死のロマンチシズム
お前は誰に喋っているんだ ぶつぶつぶつぶつと 壊れた機械のようだよ それにしても良い天気じゃないか こんな晴天の日に死にたくなるなんてお前はおかしいよ とでも言うつもりかお前は 阿呆が 俺は周りの人間とは死にたくなる理由が違うんだよ 俺の希死感情は倒錯しているんだ お前には解るまい 俺の死の美学が 死のロマンチシズムが そんなもの解りたくもないってか そらそうだな この美学が解るのは俺だけでいい 俺だけがその美学に殉じればいいんだ だから俺のことは放っておいてくれ 俺もお前のことをとやかく言ったりはしないから 解ってもらおうなどという気はさらさらないから ああ何故俺はこんなにも死に魅せられているのだろう それがまだ解明されていないからだろうか 決して解明され得ないところが俺のロマンチシズムを擽るからだろうか 俺は美しく死にたい 誰よりも美しく死ぬのが俺の目的であり目標だ そのためなら俺は手段を選ばない 死も勿論重要だが死に至るまでの過程も同等に重要だ…… 俺は考えうる限りの死を夢想する その過程を少しでも美しいものになるように度重なる改善を試みる だが俺の完璧主義が 向上主義がそれを終わらせない もっと良い方法があるんじゃないかと もっと良い様式があるんじゃないかと俺に迫ってくる…… そう もっと良いかたちが存在するはずだ 俺はみずからに鞭打ち模索する より高い次元の死のロマンチシズムを このまま完成することなく死ぬのではないかという恐れを抱きながら…… その時はその時だ 無様に朽ち果てるのもまた愚者の美学…… その時俺は口にするだろう ああ、なんて死は美しいのだろう、と……
死のロマンチシズム