河の鏡』で何を見てるの?」

「特に何も見てないねえ、昔は他のおじさん方の様な、今後の景気や魔法社会情勢なんか見てたりしてたけどねぇ」

キュウと名乗る老人は笑う。

「そうなんだ」

「君は、何を見てるのかね?」

「‥‥僕はいつもお母さんの顔見に来てる」

「お母さん、いないのかい?」

「いるよ」

アンサーは戸惑うように言う。

「でもね、毎日泣いてばかりなんだ。 この『河の鏡』に映し出せば、お母さん笑ってるから...」

アンサーは苦笑いした。


…… と、同時にトンッと背を押された。

「うわっ!」

ドボンッとアンサーが河に落ちる。

「何すんだよ!」

アンサーは河の水を吐き出しながら言った。

「ここの河の水は美味しい。 この『河の鏡』の視力が確かなら、君のお母さんもいつか笑ってくれるよ...」


キュウはフォッフォッフォと笑い、杖をつきながら行ってしまった。

eyesight of the mirror.

読んでくださりありがとうございました。

eyesight of the mirror.

『河の鏡』で語らう、少年と老人のお話です。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-27

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