鼓動
明日が幾通りもの可能性に溢れていることは知っていて
毎日その中から最悪を掴み取ってしまうことを危惧している
たとえ慎重に選び進んだとしても
全ての選択の先が望ましくないものだとしたら
鼓動。
幸福の不在証明には失敗してしまったのだが
自らの不幸を叫ばずにはいられない時間があることもまた事実で
失敗や後悔を胸に刻まれた明日の我が身は
まだ見ぬ朝日に怯えて覚醒する
鼓動。
夜間警察は救うにあらず
毛布一枚だって恵みはしない
自身で乗り越えるしかない暗闇を
一寸先の白地図を描こうと指を動かす
鼓動。
深夜の布団の温かさを
はっきりと覚えている
鼓動。
痛みを経て
息をした
鼓動。
心は遥かに雄大で
貴いものになるだろう
何者にも利用させない
奈落など存在しない
生きていく限り
鼓動。
私など居なくとも
美しいこの世界に生まれ落ちたのだから。
鼓動