不満に我慢
専業主婦の私は今、40歳。
そんな私は勤め先のスーパーの先輩に、
ある疑問を投げ掛ける。
深夜の静寂なスーパーに話し声が響く。
私は今、悩んでいる。
いつも家族のために働いている
とはいえ疲れは体に自然と現れる。
「あの日からかな、本格的に
仕事が嫌になったの」
暗いスーパーの中、
大きな冷蔵庫の光に照らされ、
先輩に話していた。
私がスーパーにやっと馴れてきた
と感じていたときだった。
店長が全員を集めて、
あることを伝えた。
「すまないが、ここ最近、
この世の値上がりに
対抗できそうにない。」
「だからここで宣言する。」
「全員の給料を下げさせてもらう。
もちろん私のような重役も。」
みんなざわざわしていた。
いつもの元気な店長の様子が
少し辛そうな表情だった。
「確かにあの時は私も驚いたよ。
私も生活が苦しかったからね。」
先輩は呑気に話していた。
冷蔵庫から漏れた、
ほの暗い明かりが
先輩の横顔を照らしていた。
「今なんて、あなた、二人の
お子さんがいるでしょう。」
「きっとキツいだろうに、
よく頑張るわね。」
先輩は笑いながら話した。
でも私はふと疑問が浮かんだ。
「でも、こんな世の中に一体
誰が変えてしまったんだろう。」
「確かにね~。」
先輩は暗い地面を迷いながら
掃除していて、
適当に返事を返してきた。
店長がある日、節約だと
スーパーの電気を消している
せいで、汚れが
見えにくくなっていた。
先輩はそう愚痴をこぼしていた。
「昔はこんなことせずとも
ゆっくり余生を過ごせたんだ
けどね~。」
「でも先輩、」
「何?」
「この世を作ったのは私たちより
もっと前の人が作ったんですよね。」
まあ店長はその例だろう。
店長は私たちより十歳も年老いていて
当然、考え方もTHE·昭和
まさに私たちにとって大先輩には
あたる立ち位置だ。
「でも店長はしっかり経営は
行っていたし、それでも
このスーパーは経営不振でしょ。」
先輩は容赦ないね...
「でも私も生活は
かなり厳しいことになったよ。」
二人ともドキッとした。
見回りをしていた店長だった。
薄暗いせいでいつもより
顔が不気味に仕上がっている。
「店長すいません、
急いで掃除を終わらせますね!」
そう言うと先輩と手分けして
スーパーを走り回った。
掃除を終わらせて店長に
帰ることを伝えに行くと、
そこで先輩と呼び止められた。
「さっきの話、少し気になってね。」
まさかの深夜の
スーパーお話し会(自分で勝手に言ってる)
に店長が飛び入り参加を
してきた。
「私自身店長という立場で
他よりかなり給料を下げたよ。」
驚いた。
店長にはすっかり、
どうせ自分の給料は下げやしない
んだろうな。
と勘違いしていた、
「君たちの話していた、
上が作る上下関係の社会には
私も嫌に感じる。」
「でも店長はどうにか給料とか
仕事量とか変えられますよね。」
そう店長に話すと、
首を横にふった。
「私は上の人にどの分だけ
やるようにするか言われている。」
「結局、上が変わらなきゃ
自分も変わらない。」
図星だった。
すっかり、店長になれば
楽できる。休める。
と考えていた自分がバカみたい
だった。
「私はいつも思うよ。
政治の社会でも同じさ。」
「上が変わるまで、
我慢できるかが勝負どころだ。」
「さあ、話も終わりだ。
家族が待っているだろう。」
「私はまだ事務作業があるから
帰っていてくれ。」
あの時の店長の姿は
上にいる人のお手本のように感じた。
あれから翌年のことだった。
店長が出世したと聞いた。
私もすっかり先輩になった。
あの時の先輩は店長になっていた。
スーパーは今もまだ少し経営不振だ。
ただ、このスーパーには
掟が新しく出来上がった。
事務室の上にこう書いてある。
「我慢」
不満に我慢
まあ結局上が変わらなきゃ
結局意味がないんだけどね。