死者の烙印

この惨状は必然のように思えた。僕は無力感に胡座(あぐら)をかき、微動だにしなかった。硬直していた。死んでいるも同然だった。僕は二度と生者の世界には戻れないような気がした。そしてそれは正しかった。生きることを、生き返ることを考えれば考えるほど気が滅入り、塞ぎ込み、暗澹たる気分になった。人と関わろうと思っても、不快にさせるだけのように思えた。そしてそれは正しかった。僕と関わった人の大抵は不快そうな表情を浮かべた。怖がっているようにも見えた。あまりに苛烈な不幸に落ちこんだ人間は憐憫の対象にさえならず、嫌悪、恐怖、軽蔑をひきおこす、というヴェイユの言葉は正しかった。僕は生来的に独りでいなければならない人間だった。僕の気質が、揺るぎない負の気質が孤独を運命づけた。同じ言葉を話しているはずなのに、僕には他人の言っている言葉の意味がわからなかった。逆に、他人には僕の言っている言葉の意味がわからなかっただろう。僕は物理的に孤独であり、精神的にも孤独であり、言語的にも孤独であった。他人と意思の疎通ができなかったのは、今となっては不思議でもなんでもない、当然のことだろう。死者の言葉は生者には通じえない、死者と生者が本質的な意味で交わることなどありえないのだから。孤独と孤立、どちらが先立っていたのか。どちらが先立っていたということではなく、最初から、同時的に孤独であり孤立していたのだろう。最初から死者の烙印を押されていたのだろう。他者と関係できない呪いをかけられていたのだろう。稀に物好きな人間が寄ってきて僕を励ましたり叱ったりするが、最終的には諦めて離れていく。そんなことにももう慣れた。何も知らない人間は僕に努力が足りないだけだと、努力を強いようとするが、そういう人種は努力ではどうにもならない領域があることを理解していない。努力至上主義者は無邪気に殺人を犯しているのだ。だが僕は殺されはしない。なぜなら既に死んでいるから。彼らの言葉が響くことがなければ、届くこともない。離れるくらいなら、最初から近づかないでほしい。時間の無駄なんだから。僕の無力感には根拠がある。努力などでは到底覆らない破滅的気質という揺るぎない根拠が。僕は生きたことがない。そしてこれから、生きてみたいと思うこともないだろう。

死者の烙印

死者の烙印

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-04-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted