『恋人じゃない人』
昨夜の貴方は無口なまま
薄闇の部屋でアタシを抱いた
『恋人じゃない人』
長身のシルエットを
未だ眠たい目で眺めれば
どんなに勝手でも許せるほど
愛してることを自覚する
いつもひんやり冷たい手が
その時だけは温かいから
少しは愛されてるような
笑える錯覚に陥るんだ
キッチンの明かりが消えて
貴方が何か言ったけど
眠たさに勝てずにいれば
ため息だけが耳に落とされる
いつも呆れさせてばかりね
言葉から全てを察するには
アタシは若すぎるから
どうかもう少し待っていて
まだ夜明け前だと告げる
低音の響きにうっとりと
影を見上げれば差し出される
温め直したスープと頭を撫でる手
もし、もしもよ
今以上に貴方を欲しくなったら
黙って消えるのだけはやめて
ここまで刻んでおいてそれは酷よ
「好きなだけ他の誰かと比べていいわ」
『恋人じゃない人』