加害妄想
加害妄想が被害妄想を凌駕するとき
人間は初めて人間的になる
存在しているだけで誰かを傷つけている、という冗談が
次第に現実味を増していく
世界に安全圏は無く、誰もが誰かしらに矢を向けている
そのことを了解できない者から脱落していく
俺たちはそんな修羅に生きている
次はどこから矢が飛んでくるだろう、ではなく
次は誰に矢を飛ばしてしまっているだろう、という思考の人間の方が
手遅れに決まっている
その手遅れさを巻き戻す術は無く
己の魂が堕ちていくのを指をくわえて見ているほかは無い
俺にも数え切れないほどの矢が刺さっているはずなのに
おびただしい量の血が流れ出ているはずなのに
なぜだろう、痛みを全く感じないんだ
俺、壊れちまったのかなあ
誰か教えてくれよ
己の痛みを正しく感じる方法を
加害妄想