
羽の生えた悪魔
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感想はインスタのDMか投稿からで
#1
ここは世界の果てにある研究所。
ここでは遺伝子操作や、人工知能、ロボットの製造、そして…。
この世界に生まれた"タブー"と言われる存在を管理するのだ。
そんな研究所では最近、研究員が何百人も殺されている。
そんな現状を救うため
「No.808、食事だ。」
今日も俺は"タブー"と呼ばれる化物を世話する。
_____羽の生えた悪魔
#2
〈優秀な研究員がどんどん殺害されている〉
〈だからさらに優秀なお前にNo.808の世話を任せる。〉
そんな理由であの化物の世話をすることになった。
正直、俺は化物の世話は得意ではない。
そもそも新人研究員の世話も得意ではないのだ。
「…仕方ない。」
今日もそんな化物の研究を進めるため、俺は仕方なく彼のもとに向かった。
「No.808。今日の調子はどうだ。」
No.808『うーん、まあまあって感じだよ。』
「じゃあ元気なんだな。」
8『そうかもね。』
8『あーお腹すいたー。なにか食べるものない?なんでも食べれるよ?』
「はぁ…はい、肉だ。」
こいつは肉が好物らしく、反応を見るために与えてみることにしたのだ。
8『ん!ありがとう。』
そして肉にかぶりつきながら食べ始めた。
(食べっぷりがいい、だが少し野蛮だな…そんなものか…タブーだもんな…)
そう言い聞かせ、彼の様子を頭の中に記録した。
8『あー、おいしかった。』
「それじゃあ、いつもの研究室に行くぞ。」
8『えーまた?俺もう飽きたんだけど?正直めんどくさいし。」
「上の命令だから仕方ないだろ。従え。」
8『…仕方ないなー。』
そうしてケージという名の檻を研究室まで移動させた。
「ではこの電気椅子に座ってもらう。」
8『はいはい…ん、座ったよ。』
電気椅子は座った瞬間に手足を固定することができる。
つまりは、身動きがとれないのだ。
「じゃあ電気を流すぞ。いいな?」
8『うん、いつでもいいよー。』
そして電気に電流を流した。
8『…』
無反応…??
しばらく電流を流してみるが顔色一つ変えずにのんびりとしている様子だった。
「どこか痛いとかはあるか?」
あまりにも変わらないため聞いてみることにした。
8『うーん、特にないかも!』
…さすがはタブーだ。
予想よりも上回ってくる。
(彼の身体能力、そして身体構造はどうなっているのだろう…。)
電流を流し終え、彼をまた檻に閉じ込めながら考えていた。
8『…ねえ、君。』
「…?俺か?」
8『うん、君。』
「俺になにか用か?」
8『用、っていうかさ、名前なんだろーなって思って。』
8『あ、ちなみに僕の名前は!』
「知ってる。」
8『じゃあいってみなよ。』
「…。」
上からは彼の名前を彼の目の前で言うなと止められている。
8『…なんか言われてるの?』
こういう時に限って勘が鋭い。
「…まぁ、そんなところだ。」
8『じゃあ俺が自己紹介してあげる。」
8『俺の名前は…。」
_______羽の生えた悪魔
#3
8『俺の名前は…。』
「メット、だろ。」
8『せいかいっ!♪さすが僕専属の研究員だね!』
「…。」
めんどくさいな、こういうタブーは。
8『今めんどくさいって思ったでしょー。』
「…思ってない。」
8『反応おもしろくないのは、仕方ないじゃん、ほんとに効かないんだし。』
8『まーいいけどさー。』
なぜこいつはそんな呑気なんだろうか。
8『てか名前教えてよ!』
「…なぜ教える必要があるんだ。俺はお前の研究員なだけ。ただお前の身体を使って実験して、どんな身体構造や、能力を調べてる。」
「ただお前を利用してるだけだ。」
8『だからなにさ。』
彼の呑気な声から、暗く低い声に変わる。
8『研究対象である僕にも知る権利はあるでしょ?』
「…研究員No.6023だ。」
8『研究員No.じゃなくてさー!』
「俺にそれ以上の名前はない。」
8『んなわけないでしょ。この僕にだってあるんだ。君にないわけない。』
「先程も伝えたが、それ以上の名前はない。」
「…もうこれ以上名前について聞くな。」
足早に彼の牢屋を後にする。
8『ちょ、!まだ話はおわってな…』
彼の言葉を全て遮りながら、その場所を後にした。
「…。」
"8『んなわけないでしょ。この僕にだってあるんだ。君にないわけない。』"
この言葉がすごく自分に刺さった。
そうだろうな。
彼はなにも知らないだろうな。
名前がない人間なんかいない。
それが"当たり前"なんだろうな。
俺にとっては、"名前がないことが当たり前"だから。
確かにあった。
トラッシュという名前は確かにあった。
でも、捨てた。
嫌いだったから。
いっそのこと、全部なくせばいいと思った。
今までの記憶も
戸籍も
名前も
この体も
全て消したかった。
「…もう、考えたくない。」
無理やり思考をシャットダウンし、寮にある布団にくるまった。
_____羽の生えた悪魔
#4
8「おはよ。僕専用の研究員さんっ♪」
『…あぁ、おはよう。』
今日もこいつの世話をする。
昨日は嫌な思い出ばかり蘇った。
こいつのせいで。
全部
全部
全部
全部
8『大丈夫?顔色悪いよ?』
「…少なくともお前みたいな化物に心配はされたくない。」
8『、そっかあ。』
彼は少し浮かない顔をしていた。
それと、思い出を噛みしめるような、切ないようなそんな表情をしていた。
8『…ほら、今日も実験するんでしょ?いいよ、自由にして。』
「、あぁ。」
そして彼に毒を飲ませたり、レーダーなとで肉体を焼いてみたりしたが、あまり効いてる様子はなかった。
8『もう終わり?』
「あぁ、終わりだ。早く檻に戻れ。」
8『いや、今日は博士とカウンセリングだから無理。ってことでカウンセリング室までつれてって♪』
「…わかった。連れて行くよ。」
そして彼の手を握り、連れて行くことにした。
手を握った瞬間、彼が少しびくっと反応したように見えたのはきっと気の所為。
「、ほら連れてきたぞ。はやく入れ。」
『うん。ありがと。』
そして大人しく入っていった。
正直、ここまで大人しいのは珍しいことなのに、今日はすごく落ち着いていた。
不思議に思いながら寮へ戻っていった。
〈カウンセリング室〉
?[こんにちは、No.808くん。いや、メットと言ったほうが良いだろうか。]
8『どっちでもいいよ。好きなように呼んで。』
?[…笑そうかい。今日は珍しくおとなしいね。どうしたんだい?]
8『…今の研究員がお気に入りだから、かな。』
?[、ほう。たしか研究員No.6023だったな。なぜだい?]
8『…うーん。なぜって言われたら…』
_______昔見た、人間によく似ているから。
?[っ。ほう。どんな人間だったんだい?]
8『…化物の"ボク"を唯一認めてくれた優しく強い子だった。』
8『その人間に、すごく似ているから。懐かしくて、ずっと目で追ってしまってる。』
8『…きっと違うんだろうけどね。それもこの人間の記憶も、きっとボクのエゴの…
____心の中でつくった偽物の人間だ。』
8『…それを本当にあった記憶のように思い込んでるだけ。』
?[…本当にそうとは限らないんじゃない?]
8『…?』
?[本当にそんな人間がいたんじゃないかな?じゃないとこんなに鮮明な記憶は残らないはず。]
?[…いくら思い込みが強かろうが本物の記憶には勝てないんだよ。]
8『…そっかあ。だったらいいな。』
8『今日はありがと。』
?[いいのさ。僕も君の話を聞けて楽しかったよ。また来てね。]
8『、うん。』
______羽の生えた悪魔
#5
8「ねえ、君。」
『…?なんだ。』
今日も今日とてこいつで色々実験していると声をかけられた。
8「なんで研究員になろうと思ったの?」
『…さあな。いつの間にかこうなってた。ただそれだけだ。』
8「…そっかー。」
彼は本当に何を考えているのかわからない。
なにも考えてないように見えるけど
きっと心の奥深くでは計算尽くしなんだろう。
なぜなら彼は
___研究員殺しだから。
そもそも研究員は訓練を受けている。
万が一研究対象に襲われた時の対処法として。
それも彼は化け物の中でも特段化け物だ。
かなりこちら側も手強く、なおかつ優秀な研究員を選んでいたのに。
なのに、このザマ。
ということは、よっぽどのことがない限り彼は殺せない。
なのに殺せているということは
きっとそういうことだ。
…だが俺の中で一つの疑問が頭に浮かんでいた。
----なぜ彼は俺を殺さないのだろうか。
今までの彼の専属の研究員は最速で1日、一番遅くとも2週間で殺された。
だが、俺は今のところ一ヶ月も彼と過ごしている。
気に入ってるとはいえ、彼がここまで殺そうとおもわないのは不思議だ。
もしかしたらじっくり殺そうと企んでいるのかもしれないが、あまりにも長い。
というか殺そうという行動を一つもしていない。
あまりにもおかしい。
8「何考えてるの?けんきゅーいんさんっ?」
『なんでもない。今日はもう終わりだ。早く檻に戻れ。』
8「いいけどー…一つだけ質問に答えて!」
『…なんだ?』
「なんで僕は君のことを殺そうとしないんだと思う?」
______羽の生えた悪魔
羽の生えた悪魔