Feelings world
なかなかの出来の作品です
人生と言うものは実に面白い。
この世の中にはそうそう面白い事などない。
だが人生の中で5%は面白い事がある。
それは神様が人間が人生に絶望しないようにくれた救済処置なのかそれとも、人間が自分に絶望しないようにただそう思っているだけなのか。
まぁそんな事はどうでもいい。
これから始まるゲームは人生は光に満ちていると思っている少年の物語だ。
人生の5%の部分が一気に来たらどうなるのか?
皆も見てもらいたい・・・
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「ロマンはどこに落ちているんだ?」
排水溝を覗きながら呟く少年の名前は花形 哲(はながた てつ)
「おいおいそんな所にはロマンは落ちてないと思うぞ」
冷静な声がした。
振り返るとそこには見知った顔があった。
「そこにあるのはどっかの誰かが飲み食いした排泄物しかねぇぞ」
「おまえなぁそんな事を言って、俺の夢をブレイクすんなよ」
この超現実主義者は俺の小学校時代からの悪友、白鳥 光(しらとり こう)
こいつは名前は明るいくせに性格はめちゃめちゃ悪い。
いつも俺の悪口言うし、すぐ皮肉る。
だがこいつはウルトラ頭がいい。
今居るこの道は私立藍ヶ竹学園(しりつあおがだけがくえん)の通学路だ。
俺とコウはそこに通っているのだが、いつもテストが赤点ギリギリの俺とは違いコウはだいたい学年一位を取る。
なんでも学園きっての天才だとよ。
まぁでもこいつが勉強してる姿なんかはあまり見た事がないが。
俺なんかはテストの前日に猛勉強し、山を張ってテストに挑むのだがコイツの場合
「まぁだいたいは予測できるだろ」
と言って山を張り全て当てるのだ。
そう言えばこの前、なぜ出る所分かるんだ?って聞いたら
「お前は夢を見すぎだ。もっと利己的に考えろ。社会のテストで鉄腕アトムの問題なんか出るわけないだろ」
と一蹴された。
でもじゃあなんで俺とコウがいつも一緒に居るのか疑問に思うと思うが、俺の中ではコウは友達だ。
友達になんで一緒に居るのかなんて無粋じゃないか?
それともう一つ理由があるのだがそれは後で教えよう。
まぁそんなんでこいつとは腐れ縁が続いている。
「あぁ?てっちゃんとコウちゃんじゃない!おはよ?」
ここにもう一人の腐れ縁がやってきた。
「おっ!風見か」
「よぉ」
「コウちゃん朝からテンション低いね?」
「俺はいつもこんなんだ」
「ま、まぁそうだったね?」
この元気な奴は、槍崎 風見(やりざき かざみ)
こいつも俺の小学校からの腐れ縁である。
いつもこの三人でつるんでいる。
風見は黙っていれば学園でもトップ3には入る美貌だ。
なんでも陸上部のエースらしくすらりと伸びた長い足と大きな瞳。
そして髪の毛は頭の頂点から少し下で長い髪が結ばれ、ポニーテールになっている。
まぁそんな容姿も彼女の性格には劣るだろう。
彼女には”天真爛漫”という言葉が似合うだろう。
何でもやりたがるし何か不満があるとすぐに大声を出して喚く。
それに何をやらしてもだいたいは失敗する。
それを責めるともの凄く大声をだして怒鳴るのだ。
というか結構めんどくさい。
だが風見は俺のかけがえのない友達だ。
なぜなら、あれは小学校の時。
俺は今みたいな明るい性格では無かったのだ。
それが禍しいじめを受ける事になった。
自分で言うのもなんだが、俺は子供の頃から結構我慢強い性格だったのでいじめを泣かずに受けていた。
それがいじめグループは気に食わなかったのかそこからまたキツイいじめを受けた。
そしてある時学校で飼っていたニワトリが殺されると言う事件が起きたのだ。
そのいじめグループのボスがお前がやったんじゃないかと俺に言ってきた。
当然俺は否定した。
否定したが誰にも信じてもらえず他の奴がどんどん同調してきた。
「おまえがやったんだろ?」「お前性格くらいからなぁ」
そんな声が俺の周囲を包みこんでいく。
あぁこのまま認めればいいのか?このまま認めればこの周りにある声はやむのか?
そんな暗い感情が心支配し、俺はいつの間にか涙を流していた。
「こいつ泣いてるぜ」「やっぱお前がやったんだ」
もういいどうにでもなれ。
「ぼくは・・・」
「哲はやってねぇ」
ふいにとても冷静な声が聞こえた。
「お前ら何の証拠があって哲を犯人呼ばわりするんだ?」
「だってこいつ性格暗いし・・・」
「フン。性格が暗い位でそんな事やってたら、世の中殺人者だらけだぜ」
「でっでも」
「おいおいまさかそんだけで哲を犯人呼ばわりしたわけじゃねぇよな?」
「うぅ」
それきりボスは黙ってしまった。
周りの声も同様に黙ってしまう。
この小学生にして酸いも甘いも舐めてきたような口を利くのはコウである。
この時俺はコウとは一つも関わった事が無かったのだが、なぜかコウは俺を助けてくれた。
2
「なんで・・・」
俺は自然に呟いていた。
「いややっぱりこいつがやったんだ」
その時ボスが息を吹き返したように怒鳴りだした。
「俺見たもん。コイツがニワトリ殺している所」
なんとボスは嘘をついたのだ。
「おいおい嘘はやめろよ」
コウはボスを睨み付ける。
少しボスはたじろぐが、後には引けない。
「嘘じゃねぇよ!俺は見たんだコイツが殺してるところ」
ボスは大声を出す。
「じゃあやっぱりコイツが犯人じゃないか」「そうだそうだ!」
周りの奴らも息を吹き返す。
「ちっ。くそみてぇな嘘に騙されてんじゃねぇよ馬鹿共が」
コウが舌打ちをした。
もう火のついた奴らは止まらない。
やっぱりだめか。
もういい黙らせよう。
晴れていた俺の心はまた黒く黒くなっていく。
そんな時
「私も見たよ。犯人」
元気な声が聞こえた。
「ほんとに?」
何処かの誰かが聞いた。
「うん!なんかこの辺りで騒がれてる変質者に似てた」
そういう女の子は風見だ。
無論いじめられるような俺には風見、ましてや女の子とも喋った事もない。
「本当に!じゃあ今のは」
「なんだよ!嘘じゃねぇぞ」
ボスはあせっていた。
それは焦るに決まっている。
このまま俺を犯人にしようとしたらまさか本物の目撃者が出るとは思ってみなかったのだから。
「まぁ目撃証言が二つあって、それが食い違っているならどちらかが嘘をついてるな」
コウが冷静に分析する。
「つってもお前のほうは何にも脈絡が無いが、こっちは変質者と来てる」
ボスをお前呼ばわりしてコウが解説する。
「まぁ普通に考えていきなりいじめられっ子がニワトリ殺すより、変質者が殺しているほうが普通だと思うけどな」
そう言うとコウはボスを見た。
ボスはがっくりうなだれていた。
それで終わりだった。
俺の容疑は晴れ、ボスはクラスでずっと嘘つき呼ばわりされた。
そして放課後、俺はコウの元へ行き
「なんで助けてくれたの?]
ずっと疑問に思っていた事を聞いてみた。
「なんでって・・・う?んなんでだろうな。まぁ多分あいつと同じ理由じゃないか」
コウは風見を指差した。
「あいつの証言だって嘘だぞ多分」
コウは小声で言ってきた。
「じゃあ帰るから」
コウはそのまま帰っていってしまった。
その後俺は風見の元へ行き
「槍崎サン!ちょっと」
風見を連れて人気のない場所へ連れて来た。
「何かな?花形君?」
大きな瞳で聞いてきた。
「なんでさっきボクを助けてくれたの?」
「なんでって変質者を見たからいったまでだよ?」
何を聞いてるのだ?と言うような顔で答えた。
「でもさっきコウ君が嘘だって」
「あぁ?ばれちった?」
そう言って風見はチロッとべろを出した。
「で、でもなんで?」
嘘だと言う事はわかった。
でもなんで俺なんかを助けるために嘘をついたんだ?
「いや?だって花形君やってないんでしょ?だったら助けるの当然じゃない。それにあいつ嫌いだし」
あいつとはボスのことだろう。
「当然・・・」
「そっ当然。まぁもう一つ理由があるけど・・・」
「もう一つって?」
「それは秘密☆」
そう言って風見はシィーと言うジェスチャーをしてきた。
「じゃあ私帰るから。またね」
「う、うん」
それで風見は帰ってしまった。
そこから俺はこの二人と仲良くなり今でも付き合っている。
「お?いてっちゃんどうしたの??」
気がつくと風見が俺の顔を覗き込んでいた。
「うわっ!びっくりした?」
「えっ!おどろかさないでよ」
「あぁごめん」
「なぁ二人とも今何時か分かるか」
いきなりコウはたずねてくる。
「?」
俺はよく理解しないまま時計を見ると
「8時30分」
学園は8時35分登校だ。
「と言うわけで俺は走るがお前達は?」
そうコウが聞いてくるので
「当然!」
「当然!」
俺と風見はハモった。
「さぁロマンはどこに落ちている?」
人生はとてつもなくつまらない物に見える時がある。
だがそんな時俺はロマンを探す。
そうしたら見つかる気がするのだ。
コウや風見が俺を見つけてくれたように。
そんな事をつぶやきながら俺達は走り出した。
学園でいきなりロマンが飛び込んでくる事も知らずに・・・
3
「はぁはぁ。間に合ったかな」
息を切らしながら俺達は学園の校門をくぐっていた。
「いや後一分しかないぞ」
俺達と一緒に走ってきたのに全然息を切らしていないコウが冷静にかつ、残酷な言葉を発する。
「じゃあ私本気出しちゃうかなぁ」
と呟く風見もまったく息を切らしていない。
こちらはまぁ陸上部のエースなので気にはしないが、なんでコウの奴も息を切らしてないんだ?
「本気ってお前、まだスピード上げれんのかよ」
「いやいやこれからっすよ」
風見はそう言うとグンっとスピードを上げた。
「嘘だろ、おい」
「じゃあ俺も遅刻はしたくないんで」
そう言うとコウまでスピードを上げる。
「お前は帰宅部だろ!」
「まぁ君とは違うとだけ言っておこうか」
そんなセリフを言って走っていってしまう。
「俺だけ置いてけぼりか!」
一人で叫んでも寂しいだけなので、スピードを上げようとするが・・・
「やべーなこれ。マジで運動不足だ」
まったくスピードは上がらないし、なんか脇腹まで痛くなってきた。
もういいや歩こう。
俺は学園の昇降口まで来たところで諦めた。
俺達は一応今のところ二年生なので教室は三階の一番奥にある。
そのとき!
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
無常な鐘がなった。
「あ?あ怒られっかな」
担任は俺達二年生の学年主任の谷澤というパンチパーマの先生なのだが、遅刻や規律にうるさいのだ。
そんなことを思案していると。
「あぁ?遅刻?」
後ろからドタドタと言う音と共に女の子が走ってきた。
そして俺を追い抜いて・・・あっ!こけた。
「うぅ?なんでかなぁ?なんでこうなるかなぁ?」
「大丈夫?」
俺は盛大に頭からこけた女の子に手を伸ばす。
「うぅ?ありがとう・・・あれ花形君じゃない」
「あぁやっぱり大石さんか」
このドジッ娘属性満開の子は大石 美月(おおいし みつき)さんだ。
大石さんは学園で一、二を争う美人だ。
美人と言うか、何というか。小動物的な守ってあげたくなる感じだ。
美人と言うより可愛いと言ったほうがいいだろうか。
長い髪を揺らしながら俺の手を借りて立ち上がる。
「あぁってひどいよぉ」
「あっいやそういう意味で言ったんじゃなくてね」
「じゃあ何の”あぁ”なの?」
「いや?それはほら、あれだよ・・・声!そう声で分かったんだよ」
「ホントォ?」
「うん!本当デスヨ」
「じゃあ信じるよ」
「結構簡単に信じるデスネ」
「花形君は嘘を吐かないよぉ」
「そっそう」
いや信じてもらうために嘘を吐いたのだが、なんかここまで信頼してもらうと逆にもの凄い罪悪感である。
これで絶対”頭から転ぶ奴なんて大石さんだけだよ”なんて言えなくなってしまった。
「そうだ!花形君遅刻だよ」
「あぁそうだね」
「いそがないと!」
「いやもうチャイム鳴り終わってるし、いいんじゃないかな」
「そうじゃないよ!」
「!?」
いきなり大石さんは大声を出したのでびっくりしてしまった。
「私嫌いだなそういうの。なんかが出たから諦めたり、チャイムが鳴ったからって急ぐのやめたり。そうやってすぐ諦めるのは良くないよ」
「いや?でも」
「だってさっ!諦めたらそこで終わりなんだよ!それまでにやってきたことが全部無い事になっちゃうんだよ!」
「それは・・・」
確かに彼女の言う事は正しい。
「何処かのホワイトヘアードデビルの言葉を借りるなら”諦めたらそこで試合終了ですよ”だよ!」
正しいのだがここで力説する事では無いのではないか?
しかも以外にその言葉を知っているとは。
「まっまぁじゃあブザービートまで走ってみる?鳴り終わってるけど」
「うん!」
俺は彼女と走って教室に向かう事にした。
この子がなんで好かれているか少しだけわかった気がする。
この子は顔やスタイルだけでなく心まで綺麗なのだ。
確かに学園に密かに存在する大石美月の会の会員の気持ちが今なら分かる気がする。
「ふぅ?着いたね」
「やっぱ怒られるかなぁ」
そぉ?っと扉を開けてみる。
「あれ?いないじゃん」
教室には谷澤先生は居なかった。
いやそれよりもこの教室には誰も居なかった。
「誰も居ないね?」
「うん」
なんだ?移動教室か?
いやでも今日の日程にそんなのはなかった。
「なんか嫌な感じだね」
大石さんがこっちを見てくる。
そんな小動物的な目で見られるとドキドキしてしまう。
「花形君?」
「うん!?リスがどうかしたかい?」
「誰もリスの話なんかしてないよ」
「えっ!そうだっけ?・・・いやそんな事よりもこの状況だよね」
「なにかあったのかな?とりあえず入ってみる?」
「そうだね」
俺達は教室の中に入っていった。
その瞬間!
ピシャっとドアが閉まった。
「キャッ!」
「うおう!自動ドアかっ!」
ドアに手を掛けて開けようと思ったがまったく開かない。
「どうなってんだ?これ。それよりコウや風見はどこに行ったんだ?」
「だれも居ないね」
そのとき校内放送のスピーカーからノイズが聞こえて来た。
「えぇ?皆さん。どーも。私”玉”(ぎょく)と申します。この放送を聴けてる人は素質がある人です」
なんだこいつは?何が起きている?
「まぁ皆さん混乱してると思いますが、率直に言うと皆さんに戦ってもらいます。どちらかが戦意を失うか、再起不能となった時点で戦いは終わりです」
何を言ってるんだ?戦い?何故そんな事をしなくちゃいけないんだ?
「勝った人はその教室から出る事が出来ますよ。そしてどんどん教室をクリアーしていって私のいる体育館まで来てください」
「この人は何を言ってるのかな?」
大石さんが俺に尋ねてくる。
「いや俺にもさっぱりだよ」
「まぁさっぱりとか言わないで人の話は最後まで聞いてくださいね」
「なっ!?」
筒抜けなのか!
「ねぇ花形君、なんかおかしいよ」
「おかしくなんかないですよ?。君達はその教室でボクの用意した人たちと戦ってもらうんだよ。それで勝ち進んできてボクと戦うんだ」
「おい!お前は何者だ!」
「ボクはこのゲームの主催者だよ。じゃあ始めようか!人の感情を垣間見る事のできるゲーム、『Feelings world』を」
「『Feelings world』って・・・」
「あぁ最後に言っておくよ。この戦いは感情を力にして戦うんだ」
「感情を?」
「じゃあがんばってねぇ?」
「あっ!おい待て!」
スピーカーからはもう声は聞こえない。
「ねっねぇ花形君。何が起きるのかな?『Feelings world』って何?」
「わからないよ・・・」
途方もなく大石さんの質問に答えると、いきなり目の前が光に包まれた。
「なっなんだ!?」
俺達の目の前に現れたのはメガネを掛けた男だった。
「お前は鳥居じゃないか!」
鳥居とは俺のクラスに居るガリベンの奴だ。
「なぁお前は何か知らないか・・・」
近づいた瞬間、鳥居は俺に向かって殴りかかって来た。
すんでのところで後ろに引き拳をよける。
「おい!何するんだよ!」
「ちょっと待って!花形君」
鳥居に食ってかかろうとすると、大石さんが制止した。
「何か鳥居君の様子が変だよ」
そう言われて鳥居の様子を良く見ると、目は血走り体はフラフラしている。
「確かに変だ・・・うわ!」
いきなり鳥居が飛び掛ってきた。
それを左に避けなんとかかわす。
「まさか戦いって、こいつを倒せってことか」
「多分そうだよ」
いきなりこんな状況に落とされ、クラスメイトと戦わなくちゃいけなくなった俺はこの状況を飲み込むのに精一杯だった。
だがそれを待ち望んでいた俺が居た。
「ロマンが落ちてたか」
俺は俺も知らない間に笑っていた・・・
Feelings world
楽しんでいただけたらもの凄く嬉しいです。