わたしは慎ましくなりたい

 1
強いひとにはなりたくありません
優しいだけのひとなんていないのです
極端な言葉をつづりたくありません (だって それは強い)
わたしは ”大衆”というやさしい葉群へ埋没したい──

嘗てわたしは詩に撃たれて 今になっても漂着地を書きつづけている
わたしは少年期の幻という詩編へ落ちて往きたかったから、
そのために 此処に紙を置いた
つよさと優しさへの、絞るような憧れを刻んだそれを──

ところでわたしはあなたと同様に
特別な 固有の 世界から剥がれた一破片です
わたしはそれを大切にしたいのだから──
あなたも亦 その特別な一欠片としての無明を大切にしてください

色彩豊かに燦くかずかずの個性と才能の咲く世界で、
或る固有の詩人は──無明という世にもきれいな硝子質を光らせます
それは群青の絶世な暗みの夜空に光る 一の暗みなのです
あなたという一固有は、なんでもない一特別な御大切な存在です

 2
あらゆる詩人が天才だなんて、いったい誰が云ったの?
わたしはそれを、はやだれにも云わせない!
わたしは平凡と匿名と無名への、深い憧れに従う無明のひと──
わたしは無名のひと!──無明で、薄明に照らされる詩人がわたし

──青津亮とは誰?
よく訊いてくださいました、わたしはね、
青い空に憧れ 青い海に身を浸し
惨めったらしい泥を飲む しらとりがその本性です

つまりはあなたと同じです、
わたしは一義性という不可解へ背を折るように身を賭ける、
わたしは「わたし」として在ろうとする
見ていてくれる?──わたし、一義性という宇宙に溺れたりしないから

 3
わたしは優しく慎ましいひとになりたいから、
つよくならねばいけないのだ
つよくあらねば、なにも大切にはできないのだ
だから歌うの、わたしは歌うの 祈りのようなうごきで──そして

青空の加護の下 この蒼波をそよがせる海へ躰を跳ばす──
わたしという混濁の躰は、
そのうごきにともなう飛沫だけを清ませる可能性を孕む
どうかそれが わたしの詩へ漂着しますように…

わたしは慎ましくなりたい

お引越し先だとここに収録してます。

https://fascinating-aotsuryo.wordpress.com/2024/12/16/%e7%84%a1%e6%98%8e%e8%a9%a9%e9%9b%86/

わたしは慎ましくなりたい

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-12-25

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