存在の腐蝕
この苦しみが一過性のものだったら
どんなによかったろう
苦しみは形や大きさを変えながら
なおも俺の中に居座りつづけている
生きている限り、これに耐えなければ
ならないのか、耐えつづけなければ
ならないのか、苦痛が判断力を鈍らせる
受容と諦めを取り違えてしまう
生きることの演技性からは逃れられないのか
演技なき生など考えられないだろう?と
誰かが囁く、生きるとは欺くことだ、と
おまえは俺の言う通りにしていればいいんだよ
自我をもった苦しみがそう脅迫してくる
俺がしてきたのは生きてるふりだ
生きたことなんて一度もなかった
俺は生を志向しながら
生きている状態に耐えられなかったんだ
生の生々しさ、その禍々しさが
遅効性の毒のように俺の中に染み渡ってゆく
俺の頭は毒されてしまったんだ
もはや誰も俺を助けられない
俺はうわごとを吐きながら次第に硬直し
存在の内側から腐っていく
存在の腐蝕