両の細腕で
「あの、主……?」
「んー」
大和守安定の困惑の声に、幼い審神者の少女は曖昧な声を返した。本丸の中庭で、彼女は落ち葉の掃き掃除をしていた内番着姿の大和守安定に飛びつき、もう数分ほど彼の二の腕を揉んでいる。
「何してるの? 僕、掃除したいんだけど……」
「ん。あのね、あのね」
「なあに?」
「刀剣男士と人間のちがいって、何だろうっておもって。だってみんなとっても強いでしょ? 人間よりずっと。からだのつくりからちがうのかなって思ったの」
「そ、そう」
「でも安定の腕、ふにふに。うてなとおんなじ」
「なんか失礼なこと言われてる気がする」
「えへへ」
審神者は誤魔化すように笑うと、大和守安定から離れ……なかった。少し背伸びをして、二の腕に指を添わせ、くっついて離れない。
「触りすぎ」
「つめたくてやわらかくて気持ちいいの」
「僕の腕、細いでしょう」
「やさしい腕だよ」
「もう、仕方ないな……」
「ねえ安定。こうしてうてなが安定の腕にさわってるとね、うてな思うんだ」
嬉しそうに彼女は幼い笑みを浮かべる。そして、きゅっとさらにその身を彼に寄せた。大和守安定の丸い目がさらに丸くなる。
「腕、組んでるみたい。仲良しのこいびとみたいじゃない?」
「……」
「……あ、ごめんなさい安定。いやだった? うてな、安定のいやなことはしたくない……」
黙り込んだ大和守安定を見て、審神者はぱっと慌てて離れた。しゅんと眉を下げる審神者を横目で見て、大和守安定は、どこにそんな力があるのだろう、細い両腕で審神者を抱き上げた。審神者の体がふわりと浮き上がる。
「きゃっ!」
「主にはまだこっちの方がお似合いだよ」
「たかーい! ……じゃなくて! 子どもあつかいしないで!」
「子どもだよ。それに、嫌じゃないでしょう?」
「うう〜。すき……」
「それでよし」
幼い彼女を、たくさん抱きしめてあげたい。こうして持ち上げることができる小さな体のうちに、たくさん抱きしめてあげたい。という胸の内は、大和守安定は彼女には明かさなかった。今はこの子の成長が見たい。恋よりも先に愛を教えてあげよう、腕を組んで歩くのは、その次でいい。と、大和守安定は微笑んで、審神者の丸い頬を見つめるのであった。
「あ、腕かたくなってる! きんにく!」
「もうっ! 触らないの」
両の細腕で