zoku勇者 ドラクエⅨ編 41

ヘタレとヘタレ若様・1

4人組はグビアナの町の民からカルバド大草原で暮らしている
遊牧民の国の集落があるらしいと言う話を聞き、情報を求め、
次は其処に向かう事に決まった。……アイシャが習得しようと
奮起しているベリーダンスの大先生もその草原にいるらしい
ので……、丁度良かったかも知れなかった。船へと戻り、次の目的地、
カルバド大草原へといざ出発。カルバド大草原はグビアナから船で
北東方向の方角に有る。

「此処が草原か?……の、割には何か湿気っぽいぞ、ジメジメ
してんなあ~……」

(ヤダヤダ、お肌がカンソウしちゃうっ!)

「違うよ、湿地が近いからだよ、ほら、左、ヤハーン湿地って看板の
案内表記がある」

「なんか嫌らしいよお~、アハ~ン♡みたいな……って、何でみんな
オイラを無視するのおおーーっ!!」

一人バカをやっていたダウド、他のメンバーに無視された。

「うん、大草原は北の方だね、このまま真っ直ぐ進めばいいんだね……」

まずは真っ直ぐに、大草原と遊牧民の集落を探す事に。看板の
通り暫く北に進むと、目の前に広大な大草原が広がる……。

「わあ~、凄~い……、お馬さんもいるわ!放牧かしら、
……何だか……、元の世界にいた頃を思い出しちゃうなあ~……、
懐かしいなあ~……」

元・遊牧民少女、アイシャは大きく伸びをすると、大自然の空気を
胸いっぱいに吸い込んだ。

「クソだ、しりたてほやほや馬のクソ!」

「ヒヒ~ン♡」

「おまんぢゅうじゃないモン……」

「……ジャミルのバカーーっ!!」

「何だよっ、こんなモンでも売りゃあゴールドになるんだよっ!ほれっ!」

「ちょ、素のまんまオイラの道具袋に入れないでよおーーっ!!」

「ま、全くもう……」

アルベルト以外、騒ぎ出したメンバーに苦笑するアルベルト。
いつもの事であるが。……取りあえず、早く大先生とやらを
見つけてしまいたかった。アイシャの気が早く済む様に……。
だが、やはりモンスターも容赦せず……、4人はあっという間に
新規の場所で、モンスター軍団に取り囲まれてしまう。

……ドドドドド!どかっ!!

「あ~れええ~っ……!!」

「ダウドおおーーっ!!」

「キャー!大変だわっ!!」

後ろから不意打ちで突進して来た突撃ホーンに突かれ、ダウドが
遠くにかっ飛んで行った……。大分遠くに吹っ飛んで行ってしまう。
慌ててジャミル達もダウドを追い掛けようとするが、行かせまいと
ビッグホーン集団が立ち塞がったのである……。

「ちっ!邪魔しやがってっ!」

「ジャミル、此処は先にモンに様子を見に行って貰おう、モン、
頼めるかい!?」

「任せてモンーっ!」

「頼むぞ、俺らもすぐに後から行くからよ!」

モンは宙をふよふよ、ダウドが飛んで行った方向へと飛んで行った。
……吹っ飛ばされたダウドは大分遠くの方の草原で、お尻を
突き出す様な情けない格好で地面に這いつくばり、草を掴んで
倒れていた……。

「いたたたたあ~……」

「ダウド、大丈夫モン?」

「大丈夫じゃないよおお~、うう~、こ、こんな……、危険なとこに
いる先生とやらを探し回らなくちゃいけないなんてええ~……、
アイシャのアホおーーーっ!!」

「……はっ、くちゅんっ!!」

「おいおい、風邪かあ~?やめてくれよ、この時期によう~……」

「ち、違うわよっ!誰かが私の悪口をっ!ンモ~っ!!イオラーーっ!!」

「……お、おおお?」

アイシャはLVが上がり、習得したばかりのイオラを敵に向かって
放ち、全滅させる。その威力はハンパではなく、……ジャミルも
アルベルトも後ろに下がる……。

「わあー、自分で言うのもなんだけど、流石やっぱり上級魔法よね、
凄いわねっ!」

「あはは、でも、MPも大量に消費するだろうし、余り頻繁には
使えないよね……、ね、控えないとだね……」

「そうねえ~、勿体無いけど……、あ、またっ!ええーいっ!!
イオラーーっ!!」

「あ、アイシャ……」

「……注意してる側から多用すんなあーーっ!!」

「ぶうーーっ!!」

……そう言う訳で、又アイシャも一層逞しくなり?PTの戦力も増す……。
アルベルトも魔法戦士へと職業が昇格した訳だが、バトル中には余り
訳に立たない自身のゲージ技に、流石にこれは戦士の時の方が良かったと
ショックを受ける……。

「ま、剣スキル極限近くまで極めりゃ、ギガスラッシュ習得出来んだからよ、
期待してるよ……」

「……とほほのほお~……」

して、トリオは漸くダウドの元に救助に向かうが、こんな広い大草原、
人なんか探し回るのはイヤだとブチ切れ、オイラは絶対お断り致すと
大騒ぎに……。

「もうアイシャの我儘になんか付き合ってられませんっ!
……命大事にだよおっ!!」

「な、何よっ、その言い方っ!ダウドったらっ!!」

「ありゃま、こりゃまた、珍しい喧嘩の組み合わせだ、初じゃね?」

「ジャミルっ!……ふ、二人とも落ち着こう、落ち着いて……」

(フム、レア観察記録つけとこうかな……)

アルベルトは慌てるが、アイシャとダウド、一触即発状態に……。
次から次へと本当に忙しい連中である……。

「よ、よしっ、今日は俺がレフリーをやってやるぞ!」

「……ジャミルっ!君もふざけるんじゃないっ!……叩くよっ!?」

「……叩いてから言うなあーーっ!!」

こんな大草原の真ん中で……、また大騒ぎになりそうだった。だが、今回
それを止めたのはモンであった。

「やめてモンーっ!……アイシャもダウドも喧嘩してる場合じゃ
ないモンーーっ!!みんな仲良くしてモンーー!!……シャアーーっ!!」

「あだだだだっ!モンーっ!頭噛み付かないでえーーっ!!」

「シャアーーっ!!」

「……おーいっ!何で俺の方に噛み付くんだーっ!コラーーっ!!」

……アイシャには噛み付けないからであろう。代わりに皺寄せが
ジャミルの方に飛んで来た。モンはカオス顔で泣きながらダウドと
ジャミル、交互に両者の頭に噛み付く。……そろそろお腹も空く頃
なのではないかと、アルベルト……。

「モンちゃん、やめてっ!……ごめんなさい、ダウド、アル、
ジャミル……、サンディ……、私、どうかしてたね、本当に
ごめんなさい……」

「……シャア?」

「アイシャ……」

アイシャは暴走モンを見て急に我に返ったのか、頭を下げ素直になり、
皆に謝りだした。見ていたメンバーはびっくり、唖然とするが……。

「早く残りの果実を探さなきゃならないのに……、私、私……、
私の所為で……、ダウドを危険な目に遭わせちゃった……、
謝るしか出来ないんだけど、本当にごめんね、大先生に
もうベリーダンスを伝授して貰うのは諦めるわ……」

(たくっ、当たり前だってのッ!大体アンタ、まだ発展途上国……)

「コホン、……サンディっ!え、えーと、でも、アイシャ……、本当に
それでいいのかい?」

「うん、いいの、もう……、ダウド、本当にごめんね……」

「アイシャ……、い、いいよ、オイラもう怒ってないよお、オイラも
怒りすぎたね、ごめんね……」

「ダウドっ、ありがとう~っ、はい、これっ、ホイミの代わりよ!」

アイシャはモンに噛み付かれたダウドの頭にバッテン印の絆創膏を
ペタリと張る。ダウドは照れているのか嬉しそうだった。

「え、えへへ~、何か嬉しいなあ~、オイラもありがとう~!」

「なあ、アイシャあ~、俺はあ~?俺の方にも~!」

「あっ、ごめんね……、これ一枚しかなくて……、でも、ジャミルにも迷惑
掛けちゃったから、代わりにこれ、あげるね!」

アイシャはジャミルの口に甘い苺のドロップキャンディーをほおり込む。
ま、まあ、これはこれで、良しと致すと、ジャミルはキャンディーを
口の中でもごもごさせながら顔を赤くした……。

(フンっ!まるで子供ミテーだネっ、ジャミ公って!)

「ま、まあ、そう言わないで……、とにかく今回アイシャが冷静に
なって落ち着いてくれたのは、モン、君のお陰だね、有り難う!」

「モン~!アルベルト~、ご褒美にいつもよりも苺のペロペロキャンディー、
いっぱいいっぱい食べたいんだモン!」

「……まあ、考えておくよ……」

「モン~!アルベルト、大好きモン~!もちろんみんなも大好きモン!」

「ふふ、はいはい……」

こうして、アイシャは大先生にベリーダンスを伝授して貰うのを諦め、
一行は再び大草原を歩き出した。……それを見ていた者が1匹……。

「……私のベリーダンス取得は諦めたか……、残念だが、ま、それも
良かろうて……、久しぶりに見所のある者達かと思うたが、ひょひょ!」

それから暫く後、4人は草原に佇むパオを見つける。間違いなく
聞いた通り、草原の民が暮らすカルバド集落である。やはりアイシャは
故郷を思い出すのか、暫くの間、目をキラキラさせ、うっとりしていた。

「懐かしいわ~、この感じ……、羊さんも馬さんも、ウシさんも~!あはっ!」

「んめええ~!」

「キャー!ヤギさん鳴いた、鳴いたわっ!」

「鳴くんに当たり前だろが……、泣く方だったら困るだろ……」

「いいの!ジャミルはっ!」

「ねえちゃん、大丈夫だか?ヤギ、見た事ないんべか?」

動物達の世話をしていた子供が不思議そうにアイシャを見上げる……。

「そんな事ないわ、私ね、動物さん大好きなの!ねえねえ、ちょっと
触ってもいい?」

「うん、別にええよ……、ねえちゃんもまた、珍しい家畜飼ってる
だべな、それ、空飛ぶブタだんべか?」

「シャアーーっ!……ブヒーーっ!!」

「……おいおい……」

アイシャは動物達と遊び始め、触れ合い体験動物園が始まってしまう。
こうなると当分収まらないので暫く様子を見るしかなかった。
アルベルトの案で、アイシャには暫く此処で遊んで貰っていて、
僕らだけで集落を見て回ろうかと言う話。

「え?ええ!私も一緒に行くわよ、置いて行かないで、じゃあ、
私はこれで……、遊ばせて貰って有り難う!またね~!」

「ばいばい、だべ……」

アイシャは動物達に手を振り、子供に挨拶するとジャミル達の
後を追う。この風景だけ見ていると、本当にのどかな感じなのだが。

「のんびりしていて本当にいい処だねえ、この調子だと久々にゆっくり
出来そうかな~……」

「……だと、いいな……」

「あ、ジャミル、何でそんな嫌らしい目でオイラを見てんのっ!
……何だよおおーーっ!!」

(それは無理っつちゅーモンっしょ、ヘタレ、だってアタシら、騒動を
探しに旅してる様なモンじゃん!)

「……騒動を探しに旅してる、モン……、違うモン、シャア~……」

サンディ、それはそうなんだけどさ……、と、思うアルベルト。だが、
それを言うてはアカンのである。

「そうだべな、初めての人には此処はのほほん、……そう思われるだべな……」

「う、うっ!?」

硬直するヘタレ。突然出て来たおっさん。……現在のこの集落の状況を
語り出しそうだった。

「やっぱりそうなるか……、なあ、話、聞かせてくれる?おっさん……」

「……いーやあああーーっ!!」

声を荒げるダウドの頭を抑え付けながらジャミルがおっさんに尋ねる。
やはり平穏を望むのは100パー無理な様だった。

「最近……、奇妙な魔物がちょくちょく集落に侵入して来るだよ、でも、
これがまた、不思議でな、動物やわしら、民は襲わんのだ、
……どう言う訳か、魔物は族長ばかり狙って襲いに来るだよ……、
確かサルの様なデケえ魔物だ、今日辺り、また来るんじゃ
ねえべかなあ~……」

「……その族長、何か恨み買ってんじゃね……?」

「……ジャミルっ!え、え~と、やっぱり大変な事になって
いるんですね……」

「放せえーーっ!このドSM腹黒ーーっ!!」

今度はジャミル、アルベルトに頭を抑え付けられる。横で見ていた
ダウドは含み笑い。このジャミ公にして、この親友。違う様で似た者
同士。やはりどっちもだった。

「まあな、でも、族長には、えれー魔力を持つ、シャルマナ様が
付いてるからな、心配はねえだよ……、魔物が来ても直ぐに
追っ払ってくれるんだあ」

「えれー魔力……?」

4人は顔を見合わせる。シャルマナと言う人物は魔法使いなのか
知らんが、えれー魔力と聞くと何だか余り良く無い感じが
したからである。

「んでな、オラ、見ただよ、空からキラキラしたカケラが
降って来ただ、それから間もなくだったなあ、シャルマナ様が
此処に現れたんも、変な魔物が此処に来る様になったんも……」

おっさんは行ってしまった。だが、それだけ聞ければ充分だった。
空からキラキラしたカケラ、その言葉、それだけでもやはり此処を
訪れた価値があるのだから……。

「きっと女神の果実よっ、さあ、早速族長さんの所に行ってみましょっ!」

「アイシャ、ちょっと待ってよ、いきなり見知らぬ僕らが行っても
警戒されるよ、只でさえ、今、魔物が現れてピリピリしている様な
感じだからね……、う~ん……」

「うへへ、だったら……、先に族長の息子さんの若君とコンタクタを
取ったら如何だべ?」

もう一人、なまりっぺのおっさんが現れる。此方のおっさんはにこっと
笑って、笑顔が印象的なおっさんだったが、歯が欠けており、ウシだか
馬の糞臭かった……。

「コンタクトだろ、う~ん、じゃあ、先にそっちの方、回ってみるか、
族長と話を繋げる様にしてくれるかもな……」

「コンタクト、そうともゆ~、んだんだ、んでもな、族長のご子息の
若君は、ちょっと気が抜けてて優しすぎる面もあるだでなあ~、
もう少し腰が強ければナア~……、何せ、ゴキブリがパオに
出たぐれーでわあわあ大騒ぎするだでのう~……」

「そ、それって、あの……」

「つまり、……ヘタレって事だよ……、プッ……」

ジャミルはダウドを横目で見る。その目つきは又嫌らしい
目つきであった。

「まーた、君はっ!と、とにかくっ、まずは族長さんの息子さんの所に
挨拶に行ってみよう、……ダウドもいいね?」

「いいけど、アルも何でオイラの方見るんだよお~、ぶつぶつ……」

そういう訳で、話は決まる。4人はおっさんから族長の息子が住んでいる
パオの場所を教えて貰い、そっちの方へと足を向けた。だが、最初は
文句を言っていたダウドだが、内心はひっそりと、喜んでいたのである……。

(ヘタレ仲間、ヘタレの友達……、オイラ、その子と仲良くなれるかも……、
もしかしたら、友情が育まれて、何れは、ヘタレ友の会が結成出来るかも、
んふふ~!)

多分、お断りであろう……。

(うわ、何かヘタレ、ニヤニヤ笑ってるし、スゲーキモイんですケドっ!?)

「いいんだよっ、サンディはっ!ガルルー!」

「はは、お、此処だな、このパオだ……」

「パオーン、ゾウさんのお家モンっ!」

「も~、違うわよう、モンちゃんたら……」

何はともあれ……、4人は族長の息子がいると言うパオの入り口
前まで到着するが、何だか気の抜けた様な会話が中から聞こえて
来たのである……。

「ナムジン様、はよう行かねえと、又族長にどやされるだよ……」

「待ってくれ、まだ支度が終わっていないんだ、もう少し……」

「ん……?」

中にいたおっさんが4人組の気配に気づく。恐らく、若君の護衛、
世話係なのだろうが、おっさんはパオ前に突っ立っていた4人に
怪訝そうな顔をした……。

「あんだべ、お前達は……」

「へへ、こんちは、俺ら別に怪しいモンじゃねえよ、……彼方此方
旅してて、今日、此処の草原に辿り着いたんだ……」

「そう言われてもなあ~……、ナムジン様……」

「大丈夫だよ、話を聞こう……」

おっさんはぼりぼり頭を掻いて後ろを振り返る。其処に先程の
声の主、頭部に独特の冠を付けており、前髪パッツン、三つ編み
ヘアの青年が姿を現す。

「わ、この人が……、ヘタレ……、何だか……、すてき~……」

「……ダウドっ!あ、あの、初めまして、此方の……、ジャミルが
言っております様に、僕達は決して怪しい者ではございません、
宛のない旅人です、ただ、この集落で、何か起きている様ですので、
僕達は多少は腕が立ちますので、何かお力になれればと……」

アルベルトは恭しく、族長の息子に頭を下げる。腕の立つ戦士達と
身請け、ナムジンと言う青年は安心したのか、4人に対して綻びを見せた。

「そうか、君達は海を越えてやって来たのか、ボクはナムジン、
族長ラボルチュの息子さ、まあ、ゆっくりしていってくれ、
此処は対して何もないけど、穏やかで良い土地だよ、夜は
星の眺めも最高だしね、じゃあ、ボクはこれで……、父上達の処に……」

「あ、あのさ、俺らも何か手伝える事が……、あ」

だが、青年……、ナムジンは何か考え込んでいる様であり、そのままパオを
出て行ってしまう。彼に話を聞いて貰い、自分達が力になると言う条件で、
族長と直接コンタクトを取って貰おうとしたのだが……。

「行っちゃったわ……」

「モン~」

「俺ら、此処の集落の人から、ついさっき、族長を狙って変な魔物が最近
頻繁に良く来るって話を聞いたんでさ……」

「ま、アンタらが怪しいモンじゃねえってのは分かっただ、でも、
この集落の事は、シャルマナ様も族長に付いててくれるから心配ねえだ、
でもなあ~……」

「でも……?」

「ナムジン様も、どうにも臆病過ぎる処があるだ、族長に呼ばれて、
中々出て行こうとしねえのも、やはり行くのが嫌なんだべなあ~……、
小さい頃は、母上様に甘えてべっとりでのう、……母上様が
亡くなった時も、さぞかしお辛かったんだろうて……、今でも内心は
寂しくて仕方がねえ筈だ……」

「……」

取りあえず、本人が居なくなってしまったのでは仕方が無いので、
此処はやはり直に族長のパオまで向い、話を聞いて貰うかと言う事に……。

「うう、オイラ、ナムジンさんの気持ちわかるよお~、お母さんが
死んじゃって、きっと、寂しいんだねええ~……」

(……だからヘタレ、何かいつにもマシてチョーキモイっ!!)

「サンディ、うるさいよお~……」

「ダウドったら、顔中が涙で濡れちゃってぐちゃぐちゃだわ……」

「モォ~ン、ナム人、可哀想なんだモン……」

「……コラ、モンまで何だっ!それに、人じゃなくてジンだろっ!」

「モン~?1本で~も……」

「それは人参……、はあ、とにかく……、族長さんに話を聞いて貰おう、
此処にも果実の手がかりが有るって分かった以上、僕らも引く訳に
行かないからね……」

相変わらずのボケモンにアルベルトは苦笑するが、直ぐに気を
持ち直し口を開いた。

「だなあ~……、けど、そのシャルマナって奴、どうにもやっぱり
余りいい感じがしねえんだよなあ~、俺の感だけど……、ヘタレの
若君が余り近づきたがらねえってのも、何かあんのかな……」

どうにもこうにも、まだ、シャルマナに会った事も、見た事もない手前、
とにかく、族長のパオに行って確かめて見るしかなかった。4人は族長の
いるパオまで辿り着いたが、案の定……。

「オレがこの集落の族長のラボルチュだが、お前達は何者だ?ほう、
海を越えて来た余所者達か……」

パオ内にはあっさり通して貰えたが……、肝心の、先に行った筈の
ナムジンの姿が何処にも見当たらなかった……。やはり此処に
訪れるのが嫌なのか、躊躇っているのか……、何処かで油を
売っている様だった。

「ホホホ、わらわがシャルマナじゃ、そなた達、なんともまあ、随分と
珍しい客であるのう~!」

シャルマナはまるで占い師の様な容姿のとびきりの美女……、で、
あったが、こう言う女は大概碌なモンでないと言う事を、嫌でも
ジャミルは分かっていた……。

「ところでそなた、名は何と申す?ホホホ!」

「おホホホー!モンっ!」

「モンちゃんっ、……だ、黙ってなさいっ!」

アイシャが慌ててモンを窘めるが、ジャミルもやはり、この
シャルマナと言う女に早くも不信感を抱き始めていたが、話も
色々聞きたい手間、此処は堪える……。

「俺はジャミル、で、こっちが、ダチで仲間のアルベルト、
ダウド、アイシャ、モン、んと、姿が見えねえけど、後、
もう一人いるんだ」

(ハーイ、ぷりちーサンディちゃんよーッ!)

「……?ほお~、ジャミルと申すか、モンスターのモーモンを
手名付けておるとはの、……フフフ、じゃが、一体この草原に
何用で参ったのじゃ?」

「ご飯を探しに参ったのじゃ、とほほのモン~、なのじゃ、
お腹すいたモン……」

「……モンちゃんっ!違うでしょっ、ご、ごめんなさい……」

「シャシャシャのシャ~……」

アイシャはモンを慌てて腕に抱き抱えると、顔を赤くして後ろの方に
下がった……。

「えーと、それはさ……」

ジャミルは旅をしながら、黄金の果実を探している事、この集落で
起きている事件を知り、自分達も何か力になれる事があればと、
シャルマナと族長に話した。

「成程、お前達が……、だが、皆その様な体つきでそれ程力があるとは
思わなんだが……」

「ホホホ、ラボルチュの言うとおりぞよ~、モンスターの事はわらわに
任せておけば良いのじゃ、……そ、それに光る黄金の果実の事など
聞いた事もないわ、残念じゃったのう~、ホホホ!」

「そう言う事だ、お前達の探している果実など此処にはあらん、
さあ、分かったらさっさと立ち去るがいい!」

族長とシャルマナの言い方にジャミ公はカチンときた。しかし、
此処で切れては終わり。何とか堪えようとする。すると、何やら
外の方から足音が聞こえ……。

「父上、お待たせしまして大変申し訳ありません……」

「……遅いぞ、ナムジン!待たせおって!」

「はい、少し散歩をしながらでしたので……、考え事も有りました故……」

パオ内に姿を現した人物。ジャミル達よりも早く自分のパオから
姿を消したナムジンだった。やはり何処かで油を売っていたに
間違いは無かった。

「ホホホ、よいではないか、ラボルチュ、ナムジン様、のんびり
しているそなたは本当に可愛いのう~、ホホホ!」

「ありがとう、シャルマナ、……お前にそう言って貰えるだけで嬉しいよ……」

「ホホホ!」

「……」

だが、ジャミルはすぐに気づく。嬉しいと言っている割には、ナムジンの
顔はちっとも嬉しそうでないと言う事に……。

(ヘタレのオイラでも、何かナムジンさんの力になれる事が
ないかなあ~、ドキドキ……)

……ダウドもナムジンと友情を結び、ヘタレ友の会を結成する事が
果たして出来るのか……。

ラボルチュはジャミルを押しのけ、ナムジンの前に立つ。どうやら
彼を此処に呼んだ理由の肝心の話をしたい様だったが……。ナムジンの
顔が少し曇り、下を向く。だが、直ぐに上を向き、話を聞こうとラボルチュの
顔を見上げる。

「早速だが、ナムジンよ、お前を此処に呼んだのは他でもない、
……オレを狙う魔物の事は知っているよな?お前にはその魔物を
退治して貰おう……、族長の息子として、見事手柄を立てるのだ!」

「お任せ下さい父上、このナムジン、族長の息子として見事手柄を
立てて見せましょう、……ですが、少し準備をしたいので、もう少し
お待ちを……」

散々時間食っといて、今更何だ、また準備すんのかと思うジャミル。
やはり明らかに父親の命令を聞くのが嫌なのであろうが……。その時、
パオの外からけたたましい叫び声が……。

「なんじゃ?……外が騒がしいのお……」


「た、た、た、大変だあーーっ!例の魔物が出ただあーーっ!!」


「何だと!?おのれ、又来たか!よし、ナムジン!お前の出番だ!今すぐ
魔物を打ち倒して参れっ!」

「ひ、ひいっ!?」

「……ジャミルっ!僕らも……」

「よしっ!」

「私達の出番ね!」

アルベルトの声にジャミルもアイシャも頷く。……ダウドはと言うと……、
いつも通り、きゃーきゃーオロオロしており、頭の上に乗ったモンに頭を
ちんぽこ叩かれていた……。

「あいつはいつも通りと……、ったくっ!……ん?」

「……こ、こここ、こんなに早く来るなんて……、き、聞いていない……、
ううう~……、ボ、ボ、ボ、……ボクには無理だあーーっ!!」

……急にナムジンが怯えだし、部屋の隅に丸まり、すみっこぐらし
状態になり、小さくなってしまったのである。

「……怖いよお~、怖いよお~……、てか、今日は怖いって言うより、
疲れたから戦いたくない気分なの……、気分が乗りませええ~ん、
勘弁してええ~……」

「モンは頭に乗ってるモン、♪ちんぽこ、ちんちんモン~!」

「おい……」

ダウドとナムジン、遂に二人のヘタレが意気投合した……、雅に奇跡の
瞬間……、などと、やっている場合ではない……。

「何と情けない息子だ……、ええいっ!こうなれば自らオレが出陣し、
魔物をぶった斬ってくれるわっ!!」

ラボルチュはブチ切れ、刀を取り出す。だが、それを止めたのは
シャルマナだった。

「お待ち下され、ラボルチュ様、そなたはこの集落を治る立場である身、
もしもの事があったらどうするのじゃ……」

「しかし……、この腰抜けが動かぬ以上、オレが動かねばならんだろう!」

「……ううう~、時間が……、もう少し時間が欲しいのです……」

ラボルチェはそう言いながら隅っこで怯えて丸まっている息子を睨む。
シャルマナも、暫くナムジンの方を見ていたが、何かを思いついたらしく、
ジャミルの方に目線を変えたのである。

「お主、ジャミルと言ったのう、そなた、本当にそんな華奢な身体で
戦えるのかぞよ?」

「……華奢は余計だっ!てか、さっきから言ってんだろうが、
力になるってさ……」

「ホホホ、そうかそうか、此処はわらわが行ってやってもよいが、
折角であるぞよ、そなた達の力を見せて貰おうではないか、こうしよう、
そなた達が無事魔物を退治する事が出来ればわらわも果実とやらを
探すのに力を貸してやるぞ……」

ジャミルもシャルマナの方を見る。やはり胡散臭い。この女がどうにも
胡散臭い事は分かっていた。恐らく、魔物をどうにかしたとしても、
女神の果実探しに力など貸してくれないだろう。だが、此処はやはり
一つやらねば為るまい。ジャミルはアルベルトとアイシャの方を向く。
二人ももう一度頷いた。そして最後に視線は一斉にダウドの方に
向けられる……。

「……じい~っ……」

「わ、分かったよお~、行きますよお、行けばいいんでしょっ!」

「よしっ、皆、行こうや!」

「ホホホ、頼んだぞよ~!」

4人は複雑な心境であったが、取りあえずパオを飛び出す。そんな
4人を見ていたラボルチュもまた、不安な為、つい言葉を漏らす……。

「本当に……、奴ら大丈夫なのか……?」

「ホホホ、ラボルチュ様、此処は彼らを信じて見守ろうではないか!」

応戦に外へと飛び出したジャミル達だったが、集落内はもう大騒ぎであった。
数人のおっさん集団が武器を持ち、現れた魔物と戦おうとし奮戦中。最初に
会ったおっさんが言った通り、大きなサルのモンスター、マンドリルである……。

「グギギ……」

「おいっ、絶対に族長のパオの方に行かせるんでねえぞ!」

「道をふさぐだあー!」

……言葉は勇ましいが、実際、おっさん集団はたった1匹の魔物に
怯え、後ろに下がり、皆で丸くなり、……親父の輪を作ってしまって
いたのだった。

「おーい、大丈夫かあーっ!後は俺らに任せろーーっ!」

「グギギ?……!!」

4人は魔物に向かって突撃しようとするが、サルの魔物はじっと
ジャミルの方を見ている。そして、そのままジャンプすると、
集落から突然逃走したのだった……。

「あれ?あれれ?どうしたんだ……?」

「わ、あいつ、逃げてったよお~!」

「本当!何だかじ~っと、ジャミルの顔を見てたわ!そしたら急に
逃げちゃって、……一体どうしたのかしら……」

「うん、君から何か感じる物があったのかな……」

「ジャミル、凄いモン!」

(ジャミ公が仲間に見えたんじゃネ……?)

「……其処のガングロっ、うるせーよっ!」

……だが、仲間達からそう言われても、本人にも何が何だか分からず。
魔物は逃がしてしまった物の、今回は無事に追っ払えたのは事実。
おっさん集団も大絶賛で騒ぎだす。

「兄ちゃん、すげえなあ~!」

「ほほ~、魔物が一発で逃げてっただ!」

「海から来た旅人さんが魔物を追っ払ってくれただあ~!」

「本当に中々やりおるわ、……それに比べて我が息子は……」

「ホホ、ナムジン様、もう大丈夫じゃ、こっちにきなされ……」

何時の間にか、ラボルチュとシャルマナも此方に来ていた。やがて、
パオに隠れて怯えていたナムジンも、のそのそと外に……。

「父上……、お見苦しい処をお見せしてしまいまして……、
申し訳ありません……」

「それは分かっている、いつもの事だからな、だが、お前はいずれ
オレの後を継ぎ、この集落を導く物だぞ、あんな魔物1匹に怯えて
どうする!」

「……申し訳ありません……、刺し違える覚悟でしたが、どうしても
足が震えて……」

ナムジンは父親で集の長であるラボルチュに対し、只管謝るしか
出来なかった。彼と同じ属性のヘタレのダウドは、そんな彼をじっと
ウルウル目で見つめていた……。

「よいか、ナムジンよ、お前にもう一度チャンスをやろう、次に又
あの魔物が来た時こそ、お前が必ず仕留めるのだ!」

「!!……ち、父上……、だ、駄目です、……ボクには出来ない、む、
無理ですーーっ!!」

ナムジンは再び地面に這いつくばり、頭を抱え怯えて丸くなる。
……そんな情けない息子の態度にラボルチュは等々ブチ切れ、
遂に強硬手段に出る……。

「ええーいっ!構わぬお前達!このバカ息子を縛ってでも
魔物退治に連れていけーーっ!!」

「へえ、若様、すまんだでのう……」

「族長の命令には逆らえんだで……」

「……うわあーーっ!!何をするんだあーーっ!放してくれえーーっ!!
怖いーーっ!!嫌だあーーっ!!……シャルマナーーっ!!」

「おやおや……、可哀想にのう~……」

ナムジンは絶叫し、シャルマナに助けを求めるが、おっさん集団に
手足を押さえ付けられ、何処かへと強制的に連れて行かれてしまうの
だった……。

「族長さん、……ら、乱暴はやめてよおーーっ!!あれじゃナムジンさんが
可哀想じゃないかあーっ!!」

「……な、何だお前はっ!!」

「ダウドっ、駄目だ、止めろっ!」

「ジャミルっ、何で止めるんだよおーーっ!こ、このままじゃ、
あんまりだよ……」

ダウドは珍しく先頭に立って怒り、ラボルチュに食って掛かろうとするが、
ジャミルに止められる……。ヘタレだが、弱い者の気持ちが分かる優しい
ダウドだからこそ、黙って見ていられなかったのである。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 41

zoku勇者 ドラクエⅨ編 41

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-02-23

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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