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遺伝子
SF指小説です。
銀河の中心に近い星にある銀河生命コントロールセンター総合指令室で、研究員たちが、いろいろな調査船から送られてきている映像を見ている。
「所長、銀河の縁の調査に向かっている科学調査船から連絡が入ってきています」
「なんていってきたんだ」
「どこの星からでたのかわからない宇宙船が漂っているのを見つけ、回収したということです、三人の乗員はみな死んでいるそうです」
「どんな宇宙人なんだ」
画像を送ってきています。
モニターにすでに科学調査船の母船に収容され、解剖室に運び込まれている死体が映しだされた。
「二足歩行か、腕は二本、指があるからかなり器用な生命体だな。頭部に感覚器が集まっているようじゃないか」
「遺伝子調査はいまやっているとあります」
どの地域の生命体かわららないが、遺伝子系統でおおよそわかる。
「宇宙艇はどんな状態のものかな」
記録係が宇宙艇をモニターに映し出した。
「なんだこれは、これじゃほんの数万キロしか飛べないものだな、一万年も昔のものだ」
「そうですね、調査船の船長からも、恒星間の飛行はむりだといってきました、おそらく惑星間の乗り物で、流れ流れてきたものと考えられます」
「どのあたりの星だろうね」
「拾ったところから、そんなに離れているわけではないと思いますが、わかりません、今調査船が捜しに行きました」
「とりあえず、新しい生命星として登録しておこう、生命星研究室にいくから、これらのデーターをそちらに送っておいてくれないか」
所長は生命星研究室にむかった。
入ってきた所長に生命星研究室、室長が言った。
「この宇宙人の星に番号をふりました。888番目の星です、これからどこの星なのか特定しなければなりません」
「科学調査船が、拾った宇宙船が流れていた状況から推測して、その星を捜しに向かったよ」
さらに室長は
「二本の足と、手をもつそうだ、解剖の結果も興味がある」と、その不思議な姿を説明した。
そこに総合司令室から連絡が入った。
「調査船から、可能性のある星を見つけたと行ってきました。映像がきています」
生命星研究室のモニターに映像が映し出された。
銀河のはずれにあるその星が映しだされている。
「小さな星だな、これは惑星だな」
「はい、888番星の生命星は、親星である恒星の三番目の惑星だと、船長から連絡が入っています。その星から発信されている電波を傍受しているそうです、その言葉などが解析できたようで、様子が少しわかってきたということです」
「どんな惑星なんだ」
「その惑星は国組織にわかれていて、それぞれのところで、ロケットをとばしているようで、今、一つの国がはじめて衛星に自分のところの衛星の無人探索機を着陸させることができたと、喜んでいるということです」
「だけど、回収した宇宙艇は人が乗っていたじゃないか、その星じゃないのじゃないかね」
「いえ、別の国では衛星にその星人を乗せた宇宙艇をとばしているようで、回収したのは、昔とばして失敗したものではないかと、船長がいっています」
「それで、そんな未成熟星を、調査船の船長はどうしたいって」
「船長からは、自動観察にするかどう指示してくれっていってきています」
「自動観察にするとなると、近くに無人観察挺を送くって、維持しなければならないから金がかかるな」
所長は記録係に直接船長と話すと言って連絡ブースに立った。
「船長、センター長です、ご苦労様です、その衛星は888番の生命星として登録しました、かなりな未熟星のようだから、自動観察艇は送り込まないでいいと思います。詳しいデータだけ採取してください」
「了解しました。所長、今宇宙人の遺体の解剖が終わり、復元されましたので、画像を送ります」
画面には、頭と手足がそれぞれ二本の宇宙人が映し出された。
生命星研究室長が神経系について質問した。そこが、その生命がどのランクのものか重要なポイントになるからだ。
「頭の中に情報統制神経塊があり、それに頭部の一面に、光情報感受器、音波情報感受器、空中物質感受器、水中物質感受器があります」
「個体透視器はないのかね」
室長がたずねると、ありませんと、答えが返ってきた。
「生命維持方式は酸素と窒素の星で、おそらく酸素呼吸です」
「電気を食う我々とはずいぶん違うな」
そこで新たな情報が入ったようだ。
「888星に送っていた、小型捜査器がもどいりました。その星の詳しい情報を搭載してきましたので、もうしばらくしたら、解析情報を送ります。とりあえずその星の全体像の映像を送ります」と船長が連絡してきて、すぐに総合司令室のモニターに888星が映し出された。水と土の綺麗な星である。
「生命に適してしてはいますな」
生命星研究室室長の言葉に所長もうなずいた。
「この星はできてどのくらいだ」
「その星の時間経過で言うと、四十数億年です」
星誕生課程研究科の研究員が答えた。
「生命ができたのがその中間、二十億年前と仮定しても、まだ恒星間航行もできないとは、ずいぶん遅れているな」
所長がつぶやくと、生命星研究室の室長もうなずいた。
「そう言った星はいくつもあります。九割方、自滅して、生き物のつくりなおしがはじまります、888星だってどうなるかわかりません」
「自滅になると言うのかい」
「まだ、一つの星じゃないようですね、国ごとに衛星に船をとばして、競争しているようじゃ」
「そうだね、自分たちで戦争を起こして、自滅するかもしれんな。賢い生き物ならそうならないけど」
「そうなりそうですね」
「まあ、長い目で見てやろうよ、俺たちの星だって、いくつもの国があって、戦争したり、競争したり、大変だったことがあっただろう」
「はい、もうニ万年もまえのことです」
「それじゃ、数千年後にあの星がどうなっているか、自動観察開始タイマーを設定しておくことにしようや」
「星のランクはどうしましょうか」
センターの計画担当者がたずねた。
「その前に、888星のランクはどうする。Bランクはむりだろう」
「とてもむりです、進化が遅いのでCランク以下ですね。
「まあ遅いけど、文化の進化はわるい方向ではなさそうだな」
そこに、調査船の船長から連絡がきた。
「遺伝子の解析がおわりました。二重螺旋です」
「ということは性があますすね」生命星研究室の室長が補足くした。
「はい性がありそうです、それはいいのですが、遺伝子が相互の働きで動く仕組みで、統御する部分がありません」
「それはどういうこと」
所長がたずねると、室長が答えた。
「遺伝子を統御する部分がないということは、知識が遺伝しないということです、我々の遺伝子は、知識を蓄え、それが遺伝子を制御するので、子孫の遺伝子には、先祖が学んだ重要なできごとがはいり、遺伝の際に有利に働きます」
「そうか、だから、若い人ほど知識が豊富で、新たなものを作り出せる」
「そのとおりです、知識の遺伝がないような生き物だから、やっと衛星に着陸させることができたということだと思います」
「どうしてそうなっちまったんだ」
「突然変異が起きていないのです、我々が進化してきた過程では、ずいぶん早い時期に、遺伝子に指令機能を持つ部分が然変異で生じ、さらにそれが新しい知識を蓄える能力を持ったわけです」
「銀河生命体の運営グループにはいるのに遺伝子の変化が必要だな、888星はDランクに登録してくれ」
「はい、科学探索船の船長に連絡します」
「船長、銀河総合センターでは、888星をDランクに登録しました」
今、宇宙嵐でちょっと電波が届きにくいようだ。
返事が返ってこない。
係りのものが、ボリュームを極限まで上げて、調査船に、その生命星をDランクに登録したことを連絡した。
銀河系の端っこの星の第三惑星。そこの高い山の頂にある天文台では、二本足の生命体が、二本の腕をあげて、喚起の声をあげていた。
その惑星で初めて宇宙人の通信を傍受したのである。
地球という惑星である。
遺伝子