漸近的救済

誰かの慟哭が世界中に響きわたる
が、誰もそれに応えようとしない
聞こえているふりさえしない
それでいて人々は己の救済を待ち望んでいる
自分だけは救われるだろう
救われるべきは自分だけだ
そう盲信する人間が増えすぎてしまった
人を人たらしめる本質を失ってしまった
俺たちは愛が死語になった世界に生きている
愛が嘲笑される世界で愛を尚も実践しようと
継続しようとする人間が交わる確率はいかばかりか
救いとは何たるかを求道するのをやめることが救いだと
そんなアイロニーで救われるほど俺たちは馬鹿じゃない
救いが訪れたとて生は終わらない、それを心得ている人間にしか
真実の愛とは出逢えない
真の救いを理解できない
絶望のない生がないように
痛みを伴わない救済はない、それを知っている人間だけが漸近的に救われている

漸近的救済

漸近的救済

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-02-02

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