素面のロマンチスト

苦しさを表すことにも飽きて
口も手も黙らせる 黙れよ
救済、絶望、贖罪、そんな単語ばかり(ちりば)めた詩に
何の価値があるのだろう
激しい感情に駆られることもなくなって
日ごとに生の実感が薄れてくる
何がしてえのかなあ
これだけ死を書いているのに一向に死なず
惰性で生きている俺を許す人間が
どれだけいるだろう
許しなんて曖昧なもの、いらないさ
俺はもう、曖昧なものには惹かれない
救済にも惹かれない
そんなものより、今夜眠れるだけの酒をくれ
今日をやり過ごすだけの薬をくれ
詩文が俺を酔わせてくれることはもうない
ボードレールも呆れているよ
お前もう死んでるよ、ってな。

素面のロマンチスト

素面のロマンチスト

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-01-06

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted