『恋人じゃない人』

昨夜の貴方は無口なまま
薄闇の部屋でアタシを抱いた


『恋人じゃない人』


長身のシルエットを
未だ眠たい目で眺めれば
どんなに勝手でも許せるほど
愛してることを自覚する

いつもひんやり冷たい手が
その時だけは温かいから
少しは愛されてるような
笑える錯覚に陥るんだ

キッチンの明かりが消えて
貴方が何か言ったけど
眠たさに勝てずにいれば
ため息だけが耳に落とされる

いつも呆れさせてばかりね
言葉から全てを察するには
アタシは若すぎるから
どうかもう少し待っていて

まだ夜明け前だと告げる
低音の響きにうっとりと
影を見上げれば差し出される
温め直したスープと頭を撫でる手

もし、もしもよ
今以上に貴方を欲しくなったら
黙って消えるのだけはやめて
ここまで刻んでおいてそれは酷よ



「好きなだけ他の誰かと比べていいわ」

『恋人じゃない人』

『恋人じゃない人』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-02-10

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