『歓楽通り』
シルクハットの影が過れば
今宵は少し早い仕事始め
『歓楽通り』
初めて来た日を覚えてる
囁けば笑顔も見せずに頷く
寡黙な紳士も足繁く通う
その言い方なら随分素敵
毎夜ソールドアウトの理由
貴方の仕事さえ知らないのに
どんな訳があるというの
アタシなんかに入れ込んで
入れ込んでいるのかさえ
本当は分からないけれど
ちゃんとお金を払ってくれるなら
別にどうでもいいと思える
知らない人なのにいつからか
知っている人に変わること
それはとても怖い筈なのに
貴方から香るムスクが惑わせる
真夜中目を覚ましたアタシを
抱き締めて放さない腕の温もり
こんなもの知らなければよかった
知らなければ独りで生きられたのに
ネオンも消えた朝方に
独りよがりな誓いのキスを
寂しい心を寄せるのは貴方だけ
たった一人貴方だけ
「天使の心を以てしても繋ぎ止められない現実」
『歓楽通り』