逃走のシミュレーション

ひどく感傷的になる夜
ろくでもないことを考えてしまう
遠くへ逃げることとか
身を痛めつけることとか
そういうことを目論んでしまう
清冽な夜風に身をさらして
己の内部に蠢く情念を一つひとつ検分する
寂寥感と焦燥感は密接に結びついている
それらの結託が私に逃走願望を喚起する
けれど、どこへ逃げればいいというの……
そうしてまた計画にもならなかった計画が頓挫し
くすぶった彷徨欲だけが残される
結局私はどこへ逃げることもできないのかしら
ここで為す術なく、惨めに朽ち果てることを
運命づけられているのかしら……?
ひどく屈辱的な思いに囚われる夜
身を滅ぼしてしまいたい欲動に駆られながら
私は眠りという死に似た束の間の安息に浸る

逃走のシミュレーション

逃走のシミュレーション

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-03-06

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