『歓楽通り』

シルクハットの影が過れば
今宵は少し早い仕事始め


『歓楽通り』


初めて来た日を覚えてる
囁けば笑顔も見せずに頷く
寡黙な紳士も足繁く通う
その言い方なら随分素敵

毎夜ソールドアウトの理由
貴方の仕事さえ知らないのに
どんな訳があるというの
アタシなんかに入れ込んで

入れ込んでいるのかさえ
本当は分からないけれど
ちゃんとお金を払ってくれるなら
別にどうでもいいと思える

知らない人なのにいつからか
知っている人に変わること
それはとても怖い筈なのに
貴方から香るムスクが惑わせる

真夜中目を覚ましたアタシを
抱き締めて放さない腕の温もり
こんなもの知らなければよかった
知らなければ独りで生きられたのに

ネオンも消えた朝方に
独りよがりな誓いのキスを
寂しい心を寄せるのは貴方だけ
たった一人貴方だけ



「天使の心を以てしても繋ぎ止められない現実」

『歓楽通り』

『歓楽通り』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-02-17

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